【オーガ行進曲】ゴブごぶ×2家族を襲う☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月07日〜08月14日

リプレイ公開日:2005年08月15日

●オープニング

『一匹見たら、30匹はいると思え』
 それはランドルの亡き祖父の口癖だった。
 ゴキブリじゃあるまいし、そんな馬鹿な話があるものかと当時は良く笑っていたのだが、今現在それは笑い事では済まなくなっていた。
 ――大量の、ゴブリン。
 一体どこから沸いたのかと思うほどに、大量のゴブリンが夜な夜な現れては村の大切な畑を荒らし、家畜を殺して奪っていくのだ。
 数週間前、森でゴブリンを見かけたという話は聞いていたのだが、よもやまさかこんなにいるとは思いもよらなかった。
 けれどゴブリンはそんな事はお構いなしに連日村を襲い、最近では夜だけではなく真昼間に堂々と家畜を盗みに来る始末。
 ランドルの家も例外ではなく、畑や家畜もそうだが、可愛い娘達に怪我を負わされたのだ。
 一家の大黒柱として、この事態を見逃せるはずもないが、モンスターの中では雑魚といわれるゴブリンとはいえ一般人の自分や村人が戦って勝てる相手ではない。
 だからランドルは、冒険者ギルドに依頼を出すのである。
 ゴブリンを、退治してくれと。
 
  

●今回の参加者

 ea3443 ギーン・コーイン(31歳・♂・ナイト・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea5384 シャルク・ネネルザード(24歳・♀・レンジャー・ジャイアント・エジプト)
 eb1079 メフィスト・ダテ(32歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb1164 本多 風漣(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1972 アニー・ヴィエルニ(31歳・♀・クレリック・シフール・ノルマン王国)
 eb2456 十野間 空(36歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 ●まずは話し合い
 依頼人・ランドルの村へとたどり着いた冒険者達。
「ふぅむ。ゴブリンどもの数など判らぬし、ちと厄介じゃのぅ」
 自慢の髭を扱きながら、溜息をつくギーン・コーイン(ea3443)
「さて、依頼者の祖父の口癖通りだとしたら何体居る事やら。依頼者も把握していないようですし、こちらは6名。事は慎重に当たる必要がありますね」
 ゴブリンに荒らされた村を見つめ、眉を顰める十野間 空(eb2456)
「うやっ! カール‥‥じゃなくてランドルさんのはなしをきいてみないとじっさいのところはわかりませんけど、ゴブリンがうばって行くかちくはニワトリだけだとおもいまーす。体格的に、ゴブリンはブタやヒツジに劣るので。それにゴブリンだっておやさいよりおにくをたべたいはずですから、ニワトリはじゅーよーなもくひょうのはずです。そこで、待ち伏せのときに手薄にみせかけてゴブリンをさそうばしょはニワトリ小屋がいいとおもいまーす♪」
 元気はつらつ☆
 ジャイアント特有のおっきな身体でうやっ! と飛び跳ねながらシャルク・ネネルザード(ea5384)
 自称ワルガキな彼女は一瞬でもじっとしていられないらしい。
「まずは、村で罠を張ったりして待ち伏せなのです」
 アニー・ヴィエルニ(eb1972)がふわふわと飛びながらそう提案し、
「まずは罠で敵の侵入を防ぎつつ、数を減らした方がいいでしょう。敵も無闇に襲撃しなくなるでしょうし、次の行動に出る際の保険にもなります。ただ、設置には時間が掛かるので襲撃に備えてもらう方も必要です」
 と十野間も待ち伏せに同意する。
「わしゃ木工の技を活かして家畜小屋の囲いの強化などしようかのぅ。ただ、満遍なく備えをすりゃあ、ゴブリンどもも焦れて手当たり次第に壊しにかかるじゃろう。ここは、敢えて『一見して守りが薄いところ』を残すことで、そこに誘い込むんが良いじゃろうな。家畜小屋を目立つ柵で固めつつ、畑には目立たん罠を仕掛けてもらう・・・・という案を提案するぞい」
 罠の具体的な案をギーンが出し、見張りと罠を作る2グループに分かれてゴブリンを待ち伏せする事になった。

 
●罠
「1〜2日罠と迎撃で痛い思いをさせれば、無闇に村を襲わなくなると思います。ねぐらを襲うのはその後でも遅くはないでしょう。」
 ゴブリンの襲撃を知らせる鳴子の罠を設置していた十野間がいう。
 村の広さ、正確な数のわからないゴブリン、そしてたった6名という冒険者の数。
 この状態で、全てのゴブリンを殲滅できるかというと疑問が残る。
 何箇所か同時に襲撃される可能性もあるし、本拠地狙いの留守に襲われる可能性もある。
 だからゴブリンが無闇に村を襲わなくなるように、罠を数多く仕掛ける必要があるのだ。
「こんな感じか?」
 本多 風漣(eb1164)が見よう見真似で十野間の用意した猟師セットを借りて、ネットや輪にした縄のなかに踏みこむと吊上げられる罠を作っている。 
「ええ、良い感じです。本多さんは器用ですね」
 両手利きの本多は、罠を作るのにも適していたらしい。
 十野間に褒められて少し照れつつ、次の罠の作成に取りかかった。

「うむ、こんなものかのぅ」
 シャルク提案のニワトリ小屋に派手な柵を作っていたギーンが額の汗を拭って呟く。
「布をもらってきたぜ。これを巻けばかなり派手じゃねーの」
 メフィスト・ダテ(eb1079)が村人から分けてもらった布をギーンの作った柵に巻き付ける。
 鮮やかな色の布で巻いて目立たせたその柵は、強度はないものの囮効果は抜群に思われた。
「おじさんたちー、ゴブリンはまだ来てないよ〜〜〜!!」
 ニワトリ小屋の屋根の上に登って、周囲を見張っていたシャルクが身を乗り出してギーンとメフィストにぶんぶんと手を振る。
 身体は大きいものの、その無邪気な仕草に慌ててギーンが注意するが。
「これこれ、そんなに身を乗り出したら危ないんぢゃよ、もっとおちつかんと‥‥うおっ?!」
「うわっ!」
「うきゃーっ!」
 時、既に遅し。
 ボゴーンッ!
 盛大な地響きと共に屋根から落下するシャルク。
 潰れるギーン。
「うやっ? あんまり痛くなかったけど、ギーンさん大丈夫です?」
 押しつぶしたギーンの上に乗っかったまま、首を傾げるシャルク。
「‥‥生きてるか?」
 とっさに横に避けてしまったメフィストがギーンを覗きこむ。
「‥‥‥‥」
 ぴくぴく、ぴくぴくっ!
 痙攣して動かないギーンを、
「あら、シャルクさん何をしているのですー? リカバー!」
 村を飛んで見まわっていたアニー・ヴィエルニ(eb1972)が、倒れているギーンにとりあえず回復魔法をかけてあげる。
「う、ぐ‥‥」
「あ、おきたー♪」
「‥‥すまんが、どいてくれんかのぅ?」
 足をばたつかせてギーンの上で喜ぶシャルクとは裏腹に、ギーンはくったりとその場に突っ伏した。


●殲滅へ向けて
「昼間の出現数は大分減りましたね‥‥」
 ここ数日のゴブリンの発見数を思い、思案する十野間。
 十野間やギーンが中心となって作り上げた罠に、免疫のないゴブリン達は昼間でも面白いように引っかかった。
 鳴子がなる場所に戦闘中心のメフィストと本多がかけつけると、必ずゴブリンがいて、しかも統率もなにも取れていないものだからあっさりとメフィストと本多に退治されていたのだ。
 そしてゴブリン達は十野間の予想通り罠を警戒するようになり、昼間に見かけることはほぼなくなった。
 しかし、見かける量が減り、村への被害が減ったという事は、その分家畜や作物を奪う事が出来ずゴブリン達の食料が切迫しているという事。
「待ち伏せであんまり倒しすぎると、他所に逃げたりされちまいそうじゃな。まぁ、数かりゃすりゃ子供含めたキャンプじゃろうから、そうそう手早い撤収も出来まい。そろそろ巣を探しに攻勢に出たいのぅ」
 ギーンが愛刀の日本刀を磨きながら呟く。
「村人の話を総合し、私達が今日まで見てきた感じでは、今残っている敵の数はおよそ30匹でしょう。戦力とはなり得ない子供のゴブリンもいれるなら40匹ほどでしょうか。‥‥倒せない数ではなさそうですね」
 当初、殲滅は難しく感じられていた十野間だが、ここ数日でゴブリンどもを順調に倒していく事が出来ていたおかげで大分殲滅できる可能性が出てきていた。
「今夜。勝負をかけましょう。ゴブリン達も大分焦れている筈です。そろそろ集団で村に襲いかかってきてもおかしくはありません。準備を万端にし、村人にも協力して頂いて村をゴブリンの魔の手から助け出しましょう」
「うやーっ♪ せんめつせんめつぅ☆」
 十野間の提案にシャルクはご機嫌に賛成し、メフィストと本多は畑で待ち伏せし、ギーンと十野間はニワトリ小屋に、シャルクとアニーはニワトリ小屋の屋根の上で敵の視認を。
 ゴブリンを上手く逃がしてねぐらを突き止めるべく、夜を待った。


 ●ゴブ×2って、大過ぎだから! 
「ゴブリン来ましたです!! えっと、一匹みたら30匹ですよね。えっと、いち、に、さん、よん、‥‥えっと。ぜんぶでえっと、‥‥何匹?」
 ニワトリ小屋の上からゴブリンが来るのを見張っていたシャルクが、視認数×30を計算しようとして挫折して頭から煙をふく。
「うやっ、大変なのです。本多さんたちにもお知らせしなくてはです!」
 森から村に向かって突進してくるゴブリンの群れを同じく発見し、シャルクの口調が思わず移ったアニーはすぐさま畑で待ち伏せしている本多とメフィストの所へ飛び去る。
「トツゲキーッ! みなごろしじゃーっ!」
 とうっ!
 屋根の上から飛び降りて、『ブレーメンアックス+1プラントスレイヤー』をかまえてゴブリンの群れに突進していくシャルク。
「うおっ、待つんじゃ、一人では危険ぢゃ!」
「シャルクさんまってください!」
 作戦も何もかも頭からすっ飛ばして走っていくシャルクを全力で追いかけるギーンと十野間。
「うやっ?! ゴブリンいっぱいですー!!」
 ゴブリンの群れのど真ん中で次々にゴブリンを切りつけつつ、当然の如く囲まれるシャルク。
「紺天たる夜空を照らす月よ、そのお力を貸し与え下さい‥‥ムーンアロー!」
 シャルクを援護すべく、十野間がムーンアローでゴブリンを追い払う。
 そしてオーラを身に纏い全てのダメージを軽減させているギーンが盾でゴブリン達の攻撃を受けつつシャルクの退路を作るべく肉の壁となってシャルクを守る。
 十野間とギーンのおかげでなんとかゴブリン達の包囲から抜け出したシャルクは、
「むむっ、たぜいにぶぜい、てんしんじゃ」
 とまだ退路に残っていたゴブリンを一匹ぴょいっと飛び越して、十野間とギーンの腕を引っ張って全力でその場を逃げ出した。

 シャルクと十野間、ギーンが大量のゴブリンから全力で逃げているその頃。
 畑で待ち伏せしていた本多とメフィストはゴブリンどもの返り血を浴びつつ、自らも血を流しながら次々とゴブリンを屠っていた。
「おまえ、やるじゃん」
 顔は正面のゴブリンどもを見据えたまま、額の血を拭って、横で同じく剣を構える本多にニヤリと笑うメフィスト。
 本多はメフィストと連携しながらライトニングソードを使用し、フェイントアタックでゴブリン達を翻弄しながらダブルアタックで確実にゴブリンを仕留めていっていた。
 そしてメフィストは、
「ふふふ、魔弾の射手と呼ばれた俺のオーラショットは例え雑魚でも当てる!」
 オーラを手のひらに集中し、次々とオーラショットをゴブリンに命中させていく。
(「メフィストさんには敵わない‥‥だが、俺もゴブリンどもに手加減するつもりはない」)
 本多は切りつけられていた右腕から左腕にライトニングソードを持ちなおして振りかざし、飛びかかり、殴りつけてくるゴブリンどもをよりいっそう倒していく。
「うややっ、お二人のところにもゴブリンがっ! 大変なのです!」
 ゴブリンの襲撃を伝えに来たアニーが、ゴブリンと戦う本多とメフィストを見て青ざめる。
「聖なる母の御名において 子らに癒しの奇跡を!」
 すぐさま本多とメフィストにリカバーをかけるアニー。
「うやー! あっちにもゴブリンいっぱいー?! でもギャーッ! これもあげるーっ」
「うおっ、なんということぢゃ!」
「くっ、ファイヤーウォール!」
 ゴブリン達を背後に引き連れて、村の外周をぐるりと回るように逃げてきたシャルクはメフィストと本多、アニーに自分達を追ってきたゴブリン達を指差し、ギーンが目の前の光景に天を仰ぎ、十野間がこれ以上ゴブリンが村へ入らないようにスクロールのファイヤーウォールを唱えてゴブリンと畑、そして自分達との間に炎の壁を作り出す。
 炎を恐れたゴブリン達は、森の中へと逃げていく。
「敵が逃げたぞ、追撃だ」
 メフィストが愛馬ブリッツェン号に乗り、「うやー! わたしものるですー!」とシャルクが乗ってきたので後ろに乗せて追いかけようとする。
 でもはっきりきっぱり重量オーバーだから馬はよれよれとし、とても走るというより歩くと言った方が正しく。
 仕方ないのでシャルクは泣く泣く馬から下り、メフィスト、本多、ギーンは自分の愛馬で、十野間は驢馬で、そしてシャルクは肩にアニーを乗せて森の中へゴブリン達のあとを追い出した。
 シャルクは「私も馬に乗りたかったよ!」と自力で走りながら駄々をこねたが、今までの暴走っぷりをリアルタイムで見ていたアニーは、
(「少しぐらい遅く着いたほうが、きっと被害が少ないのですよ。うん」)
 と心の中で呟いた。


●いよいよねぐらを! ‥‥でも?
「ここが、敵の巣穴か」
 愛馬から降り立ち、ロングソードにオーラパワーをかけて決戦に臨むメフィスト。
 しかし。
「あれ〜? みんなどうしたんですかー?」
 遅れてきたシャルクがねぐらとおぼしき森の中にあった洞穴の前に佇む仲間達をみて首を傾げる。
「一足、遅かったようだ」
 本多が悔しそうに洞穴の土壁を叩く。
 ねぐらとおぼしき洞穴には、ゴブリンがいた形跡はあるものの、その姿は既にどこにもなくもぬけの殻だったのだ。
 どうやら村にしかけられた連日の罠を恐れ、食料に困ったゴブリン達は女子供を先にどこかへ逃がしていたらしい。
「ふむ。いたしかたあるまいのぅ。いま逃げてったゴブリンどももバラバラにこの森から逃げ去ったようじゃし、あとは森を一通り見て残党を片付けるしかなさそうじゃのぅ。わしゃ追跡の知識はないが、家畜を引きずった跡に目を凝らして見るぞい」
 ギーンも馬から下りて、洞穴を覗きながら呟く。
 地面に残された家畜を引きずったであろう跡が洞穴には残っていた。
 この跡を辿ればゴブリンの残党どもが逃げた先をある程度推測できそうだった。
「不本意ですが、そうするしかないようですね」
 十野間も不承不承頷き、冒険者達は森をくまなく探してまだ残っていたゴブリンの残党を退治したのだった。


●エピローグ〜殲滅できなくてごめんね。でも、もうゴブリンは来ないから☆
「そうですか‥‥ゴブリン達は逃げていったんですね‥‥」
 冒険者達から詳細を聞いた依頼人・ランドルは不安げに俯く。
「じゃが、あやつらが住処にしとった洞穴はきっちり塞いでおいたからのぅ、あの場所以外にここらへんじゃ隠れ住む場所はないでな、もうゴブリンが無駄に増えてすみつく事もあるまいて」
 殲滅は出来なかったものの、ゴブリン達に大ダメージを与え、その住処もきちんと片付けたギーンがランドルの不安を取り除くべく宣言する。
「うやうやっ! もしもまたゴブリンが出たらすぐに私達を呼んでくれますか? すぐに倒しにくるから!」
 あれほどやんちゃをかましたのにまだ遊び足りないワルガキ・シャルクがにかっと笑ってランドルの背中をバーンとはたく。
 はたかれたランドルはよろよろとしつつ、
「ええ、そうですね。きっと、もう現れないですよね‥‥? でも、もし現れたら。その時はよろしくお願いします」
 ギーンの言葉に少し希望を取り戻し、ランドルは冒険者に深々と頭を下げた。

「でもどーしてゴブリンはあそこに棲み始めてたんでしょう?」 
 パリへの帰り道。
 不思議そうに首を傾げるシャルク。
 シャルクの知識が確かなら、ゴブリンは洞穴にも住み着くけれど、もう少し住みやすい場所にねぐらを構えるものなのだ。
 うーんと悩むシャルクに、
「きっと住みたい気分だったのですよ。被害に遭ったほうはたまったものではないですけれどね」
 とアニーが笑い、
 シャルクももともと悩む性格ではなかったから、「そだねー♪」とアニーに頷いて。
 その話しはそれまでになった。
 そして。
 パリに戻った冒険者達の耳に、最近デビルがまたも発生し、もともとその地に住むゴブリンや野生の動物達が住処を追われてパリ近郊のあちらこちらで問題を起こしているという噂が入ったのは、その数日後の事であった。