【美女(?)と野郎】お化け屋敷へようこそ

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月31日〜09月05日

リプレイ公開日:2007年09月08日

●オープニング

「いや〜、良い声だねぇ」
「良い声って言うか‥‥まあ、声量はあるよな、声に張りもあるし」
「そうそう、こういう勇ましい歌にはピッタリの声だ」
 キャメロット市内のとある酒場では、このところ毎晩のように風変わりな吟遊詩人のコンビが自慢の喉を披露していた。
 銀の髪を背に流したエルフのリュート弾きと、まだ幼さの残る顔には不似合いなほど筋骨逞しい体つきをした歌い手。
 彼等の演奏する曲は、どれも古今の英雄や神々の勲など、勇壮なものばかりだ。
「まあ、あの坊やに恋の歌はまだ早いだろ」
 誰かが冷やかし気味に言うと、すかさず横槍が入った。
「お前、場所を考えろよ。ここは俺達みたいな荒くれ者の溜まり場だぜ? 恋の歌なんか聞いて喜ぶ奴がいるかって」
 確かに上流階級のサロンや、それなりにお上品な人々が集まるような場所でなら恋の歌も喜ばれるだろう。だが、こんな場末の酒場には似合わない事この上もない。
「でもさ、聞いてみたい気はするよな‥‥あの姉ちゃんの歌なら」
 その声に、リュート弾きの細い眉がピクリと上がる。心なしか額に青筋も立っているような‥‥。
「ああ、そうだな。あっちの美人のリュート弾きなら、きっとトロけるような甘〜い声だぜ」
「いや、トロけるような声なら俺はベッドで聞きてぇ」
 ガハハ、と下品な笑い声が上がる。
 歌い手の青年が相棒に向かってちらりと心配そうな視線を向けるが、相棒は青筋を立てながらも何とか耐えたらしく、二人は無事に演奏を終えて店の奥へと姿を消した。

「‥‥よく我慢したな、レディ」
 間借りをしている酒場の一室に戻った歌い手の青年ガイは、まだ青筋を立てたままの相棒に向かって苦笑いをしながら語りかける。
 その言葉に返事もせず、レディと呼ばれた銀髪のエルフは荷物から筆記用具を取り出すと、一枚の羊皮紙に何事かを書き殴り、それを丸めてガイの顔面に投げ付けた。
「‥‥ったく、このオッサンは‥‥」
 ガイは床に落ちて転がったそれを拾い上げ、広げてみる。
 そこにはありとあらゆる種類の罵詈雑言と呪いの言葉が書き殴られていた。
「…あのな‥‥高いんだからヤメロよ、無駄遣いすんの」
 だが、レディはガイの荷物を勝手に開けると、そこからテレパシーのスクロールを取り出し、ガイに投げて寄越した。
 レディは何故か口がきけない。無駄な筆談で高価な羊皮紙を浪費されたくなければ、さっさと通訳(?)をしろという事らしい。
 溜息をつきながらそれを広げ、念じた途端‥‥怒りの感情と共に先程目にしたものよりも強烈な悪態の数々がガイに襲いかかる。
「俺に怒ったってしょーがないだろっ!?」
『客に怒って追い出されるよりはマシだろう』
 怒りを吐き出してスッキリしたのか、落ち着いた思念が返ってきた。
「誰のせいだよっ!?」
 そう、レディが客をブン殴ったせいで、今まで幾つの店をクビになってきたことか。ここを追い出されたら、もう行く当てはない。この場末の酒場が目下のところ最後の砦だった。
『それは奴等が悪い。この私を‥‥』
 女と間違えたりするから。
「いや、そりゃどー考えてもアンタのせいだろ。いいトシしたオヤジなんだから、それ相応のカッコしてりゃ誰も間違えたり‥‥」
 しない、とは言い切れない。
 例え髪を短く刈って、どこからどう見ても男物にしか見えない衣装を身に纏ったところで‥‥彼は恐らく「お姉さん」にしか見えないだろう。ましてや今のように髪を長く伸ばし、緩やかに曲線を描く薄手の長衣を纏った姿では間違えるなと言う方が酷だ。
「‥‥まあ、いいや。とりあえず仕事にあぶれずに済んだんだし」
 今日のところは。
「でもさ、ここ‥‥キャメロットに長くいるつもりなら、そろそろ仮住まいも終わりにした方が良くないか?」
 間借りしているこの部屋の家賃も給金から引かれているが、どう見ても割高に設定されている。かといって文句を言えば「じゃあ出て行ってくれ」と仕事も住処も失うのがオチだろう。
「下町のボロ屋でも借りたほうが安くつきそうだし、店をクビになっても寝る場所だけは確保出来るしさ」

 かくして、翌日から二人の住まい探しが始まった。
「う〜ん、どこも高いな〜」
 住宅を斡旋する業者の店内に張り出された物件の情報を眺めながら、ガイは溜息をついた。
 見かけに寄らず喧嘩っ早くトラブルに巻き込まれやすいレディの為に、治療費と、それにもしもの時にギルドに依頼を出す金はキープしておかなければならない。それに、今のところ収入も不安定だ‥‥もしかしたら、いや確実に、吟遊詩人よりも冒険者ギルドで仕事を受けた方が実入りが良い程に。
 なるべく安くて、そこそこ住みやすそうな家はないものか‥‥と、熱心に探すガイの目に、それは飛び込んできた。
「‥‥無料‥‥?」
 確かに、そう書いてある。
 キャメロットの市街地からも近く、間取りも広い二階建て。しかも庭まで付いている。なのにタダ。
「勿論それなりの理由はありますがね」
 業者は慣れた様子でそう言い、恐らく今までに何度も繰り返したであろうその説明を機械的に垂れ流す。
「今では家系も途絶えた、とある貴族の持ち物だったんですがね。もれなく憑いてるんですよ、幽霊がセットで」
 要するに、本物のお化け屋敷。
「一緒に住む度胸があるなら、鍵はいつでも誰にでもお渡ししますよ」

「‥‥どうする?」
 とりあえず借りてきた鍵をポケットの中で弄びながら、ガイがテレパシーで訊ねた。
『幽霊ごとき、退治すれば良かろう。悪いものでないなら同居すれば良い』
 レディは事もなげにそう答える。
 仕事のついでに酒場の客達から聞いたところ、その屋敷に憑いているのは少女の幽霊とポルターガイストのようだ。
 詳しい事はわからないが、その家の最後の主であった一家は音楽がとても好きだったらしい。そして、ポルターガイストはその頃から住み着いていた‥‥つまりは、一家と同居していたようだ。
 当時の事を知る者は既にいないが、屋敷で音楽会が開かれる時には必ず、リズムを取るような楽しげなラップ音が聞こえたらしいという噂が残っていた。
 どうもそのポルターガイストは通常のような、悪意のある存在ではないのかもしれない‥‥いわば変わり種という所か。だが、一家が次々と‥‥ある者は病気で、また事故で亡くなった事と、それが無関係であるという確証はない。
 少女の霊にしても、一家の誰かなのか、それともたまたまそこに住み着いただけの無関係な自縛霊なのか。悪意があるか否かもわからない。
『まずは調べに行くぞ』
「簡単に言うけどな、もし悪意てんこ盛りの相手だったら‥‥」
 ファイターのレディとレンジャーのガイには、幽霊に通用するような攻撃手段は殆どない。
『頼めば良かろう?』
 冒険者ギルドに。その程度の蓄えは残っている筈だった。


 ここ何十年も住む者がなかった屋敷の片隅。
 窓の鎧戸が閉め切られているせいで昼間だというのに暗く、埃っぽく、そして何となくカビ臭いその部屋には、弦の切れた古びたリュートが転がっていた。それに、折れた笛や太鼓のようなものも。
 その今では命を失った物達を、命のない少女が無表情に見つめていた。
 寂しげにも見える少女を慰めるかのように、皮の破れた太鼓がパン、と鳴った。

●今回の参加者

 eb5463 朱 鈴麗(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb7628 シア・シーシア(23歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb7636 ラーイ・カナン(23歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec1783 空木 怜(37歳・♂・クレリック・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「音楽好きの幽霊だぞ。悪いヤツなんていないだろう?」
 ギルドで依頼の内容を聞くなり、シア・シーシア(eb7628)はきっぱりとそう言い切った。
「それに、会ってみたいじゃないか、その少女の幽霊とポルターガイストに」
 友人の実に楽しそうな顔を横目で見ながら、ラーイ・カナン(eb7636)はそっと溜息をつく。
「エルフというのは皆好奇心の塊か」
 彼等はどうしてこう不思議な事が大好きで何でも面白がり、そして何にでも首を突っ込みたがるのか。
「確かにレディとは気が合いそうだな」
 それは種族の特性なのか、それとも職業柄なのか‥‥?

「こうすると俺、かなり年相応に見えなくね?」
 草ぼうぼうで荒れ放題になっている屋敷の庭で、レディの隣に立った空木怜(ec1783)が期待に満ちた視線を皆に向ける。
「てか、完璧にナイスミドルだよな‥‥な?」
「ふむ、年相応というのは二十歳くらいの事かのう?」
 誰もが遠慮して言うに言えない率直な感想を、朱鈴麗(eb5463)はスパッと言ってのけた。
「‥‥やっぱり‥‥俺はどうやっても年相応には見えないのか」
 皆に背を向け、地面に座り込んでのの字を書く怜。その肩をガイが労るようにぽむと叩く。
「気にするなよ。見た目の裏切り度じゃこのオッサンの方が遙かに上なんだからさ。これで百年以上生きてて、しかも男だなんて詐欺だよな?」
 それを聞いて、ロッド・エルメロイ(eb9943)は何故か僅かに頬を赤らめた。どうやらレディの事を女性だと思い込んでいたらしい。
「あ、いや‥‥失礼しました」
「いやいや、間違えて当然だから。気にしなくて良いって」
「‥‥というかまず、レディって呼び名がいろいろ問題じゃぁ‥‥」
 いつの間にか立ち直った怜が言う。
「まあ、心が真っ当に男なら俺はビシッと男と認めるけど」
「幽霊と同居しようという者じゃぞ? なかなかの男ぶりではないか」
 鈴麗はその度胸が気に入ったようだ。
「その、幽霊の事だが‥‥」
 ラーイがここに来るまでに調べた事‥‥と言うか、調べられなかった事を報告する。
「近所の者やこの屋敷に住んでいた一家のかかりつけの医者などが居れば話を聞いてみようと思ったのだが」
 何しろ昔の事だ。依頼人達が既に得ている以上の情報は掴めなかった。
「私も業者に聞いてこの家の代々の持ち主の履歴と、最初に異変が起きたのは何時頃かを調べてみたのですが、何しろ昔の事なので、記録もなかなか‥‥」
 と、ロッド。
「わらわも周辺で聞き込みをしてみたのじゃが、やはりここは本人に聞くのが一番じゃろう」
 言うなり、鈴麗は玄関のドアを開けると幽霊達に挨拶をしながら中に入り、おもむろに持参した太鼓を埃の積もった床に置いた。
「ポルターガイストの諸君、返事が『はい』なら一回、『いいえ』なら二回太鼓をならしておくれ」
 ――タム。
 早速、返事があった。一回という事は、わかったという事だろう。
「ふむ、言葉は通じるようじゃのう。ではまず‥‥少女の幽霊はこの家の者か?」
 タム。
「この家の一家全員が亡くなったのは、おぬしの仕業か?」
 タタタタタムッ!!!
 思いっきり否定したようだ。
「ふむ、どうやらこのポルターガイストは悪いものではないようじゃのう」
 タムッ!
「本人が言うのじゃから、間違いはなかろう?」
 ‥‥そうなのか?
「まあ、とりあえず僕達にも危害を加えるつもりはなさそうだし‥‥信用しても良いんじゃないか?」
 シアの言葉に、太鼓がひとつ「タムッ」と鳴った。

「しかし流石に埃っぽいな‥‥それにカビ臭い。掃除しないか?」
 薄暗い室内に足を踏み入れたラーイが窓の鎧戸を開けながら言う。
 まだ少女の幽霊は現れていないが、それと同居するかどうかは別にしても依頼人達がここに住むつもりなら綺麗な方が良いだろう。
「そうだな、僕はついでにもう少し彼等の事について調べてみよう。屋敷の中に手掛かりが残されているかもしれないし‥‥ああ、勿論君を疑っている訳じゃない」
 シアはポルターガイストに向かって言う。
「女の子の事をもう少し詳しく知りたいんだ」
「そうですね、もし天に返してあげるのが最善なら、その為の材料が必要でしょうし。私も探してみます。迷える少女‥‥悪意が無く事情が有るなら、そのままにするか救ってあげたい所ですね」
 と、ロッド。
「しかしこれ、鼠とか害虫の駆除の方が多分、要るなぁ」
 怜はで室内を眺め、溜息をついた。
「何十年も無人だったなら結構、住み着いてるぜ。奴らは衛生面では最悪だ。それから‥‥井戸はあるかな」
「ああ、外にあった筈だけど‥‥」
 ガイが答える。
「まだ生きててもすぐには使わない方が良いかな。念のため、しばらくは汲んでは捨てを繰り返して中身を入れ替えるのが無難だ。よくわからん病原菌にかかったら教会の治癒が役にたたない事もあるしな」
「へえ、詳しいんだな」
「ま、医者だからな。何かあったら俺を呼ぶか、雪狼通りの3番まで来なよ。多分、投薬治療になるけど料金は相談に応じれるから」
「ありがとう、覚えておくよ」
 先に井戸の掃除をしてくると言って外に出たガイを見送り、屋敷の奥へ進もうとしたレディを鈴麗が呼び止めた。
「これ、待つのじゃレディ。こんな埃っぽい所では、髪を結ばないと汚れるであろう?」
 振り返った彼の目は「掃除を手伝うつもりはないから大丈夫だ」と言いたげだったが、鈴麗はそれをあえて無視し、有無を言わさず嬉々として三つ編みを始める。
「折角綺麗な髪なのに勿体無い。のう、おぬしもそう思うじゃろ?」
 タム、と返事が返ってきた。

 それからというもの、冒険者達と依頼人のコンビはひたすら家の掃除に明け暮れた。
 何十年も溜まりに溜まった塵と埃とその他諸々が、そう簡単に綺麗になる筈もないし、何しろ屋敷は広い。
 しかしそれでも‥‥
「よし、残るはこの部屋だけだ!」
 屋敷の一番奥、位置的に恐らくは物置だろうと思われるその部屋のドアを開けた時‥‥。
 そこに、少女がいた。
 いや、いたような気がした。というのも、外の光が射した途端、少女の姿はふっとかき消えてしまったから‥‥。
「警戒しなくていい、僕達は君に危害を加えるつもりはないから‥‥出てきてくれないか?」
 シアが問いかけるが、少女は姿を現さなかった。
「仕方がありませんね。音楽が好きだという話でしたから、演奏会でも開けばまた出てきてくれるのではないでしょうか。それまで、そっとしておきましょう」
 ロッドの言葉に、シアも頷く。
「そうだな‥‥」
 ふと見ると、壊れた楽器達が乱雑に床に積まれている。
「仮にも吟遊詩人として、これをそのままにしておくのは忍びないな」
 シアとロッドは物置からそれらを運び出し、掃除は他の者に任せて修繕を始めた。
「工作なら得意だ、俺も手伝おう」
 ラーイが申し出、レディもそれに加わる。
「ふむ‥‥ここには何やら高価そうな物が詰まっておるのう。壊しても拙かろう、わらわもそちらに混ざるとしようか」
 だが、鈴麗にはまともに修理をするつもりなどなかった。最早どうやっても修復不能な楽器を改造し、ありあわせの物で即席の楽器を作る。
「修復には技術がいるし、第一面白くないではないか」
「‥‥で、結局掃除は俺達の仕事か?」
 残された怜が、ガイと顔を見合わせる。
「そうらしいな」
 ここ数日ですっかり意気投合した二人は、世間話をしながらせっせと手を動かす。
「本職のバードじゃないから吟遊詩人ギルドから斡旋受けれないのか?」
「いや、そんな事ないけど‥‥あのオッサンが『群れるのは嫌だ』とか言うからさ」
「なるほど、漢だな。でも俺なんか医者だろ? 医師ギルドに無許可で開業したりしたら役人の世話になっちゃうんだよなぁ」
 ブツブツ、ブツブツ‥‥。
 
 そして最終日。
 漸く人が住める体裁を整えた屋敷のホール、恐らく往事には毎晩のように演奏会が開かれたのだろうその場所で、冒険者達による即席楽団の演奏会が開始された。
「俺には歌も竪琴も無理だからな‥‥」
 躊躇うラーイにロッドが言う。
「私も演奏の心得はありませんが、適当に音を出す位なら出来ます。楽しく演奏致しましょう?」
 その言葉に背中を押され、ラーイも傍らの太鼓に手を伸ばしてみた。
 ――タム。
 遠慮がちに叩いたその音に「タタンッ」と軽快なリズムが加わる。
 どうやら、ポルターガイストが一緒に演奏しようと誘っているらしい。
 タム、タタン、タム、タタン。
「おお、なかなか良い感じじゃ。では、わらわも‥‥」
 と、鈴麗が自作の即席楽器を鳴らす。
 怜はそんなガラクタのような楽器の中から鈴を紐で束ねた物を拾い上げ、鳴らしてみた。
 ――タム、タタン、ジャラン、ポロン、シャン――
 そんな素人達の演奏とも呼べないような音に合わせて、本職のシアが得意の歌を披露する。そこにガイが加わり、二人でハーモニーを作り‥‥そしてレディは控え目な伴奏を付け加えた。
 やがて‥‥
 ホールの一角に、ぼんやりと少女の姿が浮かび上がった。
「いらっしゃい、アイリーン。これはあなたの為の演奏会ですよ」
 ロッドが声をかける。掃除の最中に見付けた記録によって、彼女の名前も、僅か8歳で亡くなった事も、そして一家の死が不幸な偶然が重なった結果である事もわかっていた。勿論、ポルターガイストのせいではない事も‥‥それどころか、一家がそれをポルちゃんと名付けて可愛がっていた事も。
『この二人が、君と一緒にここで暮らしたいそうだ』
 シアがテレパシーで呼びかけ、二人を紹介する。
『彼らは君に害を加えない。だから一緒に暮らしても良いか? しかも二人は吟遊詩人。毎日、歌を歌い楽器を奏でる。もう寂しくないぞ?』
 少女の表情は変わらない。だが、消えもしない。
 シアの心に、何となく嬉しそうな感情の波が返ってきた。
「幽霊と同居か‥‥」
 怜が呟く。
「ま、特殊な環境の方がインスピレーション? ってのが沸くかもな」