【リトルバンパイア】孤高の女性騎士

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 44 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月02日〜10月07日

リプレイ公開日:2007年10月10日

●オープニング

「く‥‥、遅かったか‥‥!」
 村長の話を聞いて、背中に弓を背負い、赤いマントをしっかりと体に巻き付けた赤毛の戦士は唇を噛んだ。
「ええ、しかし‥‥冒険者の方々のお陰で、被害は最小限に食い止められましてな。私もこうして、生き返る事が出来もうした」
 生き返るという表現が適当かどうかはわからないが、村人の話を聞く限りはそんな気分だと、村長は救えなかった5人の事を思ったのか、寂しげな微笑を浮かべながら言った。
「ただ‥‥ひとり、若い者が心を病んでしまいましてな。可哀想に、自分がもっと早く助けを求めに行っていれば、犠牲になった5人も助けられたのだと‥‥」
 だが、赤毛の戦士は村長の話を遮って言った。
「それで、元凶のバンパイアの行方は? どこへ行ったかはわからんのか?」
 戦士にとって、重要なのはその事のみらしい。村長が首を横に振ると、戦士は呆れたように鼻を鳴らした。
「‥‥まあ、そうだろうな。そう簡単に捕まるようでは、10年以上も奴を追い続けて来たこの私が無能という事になる」
 戦士はそう言うと、獲物を追って村を出て行こうとした。
 その時‥‥
「待って下さい!」
 一軒の家から蒼白な顔をした青年が飛び出して来た。ギルドに使いに行った、あの若者だった。
「あんた、あの化け物を追ってるんだよな!? だったら、俺も行く! 一緒に連れて行ってくれ!」
「‥‥お前は何が出来る? 私には役立たずを連れ歩く趣味も、余裕もない」
 地面に座り込み、頭を下げる若者に冷たい言葉と視線を投げた戦士は、返事も聞かずに歩き出した。
「待てよ! 待てったら!」
 若者は戦士の赤いマントを掴んで思い切り引っ張った。体に巻き付けてあったそれが解け、軽鎧に身を包んだ体の線が露わになる。
「‥‥お、女‥‥!?」
 低い声に、中性的な面立ち。それに、顔に残る大きな傷跡。だが、その細く華奢な作りの体はどう見ても女性のものだ。
「それがどうした。女の騎士など珍しくもなかろう」
 赤毛の戦士‥‥いや、騎士は苛立たしげに言い、マントを体に巻き直すと再び歩き去ろうとする。
「いや‥‥だから待てって! どうすれば‥‥何が出来れば良いんだ!? 何が出来れば、あいつを‥‥吸血鬼を倒せる!?」
「‥‥白の、神聖魔法だ」
 正直、それが高レベルで使える仲間がいれば心強い。だが‥‥
「今から修業したところで、使い物にはなるまい。足手まといだ」
「そんなの‥‥やってみなきゃわからないだろ!? それに、俺はあいつらの仇を討ちたいんだ!!」
 騎士は若者の目の奥をじっと覗き込む。どうやら、本気のようだ。
「‥‥勝手にしろ」

 かくして、村の若者テリー・ブライトが、吸血鬼を追う放浪の女性騎士リュディケイア・オルグレンの供となって数日。
 薄暗い森に入った二人の前に、それは現れた。
「‥‥ほんっと、しつっこいわね、オバサン」
 青白い肌に赤く光る目をした少女が、高い木の枝に座り二人を見下ろしていた。
「しつこい女は嫌われるわよ?」
 銀の髪に大きな黒いリボン。ひらひらの黒いドレスにも沢山のフリルやリボンが付いている。
 二人の前に現れたそれが、この吸血鬼の真の姿なのだろう‥‥それは10年以上前にリュディケイアが初めて目にした時と同じ姿だった。
「バンパイア‥‥」
「あら、無粋な呼び方しないでくれる? あたしにだって、ちゃんと名前があるのよ?」
「知った事か。知ったところで貴様に墓碑銘を刻む為の墓などない!」
 リュディケイアは背中の弓を構えると、オーラパワーを付与した矢を少女目掛けて放つ。
 だが、それはあっさりとかわされてしまった。
「へったくそ〜。そんなんでこのあたしを狩ろうなんて、百万年早いわ」
 少女はまるでサルのように身軽に枝を渡りながら、森の奥へと逃げて行く。
「待てっ!」
 その姿を追い、二人は走る。やがて‥‥
 ――ズボッ!!
 リュディケイアの足元が急に崩れ落ち、その体が地中に呑み込まれた。
「お、落とし穴‥‥!? お、おい! 大丈夫か!?」
 テリーがその縁に立ち、下に向かって呼びかけるが、返事はなかった。
 頭上から楽しげな笑い声が聞こえる。
「こ〜んな原始的な罠にひっかかるなんて、やっぱり人間って下等生物なのね」
 少女はそう言うと、テリーの目の前に身軽に飛び降りた。
「大丈夫、殺しはしないわ。あんたも、オバサンも、まだ‥‥ね。この穴もそんなに深くないと思うわ。このへん、こんな穴や裂け目があちこちにあるから、あんたも気を付けた方が良いわ」
 少女は口元の犬歯を剥き出しにしてニヤリと笑う。
「じゃあね、また気が向いたら遊んであげる」
 そう言うと、少女は巨大なコウモリに姿を変え、何処へかと飛び去った。

 その数日後‥‥あちこちに傷を負い、疲れ切った様子のテリーが冒険者ギルドに飛び込んで来た。
「頼む、リューを助けて‥‥いや、その前に探してくれ! ああ、いや、バンパイアを探すのが先か‥‥!?」
「‥‥あなたは‥‥確かこの前の?」
 受付係には彼に見覚えがあった。先日、バンパイアに襲われた村から助けを呼びに来た青年だ。
 あの時は随分ショックを受け、自分で立つ事も出来ないような有様だったが‥‥。
「ひとまず、落ち着いて下さい。今度は何があったんですか?」
 受付係に問われ、テリーは今までのいきさつをかいつまんで話した。
 そして、穴に落ちたリュディケイアから自分の事は良いからバンパイアを追え、見失うなと言われた事。にもかかわらず、あっさりと見失い、彼女を助け出そうにもその場所へ戻る事すら出来なくなってしまった事。
「‥‥俺は、やっぱり役立たずだ。何をやらせてもダメなんだ。あいつらの仇を討とうと思ったのに‥‥!」
 テリーはカウンターに拳を叩きつけ、肩を震わせている。
「‥‥まあ、見失ってしまったものは仕方がないでしょう」
 受付係はその肩に手を置いて慰めるように言った。見たところまだ、冒険者としての第一歩すら踏み出していないような彼に、バンパイアノーブルの追跡は荷が重すぎるだろう。
「近隣の村にはバンパイアに注意するようにとの触れが出ていますから、この前の様な事にはならないと思いますよ。それよりも、穴に落ちたというその方‥‥そちらの方が心配ですね。大体の場所はわかりますか?」
「え、ああ、はい‥‥でも、あの森は広いし‥‥あいつを追いかけて闇雲に走り回ったから‥‥馬をその場所に繋いでおいたから、目印にはなると思うんだけど‥‥ああ、でも‥‥」
「追えと言われた、という事は、その時点では無事だったんですね?」
「ああ、怪我をしてもある程度なら自分で治せると言ってた。馬に積んでいた荷物は全部、穴の中に投げ入れて‥‥食糧も何日分かあったし‥‥」
 ただ、自力で上がるには、その穴は深すぎた。荷物の中にはロープもあったが、それを上に投げ上げる手段はない。弓は落ちた衝撃で折れてしまっていた。まあ、投げられたとしても外に誰かがいなければ脱出はまず無理だろうが。
「わかりました。出来る所から何とかしましょう。その方の救助依頼、という事で良いですね?」
 頷くテリーの表情はしかし、冴えなかった。

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea3041 ベアトリス・マッドロック(57歳・♀・クレリック・ジャイアント・イギリス王国)
 ea5913 リデト・ユリースト(48歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea6284 カノン・レイウイング(33歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea6557 フレイア・ヴォルフ(34歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb3630 メアリー・ペドリング(23歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb3862 クリステル・シャルダン(21歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb8942 柊 静夜(38歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「ホラ、しゃっきりおし!」
 ギルドで話を聞いたベアトリス・マッドロック(ea3041)が、そこで待っていた依頼人テリーの背を思い切り叩いた。
「その嬢ちゃんを助けるにゃ坊主の力が要るんだからね!」
 だがその言葉にも、テリーは「俺の力なんて‥‥」と背を丸めて縮こまる。
「何か匂いの手掛かりになりそうな物はないであるか?」
 リデト・ユリースト(ea5913)が訊ねたが、テリーは申し訳なさそうに首を振った。
「何かひとつでも持ってきて頂ければ、動物に匂いを嗅いでもらう調査が出来たのだが‥‥」
 メアリー・ペドリング(eb3630)の言葉に、テリーはますます小さくなる。
「ああ、やっぱり俺は役立たずだ!」
「いや、貴殿を責めるつもりは‥‥ただ、今後に活かして貰えればと」
「気に病むな、お前の判断は正しい」
 マナウス・ドラッケン(ea0021)が簡潔に言った。
「そいつを無駄にしない為にも、急ごうか?」

「この近くにいる動物さん、小鳥さん、どうかこちらに来てお話を聞かせて下さい〜♪」
 森に入ってすぐ、カノン・レイウイング(ea6284)はメロディーの魔法で近くの生き物たちを呼び寄せた。
『この森のどこかに、繋がれた馬さんはいませんか?』
 テレパシーで問いかけてみるが、彼等の活動範囲内にはいないのだろうか、明確な答えは返って来なかった。
「仕方ないであるな。また別の場所で試してみると良いである」
 リデトはそう言うと、愛犬のおにぎりにテリーの持ち物の匂いを嗅がせ、持ち主の匂いを辿れと命じる。本来の探し人の匂いが判らない為の苦肉の策だった。
 カノンも連れている犬のピアノと狐のフォルテにその匂いを嗅がせ‥‥
「ワン!」
 一声吠えると、犬達は一斉に走り出した。
「見付けたようですね」
 カノンが言う。だが、それにしては少し早すぎるような気もするが。
「余り犬達を突出させないで下さいね。何が出るかもわかりませんし‥‥」
 先頭を務める柊静夜(eb8942)が言った。それに、この森には至る所に穴があるとの話だ。犬の体重ならまだしも、人がうっかり踏み込めば脆くなった地面を踏み抜く恐れもある。
「慎重に参りましょう、慎重に」
 静夜は足元の地面を槍の石突きで確かめながら進む。
「まあ、お嬢ちゃん達が大丈夫でも、あたしは危ないかもしれないがねえ」
 殿で自らも足元を棒でつつきながら進むベアトリスが豪快に笑った。

 一方、二手に分かれた捜索班のもう一つの組にはテリーが同行していた。
「どこから出て来たか、覚えてるかい?」
 フレイア・ヴォルフ(ea6557)が訊ねる。この時期は寒暖の差も激しく夜露が出る為に、足跡も残りやすい。
 地元の猟師の話では、森の奥へは殆ど誰も入らないらしい。足跡が残っていれば、それはほぼ確実にテリーかリュー、どちらかのものだろう。
「この辺りには見覚えがあるような、ないような‥‥ああ、俺ってやっぱり‥‥」
 再び落ち込み、沈み込もうとするテリーにメアリーが話しかける。
「‥‥先程は失礼致した。だが、こういった際には変にプライドを重視して、人に頼ることができずに結局駄目にしてしまう方が多いのだ。その点貴殿は、実にしっかりと正しい判断をなされ、こうして助けを呼ばれた」
「その場で必要な行動を見極め、無理だと思ったらすぐに助けを求める‥‥とても大切な事ですわ」
 忍犬の瑠璃を護衛に従えたクリステル・シャルダン(eb3862)も精一杯褒め湛えるが、テリーの顔色はさっぱり冴えない。
「‥‥そういう事は、あいつが無事に見付かってから言ってくれよ」
 気が急くのか、テリーは一人でどんどん先に進もうとする。その度にクリステルにやんわりと窘められるが、余り堪えてはいないようだ‥‥と言うよりも、彼には危険を避ける天性の勘のようなものが備わっているらしい。クリステルが渡した木の棒を全く使わなくても、脆くなっている部分や穴の上を見事に避けて通っていた。
「これは本気で、足跡の上を辿った方が安全確実っぽい?」
 フレイアが苦笑しながら足元に目を凝らす。
 暫く後、森のかなり奥まで進んだ辺りでフレイアは漸く目的のもの‥‥誰かの足跡を見付けた。
「ニル、頼んだよ」
 言われて、ボーダーコリーがその跡を辿る。やがて‥‥
「む、女の匂い!」
 何故か犬よりも先に、殿を進むマナウスの鼻が反応した。
「いや、血の匂い‥‥か?」

 一本の太い木に結び付けられた手綱が途中で切れて、その先端が血溜まりに浸っていた。
「‥‥狼か‥‥モンスター、かね?」
 フレイアが言う。予想はしていたが‥‥
「あたしらが厄介なものに出くわさなかったのは、こいつのお陰かもしれないね」
 その時、後方から犬達の鳴き声が聞こえてきた。
 見覚えのある犬達は一斉にテリーを取り囲み、尻尾を振りながら吠えたてる。
「見付けた、と言っているようであるな‥‥」
 追って来たリデトが溜息混じりに言う。どうやら犬達は一番新しい匂いを辿って来たらしい‥‥つまり、数日前に付けられたものではなく、彼等とは別行動を取っていたテリーが付けたばかりの濃くて新しい匂いを。
 まあ、結局のところ仲間と合流も出来、目当てのものも見付かったのだから良しとしよう。
「リュー、無事か!?」
 穴の縁から身を乗り出し、テリーが叫ぶ。だが、返事はなかった。カノンのテレパシーにも反応はない。
「様子を見てくるである!」
 リデトがロープを持って飛び込んだ。
 その間に、マナウスが開けた場所を探してテントを張り、火を起こす。
「森の土ってのは結構水分含んでいる。その中にずっと居たんだ、防寒具があったとしても体が冷え切ってるだろうからな。まず体を温めて、あったかい食事は必要だろう?」
 だが、食事作りは女性達にお任せだ。
「無事であるか? テリーに言われて助けに来たである」
 その声に、湿ったマントにくるまり、蹲ったリューはうっすらと目を開けた。
「‥‥何だ、お前は?」
 虚ろな穴の中に、低く不機嫌そうな声が響く。立ち上がろうとした足元がふらつき、リューはその場に膝を折った。
 それを見て、リデトがとりあえずリカバーをかける。
「怪我などない。余計な事をするな」
 助けに来てくれた人に向かってあんまりな言い草だが、リデトは気にする風もない。
 その時、穴の上から声が聞こえた。
「とりあえず上がって来てはもらえませんか? そうして頂けませんと私達が此処まで来た意味がありませんので‥‥」
「この様に穴の中に居ては、バンパイアを倒す事はおろか騎士としてはとても不名誉な死を迎える事に為ると思うのですが‥‥」
 静夜とカノンだ。
「‥‥誰が出ないと言った」
 相変わらず不機嫌な声でリューが答えた。

「寒かったでしょう?」
 カノンから渡された乾いた服に着替え、火の傍に座ったリューは、クリステルが差し出したスープを素直に受け取った。だが、礼は言わない。フレイアから渡された酒と共に、黙って喉に流し込んだ。
「あの、他に何か手助けできる事はありませんか?」
 聞かれても、ひたすら無言だった。
「‥‥リュー、だったね。良かったらそのまま話を聞いておくれでないか」
 その目の前に、ベアトリスが座り込んだ。
「あたしも以前、バンパイアを追ってたが、そン時分かったのは、連中を倒すにゃ力の有る者だけじゃ足りない‥‥生きてる者皆で追い詰めるよう協力してかにゃ駄目だって事さ」
「十分な準備と優秀な仲間を揃えれば悪魔でも吸血鬼でも滅ぼす事が出来ましょう」
 カノンがその肩に毛布をかけながら言う。
「優秀な騎士、冒険者とはそのようなものです」
 だが、リューは揺れる炎を見つめたまま、何も言わなかった。
「事情は聞かない。しかし何故一人で向かおうとする? 生命を蔑ろにする奴に、生命を食い物にする奴は倒せないよ」
 マナウスが言った。
「似たようなケースは何度も見たがね、そういう輩は共通して『闇雲に追うことで、何かから逃げている』だけだった。君もそうだとしたら、逃げたままでどうやって勝つというんだ?」
「逃げてなどいない。その必要も、理由もない。奴が逃げるから追う‥‥それだけだ」
「その吸血鬼の出身を知っているであるか? それがわかれば、他の事件との関わりや狙いを探れるかもしれないである」
「知らん。それに、奴は他とは関わりを持たないはぐれ者だ。気紛れで‥‥どこにでも現れる」
「まあ、何にしても焦るな。焦りは隙を作り意識が疎かになる。それは危険に、ひいては死につながる」
 フレイアがオークボウと矢を差し出しながらニヤリと笑う。
「魔法弓だ、通常矢でも戦えるようになるだろう。返品は不可だぞ?」
「‥‥預かっておこう」
 リューは弓だけを受け取る。矢はメアリーが穴の中から運び出したもので充分だった。
「ま、あたしらに礼なんざ要らないがね、あの坊主にゃ感謝するこった」
 ベアトリスはそう言って立ち上がり、少し離れて心配そうにこちらを見ているテリーを見る。
「今回は最善を尽くしたと思いますよ」
 リューと視線が合うと思わず目を逸らしたテリーに、静夜が慰めるように言った。
「今回は‥‥か」
 自嘲するように鼻を鳴らしたテリーの背を、ベアトリスが再びどつく。
「あの5人は決して坊主のせいじゃないけど、そうしたいならバンパイアを追うのもいいさ。けど、坊主にゃ坊主なりの役立ち方がある‥‥魔法の為にクレリックになりたいそうだが、神聖魔法は信仰の証しに賜るモンで、道具じゃァない。バンパイアを倒したら用無しってェ了見じゃ結局、役に立つ程にゃ到底おっつかまいよ」
「でも‥‥じゃあ俺、どうすれば‥‥」
「本気で仇を討ちたいと考えているのですか?」
 静夜がじっとその目を覗き込む。
「‥‥ならば何も言いません。信じて進めばきっと道は開けますよ」
「どの道を選んでも、聖母様は見守って下さるである」
 リデトの笑顔に、テリーは自信はなさげだが決意だけは固そうな、複雑な微笑みを返した。