陸に上がった海賊ども

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月21日〜09月26日

リプレイ公開日:2007年09月29日

●オープニング

「お‥‥おかしらー! この船ヘンっスよぉ! グラグラ揺れてるっスー!!」
 海の傍に打ち捨てられた廃屋で、少年が柱にしがみつき、目に涙を浮かべながら悲痛な声を上げた。
「う‥‥き、きもちわるい‥‥っス‥‥」
 もう一人の少年は青白い顔で床に蹲っている。
「‥‥揺れてるのは船じゃねえ、お前らの体だ」
 お頭と呼ばれた男は深い溜息と共に、その恐ろしげな風貌からは想像も出来ないような優しい口調で二人の少年に言った。
「それに、これは船じゃねえ‥‥家ってモンだ」
 船は、沈んでしまった。
「まあ、ボロ船だったからな。仕方ねえ。今まで20年以上、よく働いてくれたぜ」
 と、お頭は遠く海の底へと想いを寄せる。
 彼等の住処であり、足であり、商売道具であり、そして全財産だった船。それが、この間の嵐で海の底に沈んでしまったのだ。
 幸い、乗組員は全員無事に陸に上がる事が出来たが、彼等のモットーは「海の男は海に生き、海に死ぬ」だった。生活に必要な物のほぼ全てを海の上で賄い、余程の事がない限り陸に上がる事はない。二人の少年に到っては生まれてこの方、船を下りた事さえなかった。
「おかしらぁ〜、もうこんなグラグラするとこイヤっス〜!」
「船に帰りたいっス〜!」
 船の揺れに合わせて無意識に体を揺らしてバランスを取る、そんな生活に赤ん坊の頃からどっぷり浸かっていた為に、揺れない地面の上ではかえって具合が悪いらしい‥‥船酔いならぬ家酔い、という所か。
「しかし‥‥さて、困ったな‥‥」
 苦しむ二人の少年の姿に、お頭は一刻も早く代わりの船を手に入れて、海へ帰りたいと願う。が、彼等は今、無一文。水や食糧を買う金さえない。願っても無い袖は振れないのだ。
「お頭、ここはひとつ海賊らしく、一発ガーンと行きやしょうぜ、ガーンと!」
 お調子者の手下が陽気に言う。
「港には船なんぞいくらでもありやすぜ! あれをガーンと奪っちまいやしょう!」
 そう、彼等は海賊だった。いや、今でも海賊のつもりではいるのだが‥‥
「そうは言ってもなあ」
 お頭は溜息をつく。
「俺たちゃ確かに海賊だ。だが、お前等‥‥あの二人の目の前で堅気の船を襲う、そんな事が出来るか?」
 言われて、手下達は二人の少年に視線を向ける。
 彼等は昔、その海域で最も恐れられた凶悪な海賊だった。しかし10年ほど前のある日‥‥嵐の中で難破船から気紛れに二人の赤ん坊を助けて以来、彼等はすっかり人間が丸くなってしまったのだ。
 その日から、彼等は強奪をやめた。いや、他の船を襲いはするのだが、目当ては水と食糧、そして赤ん坊のミルク。金目の物には目もくれず、とにかく気紛れに助けてしまった可愛い二つの命を守り、育てる事しか眼中になくなってしまったのだ。
 ヨーとピッチと名付けた二人を海賊ではなく、真っ当な海の男に育て上げる事、それが目下の彼等の目標であり、使命だった。
 二人の赤ん坊に骨抜きにされた、そんな変わり種の海賊の話が評判になり、やがてその海を行く船の多くには、少し多めの水と食糧、時には子供の為のお菓子やおもちゃまでが積み込まれる事になった。海の上で彼等に出会い、施しをすれば航海の安全が保証される、そんな伝説が、いつの間にか出来上がっていたのだ。
 いや、伝説ではない。実際に彼等は、自分の縄張りを犯す他の海賊どもから堅気の船を守ってくれているのだから。水や食糧の援助はその代価として当然の事だった。
 そう、今や彼等は海の平和を守る守護者なのだ。
「でもお頭、奴等の船を襲うなら問題ないんじゃないっスか?」
 と、別の男が言う。
 奴等とは、近頃この海域に出没するようになった新参者の海賊達の事だ。
「奴等の船は新しいっスからね。あの嵐の中でも大した被害は受けなかったらしいっスよ。奴等、今は修理の為にこの先の入り江に潜んでんス。俺、さっき食い物探しに行った時に見たんス!」
「なるほど、奴等を片付けて、ついでに船も奪えりゃ一石二鳥だな」
 お頭はその傷だらけの顔に、海賊時代に培った凄味のある笑みを浮かべた。
「だが‥‥奴等は確か20人からいやがる筈だ。こっちはその半分もいねえ。おまけに得物は今、腰に差してるサーベル一本‥‥他は全部、船と一緒に沈んじまった。これで、勝てると思うか?」
「そんな時には冒険者ギルドっスよ、お頭! ギルドで人を雇えば良いっス!」
「馬鹿野郎、俺たちゃ海賊だぞ。犯罪者だ。それに船の強奪なんぞにギルドが手を貸すと思うか!?」
 そんなお頭の言葉に、手下の一人が苦笑いを浮かべながら言った。
「お頭‥‥いいかげん認めやしょうぜ。俺たちゃもう、海賊にゃ戻れねえ。どっからどう見ても、真っ当な海の男ですぜ?」
 お頭の、恐ろしげな風貌以外は。
「言われてみりゃ‥‥そうっスね。まあ、自称海賊とか、海賊気分ってのはアリだと思うっスけど」
「まあ昔はさんざん悪どい事もしたっスけど、もうチャラになってるっスよ、きっと。俺達、今や正義の味方っスから」
「あの子らの為にも、海賊どもをガーンとぶっ潰して平和な海にするっス!」
「お天道様はきっと見てるっス!」
「そうだ、海賊退治のご褒美に船を貰えば良いっスよ、お頭!」
 手下達に口々にそう言われ、お頭は深く溜息をついた。
 確かにもう、戻れない。実のところ戻りたいとも思ってはいなかった。人々に海賊として恐れられ武器を向けられるよりも、海の守護者として感謝され、時には互いの船に乗り込んで盃を交わす‥‥その方が遙かに良いと、特に最近になってそう感じるのは歳のせいか。
「‥‥わかった。お前等の言う通りにしよう」

 かくして数日後、キャメロットの冒険者ギルドに海賊退治の依頼が張り出されたのだった。
『求む・海賊討伐隊。相手は入り江に停泊中の船に潜む海賊20人強。現地までは当方が案内します。場合によっては当方の加勢も可。報酬は出来高払いにて』
 その依頼書の、依頼人の欄にはこう書かれていた。
『海の平和を守る男達・名称募集中』‥‥と。

●今回の参加者

 ea2756 李 雷龍(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3415 李 斎(45歳・♀・武道家・ドワーフ・華仙教大国)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6557 フレイア・ヴォルフ(34歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea9669 エスリン・マッカレル(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb8942 柊 静夜(38歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec3138 マロース・フィリオネル(34歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

メグレズ・ファウンテン(eb5451

●リプレイ本文

「依頼人は、海賊の被害を受けた商人‥‥ではないのか。海における自警団のようなもの、か?」
 それにしては、お世辞にも人相が良いとは言えなかったが‥‥。
 エスリン・マッカレル(ea9669)は、ギルドで会った『海の平和を守る男達』の印象に何か釈然としない思いを抱きつつ、愛騎ティターニアを駆る。
 他の仲間達も似た様な印象を抱いたようで、先行して情報収集に当たった者達は相手の海賊についての調査と併行して、依頼人達の情報も集めていた。
 そして‥‥
「悪いが、少し調べさせて貰った。どうにもカタギには見えないんでね」
 依頼人達が根城にしている廃屋で仲間と合流し、それぞれの調査結果を付き合わせて出た結論。リ・ル(ea3888)はそれを彼等に告げた。
「冒険者ギルドを欺くと恐いぜ、隠し事があるなら言ってくれ。大丈夫、俺達だって別にキレイ事ばかりじゃないんだ、悪事じゃないなら協力するぜ?」
「正直に答えて欲しい。貴方達も元か‥‥」
「待て」
 海賊ではないのかと問おうとしたエスリンを制し、厳つい顔をした頭が小声で言った。
「ガキ共には聞かれたくねえ‥‥わかるな?」
 その鋭い眼光に射すくめられ、エスリンは思わず息を呑む。
 手下が二人の少年を外へ連れ出したのを確認すると、頭は小さく溜息をつき「そうだ」と、自分達が元海賊である事‥‥いや、当局にとっては今でも現役の海賊であり、賞金首である事を認めた。
「どうする? 俺達を突き出しゃ、楽して賞金が手に入るぜ?」
 彼等は今、丸腰だ。それに、抵抗する気もないようだった。確かに楽な仕事ではある。だが‥‥
「冒険者をナメて貰っちゃ困るね」
 と、李斎(ea3415)が腰に手を当てニヤリと笑う。
「あなた方が罪人かどうかは、港の方々に聞いてみれば判ります」
 柊静夜(eb8942)が微笑んだ。実際に聞いて回ったその評判がどんなものだったか‥‥それは言うまでもないだろう。
「過去は過去として、今は今の事に集中致しましょう」
「‥‥素性を知った以上は騎士として見過ごせぬが‥‥戦いの後にご領主に過去の所業を全て告白した上で、償いとして海の安全を守ると神の御名に懸けて誓えるだろうか? その誓いがあれば、罪を不問に付し船を使わせるようご領主等に進言してもいい」
 エスリンの言葉に、頭は口の端を歪めた。
「この10年、そうしてきたつもりだが、な」
「実績を見せる為にも、手伝ってもらった方が良さそうですね。よろしければ、これをお使い下さい」
 静夜は荷物からハンドアックスと、盾、それに皮鎧を取り出した。
「私からも、これを。手を貸して頂けますか?」
 マロース・フィリオネル(ec3138)も武器と防具を差し出す。
「ありがてえ。だが、武器だけで充分だ。海の男は攻撃あるのみ、食らったら黙って海に抱かれる‥‥それが俺達の流儀さ」
「良いねえ、その潔さ。鎧を着込んだヤツがいない戦場って、あたし好み。期待しててね」
 斎が自慢の髭をさりげなくアピールしながら片目を瞑って見せた。

 冒険者達は町の盛り場で得た情報を元に、依頼人と供に襲撃計画を練る。
 問題の船は修理もあらかた終わり、町に出ていた乗組員達も既に殆どが船に戻っているようだった。
「修理が終わっているなら、頂くには好都合ですね」
 李雷龍(ea2756)が言う。
「ええ、余計な傷を付けない為にも、陸で戦えれば良いのですが‥‥」
 と、アクテ・シュラウヴェル(ea4137)。しかし海賊達が船に戻っているなら、それは難しいかもしれない。
「多少の傷は、我慢して頂くしかないかもしれませんね」
「戦の傷は船の勲章だ、遠慮するこたぁねえ。ただ、火だけは気を付けてくれよ」
 マロースの言葉に頭が言うが、勿論火の扱いについては充分に注意するつもりだ。
 そして、襲撃は夜明けと決まった。
「‥‥正に海の男という感じの方々ですね」
 打ち合わせが一段落し、休憩のために外に出たアクテが依頼人達の印象を誰にともなく呟く。
「顔が少々怖いような、でもまぁこの位なら冒険者でも色々な方々いますし‥‥」
 少年二人との取り合わせが少し意外な気もするが、海の上では皆家族なのだろう。彼等を見る視線が優しい事に、アクテは好感を持っていた。
 そんな彼女を物珍しげにじぃ〜っと見つめる目玉が4つ。振り向くと、それは慌てて小屋の影に隠れてしまった。
「あの子達、見た事ないんだってさ」
 遅れて出て来たフレイア・ヴォルフ(ea6557)が言った。
「エルフを‥‥ですか?」
 ずっと海の上で生活していたなら、それもあり得ない事ではないだろう。だが‥‥
「いや、女を‥‥さ」
 大人達も滅多に陸へは上がらないと聞いた。海の男が陸に上がる目的は、専ら酒と‥‥アレだ。酒はともかく、ソレはどうしているのか‥‥
「深く追求しないほうが身の為だな、うん」

「えーっ!? オレ達留守番っスかー!?」
「もう地面が揺れても大丈夫っス! 戦えるっス!」
 計画を聞いて、二人の少年は駄々をこねる。彼等の担当はアジトでの荷物やペットの見張りだった。
「お前達を一人前の海の男と見込んで頼むんだ」
 リルは二人の肩に手を置き、その目をじっと見据えながら言った。
「海の上でも操舵には操舵の、操帆には操帆の役目があるだろう? どんな小さな事でも、それぞれが与えられた役目をきっちりこなさなきゃ船は動かないんだぜ?」
 操船を例にとったのが良かったのか、少年達は渋々ながらも納得したようだ。
「よし、しっかり頼んだぞ」
 リルはそのまま、二人の肩をポンと叩いた。

 そして夜明け前‥‥
「では依頼人の船の確保‥‥もとい海賊退治といきますか」
 マロースが妖精の盾を構え、背後の依頼人達を庇うように立つ。
 やがて入り江がぼんやりと明るくなり、岩の隙間から曙光が差し込む。それを合図に、冒険者達は攻撃を開始した。
「あなた方には、海賊達に逃げられないよう、後方を‥‥」
 固めて貰おう、と静夜が言うより早く、依頼人達は実に楽しげに、大声を上げながら船に向かって突進する。
 武器さえ手にすれば、彼等に怖いものはない。これが海賊の流儀だとばかりに豪快に暴れ回った。
「ちょっと! あたしらの出る幕なくなっちゃうじゃない!」
 言いつつ走る斎の目に、騒ぎを聞きつけて飛び出して来た海賊達の姿が映る。
「女が乗ると船が沈むって言ったわよね。試してやろうじゃないの!」
 斎は出しっ放しにしてあった板を駆け上がり、甲板へと飛び降りる。彼女は昨日、彼等の仲間になりたいと持ちかけたが、女を乗せると船が沈むと断られたのだ。
「ボスはあそこです!」
 アクテがムーンアローが当たった男を指差す。いかにも海賊の頭らしい格好をした男がキャビンに身を隠している姿が見えた。
「頭なら頭らしく、先頭に立って戦いなさいよ!」
 斎がキャビンのドアを蹴破る。狭く、家具などの障害物が多い場所での戦闘は得意だった。斎は相手が振り回す剣の攻撃をかいくぐり、足技を繰り出す。
 たまらずキャビンから転がり出たボスの前に、気配を消して侵入していた雷龍が立ち塞がった。彼は手を合わせて軽く一礼すると、驚き硬直する相手に龍飛翔を叩き込んだ。
「か‥‥頭がやられたァっ!」
 誰かが叫ぶ。だが、その途端に船のあちこちから「今からこの俺が頭だ!」という声が聞こえてきた。どうやらこの海賊、ナンバー2以下の争いが激しいらしい。
「仲間割れか‥‥所詮は賊だな」
 上空からそれを見ていたエスリンが溜息を漏らしつつ、マストの上にいた射手を撃ち落とす。
 すぐさま、その場所には彼女から弓を借りた元海賊が陣取った。
「‥‥跡取りはちゃんと決めておこうな、誰でもいいから」
 今はそれどころではないだろうに、跡目の地位を巡って争いを始めた自称ナンバー2達の頭上に投網が降りかかる。
 フライングブルームに乗ったフレイアは、更にその上から油を振りまいた。
「火、付けられたいか?」
 とびきりの邪笑が上空から迫る。その手を伸ばせばすぐに届きそうな所に、船の篝火が燃えていた。
「こ、こいつマジだ‥‥!」
 思わず恐怖に身をすくめた海賊達を、マロースがコアギュレイトで拘束する。
「今のうちにロープで縛り上げて下さい!」
 遅れて出て来たいかにも戦意の低そうな、見るからに下っ端らしい船員達には、アクテがイリュージョンで恐ろしい幻覚を見せた。
 一方、ボスも中ボスもいなくなった筈の船上では、ひとりの男を相手に静夜が苦戦をしていた。
「爪を隠した鷹がいたようだな」
 真のラスボス、という奴か。
 褌一丁、おまけにずぶ濡れという姿で船に上がったリルと、二人の間にはかなりの距離があった。今こそ、習ったばかりの「あの技」ソニックブームを試す時だ。
「伏せろ!」
 リルは叫び、手にした金鞭を振るう。その先から衝撃波が放たれ、不意打ちを食らった相手の注意が逸れる。
 その隙に、静夜はシュライクとポイントアタックで大ダメージを狙うが、それでも攻撃は当たらなかった。
 その間に間合いを詰めたリルは相手の足を鞭で絡め、そのまま思い切り引っ張った。堪らず倒れた所へ撃ち込まれた静夜の二撃目を避ける事は、流石に出来ない。
 真のラスボスはそのまま鞭で体を縛られ、甲板に転がされた。
「ありがとうございます、お陰で助かりました‥‥」
 うむ、なかなか良いシーンだ‥‥相手が褌一丁でさえなければ。

「自ら悪を為さば自ら汚れ、自ら悪を為さざれば自らが清し。清きも清からざるも自らの事なり、他の者によりて清むる事得ず」
 雷龍の言葉に、ロープで縛られ、繋がれた海賊達は一様に「はあ?」という顔をした。
「おい、そいつは何語だ? 俺たちゃ海賊だ、海賊語で話してくれや」
「つまり、自分の悪い行いは自分で悔い、正しい行いは他の者に言われてするのではなく、自主的に行え、という事ですね」
「わからん」
「ですから、足を洗うようにと‥‥」
「無駄だよ、兄ちゃん」
 そんな雷龍の肩を叩いたのは、元海賊の頭。
「さ、行こうぜ。報奨金を頂きによ」
「あなた方はどうするのですか? 無理に出頭しなくても‥‥」
「だが、このまま船を奪っちまえば俺たちゃ海賊に逆戻りだ。それは出来ねえ‥‥ガキ共の為にも‥‥馬鹿正直に俺達を信じた、あんたらの為にもな」
 頭は恐ろしげな顔に、僅かに照れたような笑みを浮かべた。
 合法的に船を手に入れるには、出頭するしかない。例え、裁きが待っていようとも‥‥。
「それに‥‥あんたらがもう一働き、してくれるんだろう?」
 ニヤリ。

 ‥‥その数日後。
 イルカの模様が描かれた真新しい旗を掲げ、一隻の船が大海原へと錨を上げた。
「あぁ? 報奨金の分け方が大雑把すぎる? 海の男は細けえ事を気にすんな! がっはっはっは!!」
 豪快な笑い声と共に‥‥。