ふっくらパン屋さん〜収穫祭準備☆〜

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月28日〜11月04日

リプレイ公開日:2005年11月09日

●オープニング

「ねえ、お父さん。もう収穫祭に売り出すパンって作っちゃったかな?」
 こねこね。
 こねこね。
 お父さんと一緒にパン生地をこねながら、ポエットがたずねる。
「いいや、まだだよ。特にこれといって特別なパンは作ってないねえ」
「じゃあ、つくろうよ! 冒険者のみんなにお願いして、収穫祭用の特別パン!」
 ぱっと顔を輝かせて、店長でもあるお父さんに提案するポエット。
 それというのも、先日、お父さんのお手伝いで、一緒に酒場にパンを届けにいったときにとある冒険者が言ってくれていたのだ。
『収穫祭準備かな? 都合が合えば、お手伝いしてみたいです』と。
 冒険者のみんなに頼めば、きっと素敵なパンが出来上がるし、収穫祭の日も盛り上がるに違いない。
「そんなことがあったのかい? なら、また依頼を出してみようかね」
 それならと頷いて、酒場に届けるパンを籠につめる店長。
 この酒場へのパンも冒険者たちの提案で出来上がったもの。
 カリカリパンも香草パンも、そして酒場での売込みにはうまくいかなかったものの、鶏肉はさみパンはこの店のなかでもかなりの人気パンなのだ。
 
 そうして。
 ポエットと共に酒場にパンを届けた店長は、そのまま冒険者ギルドに向かったのだった。

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea2848 紅 茜(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6337 ユリア・ミフィーラル(30歳・♀・バード・人間・ノルマン王国)
 ea9927 リリー・ストーム(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

ヴィグ・カノス(ea0294

●リプレイ本文

●パンを作ろう☆
「おっ、俺が考案したパンがポエットちゃんの所で人気パンとなってるのか。嬉しいね。作った甲斐があったよ」
 依頼人の経営するパン屋で、次々と売れてゆくパンを見ながらカルナック・イクス(ea0144)。
「へー、あのパンおまえが作ったのか? 美味そうだな、おい」
 じゅるり。
 オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)がよだれを拭く真似をする。
「やっぱり、ボリュームのあるパンが人気あるのかな?」
「甘いパンは子供に人気ありそうだよね♪」
 紅 茜(ea2848)と陽気なユリア・ミフィーラル(ea6337)も厨房から顔を覗かせて店内の様子を伺う。
 今日は午後から店を閉めて、収穫祭用のパンを作るのだ。
「今回は殴らないから、壊さないからね」
 まるで自分に言い聞かせるように拳を固めて宣言するのはノリア・カサンドラ(ea1558)。
 何か壊したことがあるのだろうか?
 不思議そうにノリアを見上げる依頼人の一人娘・ポエットに、「ノルマンの家庭の味をこの身にしっかりと刻んでいるノリアさんにばーん、と任せてー」と元気いっぱいに笑う。
「そうそう、お姉ちゃんたちにドーンとお任せっ」 
 リリー・ストーム(ea9927)も易々と請け負う。
 お店から客が引いたのを見計らって、店長が閉店の札をドアにかける。
 さあ、パン作り開始☆


●それぞれのパン
 お店を閉めると、待ってましたとばかりにみんなそれぞれパンを作り出す。
 まずはカルナックス。
「店長さん。焼く前のパン生地ってありますか?」
 程よく発酵してやわらかいパン生地を手頃な大きさに分けてもらい、生地に詰め込む肉餡を作りだす。
 豚と鳥の肉を包丁の背を利用して、丁寧にミンチにしてゆくカルナックス。
 それを熱したフライパンにマッシュルームと玉葱を加え炒め、塩と胡椒で味付けし、程よく火を通す。
 肉が硬くならないように火を通し過ぎないように細心の注意を払う。
「今回も冷ますの?」
 前回同様、おいしい匂いにつられてやってくるノリア。 
「いいや。今回はそのままで」
 先ほど店長から分けてもらったパンの生地を、楕円形に伸ばして暖かい具を入れて、しっかりと生地を閉じる。
「これからまた焼くからね。冷ます必要がないんだよ」
 竈を使わずに、フライパンに多めに油を引いてそれを揚げはじめる。

 
「あのね‥‥ポエットちゃん‥‥お姉さん‥‥実は‥‥」
 もじもじ。
 もじもじ。
 普段大胆なリリーが胸の前で人差し指を突き合わせながら恥ずかしそうに話しかける。
「リリーおねーちゃん、どうかしたの?」
「パンを焼くどころか、お料理をしたことすら‥‥テヘッ」 
 笑ってごまかし、ついでに抱きゅーっとポエットを抱きしめちゃうリリー。
 そう、今回のリリーの目的はパン作りじゃなくてポエットのお持ち帰り!
「あうあうあうあうっ?!」
 目を白黒させるポエットを、「ん〜やっぱり可愛い〜」と撫でくるリリー。
「あー、ごほんっ! うちの娘に何か用ですかな?」
 店長が疑いの眼でリリーを見つめている。
「っと、えっと、その。頑張ってアイディアを出すから許してくださいー」
 慌ててパン作りのアイディアをひねり出すリリーだった。


「極食会の名に恥じぬようがんばんないとね!」
 きゅっと頭に鉢巻締めて、気合を入れている紅。
「収穫祭のパンってことだからね、私は果物を使ったパンを作るよ。ドライフルーツってあるかなあ?」
「ドライフルーツならいろいろありますよ。裏庭で実ったそのままのリンゴもありますから、良かったら使ってください」
「うわー、ポエットちゃんありがとう。早速つかわせてもらうね」
 葡萄や杏のドライフルーツも一緒に賽の目に細かく切ってパン生地に練りこんでいく紅。
 生地を子供でも食べやすい大きさに形作っていくのはもちろんのこと、紅にはもう一工夫あった。
「このまま竈に入れて焼けば良いのね?」
 自分では作れない分、みんなの手伝いに回るリリー。
「うん。焼くんだけどね、形ができたらその上に林檎を8つ切りにして薄くスライスしたものを3、4枚のっけるんだ。林檎は軽く煮てから使うとまた食感が違うんだけど手間がかかるし、そこは省いても良いかも」
「でしたらリンゴを切っておきますわ。それで、出来たらお願いがあるんですの。私の考えたパンも一緒に作ってもらえないかしら」
「いいよ。どんなパンかな?」
「華国の人が、蒸したふわふわのパンに肉を詰めたものをご馳走してくれた事がありますわ。それを作ってみたいんですの」
「楽しそうだね♪」


「収穫祭ということは、やはり地の精霊に感謝をささげる必要があるよなあ」
 地と風を操るウィザードであるオイフェミアにとって、精霊はとても身近で、いつも助けてもらっている存在だった。
 その存在に深く感謝を捧げるべく、いつになく真剣にパン作りに励む。
 料理はしたことがないものの、美術関係ならそれなりに自信のあるオイフェミアの作るパンは、特に形にこだわっている。
 ふわふわと柔らかいパン生地を器用に丸めたり伸ばしたりしながら、まるで人間の子供のように見える地の精霊・アースソウルやネコやロバ。
 果てはプレートメイルなどの武器に至るまで、デフォルメを効かせながらオイフェミアは思いつくままにパンをかたどってゆく。


「これ、すっごくおいしいわねー。さすが紅さんだよ」
 紅の作ったドライフルーツパンをぱくっとつまむユリア。
「こらこら、まだ食べちゃだめだってば」
「試食なのよ。ほら、あたしも同じようなドライフルーツパン作ってるから」
 指差すテーブルには、ユリアが作ったドライフルーツパンと、スティック状のパンが置かれている。
「うわー、ユリアのパンもおいしそうだね!」
 すかさずぱくっと試食する紅。
 依頼人の手に渡るより先に、全部二人のおなかに消えていきそう?


「ふりゃー!」
 気合一番、根性一発。
 渾身の力をこめてオリジナルのパン生地を混ぜ合わすノリア。
 ざかざかと混ぜ合わされてゆくパン生地は、ノリアの力の凄さもあいまって、小麦粉がダマにもならずに一瞬にして滑らかな仕上がり。
 バターと蜂蜜、それに卵と小麦粉を加え、四角い型に詰められた生地からはほんのりと甘い香りが漂っている。
 そのパンの上に飾るのは、くし型切りにした林檎。
 並べた林檎の上のはさらに蜂蜜がかけられ、味はもちろんのこと、焼けば黄金色に艶やかに輝く。
「できたっと。名づけてりんごの四角焼きパン!」
 ネーミングセンスはちょっとあれだけれども、出来上がったパンは完璧だった。


●エピローグ〜いっぱい食べちゃうぞ☆
「ねえ、店長。普通にいつも焼いているパンも売り出して良いんじゃないかな? そのほうがこういった奇抜なパンも生きていくんじゃないかと思うし、何より、おいしいしね!」
 もふもふもふもふ。
 素朴だけれど味のある店長自慢のパンを食べながらノリア。 
 みんなそれぞれ作ったパンはどれもこれも個性的で魅力があり、おいしい物ばかり。
 けれどそういった中に、いつも見慣れた普通のパンが混じっていると、それはそれで売れるかもしれない。
「このパンは随分と変わっていますね」
 カルナックスが、白く蒸されたパンを食べながら首を傾げる。
 パンなのだろうか?
 白くて、少し弾力のあるそのパンは、天辺がちょっぴりひねってあり、食べると中から肉汁たっぷりの具がこぼれそうになる。
「あ、それは私の提案で作ってもらったの。華国のパンなのよ」
「パンっていうより、点心かな?」
 もふもふもふ。
 やっぱりパンを食べながらリリーの補足をする紅。
「うおっ、これいったいなんだ?!」
 オイフェミアが白いパンを食べて絶句する。
「それも私が作ったの。酒場から貰ってきたシチューとか、ゼラチンとか、あと収穫祭にちなんでドライフルーツもいっぱい入ってるのよ。命名『闇蒸しパン』アンリパンでもいいかな〜?」
 楽しげにリリーは微笑んでいるが、それはパンなの?
 カルナックスが自分の食べている白いパンを冷や汗交じりに見つめている。 
「これ、ぬいぐるみみたいだね。かっわいー!」
 ふっくりぷっくり。
 ほっぺたぷにぷになアースソウルを模ったパンを手にとってご機嫌なユリア。
 可愛くて、食べるのがもったいないぐらいだ。


 そうして。
 みんなで作ったパンは収穫祭でも大人気☆
 ほんとは収穫祭準備のお手伝いだったのに、忙しすぎて冒険者達はずっとお店の手伝いをされられたとか。
 おつかれさまでしたっ☆