☆『暁の樽』盗賊団☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月31日〜01月03日

リプレイ公開日:2006年01月06日

●オープニング

「ふはははは、ふはははははは、ふははははははー!」
 真っ赤な夕日をバックに、樽をかぶってふんぞり返るマッチョが一匹。
 その周りにはずらりと控える手下達in樽かぶり。
 ついでに空の樽も転がっているとかいないとか。
「お頭っ、お耳に入れてぇことがござんすっ!」
 時代がかった口調で、樽をかぶったまま樽かぶりのお頭にもにょもにょと耳打ちする部下その一。
「ふむふむ・・・・うんうん・・・・なになに・・・・うおおおうううっ、樽が邪魔で聞こえんわー!」
 逆切れ起こして足元の樽を蹴り飛ばす。
 仕方なしに部下がちょみっと樽を頭からずらし、もう一度お頭にごにょごにょごにょ。
「ぬあにーーーーー?! われわれの他にも暁の樽を名乗る盗賊団がいるだとぅ?!」
「そでやんす。しかも、噂によればおいら達よりも結成が早かったとか何とか」
「そんでもって、俺達よりも樽が似合うって噂でさあ!」
 部下二も相槌を打つ。
「うぬぬぬぬ。けしからん、けしからんぞっ! 真の暁の樽はこの俺さまだっ! よし、お前達、俺達の強さを見せ付けるべく、その辺の村を襲ってこーい!」
「あいあいさー!」
 元気いっぱいに樽をすぽっと全員かぶり、近隣の村に略奪に向かう部下たちだった。

●今回の参加者

 ea1919 トール・ウッド(35歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3446 ローシュ・フラーム(58歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea6647 劉 蒼龍(32歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea7400 リセット・マーベリック(22歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 eb1061 キシュト・カノン(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb1276 楼 焔(25歳・♂・武道家・ドワーフ・華仙教大国)
 eb3547 鏡 慶治(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●真の盗賊団『暁の樽』?
「・・・・盗賊行為を行う際に顔を隠すのは賢いといえる行動だが、そこで何故樽なのか。
 実に興味深い。が、まずは盗賊行為を止めねばな」
『暁の樽』と名乗る盗賊団の噂を聞き、サラサ・フローライト(ea3026)は興味深げに周囲を見回す。
 そこは、盗賊団に襲われたという村の酒場。
 所々に樽が転がっているのは元々なのかそれとも盗賊団の仕業なのか。
 村人の話では、盗賊団『暁の樽』はボスが暁を思わせる赤い樽を被り、部下たちは普通の樽を被っていたと言うのだが・・・・。
「・・・・め、面倒だな・・・・これから転移護符で京都に旅行しようという時に。仕方がない、オレにも関係のある事だし・・・・」
 そう自分を納得させつつも京都への高飛び準備を進めていた(?)トール・ウッド(ea1919)は、今回の噂を聞いて軽く眩暈。
 ドレスタット近隣の村を荒らしまわっている盗賊団『暁の樽』は、噂によれば自分達以外に暁の樽を名乗る盗賊団がいると聞き、ぶち切れて暴れているらしいのだ。
 彼ら曰く、『真の暁の樽は俺達だ!』とか何とか。
 以前、トールが受けた依頼で成り行きで盗賊団を名乗り、その盗賊団の名前が『暁の樽』だったのだが、よもやまさかこんな事態を招こうとは。
「盗賊団『暁の樽』・・・・再始動だな・・・・」
 そもそもの言いだしっぺのキシュト・カノン(eb1061)は既に自分専用のサイン入りMY樽を脇に抱えて集まった仲間達を暖かく見守っている。
 盗賊団『暁の樽』を依頼で最初に名乗ったのは、キシュトなのだ。
「樽か・・・・なんで盗賊やるのに樽被ってるんだろうな?? ま、とりあえず偽の『暁の樽』に化けるぜ・・・・って、よく考えたら、俺が被れるような樽なんてないよな・・・・?」
 ふわりと空に舞いながら劉 蒼龍(ea6647)は悩む。
 シフールサイズの樽というものは、なかなか無いかもしれない。
「だいじょーぶですよ〜。樽がなかったら作っちゃえばいいんですよ〜。とりあえず飲みませんかぁ?」
 ごきゅっごきゅごきゅっ♪
 樽を抱えたリセット・マーベリック(ea7400)が美味しそうに喉を鳴らして木のコップを一気に空にする。
「おおー、あんたいけるくちだな? どうだ、わしと一気飲みせんか?」
 ぴかーんっ☆
 太陽に眩しく照らされるハゲを誇らしげに撫で上げて、ローシュ・フラーム(ea3446)はリセットにやっぱり自前の樽(中身入り)をドンと勧める。
「え、樽一気? うーんー・・・・私は樽1つ飲み干せるほど強くないですよ。
 私は量より質で・・・・。あ、エールをジョッキでお願いします〜」
 ほろろんと既にほろ酔い気分のリセットは、キシュトに御代わりを頼む。
 どうやらウェイトレスと間違えているようだ。
「・・・・さて、難題だな・・・・」
 キシュトは腕を組み、天井を見上げた。
 

●盗賊団をおびき出そう☆
「やっぱり決闘するならそこら辺の村から離れた、広い所が良いよな? 手ごろな採石場とか、近くにないものかな?」
 リセットが使っていた木のコップを劉は斜めに頭に被る。
 樽代わりに丁度いいだろう。
「他人に迷惑がかからないところで、朝日が美しい場所が良いだろうな」
 ローシュもいま飲み干した樽を被り、目の部分に穴を開けて視界を確保する。
 ほんのりとお酒の香りが残っていて、お酒好きのローシュにはピッタリ?
 そんな冒険者達の横を、すすす〜っと樽が近寄ってくる。
 そうして、とんっと近くの樽にアタック。
 押された樽はリセットの側にころころと転がってゆく。
「あれ〜? こんなところに周辺地図が貼られてますよ〜?」
 リセットがそれに気づき、樽に張られた羊皮紙をとろんとした瞳で見つめる。
 かなり酔いが回っているようだ。
「・・・・なぜ、こんな所に地図が・・・・?」
「この村の側には使われていない採石場があるのだな」
 キシュトとトールが手にとって見ると、なるほど、本当にこの村の周辺地図が書いてあり、ご丁寧に盗賊団と戦いやすいであろう採掘場の場所に印まで付けられている。
「決まりだな。なぜこんなものがここにあるのか疑問だが、盗賊団『暁の樽』との戦場には丁度いいだろう」
 サラサも頷く。
 なにせ依頼期間は3日と短い。
 そうそう遠くへは行かれないし、近場で一般人を巻き込まずに済む場所があるならそれに越したことはない。
「暁色の樽を置いて、その樽に決闘の旨を直接書けば向こうからやってくるだろう。『暁の樽』の名をかけての決闘だといえば逃げはしまい」
 くつくつとトールが笑いながら手近な樽を赤く染めるべく周囲を見渡す。
 丁度うまい具合に、酔っ払いがウェイトレスに絡んでいる。
「トールさん〜? どこへ行くですかぁ?」
 立ち上がり、酔っ払いに近寄るトールをリセットが引き止める。
「あれの血で染めれば暁の樽になって丁度いいだろう?」
『あれ』と指差された酔っ払い、びくっとこちらを見て凍りつく。
「・・・・さすがに、血で染めるのはどうかと思うぞ・・・・」
 冷や汗をだくだくと流して止めるキシュト。
 どっちが盗賊かわかったものではなかった。


 すすす、すすすーっ。
 普通に樽を染料で赤く塗り、盗賊団『暁の樽』への挑戦状を書いて酒場を去る冒険者達の後を、謎の樽in鏡 慶治(eb3547)がこっそりひっそり付いてゆく。


●真・盗賊団『暁の樽』見斬っ☆
 ひゅおおおおおおぉぉぉっ!
 荒れ果てた採掘場跡地に風が吹き荒ぶ。
「うおおおっ、寒い、さむいぞおおおおおおおおっ!」
 暁の樽を被った盗賊団ボスが叫ぶ。
「やつら、おそいっすね!」
「ぬぬぬ、さては俺達に恐れをなしたか? ・・・・ん? この音楽は一体?」
 なにやらテーマソングのようなものがあたりに流れ出す。
「お、お頭ぁっ、やつらがきたっすよ!」
 樽をずらし、視界を広く確保していた部下その1が前方を指差す。
 そこには、夜空に浮かぶ月を背に、サラサの伴奏に合わせて歌う6人の冒険者in樽被り!
 熱唱、暁の樽テーマソングっ。

 ♪〜
   暁の光に照らされて 輝くは我らの誇り
   輝く樽を纏いし我らこそ 「暁の樽」盗賊団

   貴族だってなんのその 我らに恐れる物はなし
   勇猛果敢な樽戦士 我ら「暁の樽」盗賊団
                       〜♪
                        
 ジャジャジャジャジャンッとサラサがリュートをかき鳴らし、
「「「我ら真の盗賊団『暁の樽』見斬!」」」
 ビシイッ!
 どこぞのヒーローのようにポーズを決める樽被り冒険者達。
「ぬぁにおおおおおううっ?! この俺様を差し置いて、暁のたるを名乗るなあっ!」
「でもでもお頭ぁ、あっし達にはテーマソングねぇでやんすよ?」
「だまれだまれっ、この俺様にはテーマソングなど不要っ、この、暁の樽があればそれでいいだーーーーー!」
 どーん!
 逆切れ起こしてふんぞり返るマッチョ暁。
「最後まで樽をかぶったまま朝日を浴びることが出来た者こそ、真の『暁の樽』なのだ!! いざ、尋常に勝負せいっ」
 ビア樽ローシュが挑戦状を叩きつける。
 いま、真の『暁の樽』の名をかけた勝負が始まる!


●盗賊団『暁の樽』VS冒険者『暁の樽』
 それは、傍目にも名(迷)勝負だった。
 見渡す限りの樽タルたる。
 月明かりとランタンに照らされて戦う樽被り×樽被り。
 
 
「暁の樽副団長・・・・『たるんがー・カノン』・・・・参る!」
 MY樽を被りこなし、桃の木刀を構えて名乗りを上げるキシュト。
 だが、盗賊団部下その3は、
「キシュト・カノンじゃないんでやんすか?」
 と冷静な突っ込み。
「なぜ、俺の名をっ?」
「だって樽にサイン入ってるでやんすよ?」
「・・・・・・暁に輝く樽の力・・・・とくと見るが良い・・・・」
 どすっ!
 命知らずな突込みを入れた盗賊団部下その3は、鳩尾に木刀の一撃を食らって息絶えた‥‥かな?
 

「お前さん、なにやってるんでやすか?」
 ぎくりっ。
 こっそりひっそり、樽をかぶって盗賊団に紛れ込んでいた鏡は、ゆっくりと振り返る。
 その両手には、盗賊団のお宝がどっさり。
「そいつは俺達のお宝・・・・ぶっ」
「悪いねぇ。これもお仕事お仕事・・・・くっくっく」
 何の罪もない(?)盗賊団その2は鏡の拳の前にあえなく撃沈。
 

「いぇーい! お酒飲んでますかぁ? 酔っ払ってますかぁ? HAHAHAHA〜♪」
 強く明るく元気よく☆
 樽の中にこもったまま、リセットが怪しく高笑いしながら盗賊にぶんぶんと手を振っている。
「お嬢さん、おれっちがいうのもあれだけど、お酒は控えめにしたほうがいいんじゃ・・・・」
「ぜーんぜん、ぜーんっぜんへいきっすよ〜? まったく酔っ払ってなんかいませんてば〜♪」
「・・・・ロレツ、回ってないし。あっ!」
「気のせいでーす♪ でも目が回ります〜? って、転がるーっ!?」
 コロコロとどこかへ転がって行く酒乱樽。
「うわわっ、あぶないでやんすよーっ!」
 なぜか助けに行く盗賊団部下その4。
「たーすけて〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
「助けるでやんすよっ」
 どーんっ!
 木にぶつかる寸前で、部下その4が身を挺して庇って樽の下敷きに。
「おや〜? なんか柔らかいです〜。えいっ!」
 リセット、無常にも部下その4を樽ジャンプで踏みっ。
 哀れ部下4は天に召された。
 たぶん。
  

「とりあえず・・・・相手の樽ぶっ壊しちまえば勝ちだよな??」
 周りの惨状に激しく首を傾げつつ、とにかくやっつけるぞと手近の樽かぶりにパンチを食らわす劉。
 シフールのパンチなんて効きはしないと高をくくっていた盗賊団の部下その6の樽がぱっかりと真っ二つに!
「な、なんでシフールのパンチで樽が壊れるんでやんすかっ?!」
「甘いな。これはどう見たって喜劇じゃんか。何が起きるか分からないぜ」
 赤い髪をなびかせて、悠然と笑う劉に部下その6はがっくりと力尽きた。

 
「ああ、お前も来ていたのか? ならば手伝ってくれ」
 リュートを放り投げ、ムーンアローを情け容赦なくびしばしと盗賊団に撃ち放っていたサラサが樽かぶりの青年の肩を叩く。
 樽の下から、赤い髪がのぞくその青年は、
「あっしでやんすか?」
 怪訝そうに振り返る。
「そうだ。ジャパンに戻ると聞いていたが、来ているなら来ているとなぜ先に言わない。危うくお前まで矢で射抜くところだったぞ」
「は、はあ・・・・」
「元気がないな。いつものお前らしくないぞ? 身振り手振りも少ないし・・・・っと、盗賊団にムーンアロー!」
 話しこむサラサにここぞとばかり向かってきた盗賊団にムーンアローを再び撃ち放つ。
「ぐはあっ!」
 だが、倒れたのはすぐ隣の樽男。
 倒れたそやつの樽が外れて襲い掛かってきていた盗賊団は足を取られ、二人まとめてバタリ。
「伝助じゃなかったのか・・・・危うく騙されるところだったな。暁の樽、恐ろしい相手だ」
 樽の外れた男の顔を見て、サラサは額の汗をぬぐった。


「うーい、今宵はいい月だなぁ」
「うわっ、おまえさんなんだってお頭の酒を飲んでるんでやんすか? 見つかったら半殺しでやんすよ!」
 ビア樽ローシュは、盗賊団の持ち込んでいた幻の名酒(?)をぐーびぐび。
「おお、あんたも一杯やるか? この外の寒さがよりいっそう酒に合うとは思わんかね」
「とにかくその酒を飲むのをやめるでやんすよっ!」
 お頭への恐怖かなんなのか。
 部下そのいくつだかいい加減わかんなくなったけど、とにかく盗賊がローシュに襲い掛かる!
「おおぅ、情緒がないのう」
 大仰にため息をついて、トリッピング+ソードボンバーでさくっと相手を転ばせて、
「よいか、わしが若かった頃はだな・・・・」
 とどめにバーストアタックで相手の樽だけを破壊して。
 ローシュは延々と説教を垂れ始めるのだった。


「山だろうが海だろうが同じ『死』だ、クックックッ・・・・」
 真っ赤な暁の樽を被り(注:血で染めてはいない)、盗賊団『暁の樽』ボスと向き合うトール。
 相変わらず並みの盗賊団よりも盗賊っぽいのはきっとデフォ。
「俺様をそんじょそこらの樽かぶりと思うなよ? 覚悟しやがれっ!」
 どかーんっ!
 マッチョな身体を生かし、体当たりをしてくるボス。
 だが、トールは避けようともしなかった。
「面倒だ」
 カウンターアタックで、そのまんまボスを一撃の下に静めるトール。
 ぱかりと割れるボスの樽。
「か、完敗だぜ・・・・がくっ」
 暁の樽ボス、撃沈!


●エピローグ〜もう悪いことはしちゃダメだよ☆
「強敵でした。『こでほど』苦戦したのはいつ以来でしょうか・・・・」
 ろれつが回らないまま、シリアスに決めてるつもりのリセット。
 全員縄で縛られ、冒険者の前で正座する盗賊団。
 盗賊団『暁の樽』はローシュのたっての願いにより、命だけは助けることにしたのだ。
「こいつら、悪さっつーても、たいしたことはしておらんかったらしいからな」
 事前に、ローシュはある程度『暁の樽』の情報を仕入れていたのだ。
 村人達の話では確かに暴れられて困るといえば困るのだが、普段は樽をかぶった変な人たちというだけで、さして害もないらしい。
『いえね? この前うちの子が帽子が木の上に飛んでいってしまって。そしたら樽をかぶったお兄さんが取ってくださったんですのよ』
 聞き込みをしたうちの証言である。
「これで全て終わったな」
 トールは樽をかぶったまま、ゆっくりと昇る朝日に目を細めた。 
 朝日に照らされて、冒険者達の樽が暁に輝いた。


●お・ま・け
「あっ!」
 物陰から、こっそりと様子を伺っていた鏡は驚きの声を上げ、すぐさま口を塞ぐ。
 幸い、みんなには見つからなかったものの、盗賊団から盗んだお宝入りの樽は、コロコロとどこかへ転がってゆく。
 いま飛び出せば、確実に見つかるし、取りに行くのは不可能なようだ。
 鏡はやれやれと肩を竦めた。