渡るジャパンはかえる道☆
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■ショートシナリオ
担当:霜月零
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 36 C
参加人数:8人
サポート参加人数:7人
冒険期間:05月21日〜05月26日
リプレイ公開日:2006年06月04日
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●オープニング
「いやぁ、参りましたねぇ」
京都から来たと言う薬売りの商人は、節くれだった手を擦り合わせながら受付ではふーっと溜息をつく。
外は上天気。
一体何をそんなに溜息をつくのだろう?
「お疲れ‥‥ですか‥‥? よかったら‥‥こちらにおかけください‥‥」
ちょみっと小首を傾げつつ、受付嬢は優しくイスを勧めてみたりする。
「ありがとうねぇ。いやね? この天気は最高なんですよ。布団はホカホカになるし、洗濯物も良く乾くし。
厄介なのは蛙ですよ、蛙!
わたしゃ薬を売ってるんですがねぇ、ジャイアントトードに襲われたんですよ!」
「流石モンスターですね‥‥何処にでもわいてくるのですね‥‥」
「あんた感心している場合じゃないですよ。あの化け蛙をやっつけてもらえませんと、わたしゃ京都へ帰れないんですよ。
出会った瞬間びっくりして、商売道具を落っことしてきちまったもんでねぇ。
取りに戻るにも、また出会っちまったらわたしにはどうにもなりゃしませんよ。
ですからこのギルドから、冒険者を護衛に何人か派遣してもらえませんかねぇ?
正直資金はあんまりないんですけどね、背に腹は変えれませんからねぇ」
ごそごそと皮袋を取り出して差し出された金額はとっても少なく。
「あんまり‥‥雇えないかもですよ‥‥?」
この金額では、八人雇えれば良いほうだろう。
間違いなく食費も護衛費も出ない。
「えぇ、わたしもわかってるんですよ。無茶なお願いだとは思うんです。
でもねぇ、京都には家族を残してきてるんです。
ノルマンで仕入れて来た薬を売れば、多少のお金は作れますから、いまはこの金額でどなたか派遣してもらえませんかね?」
困り果てている商人に受付嬢も無碍には出来ず、いそいそと新しい依頼書を作成するのだった。
●リプレイ本文
●なくした荷物はどんな物?
「荷物落としちゃうなんて、ドジだなー♪ あんな化け蛙、嫌な気持ちはよぉく分かるけどねー」
はふーと溜息をついて落ち込んでいる依頼人の薬売りの親父を、ルディ・ヴォーロ(ea4885)はにこにこと笑いながら励ます。
「困った時はお互い様だ。義理とか義務とかじゃないですから、気にしないで下さい」
護衛代も満足に払えないと詫びる依頼人に、室川風太(eb3283)も気さくに笑う。
ぴょこんと立っている髪が揺れた。
「無事商売道具を見つけることができるように、おいらも頑張って探すぜ」
ペットの幼い狼を抱っこして、クンネソヤ(eb5005)も腕まくり。
「じゃいあんととーど‥‥ああ、大きな蛙さんですね? 確か毒液を吐くとかいう‥‥」
大曽根浅葱(ea5164)は依頼人から事情を聞き、口元に手を当ててジャイアントトードの特徴を呟く。
でもさくっと間違っていたりする。
「あんたちゃん、それはちょっと違うって感じぃ? あたしちゃんの記憶だと、ジャイアントトードは毒は吐かないってカンジぃ♪」
アイリス・ヴァルベルク(ea7551)の友人であるシフールのポーレット・モランが程よいモンスター知識から大曽根を訂正する。
「カエル。それも巨大なカエル‥‥ふふふふふっ♪」
そしてアイリスは十字架を握り、なぜか幸せそうにしている。
「ところで、ノルマンで仕入れた薬って一体なんだい? 俺の目を治せる薬もあるのかね」
瞳を閉じ、杖で身体を支え、盲目を思わせる鎖堂一(eb4634)が依頼人に尋ねる。
色々な薬があるなら、さくっと治せるのかもしれないが、依頼人の答えはNO。
薬売りではあるけれど、自分で調合の出来る薬剤師ではなく、また、医者などでもないから病気のことは良くわからないらしい。
「ま、それなら仕方ないやね。でかいカエル退治もこんだけ人数いりゃあ大丈夫だろ」
鎖堂は豪快に笑って伊豆の方向を見る。
目が見えないはずなのに、方向はきちんとあっていた。
「モンスターを倒して、探し物を見つける。単純そうですが、それだけに油断は禁物です」
霧島奏(ea9803)はそういってジャイアントトードに詳しそうなポーレットに色々と尋ねる。
ジャイアントトードの大きさ、色、数、技。
数は依頼人からも聞くことが出来たが、技や大きさは知識のきちんとある人間に尋ねるのが良い。
「さあ、早くジャイアントトードを踏みに‥‥じゃなくって、依頼人の荷物を取り返しに行きましてよ!」
やっぱりなぜかご機嫌なアイリスに促され、依頼人と共に冒険者は問題の沼地へと向かうのだった。
●案内してね。
「こっちのほうだったんです」
依頼人が街道を外れて森の中へと足を踏み入れる。
「こんな道を外れた場所で?」
霧島が怪訝な顔をする。
「ええ、薬を一つ、落としてしまいましてねぇ。そしたらコロコロとこっちへ転がっていってしまったから、慌てて追いかけて‥‥全部落っことす羽目になっちまったんですよ」
はふーと再び溜息をついて、依頼人は小石を薬に見立てて転がしてみる。
街道から森へ向かって少し坂になっていて、小石はコロコロと森の奥へと転がっていった。
「薬は丸かったんでしょうか?」
大曽根も首を傾げる。
丸薬は確かに丸いし高価だけれど、一個落としたからといってすぐに気づくような物だろうか。
いや、それより何より、薬入れに穴でも開いていなければ落ちるようなものでもないような。
「ノルマンで、まん丸に加工された木の入れ物があったんですよ。珍しかったから、数個購入してその中に薬を入れちまいましてねぇ‥‥」
何でそんな物に入れてしまったのかと、依頼人は後悔してもし足りないらしい。
「じゃあ僕が先に行って様子を見てくるよ。みんなはここで待っててほしんだよ」
ルディがセブンリーグブーツに履き替えて、森の中へと走り出す。
「上空からも確認してあげるわよ。空からだとジャイアントトードの背中も良く見えるしね」
物陰に潜み、ミミクリーで人間大の鳥に変身したアイリスが軽やかに大空に舞い上がる。
●ジャイアントトード、出現!
それは、見るからに巨大なカエルだった。
ゲロゲーロ、ゲロゲーロッ♪
なぜかご機嫌に、歌うようにジャイアントトードは鳴いている。
「うん、あんた達が言ったとおり、カエルは二匹だけだね。偵察ありがとう」
クンネソヤは油断なく弓を構え、ルディとアイリスに礼を言う。
「数が少ないのは好都合」
鎖堂は仕込み杖を構え、ジャイアントトードを見据える。
その瞳は、薄っすらと開いているような。
「もっと沢山いてくれてた方が踏み甲斐‥‥いえ、戦い甲斐がありますのに」
そして人の姿へと戻ったアイリスは、心底残念そうに呟く。
いや、こんなのがいっぱいいたら、丸呑みされちゃいますって。
「沼地からおびき出すよ? みんな、準備してね!」
ルディが草叢から飛び出し、沼地の上で歌っているジャイアントトードに保存食を投げてみる。
ゲロリッ♪
ジャイアントトードは投げられたそれを生き物と間違え、嬉しそうに飲み込む。
そしてルディにもっとくれとばかりにぴょーんと沼地から飛び出してきた!
冒険者達が瞬時に木陰から飛び出し、ルディを援護する。
「わたくしがお相手いたします。かかっておいでなさい!」
大曽根は日本刀を構えて走る!
「ここに隠れていてください。ぜったいにそこから離れずに!」
室川が恐怖の余りその場から逃げ出そうとする依頼人に注意する。
いま冒険者の側を離れられてはかえって危険。
側なら守れるが、離れられてはどうにもならない。
「あなたの得意技は舌で巻きつけることですね? 僕には効きません」
霧島は自分のほうに伸びてきたジャイアントトードの赤い舌を忍者刀で切り捨てる。
「おいらあんまり、命をとるのは好きじゃないけど、ごめんだよ!」
全ての命あるものを大切に思うクンネソヤは、ショートボウをジャイアントトードに撃ち放つ。
ゲブゲブゲブゲブーッ!
「きゃあっ!」
切られた痛みと貫かれた痛みにブチ切れたジャイアントトードが大きく跳ね、後方で前衛を援護していたアイリスの身体を張り飛ばした!
「お〜お〜、見事な跳びっぷりだ。だが、それ以上はさせないぜ?」
吹っ飛んだアイリスに、さらに追い討ちをかけようとしたジャイアントトードの足を鎖堂の仕込み杖が貫く。
鎖堂は予めジャイアントトードの跳躍力にある程度の予想をつけ、後方が危険に晒されないように距離をとり過ぎないようにしていたのだ。
そして暴れるジャイアントトードに、沼地にいたもう一匹も刺激されて沼から飛び出してきた。
ケロケロケロケロクワワワワッ!
妙な鳴き声をあげて、二匹目のジャイアントトードが突進してくる。
「か、カエルの分際でよくもですわーっ!」
守ってくれた鎖堂に礼を言い、こめかみに程よく怒りマークを現しながらアイリスはブラックホーリーを唱える。
「北辰流、とくとその身に味わっていただきます」
どん!
大曽根がジャイアントトードとの間合いに大きく踏み込み剣を振るう。
剣から撃ち放たれた真空派がジャイアントトードの腹を切り裂いた。
「わわっ、キミ慌てちゃだめだよ!」
くらりと気を失いかける依頼人を、ルディが抱きかかえる。
「これで、とどめだ!」
室川がディストロイを発動!
アイリスのブラックホーリーの効果で魔法抵抗が出来なくなっていたジャイアントトードは、一瞬にしてバラバラと崩れ去った。
●エピローグ〜かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ‥‥踏みっ☆
ふみふみふみっ。
ふみふみふみふみっ!
「快っ感♪」
倒したジャイアントトードの背中を踏み、アイリスは至福の瞬間を味わう。
普通のカエルの小さな背中も捨てがたいが、中々どうしてジャイアントトードの背中の大きいこと踏みがいのあること!
通常のカエルの数倍の弾力間と保湿間を兼ね揃えたそれに、アイリスはご満悦。
「そういや、大蛙って食えるのか? 美味しいのか?」
クンネソヤはバラバラになったジャイアントトードのほうをツンツンとつついてみている。
「また見つけたよ〜。これで全部かな?」
ペットの鷹・ファーンと一緒に依頼人の薬を探していたルディはその手に丸い木箱を持って現れる。
中を確認すると薬はちゃんと無事で、依頼人はほっと胸をなでおろす。
数十個落っことして転がしてしまった薬入れは、冒険者達が沼の付近を丹念に探してくれたお陰で、ほぼ全てを取り戻すことが出来ていた。
「しらみつぶしに探した甲斐がありましたね」
額に薄っすらと汗を滲ませつつ、霧島も微笑む。
「皆さん、本当にありがとう!」
依頼人に大きく礼を言われ、今回の依頼を無事、終えたのだった。