くりっくり☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月22日〜10月25日

リプレイ公開日:2006年11月04日

●オープニング

 Q:何故に栗を拾わなければならないのか?

 A:そこに栗があるからだ!

 
 ことの始まりは冒険者ギルド。
「ってゆーか、栗が食べたいんだってば!」
 どっかのお馬鹿様‥‥げふんげふん、お嬢様が栗を食べたいと言い出したのだ。
 しかも、出来たて取れたてあっつあつじゃないと嫌だという。
 店に売っている物も新鮮だからと侍女がなだめても決して言う事を聞かない。
「そんなのじゃだめ! おねーちゃんだってきっとこうするもん。いますぐ、美味しい栗を取ってきて。籠にいっぱいだからね!!!」
 ばん!
 何処からか持ち出した背負うタイプの大きな籠をギルドの受付に差し出す。
 その数6つ。
「当ギルドでは、前払い制ざますのよ?」
 キラン。
 ギルドの受付係は釣り目を光らせてお嬢様に言い切る。
「お金ならいっぱいもってるんだから! ほら!」
 どどーん。
 見るからに重そうな金貨の詰まった皮袋を籠の横にドン!
「ふ、ふんっ、それならば冒険者の手配をして差し上げても宜しいざーます」
 ふふんと勝ち誇るお嬢様から目を逸らし、受付はしぶしぶ依頼書を作成するのだった。

●今回の参加者

 ea3190 真幌葉 京士郎(36歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea8572 クリステ・デラ・クルス(39歳・♀・ジプシー・パラ・イスパニア王国)
 eb0311 マクシミリアン・リーマス(21歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb5300 サシャ・ラ・ファイエット(18歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb6954 ガラハド・ルフェ(42歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb7890 レイム・デューカ(27歳・♂・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●お嬢様はお馬鹿さま。でも恋もしたいお年頃?
「ちゃんと集まったのね。感心ってカンジ♪」
 ノルマンから来たと言うお嬢様は集まった冒険者達を見て満足げに頷く。
「ふむ、お嬢。名は何と申す‥‥?」
 そしてクリステ・デラ・クルス(ea8572)は、高飛車ロリっ子なお嬢様に気を悪くする風も無く、水晶を片手に尋ねてくる。
「リンフォアなのよ。あなた、占い師なの?」
 自分の顔が写るそのその水晶を、お嬢様は興味深々に覗きこむ。
「種族と年は‥‥十二歳じゃな? ほぉ! これはっ」
 クリステの叫びに、ガラハド・ルフェ(eb6954)とサシャ・ラ・ファイエット(eb5300)も一緒に水晶を覗きこむ。
「大きな栗の木の下で! 貴殿とこの男の間にステキな出会いが待っているッ!」
 おおおおおーっ?!
 クリステが水晶を高々と掲げ宣言すると、周囲にざわめきが起こった。
 掲げられた水晶にはそれらしい人物は写っていないように見えるのだが、クリステの瞳には写っているのだろうか?
「素敵な出会いって、ジャパニーズサムライ?」
 わくわくわく。
 栗にしか興味の無かったお嬢様が瞳を輝かす。
「サムライかどうかはようわからぬが、これを逃せばパリから女を追って参った某ギルド受付係の如く、ロンリー気分に苛まれる事間違いなしじゃ」
「えーっ、ちょっとちょっと、この私があの冴えないダサ男と一緒だっていうのっ?!」
 がくがくがくっ!
 クリステの言葉にブチ切れるお嬢様、顔を真っ赤にしてクリステを揺さぶる。
「まあまあ、落ち着いて? クリステさんは一緒だなんていっていないんだよ」
 見かねてマクシミリアン・リーマス(eb0311)がお嬢様のちっこい手を握って止めた。 
 優しげな風貌のマクシミリアンに手を握られて、お嬢様は別の意味で真っ赤になった。
「ちょっとあなた、邪魔ですわ?」
 ぺしっ!
 サシャはガラハドに一緒に寄り添うように水晶を見ていた事実に気づき、はっとしてガラハドを突き飛ばした。
 こんなところを憧れの真幌葉京士郎(ea3190)さんに見られたら大変。
「ドSな貴方のこの仕打ち、これはきっと愛ですねっ」
 突き飛ばされてついでに踏まれているガラハドは少しもめげずに熱烈アタック。
 もちろん、サクッと無視られているけれど。
「籠を背負うというのも、また風情があるだろう」
 そしてサシャの熱い視線を受けている真幌葉はラフな格好で籠を背負っている。
「野犬も出るという噂なのに、随分と軽装だな」
 毛皮のマントを羽織ったレイム・デューカ(eb7890)も籠を背負い、出立の準備をする。
「紅葉狩りに行くわけでも無し、余り物々しい格好で向かうのは、秋の自然に失礼かと思ったのでな」
 尋ねられた真幌葉は何気なく気になる事を言う。
「ジャパンでは紅葉狩りとは物騒なのか???」
「うむ、紅葉か? 美しい植物とは別種の、血をすする恐ろしいモンスターで秋には良く討伐隊が組まれると聞く」
 まてまてまて。
 ジャパンにいる人々が聞いたら、きっと目を剥くぞ。
 だが周囲の人々は紅葉について間違った認識を持ってしまったようだ。
「紅葉とはかくも恐ろしいものなのですね。京士郎さん、わたくしを守っていただけますか?」
「サシャさんのことはこの僕が‥‥げふっ!」
 真幌葉に願うサシャの横から、ガラハドが懲りずに口を出し、すかさず踏み潰された。
「‥‥なんだか、いろいろ物騒だね」
 危険な光景からそっと目を逸らし、マクシミリアンは呟くのだった。
 

●山道さくさく。野犬出ちゃう?
 落ち葉の茂る山道。
「興味が沸いたのであらば、毛皮のコートにでも身を包み我等と同行せよ。荷物はそこの力自慢の男衆から好きなのに押し付ければ良い」
 もてない万年一人身受付係と同じになると青ざめるお嬢様に、クリステがそう提案し、なんだかんだでお嬢様もついてきた。
 だが、我がまま高飛車ロリっ子に山道など耐えられるはずも無く。
「もうもうやだぁあっ! わたし、お家にかえるっ!!!」
 だんだんだんっ!
 足を踏み鳴らし、お子様特有のかんしゃくが大爆発。
「まて。あまり騒ぐと野犬に気づかれるだろう」
 周囲の警戒し続けていたレイムがサウンドワードを唱え、お嬢様を止める。
「野犬近くにいるのっ?!」
 お嬢様はびくっとして暴れるのを即座にやめて、クリステの背に隠れる。
「我の占いによれば、栗の木はもう少し東じゃ。野犬はどちらの方角かえ?」
「西南だな。このまま東に進めば遭遇しないだろう」
「ならば静かにしておれば大丈夫じゃな。ほれ、お嬢、安心するが良いぞぇ」
 自分の背に隠れるお嬢様の手を引いて、クリステは微笑む。
「これといって大きな生命反応も無いんだよ」
 デティクトライフフォースを定期的にかけ、大型獣の察知に気を配っていたマクシミリアンも頷く。
「栗以外の秋の味覚も収穫したいですわね」
 植物知識に長けたサシャが、木の側に生えていた茸を摘む。
「おお、それは素晴らしい提案ですね。もちろん僕も収穫しますよっ」
 嬉々としてサシャに駆け寄るガラハドは、すかさずサシャが『ついうっかり』出してしまった足に引っかかり、すっころんだ。
「食に景観の美しさ、本当に秋は色々と楽しませてくれる」
 サシャの行動を見逃していた真幌葉は、周囲の景観に目を細める。
 その足元にガラハドが転がっていたりするのだが(汗)
「僕、ちょっと先を見て来るんだよ」
 マクシミリアンが木陰に隠れ、ミミクリーで鳥に変身して東のほうへ飛び立っていく。
「‥‥大丈夫か?」
 レイムがガラハドに手を貸してやり、ガラハドはしょんぼりと肩を落とすのだった。


●ホクホクあまあま? 栗拾い☆
「見つけたんだよ。もうすぐそこに栗の木があるんだよ」
 木陰で変身を解いたマクシミリアンが前方を指差す。
「うむ、占い通りじゃて」
 満足げに呟いてクリステはコレドのコインをしまう。
 栗があると聞き、今にも走り出しそうなお嬢様を抑えつつ、冒険者達は足を速める。
 数分後、見事な栗の木に辿りついた。
「美味しいクリをいっぱい拾いましょう!」
 大きな栗の木に元気を取り戻したガラハドが勢いよく栗を拾い出す。
 栗のイガイガとげとげもなんのその、落ちている栗を背負った籠にぽこぽこ放り込む。
「わたくしも頑張りますのよ。らくちゃん、籠を持ってね?」
 ペットの愛猫・らくちゃんに籠を預け、サシャは調理器具セットからお玉を取り出して栗をすくう。
 ナイフで丁寧にイガを取り、中身の栗だけを籠に移してゆく。
「あまり落ちていないんだな」
 全員で拾い出すとみるみる減ってゆく栗に、レイムは木を見上げる。
 栗の木は大きいし、その枝にはたわわに実っているのだがいかんせん、落ちている栗はそれほど多くは無いのだ。
「少々荒っぽい落とし方をする、危ないから下がっていろ」
 真幌葉がなぜか構える。
「‥‥お怪我をなさいませんように」
 荒っぽいと聞き、サシャは真幌葉の身を案じる。
 皆が栗の木の下から避難した後、
「ハッ!」
 気合と共に真幌葉の腕から・ソニックブーム&ソードボンバーが栗の木めがけて炸裂した。
 衝撃でボコボコと毬栗が振ってくる。
「凄いんだよ、これで拾うのが楽だね」
 地面を覆わんばかりにいっぱいになった栗を見て、マクシミリアンはご機嫌に拾い出す。
「あいたたたっ?!」
 ガラハドは素手で毬栗を拾い、指先をちょみっと怪我してみたり。
「‥‥舐めときゃ治る、ですわ」
 そういいながら、サシャはきちんとガラハドの応急手当てをする。
「サシャさん、やっぱり本当は僕の事をっ」
「口に毬栗詰めてみますか?」
「‥‥いえ、何でもありません」
 にこにこと天使の微笑でサクッと恐ろしい事を口にするサシャに、ガラハドは慌てて首を振る。
 サシャなら本気でやりかねない。
「こういうのも結構楽しいもんだな」
 毬栗をぽいっと籠に放り込み、レイムも笑う。 


●くりっくり☆
「栗はその場で拾ったのをその場で焼いて食すのが最良じゃ」
 クリステが何か違うような気がする事をきっぱりと言い切り、持参した薪と釜をペットの背から下ろす。
「鍋ですか? 美女の手料理ですねっ」
 ガラハドはわくわくと舌なめずりをし、
「山葡萄もみつけたから、デザートに食べるんだよ」
 マクシミリアンは鳥で偵察した時に見つけたそれを収穫して皆に見せる。
 料理が出来るのはクリステだけだが、栗の皮むきぐらいは誰でも出来る。
 大量にある栗をみんなで剥いてゆき、サシャが途中で収穫した茸なども一緒に鍋に入れる。
 コトコト煮込まれたそれは、栗独特の甘い香りを放ち、冒険者達の鼻をくすぐった。
 クリステが料理を作っている間にガラハドは周囲に鳴子を張りめぐらし、油断している所を野犬に襲われない様にも気をつけた。
「さあ、みんな食べるのじゃ」
 わいわいがやがや。
 出来たての栗を囲み、お嬢様も冒険者も美味しい秋の味覚を味わうのだった。