熱闘 モグラ叩き!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:STANZA

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:10人

冒険期間:07月08日〜07月13日

リプレイ公開日:2006年07月16日

●オープニング

「モグラ退治‥‥ですか?」
 日焼けした顔をテカテカと輝かせた、小柄で小太りなヒゲオヤジの言葉に、それが果たして冒険者の仕事なのだろうかと思いつつ、受付係は依頼書にペンを走らせる。
「うちは、町の外れで小麦を作っとるんだわ。その、畑のモグラが今年になって急に増えすぎたもんで、何とかせにゃ〜と思ったんだがね、多すぎて、わしら家族の手じゃ何ともならんのだわ」
「はあ‥‥そうですか。それでその、モグラ退治というのは、どの様にすれば‥‥?」
「なに、簡単だわ。奴等が掘ったトンネルの近くで、ドカンとやるだけだわね」
「はあ、ドカン、ですか」
「ただね、それで奴等を潰しちまっちゃ〜可哀想だでね」
 小さな目を心なしか潤ませて、ヒゲオヤジは微笑んだ。どことなく、モグラに似ている。似た者同士で情が移ったという事だろうか。
「え? 退治するのでは‥‥?」
「まあ退治っちゅーても、殺してほしいわけじゃないんだわ。奴等はトンネルは掘るが、作物に悪さはせんのだわ。ただ、ネズミ達がそのトンネルを使って悪さをするで、それが困るんだわ」
「はあ、そうなんですか‥‥」
 てっきり、モグラが畑を荒らすのだと思っていた。
「だもんでな、ちーと数を減らしてほしいんだわ。ドカンとやって、たまげて飛び出たところを捕まえて、近くの森に移してやってほしいんだわ。んで、その後は新しいヤツが畑に入り込まんように、周りに柵を作ってほしいんだわ」
「なるほど‥‥」
 ふと、受付係は手を止めた。
「でも、モグラというやつは太陽を見ると死んでしまうのでは‥‥?」
「はっはっはっ! な〜にバカな事言うだね!」
 ヒゲモグラは豪快に笑う。
「誰に聞いたんだか、わしはもう30年も奴等と付き合っとるだが、お日様に当たって死んだヤツは一匹もおらんで! ただな、お日様が苦手な事は確かだで、外に出したらすぐに移してやらんとなあ」
 ポンポン、と、大きな手で受付係の肩を叩くと、ヒゲモグラは陽気に鼻歌を歌いながら、ギルドを後にした。
「じゃあな兄ちゃん、挽きたての小麦で作ったうンめェ〜パン用意して待ってるでな! イキの良い若い衆を頼んだで!」
 その後ろ姿を呆気にとられて見送りながら、受付係はモグラ似のヒゲオヤジが焼くパンはミミズの形をしているのだろうか‥‥などと、バカな事を考えていた。

●今回の参加者

 ea1168 ライカ・カザミ(34歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea7222 ティアラ・フォーリスト(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea9740 イリーナ・リピンスキー(29歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9957 ワケギ・ハルハラ(24歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2673 アドムン・ジェトルメン(40歳・♂・ナイト・シフール・イギリス王国)
 eb3310 藤村 凪(38歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3529 フィーネ・オレアリス(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3986 フォウ・リュース(30歳・♀・ジプシー・人間・神聖ローマ帝国)

●サポート参加者

フィル・クラウゼン(ea5456)/ ウルスラ・ユンカース(ea6994)/ クル・リリン(ea8121)/ クリステ・デラ・クルス(ea8572)/ デオール・ノフリス(eb0071)/ デフィル・ノチセフ(eb0072)/ タケシ・ダイワ(eb0607)/ ギーヴ・リュース(eb0985)/ 李 麟(eb3143)/ ダナ・コーンウェル(eb5491

●リプレイ本文

「おお、こりゃまた大勢さんで来てくれたもんだわなぁ」
 モグラ似のオジサマ、モリソン・モーリーが、小さな目を細めて嬉しそうに笑う。
「焼きたてパンに惹かれて‥‥」
 と言いかけて、フォウ・リュース(eb3986)は慌てて首を振った。
「ううん、困った人は助けてあげないといけないものね」
「いやあ、ありがたい事だでなあ。しかし、どうしたもんかのう、わしの家にはこんな大勢さんに泊まってもらう場所は‥‥」
「大丈夫だよ、おぢさん。半分くらいは今日だけのお手伝いだから」
 ティアラ・フォーリスト(ea7222)が、目を輝かせる。辺りには食欲をそそる甘〜いパンの焼ける匂いが漂っていた。
「あのね、ティアラもすーっごい楽しみにしてるの、焼きたてパン♪」
「そう言うだろうと思って、たっぷり用意しといたでな。丁度そろそろ焼き上がる頃だで、少し早いがお昼にするかね?」
 その言葉に、誰かのお腹が『ぐう』と返事をした。

「本当に美味しいパンね」
 ライカ・カザミ(ea1168)がツヤツヤとキツネ色に輝くパンの皮をうっとりと眺めて溜め息をつく。
「バターや蜂蜜をつけたらもっと美味しいかしら? 家族にも食べさせて上げたいわ」
「な〜んにもないが、パンだけはどっさりあるでな、帰りに土産に持ってくといいだよ」
 依頼人のその言葉に、こっそりちゃっかり持ち帰ろうかと考えていたライカはバツが悪そうに頬を染めた。
「あのう、後で作り方のコツを教えていただけませんか?」
 フィーネ・オレアリス(eb3529)は、いつか飛びっきり美味しいパンを愛しの旦那様に作ってあげたいと、野望を抱いているらしい。
「私も、フィルさんにおいしいパンを作ってあげたいな」
 こちらも新婚さんのフォウがノロケる。
「焼きたてのパンって何もつけないでもすごいイイ匂いがするよね♪」
 そんな大人達をよそに、まだまだ色気より食い気なティアラが、膝に乗せた愛犬のミルクにお裾分けをしながら美味しそうに頬張っていた。
「ほんと、おいしーわぁ」
 藤村凪(eb3310)が、ほんわりとしたパンに、これまたほんわりとした感想を述べる。
 女性陣が焼きたてパンの虜になる中、アドムン・ジェトルメン(eb2673)が軽く咳払いをして注意を引いた。
「食事をしながらで構わんのですが‥‥少し、仕事の相談もしておいたほうが良いのではありますまいか?」
「そうですね、お手伝いの人は夕方までしかいられないわけですし‥‥」
 ワケギ・ハルハラ(ea9957)が答える。
「ボクは今日1日、お手伝いの皆さんと一緒にミミズを集めておこうと思います。モグラを捕まえるより先に、餌を集めておいたほうが良いですよね?」
「柵作りに携わるのはアドムン卿お一人のようだ。拙いながらもわたくしが補助となろう」
 頭に巻いたスカーフで耳を隠したイリーナ・リピンスキー(ea9740)の言葉にアドムンが軽く会釈をする。
「かたじけない。私は初日は材料集めを重点に、二日目以降から少しずつ柵作りの割合を増やしていこうと思いますが‥‥依頼人殿、この近くに材料を集められそうな森はありますかな?」
「すぐ近くに森があるでな、それは大丈夫だ。わしもこう見えて大工仕事は得意だで、手伝わせてもらうでな」
「近場に森があるんやったら、モグラさんも保護したらすぐ運べるわー」

 こうして、その日は主に柵作りの準備と、モグラ班は捕まえたモグラを入れておく『モグちゃん袋』を作る事に決まった。古い麻袋に土と餌のミミズを入れ、森に運ぶまでの僅かな時間ではあるが、モグラがなるべくストレスなく過ごせるように、との配慮だった。
「モグラさんは何匹入れるのがええんかなー?」
 袋に土を詰めながら、凪が誰にともなく尋ねる。
「どうも1匹ごとに縄張りがあるようですから、一緒にしないほうが良いようですよ」
 ワケギの答えに、凪はのんびり感心する。
「ワケギはん物知りやわー」
「いえ、あの、先程モーリーさんに伺ったのです‥‥」
 照れて、頭をかいた。

 一方、柵作り班は依頼主と共に森に材料の調達に来ていた。
「木材は地面の上より地中深く埋める必要から、腐りにくい材質を選ばねばならんのだが‥‥果たして、どの木が適しているのだろうな?」
 森の中を見渡して、イリーナが少々途方に暮れたように呟く。
「な〜に、そのへんはわしに任せれば良いだね。お嬢さんがたは、切ったモンを運んでくれりゃ良いだわ」
「いや、依頼人殿にばかりお任せする訳には参りません、私も手頃な枯れ木を集めて参りましょうぞ」
 アドムンの言葉に、依頼人は首を傾げる。
「しかし、あんたには悪いが‥‥その体で大丈夫だかね? 枯れ木も柵に使えそうなモンは結構重くて太いだが、あんた見たところ道具も持っとらんね?」
 依頼人は、尻のポケットから小さなナイフを取り出し、アドムンに渡した。
「ほれ、これを使うと良いだね。こんなもんでも無いよりはマシだでな」
「か‥‥っ、かたじけない!」
 アドムンはそれを有り難く受け取ると、手近な倒木にスマッシュを叩き込んだ。
「一つ切っては依頼人殿の為〜! 二つ切ってはモグラの為〜!!」
 切断には、だいぶ時間がかかりそうだった。


 翌朝。本格的にモグラ退治が始まった。
 上空には雲ひとつない青空、そして畑には縦横無尽にミミズバレのようなトンネルの跡。
「私、まずはグリフォンに乗って畑を外周から踏みしだいてモグラさんの穴を潰していって、畑の中央に追い込んでいこうと思うのですが‥‥」
 フィーネの提案に、依頼人は小さな目を丸くして、傍らに立つ巨大な生き物を見上げた。
「踏み潰す‥‥こ、これでかね!?」
「ええ♪」
 ニッコリ。
「その‥‥、まず、ちょこっとやってみてくれんかね?」
「わかりました。では‥‥」
 ――ズシィン!――
 足跡が、くっきりはっきり、畑に刻まれた。
「お、お嬢さん、気持ちは有り難いんだがね‥‥そう踏み固められたんでは、後で耕すのに骨が折れるでね。悪いが、その、ぐりふぉんとやらには、休んでてもらうわけにはいかんかね?」
「あら‥‥。そう言われてみれば、そうかもしれませんわね‥‥」
 そんな漫才のようなやりとりの傍らでは、ライカ達がモグラ叩きの準備を始めていた。
 フライパンにハリセン、スコップ。思い思いの得物を手に、合図を待つ。
 ライカがサウンドワードでモグラの動きを察知し‥‥
「ティアラちゃん!」
「はいっ」
 パァン!!
 簗染めのハリセンは、とても良い音がした。
 そして。
「モグーッ!」
 ‥‥とは、鳴かなかったかもしれない。が、そう聞こえたような気がする。
 とにかく、頭上に降ってきたハリセンの一撃に驚いたモグラが、勢い良く飛び出した。
 そこを、モグちゃん袋を持った凪がすかさずキャッチする。
「フォウさん! あ、ワケギさんの前にも! あ、あ、あっちにも、こっちにも!」
 最初の一撃でパニックを起こしたらしく‥‥辺りはモグラの入れ食い状態だった。
 パッコン!
「モグーッ」
 ベコン!
「モグーッ」
 すっパアン!
「モグーッ」
 時々『キャンっ」という犬の悲鳴が混じるのは、トンネルに首を突っ込んだティアラの愛犬ミルクが、突進してきたモグラに頭突きを食らった為らしい。
 そこにグリフォン作戦を断念したフィーネも参戦し、戦いはますます白熱する。
「‥‥楽しそうだな‥‥」
 愛馬に材木を積んで戻ってきたイリーナが、その様子に半ば呆れながら呟いた。
 キャアキャア言いながらモグラを追いかける彼等の姿は、とても仕事をしているようには見えなかった。実際、本人達も仕事だという事を忘れているようだ。
「こんな時にこそ、子育ての疲れを発散させなきゃ!」
 パッコン!
「モグラさん、ごめんなさいね;」
 パァン!!
「‥‥あ、あ、もう、ちょっとタンマやわ〜」
 凪が、ほんわりと皆を制止する。
 見ると、既にモグちゃん袋が山と積み上がっていた。
「あれ? もう、こんなに獲ったの?」
 ティアラが我に返る。
 中でモグラが暴れているのだろう、モグちゃん袋がモゾモゾと盛んに動いていた。
「温度、大丈夫かしら?」
 ライカが袋に触れてみる。
 それほど大きくはない麻袋は、真夏の太陽に照りつけられて既にだいぶ熱くなっていた。
「たいへん、急いで日陰に移してあげなきゃ」
「動き回られるよりは‥‥眠らせてしまったほうが良いかもしれませんね」
 ワケギがメロディーのスクロールを取り出し、歌い出す。
「深い眠りが 君を連れてく ああボクの心が 君に染込んで ボクが君を 深い地から 森へ連れてく 休みなさい 眠りなさい ボクの傍にいて…」
 静かになったモグラ達は、ちょうど森へ戻るイリーナの愛馬が引く荷車に乗せられ、森へ運ばれた。
 木陰の柔らかい土の上に置いてやれば、彼等は勝手に潜っていくだろう。

 こうして、モグラ退治は順調に進み、最終日を前にして畑のモグラは大部分が引越を済ませていた。数さえ増えすぎなければ、モグラは害獣ではない。
「いや〜、ホントに助かったんだわ。後は柵作りのほうを手伝ってもらって良いだかな?」
「勿論、そのつもりですわ」
「うちも本格的に作る技術は無いんやけども、木材運んだり、石運んだり、あと、ちょっとした事は出来るわー」
「ティアラも体力ないけど、最初の日に教わった小さな風車なら作れるかな。でも、どうして風車でモグラさんが寄ってこなくなるの?」
「詳しい事はわからぬが、どうやら風を受けて回る、その振動を嫌うらしい」
 イリーナが答える。
「それから‥‥モグラが嫌う植物の作付けをしていただくのはどうだろうか」
「ああ、そうだわな。畑の周りに植えてみるのも良いかもしれんでなあ」
 7月の空は、どこまでも青かった。
「‥‥もうすっかり夏ね‥‥」
 手をかざして空を見上げつつ、フォウが呟く。
 汗ばんだ肌に、風が心地よかった。