【ボクらの未来】はじめの一歩
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月08日〜08月11日
リプレイ公開日:2007年08月16日
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●オープニング
とうとう、この日が来ちゃった。
今日、ぼ‥‥オレはこの療養所を出て行く。
昨日はフィーが両親に手を引かれ、来た時よりも大きな荷物を抱えて元気に帰って行った。
でも、オレには迎えに来てくれる人もいないし、家に帰るつもりもない。
オレの荷物は来た時と同じ、着替えくらいなもんだ‥‥あ、でもジョンが増えたか、荷物じゃないけど。
それに‥‥うん、荷物は増えてないけど、ここに来てから増えたものは、いっぱいあるな。貰ったものとか、気付かせてくれたものとか。
今度はオレが、自分の出来る事で恩返しをする番だ。
‥‥って言っても、何が出来るのか、まだよくわかんないんだけど。
冒険者になるにも、職業を決める必要がある。
それに、住む場所も要る。
騎士になる為の訓練は小さい頃からさせられてたから、騎士になるのはそんなに難しくないと思う。
だけど、父さんから叙任を受けるのはまっぴらだ。
どうせなら、皆が言ってた‥‥強くて優しくて、やたらに剣を振り回したり、怒鳴ったり威張ったりしない、弱い人や病気の人を絶対に見捨てたりしないような、そんな騎士が本当にいるなら、ぼ‥‥オレはそんな人の下で騎士になりたい。
‥‥小さな荷物を抱えて、ぼんやりと窓の外を見ていたオレに、シスターが一通の手紙を差し出した。
「退院おめでとう、ウォル」
「うん、ありがと。‥‥これは?」
「あなた、冒険者になりたいんでしょう? これは、その最初の仕事よ。この手紙を、ある方の所へ届けてほしいの」
ある方、って言われても、手紙には宛名もない‥‥差出人も。
「‥‥誰に届けるの?」
「それは秘密」
と、シスターは悪戯っぽく微笑んだ。
何だか顔が赤い‥‥って事は、届ける相手は男だ。しかも若くて、わりと美形っぽい部類の奴。
「それを持って冒険者ギルドに行ってごらんなさい」
そうすれば、わかるらしい‥‥シスターがトキメいた相手の正体が。
何だかよくわからないけど、とにかくこれが、ぼ‥‥オレの初仕事だ。
「じゃあ、行って来るね」
「ウォル」
そう言って歩き出したオレに、シスターが言った。
「違うでしょう? あなたはもう、ここへは戻らなくていいのよ?」
‥‥そうだった。
もう、ここには戻れない‥‥そう思ったら、何だか急に胸が苦しくなった。
「でも‥‥遊びに来るなら、良いよね?」
「ええ、勿論。いつでも歓迎するわ」
シスターはそう言って、オレをぎゅっと抱き締めた。
「えーと、確かここを曲がって‥‥」
ギルドまでの道順はちゃんと覚えてる。
橋を渡ってすぐ‥‥ほら、あの川の向こうに見えるのがそうだ。
と、その時。
道の向こうから乗り手のいない馬が物凄い勢いで走って来た。
皆慌てて道の両側へ避ける。ぼ‥‥オレもジョンと一緒に道の端に避難したその瞬間、道を渡ろうとしたネコが蹄にかけられて‥‥道の端に転がった。
‥‥よく見なかったけど、首とか背中とか、嫌な形に折れ曲がってて‥‥多分、ダメだ。
ネコだけじゃない、こんな町中で暴走したら、いつか人間も‥‥いや、もう誰かがこうなってるかもしれない。
オレも走ってる馬に飛び乗る方法は教わった事があるけど、でも怖くて出来なかった。
まして、こんな風に暴走してる馬なんて‥‥
その時、馬の目の前に誰かが飛び出した。
ああ、ぶつかる!
他の人もそう思ったんだろう、沿道から悲鳴が上がって、オレも思わず目を瞑った。
‥‥でも、何も起きなかった‥‥って言うか、すごい事が起きてた。
悲鳴が歓声に変わる中、恐る恐る目を開けてみると、道の向こうにあの暴れ馬がいた。
もう、走ってない。興奮した様子で足踏みはしてるけど。
その背に跨って首筋を撫でてるのは、さっきのあの人だ‥‥どうやらあの状態で馬に飛び乗ったらしい。
一体、どうやったんだろう‥‥ああ、ちゃんと見とけばよかった!
暫くして馬がすっかり落ち着いた頃、持ち主らしい人が息を切らして走って来た。
こっぴどく怒られて、官憲にでも突き出されるのかと思ったけど‥‥ちょっと注意されただけで無罪放免みたい。
怪我人も出なかったし、どうやら不慮の事故だったからって事らしいけど‥‥良いのかなあ?
持ち主が馬を引いて帰った後、その人はオレのいる方へ歩いてきて、道端にしゃがみ込んだ。
‥‥あ、ネコ。
その人は馬に蹴られたネコを抱き上げると、近くの路地に入って行った。
どこか土のある所でも探して、埋めてあげるのかな。
ちょっとだけ、後をつけてみようか‥‥
「うわっ!」
路地に入ろうとしたオレの足下を、何かが物凄い勢いで走り抜けて行った。
「あれ‥‥あの模様‥‥」
さっきのネコ?
でもあれ、どう見ても死んでた‥‥よね?
路地の奥を探してみたけど、あの人はもう、どこにもいなかった。
「‥‥あ、そうだ、ギルド!」
忘れるとこだった。
とにかく、ギルドで用事を済ませなきゃ!
「ああ、ウォル君だね?」
「あ‥‥はい」
目の細い受付係の人は、ぼ‥‥オレの顔を見るなりそう言って、1枚のメモを手渡した。
「次に行く場所は、このメモに書いてあるからね」
どういう事?
メモには、こう書かれていた。
『店を出てすぐ、川の真ん中で四方を見渡せ』
どういう意味?
「その場所で、よ〜く探してごらん。次のメモが見つかるよ」
受付係の人がそう言った。
でも川の真ん中って‥‥泳げって事?
いや、そのへんのどこかにメモが隠してあるらしいから、水の中って事はない、よな?
「‥‥橋の‥‥真ん中?」
オレはさっき渡ってきた橋の真ん中へんで立ち止まって、周囲をぐるっと見渡してみた。
「へえ、ここって結構見晴らし良いんだ?」
さっきは気付かなかったけど‥‥すぐそこに教会が見える。その向こうにはお城。それに、川風が気持ち良い。
「おっと、メモメモ‥‥」
あった。欄干の隙間に何かが挟まってる。
なるほど、こんな感じでメモを探して行けば、宛先に行き当たるって事か。
さて、次の隠し場所は‥‥?
●リプレイ本文
ウォルがメモの案内に従って最初に訪れたのは、ギルドのすぐ近くにある酒場だった。
「でも、ここのどこに次のメモがあるんだろう?」
まだ昼間だというのに結構な人数がたむろしている店の中をキョロキョロと見回すウォルに、ウェイトレスがミルクを差し出す。
それは陰守森写歩朗(eb7208)が予め注文しておいた物だが、ウェイトレスはそれを明かさなかった。
「ありがとう、いただきます!」
誰の奢りかわからないが、とりあえず有難く頂いたウォルがふと見ると、ミルクを乗せたトレーの上に小さな紙切れが乗っている。
『主要成分が塩と水と微小な石で、木の浮遊が確認できる場所で風が吹く方向にある火の側を見ろ』
次の行き先らしいが‥‥何の事やらさっぱりわからない。
「塩と水‥‥塩水?」
そう言えば海の水は塩辛いと聞いた事がある。が、このキャメロットは海に面してはいない。
「まさか海まで行けって事‥‥うわ!」
「気を付けろ!」
酒場を出て、考え事をしながらボンヤリと歩いていたウォルは、誰かにぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい!」
慌てて謝るが、ぶつかった相手が悪かった‥‥と言うか、ウォルの何となく育ちが良さそうな雰囲気を見てカモだと思ったのだろう、わざとぶつかってきたような節がある。
「あーあ、見ろ、服が汚れちまった‥‥こいつは弁償だなあ‥‥坊や、カネ持ってんだろ?」
こういった類の連中が吐く台詞は、どいつもこいつも変わり映えがない。これがどこかの誰かなら、ぶん殴る前にニッコリ笑って嫌味のひとつでも言い返し、火に油を注ぐ所だが‥‥
世間の荒波に揉まれた事がないウォルは、自分に非があると素直に思い込んでしまったようだ。
「‥‥ちょっとあなた、未来の錬金術師をいじめてはなりませんよ」
ネチネチと絡み付き、終いにはウォルの胸ぐらを掴もうとした男の手を、誰かが払い除けた。
それはボールスから護衛を引き継いだエリス・フェールディン(ea9520)だったが‥‥その途端、彼女の髪は逆立ち、瞳が深紅に染まる。
「このわたくしに逆らうなんて、良い度胸ですわね。身の程をお知りなさい!」
同時に、どこからか飛んできた怪しい液体が男の頭上にぶちまけられる。
その液体の何とも言えないニオイと、目の前の女性の豹変した様子に男は驚き、尻尾を巻いて逃げていった‥‥が、驚いているのはウォルも同じ。
「さぁ、あなたも錬金術を学んで‥‥」
と、早速勧誘に走るエリスにペコリと頭を下げ手短に礼を言うと、ウォルは慌ててその場を離れた。
「ああ、びっくりした」
絡んできたチンピラにも、助けてくれた女性にも。
少し落ち着いたウォルは、改めて先程のメモを読み返してみる。
「木が浮かんでる所‥‥?」
目の前には船着き場が見える。そこに浮かんでいる船は確かに木製だが‥‥
「でも、火なんてどこにも‥‥あ」
ぐるりと周囲を見渡したその目の端に、ちらりと気になる物が映る。
薪の山に挟まれて風に揺れていたそれは、やはり目当てのメモだった。
「ウォルさん‥‥大丈夫でしょうか‥‥倒れたりとかしなければ良いのですが‥‥」
こっそり後をつけるつもりが、いつの間にかその姿を見失ってしまったサクラ・フリューゲル(eb8317)は、城の出口付近で右往左往していた。
「いえ! ウォルさんならきっと大丈夫! 信じています。‥‥信じていますけど‥‥ああ‥‥やっぱり心配です」
すっかり心配性なお姉さんだ。
「‥‥サクラ?」
「きゃあっ!」
突然後ろから声をかけられ、サクラは飛び上がる。
振り向いたそこには、見違えるほど元気そうなウォルが立っていた。
「ウォルさん‥‥?」
そう言えばウォルが自分の足で立っている姿を見るのはこれが初めてだ。
12歳という年齢から想像していたよりは背が低いのは、ここ1年余り病気で殆ど栄養を摂れなかったせいだろう。
「何してんの?」
まじまじと見つめられて少し照れながらウォルが言う。
「あ、いえ、その‥‥ウォルさんこそ、ここで何を?」
「ぼ、オレは‥‥仕事。ちょっと城に用があってね」
などと一人前のような口をきいてみる。
「あの、辛くはありませんでしたか? ‥‥父上の事を思い出されて‥‥」
「何で? 父さんは父さん、オレはオレだもん。そりゃ、鉢合わせするんじゃないかって、ちょっと怖かったけど」
父親との事は彼がどの道を行くとしても避けてはいけない事だろうが、どうやらその事についても心配は要らないようだ。
冒険で一緒になるかもしれないから、その時はよろしくと言って、ウォルは元気に次の目的地に向かって歩き去った。
『お皿に乗せたプティング、上から煙、お城の近く』
「う〜ん、またわかんないのが出てきた‥‥」
城の近くという事から、とりあえず高台に上って周囲を見渡してみる。
「煙、煙‥‥ねえ、ジョン。あれ‥‥プディングに見える?」
指差したのは、エチゴヤ。
そこでウォルは旅装束を手渡されたが、それがリデト・ユリースト(ea5913)からの退院祝いのプレゼントである事はまだ秘密だ。
店員に勧められてそれを着てみたウォルは、ポケットにメモが入っている事に気付く。
『人と物が集まり、色々な物が売り買いされている場所』
これはわかりやすい‥‥ウォルは市場の隅々まで歩き、一軒の露店で次の指令を見付けた。
『最も珍獣の多い街、白き狼の道。入り口近くの木陰に座って一休み。ゴールまでもう少し、あせらず休む事も大切ですよ』
「珍獣‥‥そう言えば、冒険者には色んなペットを飼ってる人が多いって聞いたっけ」
通りの名前を見て、白き狼とはフロストウルフの事だろうと見当を付け、通りの入口近くにある木に寄りかかる。
「こうやって待ってれば良いのかな‥‥?」
暫く後、木陰から二人の妖精が現れウォルの手にメモを渡して飛び去って行った。
「がんばれー」
「ばれー」
丁寧に折り畳まれた羊皮紙にはしかし、何も書かれてはいない‥‥その代わりに、一掴みの犬の毛が包まれていた。
その匂いを嗅いだジョンが嬉しそうに走り出す。
「あ、待てよ! ジョン!」
一方その頃。
猫屋敷ではパーティーの準備が着々と進められていた。
森写歩朗が金の煙草入れの蓋を開けながら部屋を綺麗に片付け、リデトがリボンや布で部屋の中を飾り付ける。
クリステル・シャルダン(eb3862)はエルと一緒に摘んできた庭の花をテーブルにセットし、手料理を並べた。
「えうのすきなの、いっぱいだねっ」
言われて、クリスはテーブルの上を見渡し、エルの好物‥‥という事はつまりボールスの好物ばかりである事に気付く。
「まあ、どうしましょう。今日の主役はウォルさんですのに‥‥」
「構いませんよ、料理は他の方も作ってくれていますし、ね」
丁度戻ってきたボールスが、こっそりと料理に手を伸ばしながら言い‥‥
――ぺしっ!
その手を軽く叩かれた。
「つまみ食いなんて、お行儀が悪いですわ」
だが、怒られている筈なのにボールスは妙に嬉しそうだ‥‥もっとも、怒っている方も頬を染めながらニコニコと微笑んでいたりするのだが。
その傍らではマイ・グリン(ea5380)が大皿に盛った料理をせっせと運んでいる。
彼女は夜明け前から準備に入り、ずっと休む間もなく料理の腕を振るっていたにも関わらず、とにかく元気一杯で活き活きとしていた。
今回はウォルの退院祝いという事で普段よりも更に気合いが入っている。余り無理をしないようにという周囲の声も耳に入らないようだ。
その時、庭の方で犬の鳴き声がした。
猫屋敷に辿り着いたウォルとジョンを最初に出迎えたのは、大きなイングリッシュセッターのセティだった。
「あれ‥‥ジョンと同じ犬だ」
どうやら手紙の届け先はこの家らしいと、セティと戯れているジョンをその場に残し、ウォルは玄関の戸を叩く。
やがて内側に開かれた扉を潜ったウォルの頭上に、花びらの雨が降り注いだ。
見上げると、先程の妖精が花びらを入れた小さな籠を揺らしている。妖精達はそのままウォルの両手を取ると、客間へと引っ張って行った。
「ウォル、退院おめでとうである! 良く来たであるな!」
「‥‥リデト!?」
それに、サクラやマイもいる。先日人形劇を手伝って貰ったクリスも。
「お疲れ様、キャメロット巡りは如何でしたか?」
後ろからボールスが進み出て、丁寧に頭を下げる。
「ウォルフリード君、ですね? 猫屋敷へようこそ。私はこの家の主、ボールス・ド・ガニスと申します」
「あ‥‥さっきの‥‥!」
馬を止めた人。それに多分、猫も生き返らせた‥‥それに、その名前はどこかで聞いた事があるような‥‥いや、今は仕事を終わらせるのが先だ。
「あの、ええと、お届け物です!」
だが、差し出された手紙をボールスは受け取らなかった。
「ありがとう。でも、それはあなたに宛てたものなんですよ」
ボールスは悪戯っぽく微笑む。
「開けてごらんなさい」
言われるままに封を切ったその手紙には、様々な筆跡でメッセージが書かれていた。
『退院おめでとうございます。マイ』
『おめでとうである! これから色々見て学んで遊んでウォルの良い道を進むである。私は協力を惜しまないである。リデト』
『錬金術は万能です。あなたも学んでみませんか? エリス』
『元気なウォルさんに会えて嬉しいです。ウォルさんの夢が叶うよう、心から応援していますわ。クリステル』
『退院おめでとう!! これから大変なこともたくさんあるでしょう。力になれることなら手を貸します。いつでも相談してね。陰・森』
『ウォルさんが元気になられたようで本当に嬉しいですわ♪ サクラ』
そして最後に『子供の遊び相手募集中。住込可』と書いてある。
「‥‥これって‥‥」
「私達からのお祝いですわ」
思いがけない展開に、顔とそしてちょっぴり目も赤くしたウォルにサクラが言う。
「初めまして、ウォル君。退院祝いのパーティーへようこそ!」
ウェイター姿がすっかり板に付いた森写歩朗が、飲み物を乗せたトレイを目の前に差し出す。
「おにぎりが気に入っていたとサクラさんに聞きましたので、色々と作ってみましたよ。後で食べてみて下さいね」
テーブルの上には所狭しと様々な料理が並べられている。魚や肉をすり潰した団子や、茹で野菜のサラダ。勿論おにぎりも本場では味わえないような多彩な具を入れた物が揃っていた。それに、夏場でも食が進むようにハーブでピリ辛に仕上げたスープパスタや、肉や野菜と一緒に炒めたパスタ、それにフルーツメインのサラダやベリーのパイ等々。
その中でウォルが最初に手を付けたのは、マイが作ったスープだった。
「これ、懐かしい味がする」
教えられたレシピで作って貰っても、どうしてもこれと同じ味にはならなかった。
「オレ、多分‥‥これのお陰で助かったんだ。料理ってスゴイな」
ウォルは料理の道に進む事も考えているようだ。でも、シスターみたいに病気の人や子供達の世話をするのも良いかもしれないと、早速エルに懐かれながら思ったりもする。それに、騎士もやっぱり捨てがたい。
先程、錬金術をしきりに勧める‥‥だがそれは諦めたらしいエリスから、騎士にも勉学は必要だからと貰ったイギリス紋章目録で調べた所によれば、この家の主は円卓の騎士であるらしい。だがその名前は確か、父が「あれはダメだ」と言っていた‥‥きっとイギリスの出身ではない事と、どう見ても強そうには見えない所がダメなのだろう‥‥父は見るからに強そうな人が好きだから。
だが、父が否定するからこそ、ウォルは少し離れた所で楽しそうに皆の様子を眺めているその人物に心を惹かれていた。
「‥‥どうか、ウォルさんを宜しくお願い致します」
自分が知る限りの情報をボールスに伝えた心配性のお姉さんは深々と頭を下げた。
それに、まだ進路をはっきり決めた訳ではないようだが、もし騎士の道を選ぶなら自分も色々と教えてやりたい。
「ええ、構いませんよ。いつでも遊びに来て下さい。あなたが居てくれれば彼も安心でしょうからね」
その視線の先では、ウォルがリデトが連れてきた大きなチーターに目を丸くし、驚きの声を上げていた。
「だって、こないだ見た時はちっちゃい子猫だったじゃん! しかも真っ白な!」
それを聞いてサクラはクスクスと笑った。
「では、私もぴよちゃんを見せて来ますね。この子も以前紹介した時は雛鳥だったんですよ」
立派な鷹を肩に乗せて立ち上がったサクラを見送ったボールスは傍らのクリスと顔を見合わせて微笑む。
「あの子は立派な騎士になるとリデトさんが言っていましたが‥‥」
「ええ、きっとどの道を選んでも立派になると思いますわ」
暫くは黙って見守ろう‥‥自分の足で歩きだした、その小さな一歩ずつを。