だって聞いちゃったんだもん
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:STANZA
対応レベル:3〜7lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:6人
サポート参加人数:12人
冒険期間:07月04日〜07月09日
リプレイ公開日:2006年07月12日
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●オープニング
「ここだな、ヤツラが話してた廃墟ってのは‥‥」
森の奥にひっそりと佇む半ば崩れかけた屋敷の壊れた窓から、小さな人影がスルリと入り込む。
「確か、一番奥の部屋の床下だって言ってたよな」
汚れた手で鼻先をこすり、ニヤリと笑うと、少年は天井や壁の隙間から漏れる明かりを頼りに進んで行く。
「しっかし不用心だよな〜。お宝が隠してあるってのに、見張りも置いてねーんだから。ま、こんなトコ誰も入り込むとは思わねーけどな」
やがて奥の部屋に辿り着いた少年は、床一面に埃が積もった中、そこだけ妙に綺麗な床板に手をかける。それは、カタンと軽い音を立てて簡単に外れた。
その下には、いかにも何か大事な物が入っていそうな大きな瓶。そっとフタを開けてみると‥‥。
「す、すっげえ! こりゃ、大泥棒ヨシュア様一世一代の大仕事だぜ!」
中にはピカピカ光る金貨がぎっしり詰まっていた。少年は早速、用意してきた袋にジャラジャラと移しはじめる。
「ちぇ、もっとデカい袋にしときゃ良かったな」
また後で来れば良い、と、思ったその時。
「でかいネズミが入り込んでやがるな」
「小僧、ナメたマネしやがって‥‥!」
2人のチンピラが背後に立っていた。
「‥‥よォ、あんたら、盗賊団の下っ端さん?」
少年は金貨を詰めた袋を手に、落ち着き払って立ち上がる。見れば、まだ10歳かそこらの子供だ。
子供に下っ端呼ばわりされた2人は、頭に血を上らせて少年ににじり寄る。
「ここは俺達デス・ゲートの秘密金庫だ。俺達の幹部しか知らねえ情報を‥‥てめえ、どこで嗅ぎつけやがった!?」
「へえ、じゃああんた達も幹部なんだ? デス・ゲートだか何だか知らないけど、大したコトねーな」
「小僧、言わせておけば‥‥っ」
飛びかかってくる2人に用意していた砂袋を投げつけ、ひるんだ所に体当たりを食らわせた少年は、そのまま一目散に出口を目指して駆け抜ける。
「へへんだ、ノロマ! 悔しかったら追いついてみろ、デクノボー!!」
少年の姿は、あっという間に周囲の森に呑み込まれ、見えなくなった。
「畜生‥‥っ! 小僧、覚えてやがれ。必ず見つけだして‥‥ブッ殺してやる!!!」
「だって聞いちゃったんだもん、しょ〜がないだろ?」
翌日、ギルドの受付にいかにも腕白で生意気そうな少年の姿があった。流石に身の危険を感じたらしく、テムズ川に浮かぶ前に助けを乞いに来たのだ。
「一昨日の雨でさ、オレ、すぐそこの屋敷の天井裏で雨宿りしてたんだ。そしたら奴等がお宝の隠し場所なんて話してるじゃん? 聞くつもりはなかったんだけどさ、聞いちゃったんだもん。それに、こんな町のド真ん中に盗賊のアジトがあるなんて思わねーじゃん?」
饒舌にまくしたてる少年に、受付係が細い目をますます細くして渋面を作る。
「だからといって、それを盗んで良いという事にはならないでしょう?」
「だってさ、悪いコトして儲けたカネだぜ? オレが貰ったって良いじゃん。それに、お宝の場所も教えるし、頂いた分もちゃんと‥‥半分くらい、返すって言ってんだからさ」
「全額、返すべきだと思いますが?」
受付係は溜め息をつき、仕方がないといった様子で書類を作り始めた。
「とりあえず、依頼は受けます。後の事は専門家に任せましょう、あなたの処分も含めて、ね」
「頼んだぜ、オッサン。いや〜、オレは大丈夫だって言ったんだけどさぁ、オレのコレが」
と、少年は小指を立てる。ガキのくせに何がコレだ‥‥というヒガミ、いや、ツッコミは置いといて。処分云々については聞こえなかったようだ。
「お金より命が大事よ、なんつーからさ。ホラ、なんか、あの盗賊団のボスってかなりヤバイらしくてさ、手下はすっげーマヌケだけど‥‥‥‥‥‥」
少年のおしゃべりは果てしなく続いた‥‥。
●リプレイ本文
「う〜〜〜ん‥‥」
夜更け、ギルドからほど近い、例の家を見張るには絶好の場所にある宿屋の一室に、冒険者達が顔を揃えていた。
真ん中に拡げられたアジトの見取り図を前に、シータ・ラーダシュトラ(eb3389)が腕組みをして考え込んでいる。
「やっぱり、この家の人達は関係ないんじゃないかなあ。だって、どう見ても普通のお爺ちゃんとお婆ちゃんなんだよね?」
「はい」
自分の足で聞き込みを行ってきたウェンディ・ナイツ(eb1133)が答える。
「ご近所に少しお話を伺ってきましたが、ヨシュア君が盗賊の話を聞いたという二階の部屋は、今は隣の酒場に宿としてお貸ししているのだそうです。その家のご夫婦はお二人とも足が悪くて階段は上れないそうで‥‥」
「うん、中を見てきた友達も言ってたよ、階段は塞がれてて使えないって」
「隣は酒場なのか?」
自慢のアゴをなでながら、シャー・クレー(eb2638)が訊ねた。
「ええ、この家は長屋形式になっていて、通りから向かって左が例の民家、右が小さな酒場になっているようです」
アシュレイ・クルースニク(eb5288)が見取り図を指しながら説明する。
「左と右は別々の家ですが、今は二階の壁が一部取り払われて、酒場に付属の宿として使われているそうです。ですから、ここはアジトではなく、たまたまそこに盗賊が出入りしていただけ、とも考えられるのですが‥‥」
「じゃあ、アジトは別の場所って事じゃん?」
「ほっほっ、そうとも限らんじゃろう」
小丹(eb2235)が付け髭を整えながら答える。今夜は勇ましいカイゼル髭だ。
「酒場なんちゅう所は少々人相の悪い客人が出入りしても、大して気にも留められん場所柄じゃでのう。そこを定宿にしとるのかもしれんぞい」
「とにかく、ここの二階にずっと居続けてるのは確かみたいだよね。昼間も殆ど動きがなかったって言うし。でも」
と、シータが天を仰ぐ。
「ず〜っと見てたけど、誰がボスだかわかんなかったって言うんだよね。みんなただのチンピラみたいで、いかにもボスって感じのが見当たらないって」
「‥‥とにかく、こうしていても始まらない」
リチャード・ジョナサン(eb2237)が言った。
「他にアジトの手がかりもない事だし、当たってみるしかないだろう?」
「そうだね、そろそろ時間だし‥‥ほら、ショアくん、起きて?」
後ろで丸まって寝ていた依頼人ヨシュアを、シータが揺り起こす。
「う、う〜ん‥‥もう朝ぁ?」
「なに言ってるのショアくん、夜明けに襲撃だって言ったでしょ?」
寝惚け眼のヨシュアのツンツン髪をくしゃくしゃにかき回す。
「‥‥ショアくん?」
その手をうるさそうにはねのけながら、何だそりゃ、と言うようにシータを見る。
「うん、キミの事、そう呼んで良いかな。気に入らない?」
「‥‥べつに‥‥良いけど」
まんざらでもない顔だ。
それを微笑ましく見ながら、小丹が腰を上げる。
「では、わしは一足先に行ってトラップでも仕掛けておくかの」
「あ、ボクも行くよ! 足を引っ掛けて転ばせる程度の罠で充分だよね?」
シータが元気に立ち上がった。
「ショアくんは皆と一緒においで、危ないから」
「え、オレも行くの!?」
「あなたを置いて行ったのでは護衛を残さねばなりませんからね」
と、アシュレイが少年の肩に手をかける。
「戦力の分散は避けたいですし‥‥」
「世の中、悪人にゃあ厳しいってところ、教えておいてやらないと駄目じゃん?」
反対の肩を、シャーの大きな手ががっしりと捕まえた。
「ヨシュア君が潜り込んだのは屋根にある明かり取りの窓ですが‥‥」
まだ薄暗い中、酒場の裏口を前にしてアシュレイが見取り図を確認する。
「大人では入れない大きさだという事ですから、脱出ルートとしてそこは除外して良さそうですね」
「そうなると残りはこの裏口と、表の玄関じゃな」
と、小丹。
「二手に分かれるよりも、固まって動いたほうが良くありませんか? 突入後は私とウェンディさんでヨシュア君を守りつつ、賊を逃がさないようにこの裏口を固めるというのはどうでしょう?」
アシュレイの提案に一同が頷き、小丹が器用にカギを開けた。
ヨシュアを守る二人を入口付近に残し、後の四人が奥へ進む。
「‥‥見張りもいないじゃん‥‥?」
シャーが酒場のカウンターやテーブルの下を注意しながら先頭を行く。
「こんな街中に盗賊のアジトがあるなんて思わないもんね。大胆って言うか図太いって言うか‥‥絶対バレる筈ないって油断してるのかな?」
まだ薄暗い中、シータが部屋の隅々まで目をこらすが、特に何かが潜んでいそうな気配も感じられなかった。
酒場の中を一通り確認した一同は、宿として使われているという二階の部屋も、ひとつ残らず調べていく。しかし、どの部屋にも鍵はかかっておらず、そして‥‥どの部屋も無人だった。
「昼間は確かに人相の悪い人達が大勢いたって言ってたのに‥‥」
シータが首を傾げる。
「勘づいて、逃げられた‥‥か?」
と、リチャード。
「しかし、わしらもずっと見張っとったんじゃが‥‥どこか他に、秘密の出入り口があるのかのう?」
「でも、他にアジトを探すって言っても、何も手がかりが‥‥」
襲撃は失敗に終わったかと、落胆の色を隠せない一同が酒場に戻ってきたその時。
「ようこそ、冒険者の皆様」
部屋の奥から男の声がした。
薄暗い部屋の中に、人影が浮かび上がる。かなりの数だった。その中の一人が前に進み出る。一見、どこにでもいる善良な小市民といった感じの男で、とても盗賊には見えない。が、柔らかい笑みを浮かべた表情の奥に残忍な本性が見え隠れしていた。
「ようこそ、我が城へ。そこの坊ちゃんがギルドに駆け込むのが見えましたからね。いらっしゃると思っていましたよ」
ヨシュア達三人は既に5〜6人のチンピラに囲まれている。その中にはもちろん、あの間抜けな二人組もいた。
「‥‥バレてたんじゃん‥‥」
シャーが毒づく。
「さて、ここを知られたからには生かしてお帰しする訳には参りません。パーティーを始めるとしましょうか?」
ボスが腰の剣をすらりと抜き放つ。どうせ盗品なのだろうが、かなりの業物だ。
「相手にとって不足はないじゃん‥‥行くぜ!」
早朝の酒場で、大乱闘が始まった。
ボスを守るように、多少は腕が立ちそうな男が三人、周囲にはチンピラがその三倍ほど。数の上では盗賊達が圧倒的に有利だった。だが、彼等は冒険者達を少々甘く見過ぎていた様だ。
剣を手にしたシータが盗賊達の間を走り回り、引っかき回す。チンピラ達は勿論、多少は腕に覚えのある者さえ蹴散らす勢いだ。
小丹は襲いかかる取り巻きどもの剣を十手で受け、右手の剣でカウンターアタックを食らわせる。小柄な上にカラスのような出で立ちの彼は、薄闇に紛れて見えにくい事この上ない。
その隣ではリチャードがクレイモアを振り回し、大立ち回りを演じていた。彼に向かっていった敵は、剣の餌食になる前に、叩き壊されたテーブルや椅子の破片に直撃されて倒れていく。
「そういえば‥‥家は壊さないように気をつけた方が良かった‥‥か?」
一方、部屋の反対側ではアシュレイとウェンディがヨシュアを守りつつ戦っていた。
「私はサポートに専念したかったのですが‥‥そうも言っていられませんね。この身を盾にしてでも、この子の未来は守りますよ!」
アシュレイが剣を抜き、その背ではウェンディが襲い来る男達を投げ飛ばし、足払いをかけ、スタンアタックで気絶させる。ヨシュアも得意の砂袋で応戦した。
「‥‥どうやら、お前が最後じゃん?」
余裕で剣を構えるシャーの前では、ボスが肩で息をしながら目を血走らせていた。
「こ‥‥こんな筈では‥‥っ! こんな、バカな事があるかぁッ!」
渾身の力を込めた攻撃は盾でいなされ、無防備な腹に必殺の一撃が叩き込まれた。ボスは、泡を吹いて倒れ込む。
「す‥‥っげえっ!」
ヨシュアが目を丸くして、その光景を見ていた。
「お前もあんまり悪さばっかりしてるとこうなるじゃん。よく覚えておいたほうがいいぜ」
そして。
ロープで一纏めに縛り上げられた盗賊団デス・ゲートの面々は、役人によって引き立てられて行った。
見物人の話によると、ボスはこの酒場のマスターだったらしい。
「‥‥さて、ヨシュアの坊ちゃんはこれからどうするのかのう?」
「どうするって‥‥別に、ヤツラもやっつけてもらったし‥‥」
「また、泥棒稼業に戻るのですか?」
ウェンディの問いかけに、ヨシュアは口を尖らせた。
「な‥‥なんだよ、悪いかよ?」
「悪いよ!」
開き直る彼にシータがカミナリを落とす。
「ショアくん、泥棒がいけないことだってのは判ってるよね? それにいつまでもこんなことしてたら、ショアくんの10年後の姿があの盗賊じゃないって胸を張って言える?」
「それに、今回のような危険に巻き込まれる事も多いだろう」
リチャードが厳しい表情で言う。
「自分だけならまだしも、自分の彼女が巻き添えになっても良いのか?」
「そ‥‥それは‥‥ヤだけど‥‥」
「ヨシュア君、盗賊のような仕事が好きなら、冒険者になって仕事でそういう事をしてみませんか?」
「え!? 冒険者って、ドロボーみたいな事もして良いのか!?」
ウェンディの提案に目を輝かせる。
「良いわけではありませんが‥‥そんな依頼もあるかもしれませんね」
「そうだよ、そしたら報酬だって貰えるし、他にお礼だって貰える事もあるかもよ?」
「オ‥‥オレみたいなガキでも、なれる?」
「もちろん。ですから今回も、盗賊のお金を全部返したらお礼が貰えるかもしれませんよ」
「ショアくんの冒険者としての初仕事って事で、どう?」
「うん‥‥良いかも」
ヨシュアは照れくさそうに鼻をこすった。
「良かった、これでショアくんの小指も安心だね」
シータが屈託なく笑う。
「‥‥ところで、この国じゃ小指が喋るの??」