誰も起きてはならぬ
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:5 G 55 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:11月05日〜11月10日
リプレイ公開日:2007年11月13日
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●オープニング
ハロウィンの前後はオバケの季節。
10月31日の夜、暫しこの世に舞い戻った魂達が還り損ねて、或いは自主的に留まり、巷は阿鼻叫喚の坩堝と化す‥‥と言うほど極端なものではないが、とにかく秋から冬にかけてのこの時期が、幽霊絡みの事件が最も多くなる季節だった。
そして、その村でも‥‥
「‥‥死体が、押し寄せて来たんだ」
冒険者ギルドのカウンターで、男が疲れ切った様子で言った。
彼の村は、国内に数ある古戦場‥‥そのひとつにほど近い場所にある。
いや、荒涼としたヒースの原野であるその場所は、今でも時おり戦場となる事があった。
その土の下には、古いものから新しいものまで、戦場で散った兵士達が弔われる事もなく、数知れず眠っている。
「今までも毎年、この季節になると‥‥まあ、何体かはウロつくんだがな、ボロを纏った骨だの、原型を留めないほど崩れた死体が」
それが、今年は大量に発生し、村に押し寄せて来たというのだ。
「どういう訳だか知らないが‥‥とにかく困ってるんだ。戸締まりをして家に閉じ籠もっていれば、とりあえず安全だが‥‥それじゃ仕事も何も出来やしない。奴等が来るのが夜だけならまだしも、節操なく湧いて来やがるんでな」
死者達は、生者の匂いを嗅ぎつけて、仲間にしようとやってくる。
彼はそれでも比較的数の少ない昼間に、村に一頭しかいない馬を飛ばして、群がるズゥンビを蹴散らしながら出て来たのだ。
「ハロウィンが終われば姿を消すかと思ったんだが‥‥」
増えてはいないようだが、減る様子もない。
「長引くと食い物も底を突くし、何より子供らが怯えて可哀想なんでな。早いとこ、片付けて‥‥いや、片付けるというのも失礼か。とにかく、もう二度と迷って出ないようにしてやってくれ」
男は、村までは自分が案内すると言い残してギルドを後にした。
●リプレイ本文
「何故って‥‥もちろん世のため、人のためです」
途中で立ち寄った市場で買い物をする間、仲間に参加の理由を問われたグラン・ルフェ(eb6596)はニコヤカに答えた。
「武闘大会では俺YOEEEEEE!! ですが実戦では是非俺TUEEEE! と実感したいなあとかそんなコトは少しも考えていませんよ? ねえ?」
とか言いつつ、矢筒には矢がぎっしり詰まってたりして。
「旦那、食糧はこの位で足りるかね?」
そんなグランの声を聞き流しつつ、ベアトリス・マッドロック(ea3041)が依頼人に尋ねる。
彼の村ではアンデッド襲来のせいで外へも出られず、食糧事情が悪化していると聞いた冒険者達は、それぞれに食糧を買い込み、馬に乗せていた。
「ああ、助かるよ。村に戻ったら代金はちゃんと返すから、頼むな」
そして、仲間達が食糧を調達している間‥‥磯城弥魁厳(eb5249)はグリフォンに乗り、状況を見極める為に村へ先行していた。
上空から見た限りでは、村の周辺にアンデッドの存在は確認出来ない。
だが彼がグリフォンから下り、一歩足を踏み出した途端‥‥
「――!?」
建物の影、周囲の藪、その他ありとあらゆる物陰から、腐り具合も様々な死体がのそりと現れた。死体達は生者の匂いを嗅ぎつけると、一斉にそちらに向かって歩き出す。
「‥‥徒歩で調べるのは無理、か‥‥」
四方八方から現れたアンデッドに囲まれないうちに、魁厳は再びグリフォンに飛び乗った。念の為に使ってみた惑いのしゃれこうべは、壊れそうなほどに歯を鳴らしている。眼下で恨めしげにこちらを見上げているのがざっと20体ほど。恐らくまだまだ、この近くに潜んでいるのだろう。
「とりあえず、村の地理だけでも確認しておきましょう」
魁厳は手持ちのスクロールに建物の配置や的が潜んでいそうな場所などを書き留めると、仲間との合流場所へと引き返して行った。
「‥‥話には聞いていましたが、これ程とは‥‥」
後刻、仲間の全員が顔を揃え、臨戦態勢を整えて村へ向かった柊静夜(eb8942)は、現れた亡者達の数に圧倒されながら呟く。
彼等の気配に気付いて近寄って来る亡者は‥‥数えきれない。
「まだ昼間だというのに‥‥いえ、昼間から出て来てくれるほうが戦いは楽ですが」
「それにしても昼夜問わずにわらわら出てくるってのはスゴイな」
セティア・ルナリード(eb7226)が呆れたように言った。
「今は山の幸だけでなくアンデッドも豊富な季節でしたっけ?」
その言葉に、メグレズ・ファウンテン(eb5451)がとぼけた質問を返す。
「いや‥‥まあ、確かにこの時期はアンデッドがよく湧くけど、こんなにたくさん出てくることは滅多に無いんだがなぁ」
「幾ら死者が現世に戻る季節たァ言っても、こんな近くにも主のお慈悲の届かない処があるたァねェ‥‥」
セティアが答え、ベアトリスもそれに同意するように言い、胸元で十字を切る。
しかし何が原因なのかはよくわからないが、とりあえずデビルが関与している事はなさそうだった。
「あいつらが黒幕だったらアンデッドが家の外ふらついてる程度じゃすまなかっただろうしな」
「村の連中も心配だけど、迷える魂を主の御許へお還しするのも主の僕の務めってモンだからね。気張らにゃなるまいよ!」
「ああ、子供たちもおびえてるって話だし、さっさとアンデッド共をあの世に送り返してやろうぜ」
――チリーン‥‥
乱雪華(eb5818)の鳴らす降霊の鈴の音が辺りに響く。その音色が聞こえる範囲にいるアンデッドは、音がする場所へと惹かれるように集まって来るらしい。そんな事をしなくても、アンデッド達は勝手に生者の匂いのする場所へ集まっては来るのだが‥‥
「流石にこれだけの数を一度に相手にするのは危険ですからね」
雪華はベアトリスの掲げるホーリーライトに守られつつ、仲間達が集まっている場所とは反対の、戦いに適した土地へ適度な数を誘い出すべく鈴を鳴らす。
たちまち、アンデッドの一団が彼女の周囲を取り囲んだ‥‥が、聖なる光の前に彼等は立ち止まる。
悔しげな様子で周囲をうろつく亡者の足元を、シエラ・クライン(ea0071)はファイヤーコントロールで操る炎の蛇が掠めていった。
だが、亡者達は足元を炎に焼かれてもビクともしない。
「‥‥火達磨な死体に動き回られたりすると面倒なので、あまり派手に焼きたくはないのですが‥‥」
「その辺りは余り気にしなくても良さそうな気もしますが。火達磨はさっさと倒してしまえば済む事ですし‥‥破刃、天昇!」
飛び出したメグレズがソードボンバーを放ち、周囲の亡者を一気に吹っ飛ばす。
「撃刀、落岩!」
ソードボンバーの衝撃波を追いかけるように突っ込んで行ったメグレズは、体勢を崩した亡者達にスマッシュEXで追い打ちをかける。ズゥンビやスカルウォーリアーなどの敵は、殆どがその一撃で沈黙した。
それでも倒れないものは‥‥
「牙が揃っていて腐ってないのは要注意、でしたね」
手伝いに来たベアータ・レジーネスの言葉を思い出し、静夜は剣を持つ手に力を込める。
「恐ろしくしぶとくて素早い‥‥死食鬼、ですか」
聖なる光の中から飛び出した静夜は、一体のグールの攻撃を左手の十手で受け止めると素早く反撃に転じる。だが、確かにそれはしぶとかった。
「柊さん、援護します!」
声と共に、グールの背に矢が突き刺さる。グランは味方に攻撃しそうな敵を狙って、次々と矢を放っていく。
そこへ鈴を鳴らし終わった雪華も攻撃に加わり、漸くそれは動きを止めた。
ベアトリスの浄化を受け、それは完全に存在を失う。
だが、亡者達はまだまだ‥‥次から次へと押し寄せて来る。雪華は再び彼等を分断すべく、次の拠点に向けてホーリーフィールドを掲げたベアトリスと共に移動した。
その後を‥‥まだ鈴を鳴らしてもいないのに、亡者の群がぞろぞろと付いて行く。
「お前らはまだだよ。後で遊んでやるから‥‥大人しくしとけ?」
セティアは迫り来る亡者から逃げつつ、ライトニングトラップを次々に仕掛けて行く。追って来た亡者達は面白いようにそれに引っかかり、足を止め‥‥或いは何度もかかった者は動けなくなる。
「射程は短いけどその分威力も弾数もあるから、こーゆーときは本当に便利だな」
トラップで撃ち漏らした敵には、上空から動きを追う魁厳がウィバーンに命じてウィンドスラッシュを放つ。
「しかし、キリがありませんね‥‥彼らが亡者なら、私達はさしずめ羅刹といったところでしょうか?」
亡者達を次々と斬り伏せながら、静夜が溜息混じりに呟く。
しかし、それでも‥‥
大量に湧いた亡者達を分断し、小集団になった所を各個撃破。それを何度か繰り返すうちに、次第に亡者の群は小さくなっていった。
「‥‥そろそろ‥‥行けますか?」
死体に戻った亡者達からまだ使える矢を回収しながらグランが言う。
「そろそろ、行けそうですね」
メグレズが答え、上空から舞い降りた魁厳にジャパン語で何事かを囁いた。
「‥‥わかりもうした」
それを聞いて、魁厳は手にした鳴弦の弓をかき鳴らす。この音が鳴っている間、周囲のアンデッドはその行動に制約を受ける。
さあ、今のうちに‥‥れっつ・ズゥンビ無双!!
残った亡者達はズゥンビばかりでなく、スカルウォーリアーやグールも含まれてはいたが‥‥まあ、名称は気にしない。
とにかく、残った敵を華麗に優雅に、ひたすら殲滅。
「撃刀、落岩!」
メグレズはグールの動きをコアギュレイトで止めると、渾身の一撃を叩き込む。
シエラは自らにファイヤーウォーキングを使った後、周囲を囲む敵もろとも炎の海に沈む‥‥いや、膝下程度の海だから、沈みはしないが。そして自分だけそこから脱出すると、追い打ちをかけるようにマグナブローを次々と見舞った。
雪華は相手の攻撃を盾で受けつつ、右腕のナックルで体力を削り、その傍では静夜が刀を振るい、死体を次々と切り身にしていく。
安全地帯を確保しながら、セティアは相変わらずトラップを仕掛けて回り、グランはあと一撃で沈みそうな敵を狙って「俺TUEEEE!」を実感‥‥していたのかもしれない。
やがて‥‥果てしなく続くかと思われた戦いに、漸く終止符が打たれた時、辺りはすっかり暗くなっていた。
メグレズがデティクトアンデッドで周囲を探るが、何の反応もない。
魁厳も惑いのしゃれこうべを使ってみたが、それは僅かな音さえ立てずに静まり返っていた。
「‥‥念の為、明日の昼間ももう一度調べてみた方が良さそうですね」
小さく纏めた炎を空のランタンに仕舞ったシエラが言う。
だが、とりあえずは‥‥ただの死体に戻った亡者達を何とかしなくては。このまま放置すれば、死体の匂いを嗅ぎつけて他のモンスターが襲って来ないとも限らない。
土葬にする手もあったが、再び迷って出ないようにする為には炎で浄化するのが一番だろう。それに、村人達に手伝って貰ったとしても、全ての遺体を土に埋めるには相当な時間がかかりそうだった。
「魂は天に、体は大地に還りなさい。二度と迷う事のないよう、安らかな眠りを‥‥」
シエラが炎を解放する。
「主よ、幾多の迷える魂をどうぞ御許にお迎え下さいまし‥‥」
「亡者達が迷う事の無いよう祈りましょう」
ベアトリスの祈りに、静夜が静かに手を合わせ、他の者達もそれぞれに祈りを捧げた。
「‥‥さて‥‥では、積んできた食糧を皆さんにお配りしましょうか」
「ついでに調理を任されましょう。今からそれぞれの家で何かを作るのは手間でしょうから」
雪華の言葉に魁厳が答え、荷物から鉄人のナイフと調理道具一式を取り出した。
「じゃあ俺は、修理のお手伝いをしようかな。破損箇所、ありそうですよね‥‥この状態だと」
遠くから村の様子を眺めてグランが言う。
依頼期間の残り数日、出来る事は多そうだった。