‥‥あたっちゃった‥‥?

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月05日〜10月10日

リプレイ公開日:2007年10月12日

●オープニング

「うう、は、腹が‥‥っ!」
「うげぇ、おげ‥‥っ」
「うひゃひゃ、うはひょへはひゃ」
 ‥‥その日、とある領主のお抱え騎士団はとっても楽しい事になっていた。
「だから、得体の知れないキノコなど食うなと言っただろう」
 騎士団長ウィリアムは、苦しみ悶え、或いは笑い転げる部下達の姿に深い溜息を漏らす。
 秋の味覚でパーティなど、許すのではなかった‥‥などと悔やんでももう遅い。彼の部下達はキノコ嫌いの一部を除いて、その殆どが当分使い物になりそうもなかった。
「目前に迫った対外試合、どうしてくれる‥‥?」

「騎士を数人、手配して貰えないだろうか」
 その翌日、彼の姿は冒険者ギルドにあった。
「数日後に、対外試合が予定されているのだが、出場する筈の騎士どもが揃いも揃って体調を崩しやがってな」
 とある地方領主の長男にして騎士団長、ウィリアム・ゴドウィンは、その血筋と地位には似つかわしくない言葉を吐くと、軽く溜息をついた。
「この試合は新人連中を鍛える為にこちらから頼んだものでな。中止ともなれば‥‥まあ、俺の顔が潰れるのは構わんが、親父が煩いんでね」
 そこで、代わりに試合に出てくれる者を探しているのだと言う。
「武器と防具はうちの紋章が入った物をこちらで用意するが、武器は使い慣れた物があるならそれでもいい。まあ、騎士団とは言え中身は騎士だけとは限らんからな。職種は何でも構わん‥‥魔法使いでも、レンジャーでも」
「でも、身代わりと仰るなら‥‥その本来の方々に合わせた方が良いのではありませんか?」
 受付係が訊ねる。
「騎士なら鎧兜に身を固めれば中身が誰だろうとわからないかもしれませんが、軽装の兵種では、その、身代わりである事が‥‥」
「どうせ一日限りの試合、それに相手は新人だと伝えてある。向こうも顔は知らないし、終わった後でも覚えちゃいないだろうさ‥‥余程の腕でもない限りはな」
 それに、バレたとしてもそれはそれで面白そうだ。
「掘り出し物がいれば、うちで正式に雇う事を考えても良いが‥‥とりあえずは品定めも兼ねて、な。まあ、田舎領主の騎士団員など、なったところで大した旨味はないだろうが」
 ウィリアムはニヤリと笑うと、この近くの宿で待っていると言い残してギルドを後にした。

●今回の参加者

 ea3783 ジェイス・レイクフィールド(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb5450 アレクセイ・ルード(35歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 eb5463 朱 鈴麗(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb5549 イレクトラ・マグニフィセント(46歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb7226 セティア・ルナリード(26歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 ec1783 空木 怜(37歳・♂・クレリック・人間・ジャパン)

●サポート参加者

凍扇 雪(eb2962)/ ジル・アイトソープ(eb3988)/ ウェンペ(ec0548

●リプレイ本文

「得体が知れないのを承知でキノコ食うとは‥‥中々に無茶無謀な部下だな」
 中毒発生から数日が過ぎ、症状もどうにか落ち着きを見せてきた様子の新人騎士達を前に、空木怜(ec1783)は遠慮会釈なく言った。
「まあ、対外試合よりこっちのがよっぽど教訓になったかもしれないぞ。ついでに診療もしとくか‥‥」
 だが、そんな彼よりも更に遠慮のない人物が二人。
「試合近いのわかってんのにキノコなんて食うなよなー。ちょっと体調管理甘すぎじゃないか?」
 セティア・ルナリード(eb7226)の言葉に、新人騎士達は一斉に所在なさげに下を向く。
「新人とはいえ騎士なんだから、それぐらい気を使えって。そんなんじゃ民衆に信用されなくなるぞ?」
 いやまったく、ごもっとも。
「情けないというより、むしろ許可した騎士団長が剛毅だと思うよ。ああ、これはお見舞いだよ。養生してくれ給え」
 そう言ってアレクセイ・ルード(eb5450)が騎士団長ウィリアムに手渡したのは、籠一杯の食用茸。
「これは‥‥いやがらせか?」
「何を言うのか、勿論だとも」
 アレクセイはニヤリと笑う。
「やはり冒険者というのは面白い連中だ」
 ウィリアムも相手に負けない程の不敵な笑みを返した。
「しかし、お前達を呼んだのは座興の為ではない‥‥わかっているな?」

「一番手は俺か‥‥」
 ジェイス・レイクフィールド(ea3783)は騎乗用の槍、ブレイブランスを片手で振り回しながら楽しそうに笑った。
「よくよく考えてみれば騎馬戦なんてやった事が無かったが‥‥こう見えても騎乗には結構自信があるのでな。自分の腕が騎士殿達にどの程度通用するか楽しみだぜ」
 そう言って愛馬に飛び乗ったジェイスは対戦相手が出てくるのを待ちながら、頭の中で戦術の確認をする。。
「基本的には仲間との連携重視、単独での突出はしない。密集した敵にはソードボンバーで薙ぎ払う‥‥」
 だが、出て来た相手はたった一人。
「‥‥集団戦じゃ、ないのか?」
 そう、個人戦。
「‥‥まあいい、リーチの長さを十分生かして、突きを多用だ。馬から叩き落すのが楽でいいだろう。隙の大きい相手にはスマッシュを叩き込む。どうせ、頑丈な鎧を着ているだろうからな。死にはしないだろう」
 よし。
 戦法の再確認を追え、ジェイスは習ったばかりの作法に従い相手に一礼をする。
 試合開始の合図と共に相手は全速で馬を駆り、猛スピードで突っ込んできた。
「チャージングか! だが、リーチは俺の方が‥‥」
 ジェイスは突っ込んで来る相手に向かって槍を目一杯に突き出す。しかし、その攻撃は突進の勢いと大きな盾によって難なく逸らされ、一方盾を持たないジェイスはすれ違いざまに相手が仕掛けた攻撃に思わず槍を取り落としてしまった。
「そこまで!」
 いくら騎乗に自信があると言っても、それだけで避けきれる程、本職の攻撃は甘くはなかったようだ。

「さて、まずは軽い問答から始めようか?」
 アレクセイは声が届く程度の距離で立ち止まると、兜で覆われて表情が全く見えない相手の騎士に向かって言った。
「忠誠を誓った主と敬愛する貴婦人。二人に毒が盛られた。解毒剤は一個しかない。君はどちらを助ける?」
「‥‥その場の状況による、としか答えられんな」
 相手は兜の下からくぐもった声で答えた。
「それでは答えになっていないよ。これは究極の選択と言うものだ。騎士としての理想を目指すのは立派だが、そう上手く行くほど現実は甘くはない。無理な選択を迫られる事もあるだろう。どちらかを見捨てれば騎士道に反し、欲張ればどちらも死なせる事になる‥‥さあ、どうするのかな?」
「‥‥なるほど、口だけは達者なようだ。だが‥‥口が勝負を決めるのは、女の戦いのみ!」
 言うが早いか、ソードボンバーが炸裂した。距離があるからと油断していたのか、アレクセイはその攻撃をまともに食らう。
「それで、貴殿の答えは?」
 白旗を掲げたアレクセイに、相手の騎士が訊ねた。
「幸いにして、私にはそのどちらもいないからね」
 その答えに、兜を外した騎士は口元を歪める。
「奇遇だな、俺もだ」

「‥‥依頼を出した俺の責任とは言え‥‥」
 二人の試合を見届けたウィリアムが溜息混じりに言う。
「これ以上恥をかかされるのは勘弁して貰いたいものだな」
「大丈夫じゃ、安心して見ているがいい」
 朱鈴麗(eb5463)の満面の笑みに、何やら嫌な予感を覚えたウィリアムだったが‥‥
「決闘の方法はこちらで指定してもかまわぬか?」
「待て、これは試合だ。決闘では‥‥」
「うむ、では料理で決闘じゃ! 食べねば戦えぬ、戦場では必要な技能であろう?」
 人の話、聞いてないし。
 こうして、相手の騎士は問答無用で料理勝負に付き合わされるハメになったが、鈴麗の言う通り、食に関する技術は確かに重要だ。腹が減っても、キノコに当たっても戦は出来ないのだ。
 相手の騎士は手慣れた様子で、そこそこ食べられそうな料理を作った。
 しかし、鈴麗は大きな鍋の中に適当に切った適当な材料を適当に放り込む。
「案ずるな、わらわも包丁を握るのは初めてじゃ」
 笑顔でざくざくと‥‥あのう、手まで切れてますけど? でもって、血がボタボタ鍋の中に‥‥
「なに、こんなものはリカバーをかければ済む事じゃ」
 いや、そういう問題じゃ‥‥
「できたぞ、誰か味見を頼む」
 だが、ワインと血で真っ赤に染まった鍋に浮かぶ得体の知れない、しかも生煮えだったりする素材達‥‥それはきっと、毒キノコよりも猛毒に違いない。
「‥‥む、何故逃げる? 誰も食べてくれぬでは勝敗がつかぬではないか! 仕方が無い、では相手の鍋を食べきった方の勝ちという事で‥‥用意始めっ!」

 料理合戦の顛末については‥‥ウィリアムの顔色から推して知るべし。
「大丈夫、ここからが本番だ!」
 セティアが胸を張る。
「対戦相手はナイトで頼むな。それから‥‥何か障害物作ってくれないか?」
 戦場は何もない平原とは限らない、視界の悪い場所での先頭も考慮しなければとセティアは主張する。ましてやウィザードは一発当たったら終わりだ。
「適材適所、臨機応変が勝利の鍵だぞ?」
 そんな訳で、ウィリアムお抱えのウィザードによって、フィールドのあちこちに石の壁が作られた。
「よし、これで互角だ!」
 セティアは試合開始と同時にその陰に隠れ、ブレスセンサーで相手の動きを追う。近付いて来ると見るや、周囲にライトニングトラップを仕掛け、相手が踏み込んで来るのをひたすら待つ‥‥
「‥‥すまない、ギャラリーが退屈しているのだが‥‥」
 ウィリアムの声に、引きこもりトラップに身を隠したセティアが言った。
「これは戦いだぞ。見世物じゃないんだ、観客がどう思おうと‥‥」
 はい、時間切れ引き分け。

「‥‥エルフというのは、どいつもこいつも‥‥」
 遂にウィリアムは頭を抱えた。
 残るは人間が二人。この二人がまともに戦ってくれなかったら、これはもう試合など中止にした方がまだ面目が保たれる‥‥そんな状況に陥るのは間違いない。
「まあ、俺は楽しませて貰ってるがな」
 しかし、先程から黙って試合を見ている領主‥‥彼の父親の額には青筋が浮き上がり、今にも破裂しそうだ。
「‥‥スタッフってある? 俺、戦闘で刃物はあんま使わないから木剣とかでも使い慣れなくてさ」
 そう言って杖を借りた怜の相手は重装備の騎士。
「おいおい、こんなヒョロヒョロした若造が相手か? いくら新人でもこれはなかろう?」
 相手は馬鹿にしたように見下ろす。だが、そんな重装備の相手は怜にとって絶好のカモだった。
「‥‥俺の攻撃なんかハエが止まったようなモンだと思ってるだろ?」
 怜は片手に持った杖を弄びながらニヤリと笑った。
「あんまナメてると、痛い目見るぜ?」
 怜は杖を左手に持ち替えると、相手の顎を狙って下から思い切り右の拳を振り上げた。
「必殺! 超虚空烈破弾っ!!」
「うぐぅおぅっ!?」
 小柄な怜のアッパーカットを受けて、重装備の騎士が吹き飛んだ!
「‥‥うん、やっぱ杖よりこっちの方が格好いいな」
 実は拳と同時に高速詠唱でローリンググラビティーを放ったのだが‥‥そうとは知らぬギャラリーは一斉に湧いた。
「体が光った? 超必殺技の使用時に体が光るのは当然! 常識! 超必殺技? 男たるもの、超必殺技の一つや二つは身に着けておかねば!」

「防具は不要だし、武器も使い慣れたものが良いさね。あぁ、でも、衣装類だけは騎士団のものを借りておくよ」
 騎士団の衣装を身につけ、最後に登場したイレクトラ・マグニフィセント(eb5549)は、メンバーの中で唯一の根っからの騎士だ。流石にその立ち居振る舞いは板に付いていた。
 偽名で名乗りを上げたイレクトラは愛馬グレンヴィルを駆り、同じく馬を走らせる相手に向かって行く。走行は殆ど馬に任せ、イレクトラはその背で弓を構え、続けざまに射る。しかし、放たれた矢の全ては盾によって弾かれてしまった。
 だが、彼女の目的は相手を弓で倒す事ではない。弓での攻撃に終始すると見せかけ、反撃に転じるのが狙い‥‥案の定、相手は防戦一方。矢が尽きるのを待っているのだ。
 イレクトラは矢を鋳掛けながら相手に近付き、すれ違い‥‥刹那、抜き放った破邪の剣で乗り手を叩き落とした。
「軍船じゃ重い鎧兜なんか着けていたら思うように動けない上に、落ちたら浮かんでこないからな‥‥極端に軽装な代わりに手数が多いのが強味でね」
 それは騎乗戦でも同様、という事のようだ。

「‥‥変なものに当たってしまった‥‥」
 後日、試合の感想を聞かれた相手の騎士達はその殆どがそう答えたと言う。
 ともあれ、最後の二人によって騎士団の面目は辛うじて保たれた、らしい。そして冒険者達の戦いに刺激を受け、その意表を突いた戦法の数々を取り入れた彼等は、やがて国内でも指折りの強さを誇るようになるのだが‥‥それはまだまだ、先の話だった。