ここ掘れワンワン☆ お宝じゃー?

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:8 G 76 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月26日〜10月01日

リプレイ公開日:2007年10月09日

●オープニング

 それは、一匹の子犬から始まった。
 青年がいつものように山の小道を散歩させている時、急に愛犬が吠え出した。
「わんわん、わんわんわんっ☆」
 あんまり子犬がうるさく吼えるので、飼い主の青年は首を傾げながら子犬が吼える場所を掘ってみる。
「‥‥これはっ!」
 一体誰が埋めたのだろう?
 大きな壷に、溢れる金貨。
「お手柄だね、エイリーク」
 青年は子犬の頭を撫でる。
 けれど子犬は吼えるのをやめない。
「わんっ、わんわんわんっ!」
 先ほどとは明らかに違う鳴き声とともに青年の袖を引っ張り、その場を逃げようとする。
「エイリーク?」
 不審がる青年の背筋を冷たいものが伝った。
 覆い被さる影を咄嗟に回避できたのは、愛犬の力だろう。
 青年が避けたその場所に、怪物の鋭い尾が叩きつけられる。
「怪物?! 何故こんなところに‥‥」
 青年は愛犬を抱きかかえ、全力でその場を逃げ出した。 


「そんなわけで、クリーチャー討伐依頼ざーます」
 つん!
 教育ママ的目付きの鋭さで冒険者ギルドの受付は告げる。
 青年が目撃したモンスターは恐らくクリーチャー。
「‥‥報酬は弾むんだよな?」
「もちろん。それなりの働きをしていただけたなら、ざーますよ?」
 報酬の高さと依頼の難易度にごくりと冒険者はつばを飲む。
「何でも依頼主は資産家でしてねぇ、見つけた金貨よりも人々の安全を願っての依頼ざーますのよ〜」
 まるで自分が資産家のような誇らしげな表情の受付係。
 高笑いでもかましそうな勢いである。
 そんな受付にちょっぴり引きつつ、冒険者達は依頼をチェックするのだった‥‥。

●今回の参加者

 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2546 シンザン・タカマガハラ(29歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3530 カルル・ゲラー(23歳・♂・神聖騎士・パラ・フランク王国)
 eb5618 エレノア・バーレン(39歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5817 木下 茜(24歳・♀・忍者・河童・ジャパン)
 eb7143 シーナ・オレアリス(33歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

●敵の目的はなんだろう?
「全長ニメートルのクリーチャーねえ‥‥その依頼人よく逃げおおせたな? そんだけデカイ奴なら走るのも早いだろうに」
 ギルドの依頼を受け、問題の山を登り始めるシンザン・タカマガハラ(eb2546)はポツリと呟く。
 ギルドの情報によれば大きさと素早さを兼ね揃えた敵。
 並みの一般人では逃げ切れないと思うのだが‥‥。
「クリーチャーに襲われて生き延びるとは、かなり幸運な方です。その幸運が、全ての方に起きるとは思えません。未然に防がれた幸運が続いている間に、この一件を片付けなけばならないですね」
 エレノア・バーレン(eb5618)にとっても、依頼人はかなりの幸運に見えるようだ。
 確かに依頼人は金貨の詰まった壷を見つけたことといい、幸運度がハンパない。
「あたいの調べた情報だと、敵の正体は逃げたペットが有力です。依頼人の町の方に聞き込みをしたら、数年前からペットはよく買えなくなって捨てている人がいるらしいです。流石に、二メートル近くのペットを捨てていたという情報はありませんでしたが‥‥捨てたペットが大きくなる可能性はあるのではないですか?」
 ボーイッシュな木下 茜(eb5817)は周辺住民に予め調査しておいた事を皆に報告する。
 これといって確定情報を得られなかったのは残念だが、すくなくとも二メートル近いクリーチャーが街へ降りたことだけはないようだ。
「所で、クリーチャーって普通のモンスターと何か違うのか?」
 シンザンがまとわりつく小枝を剣で払いながら尋ねる。
「少なくとも、精霊ではないようだ」
 サラサ・フローライト(ea3026)が正面を見据えたまま自身のモンスター知識と情報を照らし合わせて答える。
 相手が精霊であるならかなりの知識を有するサラサだが、恐竜と見紛うような精霊というものには心当たりがないのだ。
「でもでもっ、どんな敵でもお宝ざくざくゲットするんだぁ〜♪」
 そういいながら全身からワクワク感が迸っているのはカルル・ゲラー(eb3530)。
 受付で聞いた金貨の詰まった壷の話に興味津々らしい。
「金貨も良いですが、謎の怪物さんが何なのか調査したいところですね〜」
 特徴的な瞳をキラキラと輝かせながら、シーナ・オレアリス(eb7143)も未知のもへの興味で期待いっぱい。
 お宝よりもクリーチャーの正体を気にする辺り、なかなかに冒険者的だ。

 
●行動は慎重に。
「そろそろ壷が発見された地域に近づきます。あたい、ひとっぱしりして状況を見てきます!」
「ああ、頼む。その間に、こちら側からコンタクトをとれないか試みてみる」
 茜がくるっと身体を翻し、木の枝の上に舞い上がる。
 そして風を読み、風下から問題の地点へと接近を試み、サラサがその間に意識を集中する。
「‥‥個人的には無駄だと思うがな」
 テレパシーを試みるサラサに、シンザンはあまり良い顔をしない。
 こちら側に敵に対する交渉の材料が無い事、脅し以外で敵が納得出来そうな条件がこちら側にないからだ。
 相手がこちらの位置を特定出来ないうちは奇襲のチャンスがあるが、テレパシーをすることで敵にこちらの位置が知れるリスクもあり、自然とそうなるのだろう。
 だが反対するだけではなく、一番敵に襲われる危険のあるサラサをしっかりと背後に守ることも忘れていない。
 皆に守られながら、サラサはこの先にいるであろう未知の敵に語りかける。

『‥‥聞こえるか? 数日前人間と犬を襲ったのは何故か。お前が怒りを感じているのは何故か。それを知りたい』

 未知との交信に少しも動じることなく、サラサは冷静にテレパシーを送り続ける。
 
『このまま、草原に移動してくれるのなら攻撃に出るつもりはない。そこならばこれ以上人間に余計なちょっかいを出される事も無いだろう。しかし、引かないのであればお前を攻撃せざるおえない』

 人の住む街と反対側の、緑豊かな草原のイメージを相手に送り込む。
 だが、相手は言葉を解さない類のモンスターだったようだ。
 いや、イメージやこちらの意思自体は伝わっているのだが、それ以上に何かに強い怒りを持っているらしく、サラサに感じ取れるのはその怒りの想いだけ。
 

「ニ匹いました! 一匹はなぜかじっとしていましたが、もう一体が激しく暴れていて‥‥危険です!」
 偵察から戻った茜が状況を説明する。
「仕方がない、やるしかないのか」
 できる限り戦闘を避けたかったサラサだが、こうなってしまっては仕方がない。
「おっかないけど、悪い獣さんには思えないからできるだけ、草原のほうに追い立てるだけにしてあげたいにゃ〜」
 カルルも聖剣を構えつつ、出来るだけ傷つけない方法を思案する。
「気が立ってるようですから、やっぱり退場していただきますね」
「退治とまでは行かなくとも、捕縛により此処ら一帯から恐竜を引き離す方法は、事を穏便に収められるなら最良と考えます」
 エレノアとシーナ、二人の魔法使いも構える。


「マジですばしっこいな、払うだけじゃきついか?」
 シンザンは冒険者に気づき襲い掛かってきた敵の攻撃を剣の鞘で払う。
 敵の足を切り捨てたほうがずっと早く、また彼はそれが出来る実力の持ち主なのだが、出来る限り敵を傷つけず、詠唱中の仲間を守りながら追い払うにはこの方法しかない。
「回避が追いつきませんっ」
 茜も時間を稼ぐべく敵を翻弄する為に飛び回るが、恐竜に良く似た、けれどもどこか違う敵の素早さと尻尾による攻撃範囲が中々にデンジャー。
「スマッシュはあんまり入れたくないけど‥‥ごめんなんだよっ!」
 カルルが攻撃を避けきれず、身を守る為に仕方なく敵の身体にスマッシュを入れる。
 けれど興奮している敵は痛みをあまり感じないのか、もう一匹を守るかのように必死に冒険者達を近寄らせまいとする。
「何故、もう一匹は動かない? まさか‥‥」
 サラサは嫌な予感に眉を潜め、シンザンに合図をする。
「もう一度だけ、テレパシーをさせてもらえないだろうか」
「おいおい、この状況で危険すぎるぜ‥‥うおっと!」
 シンザンの横を通り抜けて、シーナのアイスコフィンが迸る!!
 冒険者の見守る中、一瞬のうちに氷の棺に納められるクリーチャー。
「これなら、死ぬことはないのですよ〜」
 上品に扇で扇ぎつつ、シーナは微笑んだ。


●大切なのは‥‥。
「‥‥なるほど。エレノア、すまないがあのクリーチャーを動かすことは出来るだろうか」
 身動きをしないクリーチャーにテレパシーをしていたサラサがエレノアに頼む。
「ちょっと乱暴になりますが‥‥地の魔法は、大地の力。大地の力に耐えられますか? 重力反転!」
 エレノアが最小限度のグラビティーキャノンを発動し、身動きしないクリーチャーのすぐ横の岩に発動させる。
 ものの見事に直撃を食らった岩はそのまま直線状に吹っ飛び、その魔法の反動で横にいたクリーチャーがころんっと転がった。
「まぁ大変、トラバサミですね〜」
 ころがったクリーチャーの足にしっかりと挟まっているものを見てシーナは目を見開く。
 熊でも捕らえようとしたのだろうか?
 かなり大きい罠だ。
 転がされたクリーチャーは痛そうに呻く。
「とって上げないとですね。でもその前に、春風の術!」
 茜が苦しむクリーチャーに術をかけ、眠らせる。
 これで近づいても安全だろう。
 罠の解除を得意とする茜は難なくトラバサミを外す。
「それほど傷は深くないようだな」
 眠るクリーチャーの足元に膝をつき、応急治療技術をえているシンザンが傷を診る。
「やっぱり悪い子じゃなかったんだね〜。傷も浅いなら良かったんだよ♪」 
 外されたトラバサミの匂いを思わずくんくんとかぎながら、カルルははっとする。
「そだ、お宝は?! この近くにあるはずなんだよ!」
 サラサとシンザンがクリーチャーの手当てをしている間に、カルルと、カルルに引きずられるようにして茜もお宝を探し出す。
 子犬が掘り当てたお宝は、果たしてすぐに見つかった。
「随分多いです。これなら、荷馬車分を差し引いても十分余りますね」
 ニ匹のクリーチャーを草原まで運ぶには、やはり荷馬車でないと難しい。
 だがその代金もこの分なら十分そうだ。
「一件落着、だね♪」
 任務大成功に、カルルは壷を抱きしめてにっこりご満悦☆


●○月△日 カルルくんの日記♪
 カルルはかわいらしいハロウィンの羽ペンで、使い古しの羊皮紙にいそいそと今回の冒険を書き示す。
 日記には、こう書かれていた。

『クリーチャーは、ぼくたちを見てとっても怒っていて、でもなんとか怪我をさせずにすんだんだよ♪
 もう一匹の怪我をしていたクリーチャーも、何とか歩けるようだし‥‥もう人里近くには迷い出ないでくれるといいんだけどね。
 でも結局、あれってなんだったんだろ?
 恐竜?
 でも恐竜は、この辺にいるはずないし‥‥捨てられたペットが大きくなったのかな???
 シーナさんはバシリスクに似てるけど、色が全然違うし、毒もなかったみたいって困ってたよ。
 わかんないけど、金貨いっぱいだし、めでたしめでたし☆』