おあついのがお好き?

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月18日〜12月23日

リプレイ公開日:2005年12月23日

●オープニング

 ちゅるるん♪
 ちゅるるるるんっ♪
「はー、やっぱり麺は最高よネー」
 以前村を訪れた冒険者に作ってもらった麺をことのほか気に入っているアクアメリルは、今日も今日とておいしく頂く。
 ちゅるるんちゅるるん、ちゅるるんるん♪
 ちゅるるんちゅるるん・・・・ぐちゃ。
「もうっ、まただわーっ、なんだって最後のほうはデレデレになっちゃうのよ?」 
 苛立たしげに麺の入ったお椀を箸で叩く。
 お椀はすっかり冷めて、おいしかった麺もなんだかぐったりとしてしまっている。
 冒険者が作ってくれた麺は、夏場のくそ暑さに絶えうるように涼しく冷やされていたものだったが、真冬のそれは自殺行為。
 だからアクアメリルは麺の汁をあっためて食べるようにしていたのだが、いかんせん、食べ終わるころには麺がのびてしまうのだ。
 伸びないようにすばやく食べればいいのかもしれないが、アクアメリルは麺を一本一本食べるのが好みで、そうすると最後は絶対にのびて食べれなくなってしまうのだ。
「んー。ここはやっぱり冒険者にまた作ってもらうべき?」
 アクアメリルはお箸を器用に使ってパクンとゆで卵をほお張った。 
 
 

●今回の参加者

 ea8528 ラガーナ・クロツ(28歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb0005 ゲラック・テインゲア(40歳・♂・神聖騎士・ドワーフ・ノルマン王国)
 eb2235 小 丹(40歳・♂・ファイター・パラ・華仙教大国)
 eb3860 ナサニエル・エヴァンス(37歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

セリア・ジャクレイヌ(eb0898

●リプレイ本文

●アクアメリル
「あーらいらっしゃい。待ってたのよゥ♪」
 依頼人・アクアメリルが手にお椀を抱えて冒険者を迎える。
「ほっほっほっ。わしが華国からきた、小丹厨師じゃよ・・・・まあ、厨師というのは嘘じゃがのう」
 小 丹(eb2235)が笑うと、怪しい華国料理人風ドジョウ髭形の付け髭がふよふよと揺れる。
「我輩はとても豪快で偉大な水魔術士に会えて光栄ですじゃ。ロイヤル・ヌーヴォーを持参したでな、麺と一緒に楽しもうではないか」
 豊穣なる髭・ゲラック・テインゲア(eb0005)は持ち込んだ樽を頭上にかざす。
「私は調理技能がないのだが料理の下ごしらえなどなら手伝えるだろう」
 それ以外にも食材の調達もできるというナサニエル・エヴァンス(eb3860)と、
「アクアメリル嬢にのびてない麺を食べさせてあげれるよう頑張るぜ!」
 食べるの大好き☆ラガーナ・クロツ(ea8528)もやる気満々、食べる気がんがん!
「じゃあさくっとやっちゃってちょーだイ♪」
 おいしい麺を食べれる期待に胸いっぱいのアクアメリルの合図と共に、のびない麺への挑戦が始まった。


●わんこ蕎麦?
「ジャパンにあるという蕎麦の作法で食べさせてあげるというのはどうだろう。最初の分の麺をお椀に投入して、アクアメリル嬢が食べ終わるとさらに投入。これを繰り返すんだ」
「ふうん? 良くわからないけれど、ジャパンの風習は素敵なものが多いのよね。足だけを氷水につけて涼をとるとか。以前冒険者に教えてもらったんだけど懐かしいわね」
 ラガーナがよそってくれた麺をはふはふと息をかけて冷ましつつ、ちゅるるんといただくアクアメリル。
「この作業は早さが命、と聞く」
 アクアメリルの食べる速度に合わせて、空になったお椀に次々と麺を投げ込んでゆく。
 ちゅるちゅるちゅるん。
 ぽちゃり。
 ちゅるるるるん。
 ぽちゃぽちゃりっ!
「ちょ、ちょっとまっ・・・・!」
「うぉらあああああああ!!! のびねぇうちに食えーーー!!」
「そんなに一気に食べれるわけないでしょーーーーーーーーーーーーーっ!」
 カキーン!
 アクアメリルの怒りの叫びと共に、ラガーナは氷の彫像となった。
 合掌。 
 

●エール漬け麺?
「わ、我輩は、料理についてはまったくの門外漢でな・・・・」
 だくだくだく。
 額に滝汗を流してゲラックはアクアメリルから距離をとろうとする。
 ゲラックが見た、ギルドに保管されていた報告書によれば、とある冒険者が依頼中にアクアメリルの怒りに触れてアイスコフィンで一瞬にして氷付けにされたとあったが、いきなり目の前で仲間が氷付けにされるのははっきりきっぱり予想外。
「冷えたエールとワインの準備でもしてくるぞぃっ」 
 熱々の美味しい麺のご相伴に預かろうと思って依頼を受けたのだが、命は大事。
 そそくさと逃げようとするゲラックを、しかしアクアメリルは見逃さなかった。
「ふふん? エールもいいけどぉ、あたしの麺はぁ?」
 にこにこにこ。
 笑顔でがしっとゲラックの肩を掴んで離さない。
「め、麺かの?」
「そう♪ ま・さ・か、用意してないなんていわないわよねぇ?」
 肩に置かれた手が、ひんやりと冷気を帯び始めているのは決して気のせいではないだろう。
「も、も、も、もちろんですじゃ。我輩のオススメは温めたエールに麺をつけるやり方なのじゃ」
「エール?」
「そうですじゃ。今すぐ暖めますゆえ、しばしお待ち頂けぬじゃろうか?」
「あんまり待たされるのは嫌いだから、早くしてねン?」
「了解ですじゃっ!」
 ゲラックは即答して全力でエールを鍋に移し、
「キミは炎が扱えたじゃろう。一発燃やしてくれんか?」
「私か? いや、私は炎は扱えるが、ファイヤートラップ専門なんだ」
「それでもいいんじゃ! ファイヤートラップだろうとファイヤーボムじゃろうと火があれば!」
 ぜえぜえぜえ。
 肩で息をして言い切るゲラック。
 その背に覆いかぶせるように「んー。まだあ? あたし、イライラー?」お箸を弄び、待ちくたびれたアクアメリルの声。
「命が惜しいんじゃっ、家の前でトラップを発動させれば除雪にもなって完璧じゃ。とっとと火を出すんじゃー!!」
「・・・・責任は取らんぞ」
 必死なゲラックに押されるように、ナサニエルはため息混じりにファイヤートラップを設置する。
 しかし、トラップは設置しただけでは炎は出ないんだけど?
「ふふふ、この豊穣なる髭・ゲラック! 伊達や酔狂で豊穣ではないんじゃー!」
 叫んで、エールの入った鍋を持ってトラップに突っ込んだ!
 ボシュッ!
 いやんな音を立てて発動するファイヤートラップ。
 炎に巻かれるゲラックは、
「うおおー、よい炎じゃー! これでエールもあったまる・・・・ぞ・・・・ぃ」
 ぷすぷすぷす。
 自慢の髭がこんがりと燃える。
「おおう、ゲラック殿、おぬし男じゃのう」
「見事だな」
 ピュイっと口笛を吹くナサニエル。
 ぱったりと倒れながらもエールを倒さないゲラックにいろんな意味で感心する一同だった。


●さてさて、命懸けのお味のほうは?
「酒といえば俺! ラガーナ・クロツへの挑戦と受け取る!」
 ビシィ!
 ファイヤートラップの熱で氷付けから開放されたラガーナ、復活!
 暖められたエールにちょんちょんと麺をつけて頬張ってみる。
「程よく暖められたエールがまったりと濃厚な味をかもしだし、麺とエールのコラボレーションがハラホレヒレ〜?」
「寒いときはあっついスープの麺をすするのが一番じゃのう。じゃが、これはまたなんともかんとも・・・・」
「・・・・・・」
 お酒が回ってろれつが回らなくなったラガーナを支えつつ、小丹は微妙な表情で、ナサニエルに至ってはノーコメント。
「・・・・はて、なぜそのような微妙な表情をするのじゃ? ・・・・やはりワインの方がよいのかのぅ・・・・?」
 炎にまかれたせいか、ゲラックの味覚は壊れている。
「んー、なんていうかー、最悪?」
 止めとばかりにさくっとアクアメリル。
 いや、でもゲラックの男っぷりは認められたから!
  

●普通の麺もきっと美味しい?
「ほっほっほ、ようし、わしは故郷の麺を作ってみるかのう」
 小丹は腕まくりをして、ザクザクと切った野菜をお鍋にぶち込んで、
「ああ、懐かしきは故郷の味・・・・野菜のスープにちぢれた卵入り麺でどうじゃ〜」
 玉子を小麦粉に混ぜ込んだ麺をさくっと作りあげる。
「ほれ、アクアメリル嬢ちゃん、冷めんうちにお食べ」
 麺を一本一本食べるのが趣味のアクアメリルの為に、お椀に少しだけ盛ってあげる。
「んー、いい香りねぇ♪ 食欲そそるわぁ」
「そうじゃろうそうじゃろう。ああ、懐かしきは故郷の味じゃて」
 ほっほっほっと笑う小丹は、でも何気に作ったものはジャパン風だったりする。
「美味しいわねぇ。あたし、この麺はかなり好きよん。でもー、やっぱりのびちゃうんだけど?」
 アクアメリルがお椀に残った麺を指差す。
 麺が細い分、うどんなどの麺よりも伸びやすく、一本一本食べたりしちゃうと切れ易かったのだ。
 残念。


●茹でないで焼いてしまえ!〜激辛焼き麺誕生☆
「そういえば、作る麺料理には必ずスープが付いていなければいけないのか? スープ無しでもいいのなら、体が温まる激辛焼き麺料理を作ってみるのもいいと思うんだが」
 ふと気が付いて、ナサニエルは尋ねる。
 スープがなければのびることはないのだから、いっそスープを取ってしまえ。
 そんな大胆な発想を元に、一番料理の得意な小丹が再び料理を作り出す。
 隣で香辛料を包丁で細切りにしていたナサニエルは、
「辛い物は食べるととても体が温まるからな。」
 躊躇うことなくどさっと小丹の炒める麺にそれを振り掛ける。
 数分後。
 出来上がった麺はかなり赤い。
「おおぅ、見るからに辛そうじゃのう」
「初めて食べるかもしれない」
 期待半分、恐れ半分。
 興味津々で各々の口に麺を運ぶ。
「うひょー、これはまた辛いわい!」
「俺の舌がヒリヒリするっ」
 水をがぶ飲みしつつ、でもみんな、食べるのをやめられない。
 ついつい、ついつい。
 辛いのが分かっているのに口に運んでしまうのだ。
 香辛料の辛さで麺が冷めはじめても、身体はぽかぽかと暖かい。
「これ、最高じゃなーい! かんっぺき♪」
 熱いのと辛いので顔を真っ赤にしながらアクアメリルはべた褒め。
「どうやらうまくいったようだな」
 ほっと胸をなでおろし、ナサニエルも美味しく麺をいただくのだった。