●リプレイ本文
●まずはご挨拶‥‥って、スコップ?!
依頼人を交え、江戸の片隅に集まる冒険者。
もう少し先に行くと、問題の謎モンスター・コロコロが現れる坂道がある。
「おいらは北斗なのだぁ〜。よろしくなのだぁ♪」
白い狐のお面を頭の横につけ、ほのぼのとした玄間北斗(eb2905)は依頼人に挨拶をする。
「初めましてだな。私はアレーナだ。聖母の白薔薇がコロコロなる物の怪を退治してしんぜよう」
依頼人にアレーナ・オレアリス(eb3532)は優雅に礼をする。
「正体が気になります‥‥」
単調な口調ながらも所所楽林檎(eb1555)は知的好奇心(?)でうずうず。
そしてその目線は一條北嵩(eb1415)に向いていたり。
しかし一條はそれに気づくことなく「コロコロコロコロリ‥‥あれ、『コロ』何回だっけ?」とコロコロモンスターから名前を取った愛犬・コロを抱いておとぼけなことを言っている。
「コロコロ様はただコロコロとしているだけなのですか? それとも人を見たら積極的に襲ってくるのでしょうか」
リオーレ・アズィーズ(ea0980)はモンスターにも様をつけるメイドさん魂で依頼人に尋ねる。
コロコロはころころと転がるからそう呼んでいるのだが、見た目は丸いまんじゅうらしい。
「でも食べ物じゃないんだ‥‥」
子猫のコロネと愛犬のクロワッサンを従えて、ミネア・ウェルロッド(ea4591)はちょっぴり残念そう。
てくてくと歩いていると、コロコロは坂の上のほうから転がってきて、ぽーんぽーんと飛び掛ってくるのだそうだ。
「いきなりおっきな口がぱかっと開いたんだよ。ありゃ、絶対俺達を食う気だぞ!」
鍬をぶんぶか振り回して力説する依頼人。
でもほんとに人が食べられたシーンは誰も見ていないとか。
「何にもしなきゃ良いのにねぇ。人を食べるんじゃ何とかしなくっちゃね」
マクファーソン・パトリシア(ea2832)は溜息をつく。
「名前は可愛らしいが人を喰うのか。放っては置けぬな」
ジャパン語の話せないマクファーソンの通訳をしつつ、超美人(ea2831)は眉宇を顰める。
「そのコロコロという生物、呼吸があると助かるんですが‥‥」
そういって風の魔術士ベアータ・レジーネス(eb1422)は愛用の杖を撫でる。
呼吸さえしていれば、彼のブレスセンサーで敵の大体の大きさや数、距離を割り出せるのだが。
「話ヲ聞ク限リデハ、コロコロノ知覚力ハアマリ優レテイナサソウデス」
瞬きをしない不思議な瞳で依頼人を見つめる理瞳(eb2488)は、コロコロは地面の揺れを察知している可能性が高いとあたりをつける。
「とにかく数が多いのと、ちっこいのが混じっているのなら、打ち漏らさない様にするには厄介なのだ。一箇所に集めて一網打尽にする方法を考えた方が良さそうなのだ」
玄間はほんわかと提案。
依頼人に、このあたりの地形について詳しく聞いている。
「進行方向に予測がつくようでしたら、穴を掘っておいて其処に誘い込む、と言う作戦も有効でしょうか」
一箇所にまとめるには確かに穴に埋めてしまうのが手っ取り早い。
「ふむ」
アレーナが頷いて、依頼人の両手をぎゅう。
「あの、その、なんなんだ?」
異国の美女ににこやかに手を握られて戸惑う依頼人に、さり気なく何気なくスコップを手渡す。
にこにこにこ。
笑顔のまま指差すそこは地面。
どうやら掘れと言うことらしい。
「農夫なら、耕すのは得意だろう? なに、安心するがいい。私たちも手伝ってやろう」
そうして、皆で地面を掘ることになった。
●準備はしっかり☆
ざくざく、ざくざく。
ざくざくざくざくっ☆
依頼人を含め、一心不乱に穴を掘る冒険者達。
「以前北嵩さんに頂いた京染めの振袖‥‥預かっていてもらえないでしょうか‥‥ミミクリーを使うのですが、なにぶん覚えたての魔法ですので‥‥。
効果が切れたときの事がわからないものですから‥‥効果が切れる頃に北嵩さんのもとに着くよう時間は意識しておきますし‥‥」
穴が掘り終わる前に偵察に行くことにした所所楽は一番信頼している一條に衣類を頼む。
「了解。きちんと預かる。ただし林檎さん、十分用心してくれ。大事な友達だしな。俺が一緒に居ながら何かあったんじゃお姉さんに合わせる顔ないし」
所所楽の姉とも知り合いなのだろうか。
一條は所所楽の身を案じつつも胸に何か違和感。
お友達。
(「‥‥うん」)
そう、二人は『まだ』お友達。
「それでは‥‥いってまいります‥‥」
「うん、いってらっしゃい‥‥うおっと!」
目の前で鷹に変身した所所楽に一條は腰を抜かすほどびっくり。
人間大の鷹になった所所楽は偵察の為に飛び立つ。
一條は後に残った着物を簡易に畳み、愛犬のコロの背に乗せつつふと気づく。
(「――ちょい待て? 魔法効果切れたら彼女‥‥」)
「い、良いかコロ! あの子が降りてきた所にダッシュ! 後でご褒美あげるからな!」
赤面して空をさす一條に、コロは「くぅん?」と首をかしげた。
●コロコロさまのおなーりー☆
「数は‥‥とても多いわ‥‥大きいのが二匹と‥‥小さいのがいっぱいいたの‥‥」
偵察を終え、草むらで一條に預けた衣類を受け取った所所楽が偵察結果を報告する。
ちなみに着替える時にどうなったのかとかそうゆう野暮な事は聞いてはいけないお約束。
理の予想通り、振動のない空からの偵察にはコロコロは何も反応しなかったらしい。
「ならば今度は引き寄せるのだぁ〜」
玄間が囮を提案し、今度は虎に変身した所所楽と二人でコココロの元へ行く。
ころんころん♪
ころんころんころん♪
大小色とりどりの半透明なコロコロが玄間と所所楽を追って転がってくる。
「見れば見るほど愛嬌のある姿ですね〜♪」
玄間と所所楽の二人におびき寄せられたコロコロ達を草むらから覗き見て、リオーレはほんわか。
コロコロの進行先にはみんなで掘った落とし穴がある。
「俺ノ推測が正シケレバ、ジットシテイレバころころハ素通リスルハズデス」
理が鞭を構えつつ、じっとしているように注意を促す。
穴に落とす前に動いて襲い掛かられては罠の意味がない。
「ワッサンに持って帰ってたら、食べるかな‥‥?」
コロコロの饅頭っぽい姿に、ミネアは依頼人の下へ残してきたペット達の餌にしようかと呟く。
依頼人には穴を掘り終わったあとここから少し離れた場所に避難してもらっている。
「大小様々、少なく見積もっても20匹か。骨が折れるな」
艶やかな黒髪を払い、超は刀を構える。
コロコロはどんどん冒険者達に近づいてきて‥‥ころころころりんすっとんとん☆
理たちの脇を通り抜けて、コロコロ達は落とし穴に落っこちた。
「やったわね!」
「上手クイッタデス」
だが喜んだものつかの間。
「え‥‥?」
ぽーん!
ぽーーーーーーーーんっ!
ぽぽぽぽぽーんっ!
穴の中から飛び上がってコロコロ&ミニミニコロコロ復活っ。
「ちょっ、や、うそですよね?!」
ぶにんっ☆
戸惑うリオーネの上にどーんと降ってくるコロコロ。
「いたっ、いたたたたたっ?!」
ミニミニコロコロに体当たりをされてとっさに振り払うアレーナ。
「穴の中のコロコロは任せてください!」
ミニミニコロコロの攻撃を避けながらベアータが穴の中に油を投げ入れ、松明で点火!
ぽぽぽん、ぽぽぽん、ぽぽぽぽぽんっ!
炎に焼かれながら、逃げ切れなかったコロコロが口を大きく開いて最後の悪あがきとばかりにミニミニコロコロを乱射!
「うわー、ちっこいコロコロがいっぱいだねっ」
色とりどりのミニミニコロコロはところかまわず飛び跳ね回り、可愛い外見とは裏腹に冒険者に襲い掛かる!
「ま、何とかなるでしょう。撃ちまくって全部退治するわよ。
当初よりも増えまくったそれにマクファーソンはウォーターボムを炸裂させる。
「腕が上がらなくなるまで、斬って斬って斬りまくる!」
超が前に躍り出て一際大きいコロコロに斬りかかる。
「さっさと終わらせてヒノキ風呂に入りましょっと♪」
アレーナはレイピアをビリヤードのキューに見立ててミニミニコロコロをえいっとつく。
だが、
「つぴ?」
ポーンと吹っ飛ばして他のミニミニコロコロにぶつけてまとめてやっつけようと考えたのだが、アレーナはミニミニコロコロの柔らかさを考えていなかった。
突いたミニミニコロコロはそのまんまレイピアにぷっつり刺さって身動きとれずにいる。
つぴつぴつぴつぴっ☆
次々突いてゆくと、ミニミニコロコロはレイピアにどんどん刺さってゆく。
そう、さながらそれはカラフルな串団子。
「こ、これはこれでありだろう」
ちょっぴり額に冷や汗を流しつつ、アレーナは串団子レイピアで敵を倒してゆく。
「こっちなのだ、そっちではないのだぁ〜!」
術者たちのほうへ飛びかかろうとしていたミニミニコロコロたちを玄間が引き付ける。
そして再び鷹へと変化を遂げた所所楽が空から急降下してコロコロを突ついて攻撃!
その突然の攻撃に怒ったコロコロはポーンと跳ね上がってリオーレの上から飛びのき、上に向かってミニミニコロコロを発射!
「林檎さんに手出しはさせない!」
一條が高速詠唱でアグラベイション発動っ、そして超と連携して斬りつける!
「悪い子はお仕置きですよっ」
事前にストーンアーマーを掛けてあったのが幸いしたようだ。
コロコロに潰されてたというのに元気に復活したリオーレも至近距離でグラビティキャノン発動☆
「俺ニ関ワッタ事ヲ後悔スルトイイデス」
理は自分に襲い掛かってきた拳大のミニコロコロをぽんと膝で弾ませてそのままコロコロに向けてシューット!
「とどめなのだぁ〜」
最後に玄間が火遁の術で丸焼きに!
アグラベイションで動きの鈍くなっていたコロコロは穴の中で焼かれたそれと同じく溶けてなくなった。
●エピローグ〜お背中流しましょう☆
カポーン☆
シシオドシの小気味良い音が温泉に響く。
無事に戦闘を終え、依頼人の農夫の好意で冒険者達は温泉へ招待されたのだ。
「しかし結局、あのコロコロ様は一体なんだったのでしょうか‥‥」
温泉にまったりとつかりながら、リオーレは首を傾げる。
大きなコロコロを倒したあと、残っていたミニミニコロコロは冒険者達の力の前になすすべもなく倒されたのだが、リオーレのいた欧州ではあんなモンスターは見たことも聞いたこともなかったのだ。
「もっと素早い動きも出来たでしょうに、私を気にして動かなかったんでしょう。まぁそう言わずググッとやってちょうだい。 嫌いじゃないんでしょう?」
マクファーソンは終始自分を庇っていた超にお酒を勧める。
湯船の上に浮かべたお盆には、お猪口と徳利がのっている。
「マクファーソン殿の水玉には助けられた。礼を言う。ジャパンの言葉も少しづつ覚えていくと良い」
差し出されたそれを遠慮なく受け取って、ぐいっと煽る。
「ソウイエバ、アレーナ殿ハドチラデスカ?」
お風呂でもやっぱり瞬きしていない理が辺りを見回す。
温泉に一緒に来たはずのアレーナがいない。
「依頼人のお背中流すっていってたんだよ〜?」
ミネアが無邪気に言い切る。
顔を見合わせる美女達。
その瞬間、男湯から悲鳴があがった。
「ジャパンでは一緒にお風呂に入って、背中を流してやるのだよな?」
悲鳴の元凶、薄着のアレーナが桶を手に男風呂にどんと潜入。
とっさに男達は手ぬぐいなどで身体を隠して大慌て。
「女湯はあっちなのだぁ〜。ここは男湯なのだぁっ!」
玄間は顔を真っ赤にして湯船にもぐる。
「女性が男性のこんな場所を訪れてはだめだ」
そしてこちらも真っ赤になって後ろを向く純粋培養箱入り息子なベアータ。
「なぜだ? ジャパンでは背中を流す風習があるとノルマンで聞いたぞ。領主も喜んでいたから間違いない」
きっぱりと言い切る天然乙女なアレーナの自信は揺るがない。
いや、ノルマンのとある領主も確かに喜んではいたけれども。
「こちらに、アレーナさんはいらっしゃいますか?!」
どどどどどどどっと女湯から慌てて出て来た女性陣が男湯に飛び込んでくる。
「り、林檎さんまでっ? こ、これは違うんです、深いワケがあるようなないようなあるようなっ」
一條は飛び込んできた所所楽と目が合ってしどろもどろ。
混乱極める男風呂ではジャパン陣が必死にアレーナに正しい知識を教え込んだり(ただし、アレーナが理解したかは不明)、依頼人がずうずうしくも背中を向けてわくわくと待ってたり。
そんなこんなでコロコロ退治は、なんだかんだと幕を閉じたのである。