●リプレイ本文
●お化けのいる図書館
幽霊が出たという図書館の中。
「すごいすごーい! 本がいっぱいだね〜。お店開けるくらいいっぱいだよ〜♪」
シャンピニオン・エウレカ(ea7984)がわーいわーいと飛び回り、いっぱいの本に感動しているその横で、
「本当に本当に怖かったんですのよ・・・・」
どんより。
これ以上はないというぐらい青ざめて、震えている依頼人・マルグリット。
いきなり、図書館中の本が宙に浮かんで襲い掛かってきたというのだから、穏やかではない。
「図書館に現れた謎の霞の様な物体を倒す・・・・のですか。
無論、困っている女性は放ってはおけませんし、何よりも混乱の元は取り除かねばならないですね。
ここは僕達で力になりたい所存です」
アフラム・ワーティー(ea9711)は怯えるマルグリットにミルフィーナ・ショコラータが作った甘い果物の蜂蜜漬けを手渡しつつ、
「一寸深呼吸をして落ち着いて・・・・自信を持って。同行して頂けるならそんな風に怖がっていては先に進めないですよ?」
ちょっぴり気弱な彼女を励ましてみる。
でもちゃっかり食べているのはシャンピニオンだったり。
「お菓子、大好きなんだもん♪」
少しも気後れしない彼女を見ていると、見ているこちらまで元気がわいてくる。
「マルグリットさん、地下の見取り図はありますか?」
「ラルフ兄様、怖いけど一緒に頑張ろうね」
ラルフ・クイーンズベリー(ea3140)とフェルトナ・リーン(ea3142)はマルグリットから地下の見取り図を受け取る。
本が攻撃をしだしたのは、マルグリットが使われていなかった地下室を開けてしまったからだという。
「白い靄に、宙を舞う本や箱か・・・・まだ見ぬ魔物か、それとも・・・・? 興味は尽きぬが、何にせよ、しっかりと退治はせねばな」
知識のシフール・リウ・ガイア(ea5067)は魔物への恐怖よりも好奇心が勝っているようだ。
ジョゼ・ギャランティがシフールのリウには重くて持ち上げられない本を手に取り、今回の撃破対象を共に調べる。
「何者かは解らぬが、本を荒らすとは・・・・まったく、とんだふとどき者だな。退治してくれる」
「とんでもない悪戯ですねぇ。お仕置きしなくちゃ!」
フィソス・テギア(ea7431)とマリー・ミション(ea9142)も殺る気だ。
「飛び回り、尚且つ様々な物を飛ばしてくる相手ですか・・・・。図書館と言う場所柄、物を飛ばさせない様にするのも難しいでしょうから、早めに終わらせたいですね」
そういいながら、クライドル・アシュレーン(ea8209)はヴィグ・カノスと図書館を見回りに行く。
「本は後世に残す大切な宝ですもの。さあ、手早く『お掃除』しちゃいましょう☆」
そうしてロミルフォウ・ルクアレイス(ea5227)がにっこりと微笑む。
さあ、お化け退治の始まりだっ☆
●お化けはどこに隠れてる?
昼間だからだろうか?
問題のお化けはまだ現れず、図書館はとても静かだ。
「霧のような怪物、かぁ・・・・。お話だと騒霊っていうのがよくある話だけど・・・・今回もそうなのかな?」
フェルトナが自分の持つ伝承知識やモンスター知識とマルグリットの話を照らし合わせ、パラパラと本をめくる。
「弱点など早めに分かればいいんだけど・・・・」
そうすれば、大切なフェルを守りやすくなるから。
ラルフにとって何者にも変えがたい少女と共に一生懸命本を調べる。
「これか?」
リウがめくったページを指差す。
「大抵、物や家屋に取り憑いていて、霧のように見えることもある・・・・マルグリットの証言とぴったりだな」
「うわー、キミすごいねぇ! 僕、眠っちゃってたんだよっ」
シャンピニオンはパタパタと突っ伏してしまっていた本の上から飛び起きて、よだれをふきつつリウの側に飛んでくる。
彼女も一生懸命調べようとしたのだが、まだまだ子供。
どうしても沢山の字を読むと眠くなってしまうのだ。
「やっぱり、ポルターガイストで間違いないんだね。銀の武器と魔法が苦手なら、なんとかなるかな?」
ポルターガイストの別名は騒がし幽霊。
フェルトナとマリーの予想は見事大正解だった。
「少し見回ってきましたが、これといってまだ異常はないようです」
図書館を一通り見回ってきたクライドルも戻り、みんなで地下室を探索することになった。
●地下室の探索! でもその前に。
「ポルターガイストに攻撃手段を与えない為にも、書物や器物の破損を防ぐためにも、一部分だけでも本や棚を撤去できないでしょうか?」
戦闘になったら、まず間違いなく本は傷付く。
地下室から飛び出してきたというポルターガイストは、まだ静かでその姿を冒険者へ見せてはいないが、いつ襲ってきてもおかしくはない。
だからこそ、ロミルフォウは地下へ行く前に本をある程度動かしたいという。
「そうですわね・・・・本棚からある程度出して、書庫の側にまとめるというのは如何でしょうか?」
「ふむ。全ての本を置くのは不可能そうだが、被害はある程度抑えられるだろう」
「外に出しちゃ駄目なの? ほら、今日天気いいしさっ♪」
『おそとーおそとー』と明るいシャンピニオンに、
「そんなことをすれば、本は壊滅的なダメージを受けるぞ? 羊皮紙は日の光を浴びると丸まってしまうんだ」
読書が趣味のフィソスがやさしく諭す。
「できればここに誘い込めば本は大丈夫、というような場所はないかしら?」
マルグリットに面識のあるマリーは、彼女がどれほど本好きか知っている。
その本が傷付くのは不可抗力でもたまらないだろう。
「地下室でしょうか・・・・? あの場所なら、本は殆どありませんから。でも・・・・」
「相手はポルターガイストだから・・・・壁とかは通り抜けちゃんだよ」
悩むマルグリットに、補足するフェルトナ。
「移動できる物だけでも移動してみましょう」
アフラムは両手いっぱいに本を抱え、移動させはじめた。
●ポルターガイスト登場☆
「地下室といっても結構広いですね」
ラルフがフェルトナにランタンで地図を照らしてもらいながら、周囲を伺う。
「三部屋もあるんだね」
階段を下りたその先には、木の扉が3つある。
マルグリットが入ったのは、真ん中の部屋だという。
「僕が前に出ます。君達は下がって下さい」
アフラムが、剣を構え術者たちを背に庇いながらそっと真ん中の扉を開ける。
「何の変哲もない部屋ですね」
ランタンに照らし出されたその部屋は、ごく普通の地下室。
じめじめとしていてあまり長居はしたくないものの、これといって何か大きな秘密は隠されていないようだ。
しかし、マリーがデティクトアンデットを唱えた瞬間、
「ケケケケケケケケッ!」
ボウッ・・・・
空中に、白い靄が現れる。
「ぎゃーでたーっ!」
咄嗟に叫んでクライドルの背に隠れるシャンピニオン。
「出たわね。見てらっしゃい」
「悪しき者よ、神の裁きを受けよ! ・・・・ピュアリファイ!!」
マリーとフィソスの魔法がポルターガイストに襲い掛かる。
「ケーケーケーケケケッ!」
「・・・・っ?!」
マリーの腹に向かって、ポルターガイストが突っ込んできた。
焼けるような腹部の痛みに一瞬意識が途切れそうになる。
「マリーさんっ」
咄嗟にマルグリットが駆け寄り、マリーを癒す。
「こんな依頼なら私は歓迎するわ。だって私でもこんなに役に立てるんですもの」
ごめんなさい、ごめんなさいと涙ぐんで詫びる彼女に、マリーは気丈に微笑む。
「きゃあっ?!」
「フェルッ!」
突然真横に現れた敵に声をあげたフェルトナを、ラルフが抱きとめる。
カランとランタンが床に転がって火が消え、辺りを薄闇が包み込んだ。
ボウッ・・・・ボウッ。
後衛を務める術者のすぐ側に、2体のポルターガイストがその姿をはっきりとあらわす。
「くそっ、こっちにもか?!」
「不意打ちとは卑怯だな・・・・アグラベイションっ」
知識のシフールの魔法が、3体のポルターガイストの動きを鈍らせる。
「わたくしの一撃、その身に受けてくださいませ・・・・鎮魂剣『フューナラル』アンデッドスレイヤー」
ロミルフォウの狙い澄ました一撃が、ポルターガイストを切り裂いた。
「ケケッケケーケケケケケッ」
「ケラケケケラケケッ」
倒された仲間を見て慌てて天井をすり抜けてゆく2体のポルターガイスト。
戦場は否応なく図書館へ移された。
「みんなっ、がんばるんだよっ・・・・グッドラック!」
シャンピニオンの身体が白く光り輝き、階段を駆け上がるアフラムを祝福の魔法が包み込む。
「戦闘が長引けば書物に被害が及ぶかもしれぬ、速攻で片をつけるぞ」
フィソスがシルバーダガーを構え、図書館に踏み込む!
「ケケーケケケッ」
笑い声と共に、片付け切れなかった図書館の本が空に舞い上がる。
「姑息ですね。ですが怯むわけには行きません!」
「僕のオーラを、君に!」
襲い掛かってくる本を避けることもせずに、アフラムはクライドルの武器にオーラパワーを付与し、クライドルはポルターガイストに切りかかる。
「ケカーケケケッカケキュッ!!」
耳障りな笑い声を残して、掻き消える騒霊。
残るはあと一匹。
「如何な意思を以て留まっていたかは知らんが、悪戯が過ぎたようだな」
「お仕置きよ。喰らいなさいっ」
リウが再びアグラベイションを唱え、マリーが浄化する!
「ケーケーーーーーーーーーーーーーーッ!」
苦しげに暴れまわり、最後の呪いとばかりに全ての本が図書館中を暴れまわる。
そのうちの一つが、フェルトナの腕を直撃!
「よくもフェルをっ! ウィンドスラッシュ!」
怒りのままに、ラルフは風の魔法で飛び交う本もろともポルターガイストに止めを刺す。
バラバラになった本よりも何よりも、抱きしめたフェルトナが無事なことに安堵するラルフだった。
●本を大切に!
「本・・・・・・」
ほろほろほろ。
図書館中に散乱し、挙句の果てに切り裂かれた本の残骸を抱きしめて、涙ぐむマルグリット。
「その・・・・ごめんなさい」
「ラルフお兄様は悪くないんだよっ、私が逃げ遅れたから・・・・マルグリットさん、ごめんなさい」
兄妹のようでいて恋人のような二人は、お互いを庇いあって一生懸命マルグリットに詫びる。
「ううん・・・・いいんですのよ・・・・仕方のないことですわ・・・・でも・・・・写本、してくださいますわよね・・・・?」
仕方がないといいつつも、言葉の端はしに恨みがこもってしまうのは本好きの宿命か。
「も、もちろん手伝います」
「二人でやれば、すぐに元通りに治せるんだよ」
どんよりとしたマルグリットにかくかくと頷く二人。
時間があればゆっくりと静かな図書館でデートをしたいと思っていた二人だが、どうやら必死なデートになりそうだ。
「・・・・こっちの方が、モンスター退治より余程大変かもしれませんわね・・・・。
これだけの蔵書を管理されているなんて、司書さんって本当に凄いお仕事です」
散乱しつつもまだ無事だった本たちを順序良く本棚に並べながら、ロミルフォウはしみじみと呟く。
「下段の本は任せてください」
「人手が多ければ、その分早く済むでしょうからね」
アフラムやクライドル、それにマリーも手伝う。
「あれ? キミなにやってるの?」
「!」
図書館の隅っこのほうで、片付けつつもこっそりと読書にふけっていたフィソスを目ざとく見つけるシャンピニオン。
「・・・・ごほん、これはあくまで調査のためであってな」
「うわー、キミやっぱりすごいねっ♪」
「シャンピニオン殿、図書館ではあまり騒がぬほうがいい」
やっぱりいそいそと読書にふけりかけていたリウが苦笑する。
シャンピニオンは「はーい♪」と元気にお返事をして。
全員で片付けた綺麗で静かな図書館で、みんなで読書にふけるのだった。