秋の森は稼ぎ時?
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月05日〜10月10日
リプレイ公開日:2007年10月13日
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●オープニング
季節は秋。
キノコや木の実、果物など、豊かに実った自然の恵みを求めて山や森に入る者が増える季節だ。
だが、増えるのは秋の味覚を楽しもうとする真っ当で善良な人々ばかりではない。そんな彼等を狙った野盗やモンスターが増えるのもまた、この季節だった。
「俺らの村は、森に囲まれた所にあってな」
冒険者ギルドのカウンターで、村の代表だと言う青年が言った。
「そこは豊かな森で、お陰で俺らの財布はこの季節、だいぶ潤うんだが‥‥その森の中が、今年はどうにも物騒な様子になってやがるんだ」
どうも近くにモンスターが住み付いたらしい、と青年は言った。
「猛獣も、モンスターもいない、静かな森だったんだが‥‥もう二人、森で大怪我をした奴がいる。まあ、森の恵みは不作の時もあるからな、それが手に入らない事自体はそれほど苦にもならないんだが‥‥」
彼等の村に出入りするには、その森を抜ける道を通るしかない。だが、その道にもモンスターが現れると言うのだ。
「他の村や、町に出る事も出来ねえ‥‥まさに陸の孤島って奴だ」
彼自身は、村に一頭しかいない馬を駆って、全速力で森を抜けて来たらしい。
「それで‥‥そのモンスターというのは、どんな奴ですか?」
受付係の問いに、青年はガシャガシャと頭を掻きながら少し恥ずかしそうに答えた。
「あー、ブタだ、ブタ。ブタのくせに生意気に二本足で立ってやがるって、やられた奴が悔しそうに言ってたな」
‥‥まあ、ブタにボコられたとあっては人間様のプライドが傷つくのもわかる気がする。
「おまけに武器まで持ってやがってな、そいつが‥‥多い時には5〜6匹位いたらしい。そいつを、きれいさっぱり退治して欲しいんだ」
出来れば巣穴を見付けて根こそぎ追い出すのが理想的だが、無理なら人間を襲いに出て来る連中だけで構わない。
「ま、奴等にも多少は知恵があるなら‥‥見せしめっての? そんな感じでボコっとけば、人間様に恐れをなして二度と出てこなくなるかもしれんしな」
依頼書に必要事項を書き終えた青年は、出口に向かって歩きながらふと呟いた。
「‥‥ブタって事は‥‥美味いのかね?」
●リプレイ本文
「秋の森は味覚の宝庫! 楽しみだなぁ♪」
爽やかな秋風に吹かれながら、一行の先頭を行くアネカ・グラムランド(ec3769)は足どりも軽く弾むように歩いていた。
オークが出ると言われる森はまだまだ先。今はちょっとだけ、ピクニック気分を味わおう。
「でも、オークって美味しいのかな?」
アネカは酒場で分けて貰ったエールを水筒に詰めて持参していた。飲む為ではない‥‥オークの肉を煮込む為だ。
「アネカ殿は食べる気満々だな」
並んで歩くジョン・トールボット(ec3466)が、そんな彼女に苦笑いをしつつ声をかける。
「知能のある動物を食べるのは気が引けるが‥‥」
「でも、土に埋めたり燃やしたりするなら、美味しくいただいてあげた方がオーク達も喜ぶ‥‥かもしれませんね。オーク肉とキノコや香草を入れた秋野菜のポトフに木の実入りパン、それにマロンケーキも作ろうかしら」
エルティア・ファーワールド(ec3256)は早くも献立作りに思いを巡らせる。
「肉が食べれない物だった時に備えてキノコグラタンも作りましょう」
「うわ〜、美味しそうだね! 聞いてるだけでヨダレが出そうだよ〜♪」
仲間達の頭上を飛び回りながら、フィルルー・ハゥ(ec3912)が歌うように言った。
そんな浮かれ気味の一行の中で、サリ(ec2813)はひとり仲間のおしゃべりに混ざりたい気持ちを抑えつつ、同行の依頼人に事件についての話を聞いていた。
「村への道は一本だけなのですね。その途中で待ち伏せされてはかないませんし‥‥でも、そのブタも何のために人を襲うのでしょう?」
「さあな。ブタの考える事なんか人間様にはわからないし、わかりたくもないね」
オーク、すっかりブタ扱い。
やがて森の入口に辿り着いた一行は、そこで一足先に村へ帰る依頼人と別れた。
「じゃあ、気を付けてな!」
そう言うと、馬を飛ばしてあっという間に走り去る。
その後を追って冒険者達も歩き出した。ただし、先程までのピクニック気分はない‥‥何しろ、いつオーク達が襲って来るかもわからないのだから。そして、依頼人が盛大に音を立てて森を駆け抜けて行った今、その音に釣られてオークが出てくる危険性は高まっていた。
「依頼人さんのお話では、オーク達は森の中ならどこにでも現れるそうです。油断せずに参りましょう」
サリは連れている大蛇ククルに、いざとなったらすぐに呼べる距離を保ちつつ、姿を見られないように森の中を進むように命じておく。
前を行くアネカとジョンは五感を駆使して周囲を警戒しながら進んだ。
やがて森の中程にさしかかった頃‥‥
藪の中から食材‥‥いや、オークが現れた。弛んだ腹の肉をたぷたぷと波打たせながら近付いてくる、その手には戦槌が握られている。数は3体。それほど多くはないが‥‥
「こちらも、手が多いとは言えんからな」
ジョンが腰の刀を抜き放ちながら言う。
「ここを去れ、悪い事は言わない。ここにいるのは主共にとって危害が及ぶだけだ!」
しかし、オーク達は相手の数とその顔ぶれに油断しているのか、立ち去る気配はない。
「ちょっと小さいからって、バカにしないでよねっ! ボクが居る限り、誰も傷つけさせやしないんだから!」
アネカは振り下ろされた戦槌を盾で受け止め、そのままパワーチャージで相手の転倒を狙う。
「たああああっ!!」
オークとパラ、その体格差は大人と子供以上だが‥‥アネカに押されてオークは無様にひっくり返った。
「去らぬとあれば仕方がない‥‥可哀想だが食糧になって貰おう」
ジョンが無防備なその体にスマッシュEXを叩き込むが、それでも致命傷を与えるには何度か攻撃を重ねなければならなかった。
一方、もう一匹のオークにはエルティアが離れた場所からソニックブームを見舞い、怯んだ所をフィルルーがシャドウバインディングで動きを封じる。
「どの辺りが一番美味しいかしら‥‥?」
自らの影に縛られ身動きが出来ないオークを見るエルティアの目は、既に戦士から料理人のそれに変わっている。
そして、最後の一匹は‥‥大蛇に締め上げられていた。
「‥‥もう、これ位で良いでしょうか」
主人に言われて、充分に締め上げ志気を萎えさせたオークをククルはどさりと落とす。
そこへ竪琴の音色と共にフィルルーの歌声が聞こえてきた。郷愁を誘うメロディーにすっかり戦意を失ったオークは一目散に森へと逃げ込む。身動きが取れないまま、大蛇に締め上げられる仲間の姿を見せられたオークも呪縛が解けるが早いか、その後を追った。それはメロディーの効果なのか、それとも‥‥?
「追いかけよう! 巣穴を見付けなきゃ!」
アネカを先頭に、冒険者達達は逃げたオーク達を追跡する。
やがて辿り着いたのは、小さな洞窟だった。
「センサー系の魔法があれば、中の様子もある程度はわかるのですが‥‥」
サリが言うが、ないものは仕方がない。それに、周辺に散らばる足跡や「落とし物」を見れば、大体の想像は付く。
「では、また明日にでも罠を仕掛けに来ましょう。今日はもう遅いし‥‥折角倒したお肉をあのまま放置する訳にもいかないものね」
エルティアがにっこりと微笑んだ。
その晩は村に泊めて貰った冒険者達は、翌朝、目印を付けておいたオークの巣穴へと向かった。
「みんな中にいてくれてると良いんだけどね」
そう言いながら、アネカは巣の出口付近にロープを張り巡らす。それを覆うようにフィルルーがシャドゥフィールドを展開し、そうした上で、ジョンが火の付いた枯草の束を巣穴の中へ投げ入れた。
暫く後‥‥中が何やら騒がしくなってきた。大勢の足音が聞こえ、やがて‥‥
「ギャッ!」
「うががっ!」
――ドサッ! ズシン! むぎゅ! バキッ! ドカッ!
シャドゥフィールドの闇の中で何が起こっているのか、真っ暗で何も見えないが‥‥まあ、大体の想像は付く。仲間の体を押しのけ、つまずき、邪魔者をぶちのめし、踏みつけながら暗闇を抜け、外に転がり出て来たオーク達が見たものは‥‥
巣穴の出口を取り囲むようにトグロを巻く、身の丈5メートルの大蛇。更に背後には武器を構えた冒険者達が控えていた。
「無駄な殺生はしない。死にたくなければ、この森から出ていくがいい」
ジョンに言われるまでもなく、大部分のオーク達は逃げる気満々だった。オークは元々、臆病なモンスターだ。ただ、相手が格下と見るや途端に態度が大きくなる辺り、なかなかに質が悪いのだが。
そして、抵抗を試みた者も敵わないと知ると、森の奥へと逃げて行った。その背に、フィルルーがオーク料理に題材をとった恐ろしげな歌を聞かせて追い打ちをかける。
「これに懲りて、もう戻って来ないと良いわね」
どうやらエルティアが心配したような、オーク戦士などの強敵はいなかったようだ。
「後は村に戻って、秋の味覚三昧だねっ!」
アネカにとっては、ここからが本番‥‥?
きちんと火の始末をしてから村に戻った冒険者達は、依頼人に退治完了の報告を済ませ、村人達と一緒に秋の味覚を採りに森に出掛けた。
オーク達は逃げて行ったとは言え、またすぐに戻って来るかもしれない。それを警戒しつつの採集だったが、どうやら戻って来る気配はなさそうだった。
「秋の味覚と言ったら、キノコだよね♪」
アネカは自らの知識を駆使し、村人達にも教えて貰いながら、持ちきれない程のキノコを採ってきた。暫く森に入れない状態が続いていた為、キノコも木の実も、秋の恵みは採り放題だった。
そして、山のような食材を前に、エルティアが思う存分にその腕を振るう。
「この肉‥‥流石にちょっと臭いけど、エールで煮れば大丈夫そうね」
大きな塊はアネカが持って来たエールでまるごと煮込み、残りは薄切りにして火で炙ってみた。
「では、ちょっとお味見を‥‥」
サリは、その薄切り肉を恐る恐る口に入れてみる。
「‥‥意外に、美味しいです‥‥やっぱり豚肉に似ていますね。これは、食糧難の時に良いかも‥‥」
そんな事を思いつつ、サリはそれをもう一切れ頬張った。
「‥‥なんか、すんごいご馳走だな‥‥」
テーブルに並べられた料理の数々を見て、依頼人が目を丸くする。キノコと香草入りのポトフに、木の実入りパン、それに、栗が入ったマロンケーキ‥‥キノコグラタンもある。
一口食べたその料理にオークの肉が使われていると知った彼は、一瞬、喉に何かが詰まったような表情をしたが‥‥
「いや、でも、知らなきゃご馳走‥‥だよな。言われてみれば、な〜んか臭いような気もするけど」
だが、調理法のせいもあるのだろうが、言われなければ臭みも気にならない。現に何も知らされていない村人達は美味そうに舌鼓を打っていた。
冒険者達に到っては、知っていても尚、美味そうに食べている。
「‥‥出来れば、例えオークでも共存できるように努力して欲しい所ではあるのだがな」
「ん? まあ、そりゃあいつらが襲って来なけりゃ俺等だって‥‥なあ?」
ジョンの言葉に、依頼人は「無理だよ」と言うように首を振った。まあ、そう簡単に共存出来るようなものならば、それを「モンスター」などと呼びはしないだろう。
「ほにはふ、ふひにほはっはんはひは‥‥」
口一杯に料理を頬張ったアネカがジョンの袖を引き‥‥ごくん、と呑み込んでからもう一度言い直す。
「とにかく無事に終わったんだしさ、ジョンくんも楽しもうよ、ね?」
「ならば、酒に付き合って貰おうか?」
「ええっ、ちょ、ボク、お酒は‥‥っ!」
テーブルいっぱいの秋の味覚と共に、村の夜は賑やかに更けていった‥‥。