〜本を大切に!〜恐怖のG撲滅大作戦☆

■ショートシナリオ


担当:霜月零

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 72 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月18日〜08月21日

リプレイ公開日:2005年08月30日

●オープニング

 マルグリットの趣味は読書である。
 今日も彼女は勤め先の図書館の片隅でひっそりと読書に耽り、幸せな時間を過ごしていたのだ。
 ―その生物が現れるまでは。
 読書に没頭するマルグリットの足元を、スススーッとなにかが横切ったのである。
 初めは目の錯覚だと思いたかった。
 そんな動きをする生き物をマルグリットは1種類しか思い当たらなかったし、そしてそれはマルグリットがこの世で最も憎むべき生き物だったからだ。
(「気のせいよ、気のせい。落ちつくのよマルグリット。今は大好きな読書の最中じゃないの。わたくしは、なにも、見なかったわ」)
 額から流れる冷や汗をそっとハンカチで拭い、いま見てしまった黒光りする生物を忘却の彼方に忘れ去ろうとするマルグリット。
 しかしそんなマルグリットを嘲笑うかのように、太古の昔より存在するその生物はその存在をどーんとマルグリットに示すのである。
 彼女の読んでいた本の上に飛び込むという暴挙によって。
 それは名前を呼ぶのもおぞましい恐怖のG!
「○×Ψ※▲††ーーーーーー!!」
 言葉にならない悲鳴を上げて、バシッと勢いよくその生物ごと本を閉じて図書館を逃げ出すと、彼女は逃げ出したその足でそのまま冒険者ギルドに飛びこんだ。

「全財産払ってもいいです、あの、あの物体をっ、退治してくださいませ!!」 

●今回の参加者

 eb1617 時奈 瑠兎(34歳・♀・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb2179 クラウス・クラバート(61歳・♂・バード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2456 十野間 空(36歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3055 エイル・ウィム(31歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb3219 ハイラム・スレイ(29歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb3304 ライラック・グッドフェロウ(35歳・♂・バード・シフール・ノルマン王国)

●サポート参加者

アルル・ベルティーノ(ea4470)/ マリー・プラウム(ea7842)/ 明王院 未楡(eb2404

●リプレイ本文

●図書館
「マルグリットさんはいらっしゃらないのでしょうか?」
 まず図書館の構造について依頼人であるマルグリットに尋ねようと思っていたハイラム・スレイ(eb3219)が、問題の図書館の入り口であたりを見まわして呟く。
 長い銀髪の女性だと聞いていたのだが、それらしい人物が見当たらない。
「‥‥あそこにおられる方ではないか?」
 クラウス・クラバート(eb2179)が図書館の垣根に隠れるように、こっそりとこちらを伺っている銀髪の女性を指差す。
「マルグリットだね? そんなところで何をしているのさ?」
 ライラック・グッドフェロウ(eb3304)がフワリと舞い降り、銀髪の女性――マルグリットに話しかけた。
「‥‥Gが、でますのよ‥‥」
 図書館から目を逸らし、青ざめる依頼人。
 よっぽどゴキブリが怖いらしい。
「私もGは大っ嫌いだから隠れたくなる気持ちもわかるけど、あなたにもちょっと協力してもらわないと困るのよね。だからそこから出てきてくれない?」
 大またに垣根に歩みより、よっと掛け声をかけて垣根に隠れていたマルグリットを抱き上げて、引きずり出す時奈 瑠兎(eb1617)。
 マルグリットも決して小柄な女性ではないのだが、2mの身長を誇るジャイアントの時奈にかかると子供のようだ。
 抱え上げられて真っ赤になりつつ、「降ろしてくださいませ、Gは嫌ですわー!!」とじたばた暴れるマルグリット。
「マルグリットさん、大丈夫です。僕達が必ずGを退治して見せますから」
「ゴキ‥‥じゃなくて、Gが出たと聞いちゃあ、私も黙ってられないわね。必ず仕留めるから安心して。ね?」
 十野間 空(eb2456)とエイル・ウィム(eb3055)が説得し、マルグリットはしぶしぶ、本当にしぶしぶと図書館に入っていった。


●作戦は罠と掃除☆
 どこからともなく、歌が流れてくる‥‥。

 ♪〜
  そよ風が誘う、こんな日は外に出て行こう
     芝生にごろり、本を片手に木漏れ日を楽しむの
                         〜♪

「ん〜。なんだか外でお昼寝したくなってきたわね〜」
 んーと伸びをして、歌声に耳を傾けながらそう呟く時奈。
 ゴキブリ退治の前に図書館の掃除をする事になり、本を風通しの良い日陰に移動させていたのだが、先ほどから流れ出した歌に心惹かれる。
「時奈さん、駄目ですよ。これは、お客様向けの歌なのですから」
 とろんとした瞳を擦りだす時奈に、十野間が注意を促す。
「だって、マリーの歌声が綺麗なんだもの。わかってるけど誘われるのよ」
 肩を竦めて苦笑する。
 時奈の友人のマリーは、時奈たちが図書館に湧いたゴキブリを速やかに片付けられるように、館内のお客様に心地よくご退場願うべくメロディーを唱えて歌ってくれているのだ。
「まあ、確かに綺麗だけどさ〜それでおいら達が虜になっちゃったら仕事にならないんだよね〜。さあ、さっさと片付けちゃおうよ」
 ライラックがパタパタとあわただしく飛んで急かす。
 シフールであるライラックは人間サイズの本を持ち上げる事は出来ないから、その辺の作業はどうしても人任せなのだ。
 その代わり、恐怖のGを撃退するべく必殺の技を用意していたりする。
「ライラック殿、それはなんですかな?」
 適度な大きさの壺を数個抱えたクラウスがライラックの用意した罠を見つめて首を傾げる。
「やっぱりさ〜素早い相手は罠に嵌めるのが良いよね〜。毒殺に拘束なんて最高だね〜」
 わくわくと自作の罠をクラウスに見せるライラック。
『毒殺』は、人にとっては弱めだが虫になら致死量に至るであろう毒草を、保存食に混ぜてゴキブリの餌を作り、出現しそうな場所に置いておく罠。
 ただし、ライラックは植物についてはそれなりに知識はあり、毒草の見分けはつくものの毒物についての知識は乏しいから、どこまでゴキブリに対して有効活用できるかは不明。
 まあ、食べたらただでは済まないと思うが。
『拘束』は、粘着剤等を塗った布などに、餌を置いて捕まえる罠だ。
 設置場所も、先ほどライラックが図書館の中をくまなく飛び回って調べたところ、数カ所、ゴキブリがよく通りそうな場所を見つけていたのでそこに設置予定。
「ほうほう、これはこれは立派な罠ですな。わしも一応罠を作ってきたのだがどうだろうか?」
 ライラックの罠に感心しつつ、手にしていた壷を見せるクラウス。
「それはどうやってつかうのかしら?」
 エイルも興味深々に覗きこむ。
「これはだな、中にゴキブリ用の餌を入れて壷の中にバターを塗り、中に餌をとりに入ったゴキブリはバターで足を滑らせて外に出れなくするのだ」
「ゴキブリは飛べるんだよね〜。それだけだと飛んで逃げるんじゃない?」
「いやいや、それはわしも考えておる。ゴキブリが中に入ったらすかさず蓋をして逃げないようにするのだ」
「‥‥ずっと見張っているんですか?」
「む、むぅ‥‥」
 エイルの突っ込みに、押し黙るクラウス。
「壷の底が隠れる程度に水か油を入れておけばいいと思うんだよね〜。そうすれば飛べないだろうしね〜」
「おお。そうか、その方法があったか。うむ、油をちと借りてくるのである」 
 ライラックの助け舟にクラウスは大きく頷いて、マルグリットにランタンなどの油を貰いにいった。
「祖国では『御器かじり』からその名が付いたと言う逸話もある位ですし、大切な書物にとっても決して良い相手ではないですね。病気を運ぶ存在でもありますし、早めの駆除と参りましょう」
 ライラックと同じように罠を作っていた十野間も作業の手を早める。


●ごきごきぶりぶり大行進!
「いーやぁーーーーーーーーーーーっ!!!」
 静かな図書館にマルグリットの絶叫が響き渡り、
「本棚の左端に、1‥‥3‥‥5匹逃げていきます!」
 ハイラムがそのすばらしい聴力によって隠れて見えないゴキブリの数を正確に辿っていく。
 ブーン‥‥ぴとっ!
「うぎゃあああああっ、パリにも居たのね、人類の敵!!!」
 時奈の顔面目掛けて引っ付いてきたゴキブリを振り払い、お手製のハリセンで渾身の力で叩き潰す時奈。
「忘れもしない‥‥実家にいた頃、大事な内容を書いた手紙の上にインクを盛大にぶちまけられた恨み‥‥! あれ書き直すのにどれだけ手間かかったと‥‥待ってなさいよG。必ず、一匹残らず殲滅してやるからっ!」
 ぶちぶちとゴキブリに対する深い恨みを込めて、メイスをドゴーンドゴーンと盛大に振りかざして一匹、また一匹とゴキブリを叩きのめしていくエイル。
「よもやまさかこんな事態になるとは‥‥たったいま、左の本棚へ隠れたゴキブリにムーンアロー!」
 大量発生しているゴキブリに混乱しながらも、的確にムーンアローで撃破していく十野間。
「ふむ。ゴキブリとはかくも素早く動く生物であったのだな。‥‥真昼にもその姿を失せず大地を見守る月よ、かの者の姿を白く照らしその動きを束縛するちからを貸し与えたまえ‥‥シャドウバインディング!」
 冷静に。
 限りなく冷静にゴキブリがぶんぶん飛びまわる図書館で状況を判断しつつ、素早いゴキブリの動きを止めるべく呪文を唱えるクラウス。
 いままさに逃げ出そうとしていたゴキブリが、足もとの影に囚われて身動きできなくなっている。
「ゴキブリって飛ぶってわかってたけどさあ〜おいらたちが掃除し終わるまで出てくるのを控えてくれたっていいじゃんねえ〜?」
 飛びかかってきたゴキブリをひょいっと横に避けてぼやくライラック。
 そう、ゴキブリは飛ぶのだ。
 素早く動くのだ。
 ゴキブリたちに冒険者達の事情などかまう義理も知能もない。
 掃除していた冒険者達に刺激されたらしく、まだ途中だったのに図書館のあちらこちらから一斉に湧き出してきたのだ。
 そのうちの何匹かはクラウス、十野間、ライラックの仕掛けた罠に嵌ったようなのだが、数が半端じゃないために全てのゴキブリを罠に嵌める事は出来ず、『ブーンブーン』『カサカサカサ』と独特の嫌な音を立てて図書館中をゴキブリたちは逃げ回る。
「いやっ、いやあっ、いやああっ、神よ、どうかわたくしたちをお守り下さいませですわ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「マルグリットさん、どうか落ちついてください。図書館は私も大好きな場所です。マルグリットさんを始めとする、利用者の静かな憩いの場を守るのは冒険者としての私の義務です。お守りいたします!」
 半分錯乱しかけているマルグリットをハイラムは背に庇い、手にした棍棒でハイラムとマルグリットの足元に走り寄ってきたゴキブリを退治する。
「‥‥生き物の命を奪うことは心苦しいのですが、過去の事象を現在まで伝えてくれている貴重な記録を守るため見逃すわけにはいきません‥‥」
 ゴキブリとはいえ命あるもの。
 出来れば殺したくはなかったが、この状態では退治するよりほかはない。
 重い気分でそれでも図書館のためにゴキブリを退治していくハイラム。
 その隣で、
「くらえ〜! 天誅アターック!」
 ゴキブリに本気のスマッシュを食らわせて止めを刺す時奈。
 武道大会優勝経験を持つ彼女の渾身の一撃を受けたゴキブリたちは為す術もなくパタパタと天に召されていく。
 次々と襲い来るゴキブリ達を冒険者が全て退治したときには、もうもう図書館は凄まじい状態になっていた。


●お掃除はこまめにね☆
「やあっと片付いたわね」
 ゴキブリ退治中に勢い余って思わず倒してしまった本棚を、時奈と一緒に起こし終わったエイルがほっと溜息をつく。
「こちらも終わりました。数冊、違う分類の本が紛れ込んでいましたが、こちらも片付け終了です」
 図書館を見まわり、違う場所に本が納まっていないか調べてきたハイラムが微笑む。
 その手には以前からハイラムが見たかった本があった。
 図書館を見まわるついでに見つけたのだ。
「綺麗な図書館‥‥素敵ですわ」
 ゴキブリがいなくなり、綺麗に片付けられた図書館を晴れ晴れとした顔で見まわすマルグリット。
 しかしそんなマルグリットに、
「まあ、まめに整理整頓、掃除をしないと‥‥また出るよね〜きっと‥‥」
 と脅かすライラック。
 ビクッとするマルグリット。
「折角駆除しても、卵が残っていては意味がないですからね。こまめな清掃は肝心です」
 と卵の駆除もしていた十野間も釘をさし、
「ゴキブリが苦手なハッカ油やペパーミントを多く置いてゴキブリが近付けないようにするのも手よ」
 時奈が2度とゴキブリが湧かないように対処法を提案し、
「マルグリットは動物は好きであろうか? ゴキブリ退治や鼠の被害の対策にネコを飼ってみてはどうか? ‥‥尤も、猫は爪を良く研ぐのでな、マルグリットが動物に詳しくなければかえって逆効果になる可能性もあるのだが」
 クラウスが猫を飼うことを勧める。
 マルグリットは冒険者達の助言に大きく頷き、二度とGを増やさないと心に誓ったのだった。