俺の屍を超えて‥‥行くなァ!
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 71 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:12月18日〜12月23日
リプレイ公開日:2007年12月26日
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●オープニング
十字路は不吉だ。
何故なら、そこには無縁仏や処刑された罪人が埋められているから‥‥。
そしてここにも、十字路に埋められた男がいた。
数々の悪事を働き、誰からも死刑にされて当然と思われていた凶悪な犯罪者。
彼は死して尚、人々に仇なす事をやめなかった。
「‥‥出るんだよ、あそこの十字路には恐ろしい幽霊が!」
近くの村にある宿の主人は、これからそこを通ろうとする客の全員に、いつもそう忠告していた。
「多少遠回りにはなるが、迂回路があるんでね。悪い事は言わない、急ぎたい気持ちはわかるが、そっちを通りなさい」
だが、そう聞かされても‥‥いや、聞かされれば尚のこと、怖いもの見たさで十字路に近付く者が後を絶たなかった。
そして、その度に増えて行くのだ、十字路に現れる幽霊や、動く死体が‥‥。
舞台は移って冒険者ギルド。
「もう、ウンザリだ」
宿の主人はそう言うと、重そうな金袋をどさりとカウンターに置いた。
「奴等全員まとめて退治してくれ! もう二度と、迷って出ないように、徹底的に、完膚無きまでに!」
十字路の手前には侵入防止用の柵も、警告も、迂回路の案内板もある。だが、文字を読めない者は多いし、読めても無視する者も‥‥宿での忠告を無視する者と同じくらいに、これまた多い。
そんな馬鹿者どもは自業自得なのだが‥‥
「これ以上増えたら、あの幽霊ども、今度は村を襲うようになるかもしれん」
そこまで勢力を拡大されてからでは遅いのだ。
いや、今でも充分、かなりの数ではあるのだが‥‥
「今のところ、奴等は十字路で獲物を待ち構えてるだけだ。だから今のうちに‥‥!」
●リプレイ本文
「な、なんだかいろんな意味でかわいそうな話‥‥」
依頼人の宿で詳しい話を聞いたマリエッタ・ミモザ(ec1110)は、お気の毒です、と声をかける。商いを生業とする彼女にとって、商売人の受難は他人事ではないようだ。
「踏まれて悪霊になったレイスは、迷惑だけど怒るのもごもっとも。そして、取り巻きの霊たちも‥‥。まとめて昇天させてあげたいです」
「柵をしても看板を出しても無駄という話だ、滞在中は警戒役として交代で見張りに立つべきか‥‥?」
これ以上犠牲者を出して頭数を増やされるのは面倒だ、と、コバルト・ランスフォールド(eb0161)が呟く。
「そうですね。私はまず、近所の人に期間中は特に近づかないように触れ回りましょう。近づいた場合は命の保証はしません、助けませんと、少し脅すくらいが丁度良いでしょうね」
陰守辰太郎(ec2025)の提案に、それが良いだろう、とコバルトも頷いた。
「‥‥しかし、哀れだな」
無法と無謀の成れの果て。彼等に何があったのか、そんなものに興味はないが‥‥。
「昼夜問わず出没するという事ですから、戦闘は日中に行うのが良いでしょうね」
マロース・フィリオネル(ec3138)が言った。
今日のうちに現場を調べて、明日の昼間に一斉攻撃。それまでは交代で見張る。
「では、それで行きましょうか」
辰太郎が言い、冒険者達はそれぞれの役割を果たす為、ひとまず宿を後にした。
そして翌朝。
「や、実はダチがさ、面白え武器手に入れたんだなこれが」
件の十字路を前に、日高瑞雲(eb5295)が黒と赤に染められた見るからに禍々しい得物を取り出して言った。
「死者殺しのハリセンだとさ。今回アンデッド相手だろ? 試し斬り‥‥もとい、試し叩き? にゃ最適だと思ってな」
瑞雲は豪快に笑い、鞘から抜き放った野太刀を地面に突き刺した。
「こいつは後で使うとして‥‥さぁて、ぶった斬り‥‥いや、ぶっ叩きに行くかぁ!」
そして昨日の調査で判明した、アンデッド達が動き出さないギリギリの場所で黄金の枝を使い、結界を張る。
一方、辰太郎は道返の石に祈りを捧げ、結界を発動させたそれを愛犬の虎牙に持たせた。
「これで、移動結界が出来ると思うのですが」
そしてオルロック・サンズヒート(eb2020)はフレイムエリベイションを瑞雲に、バーニングソードをシャノン・カスール(eb7700)が連れてきたスモールアイアンゴーレムの拳に付与する。
「皆さん、準備は良いですか?」
シャノンの問いかけに全員が頷く。それを見て、まず辰太郎が一歩、囮としてその場から踏み出した。と‥‥
待ち構えていたように、土の中から腐り具合も様々な死体の群が現れた。
ほぼ同時に、シャノンがこちらに最も近い位置に現れた5体のズゥンビにアグラベイションの魔法をかけた。ただでさえ遅い彼等の動きがますます遅くなる。
シャノンは次々と現れる死体に、片っ端から魔法をかけていった。
「よーしよし、出やがったな」
瑞雲は嬉しそうにハリセンを軽く鳴らしながら、そのノロマなズゥンビ達に近付いて行き、目についたものから適当に、スマッシュEXを叩き込んだ。
「せぇーのォ!」
すぱこーん!
べしゃ!
「お、効いてる効いてる!」
すぱこーん! すぱこーん! すぱ‥‥
楽しそうにズゥンビを叩きまくる瑞雲に負けてならじと、アクエリア・ルティス(eb7789)も辰太郎に借りたファントムソードを手に前へ出る。
「地元での依頼ならお父様達の耳に入るかもしれない。気が抜けないわ!」
何やら家庭の事情があるらしいアクアは自らにオーラエリベイションをかけ、やる気満々で敵陣に突っ込んで行った。
だが‥‥
「きゃあぁぁ!」
潔癖性のアクアさん、異臭を放ちながら動き回る死体に嫌悪感バリバリだった。
だが、キャーキャーと叫びながらもしっかり攻撃はしているようだ。
「いやぁぁっ!!」
ズバッ!
「来ないでぇえ!」
バシュ!
そこに隣でハリセンを振るう軽快な音が混じり‥‥
「キャーッ!」
すぱこーん!
「イヤーッ!」
すぱこーん!
「フケツーッ!」
すぱ‥‥
「‥‥若いモンは元気があってええのォ」
妖精の盾を掲げて後衛を守るマロースの後ろで、オルロックが呟いた。
「どれ、わしも少しばかり張り切ってみるかのう‥‥」
そう言うと、オルロックは魔法の炎を身に纏い、空へと舞い上がる。標的は空中を漂いながら近付いてくる3つの青白い炎‥‥レイス達だ。
「厄介なものから、先に片付けた方が良さそうですね。では、私も‥‥」
ゴーレムに「近寄るモンスターを迎撃しろ」と命じたシャノンも、ファイヤーバードのスクロールを使い、オルロックの後を追った。
二体の火の鳥が縦横無尽に空を舞う中、地上ではコバルトがブラックホーリーを、マロースがホーリーを次々と放つ。
マリエッタも地上の敵は前衛のうるさい二人に任せ、味方に当たらないように慎重にタイミングを計りながら上空に向けてライトニングサンダーボルトを放った。
そして辰太郎は射撃の精度を上げる為に一本ずつ確実に矢を放ち、レイスに着実にダメージを与えていく。その攻撃は魔法の効果によって、一撃で重傷ダメージを与える事が出来た。
「‥‥思ったより、楽な仕事かも?」
マリエッタが思わず呟いたように、冒険者達の集中攻撃を受け、そしてマロースのピュアリファイで止めを刺された3体のレイス達は、拍子抜けするほどあっけなく、その存在を失った。
レイス除けにとわざわざ金貨を銀貨に崩し、それを体のあちこちに仕込んでおいたのだが‥‥。
「あんまり意味なかったかも?」
「‥‥そろそろ、一時撤退してはどうだ?」
コバルトが言った。地上の敵‥‥死者達は、倒しても倒しても次々と湧いてくるようだ。
「向こうの頭数が多いのならば此方も消耗戦だ。数回に分けた方が良かろう」
「そうですね。敵は一定以上離れれば追っては来ないようですし、私も、もう魔力が‥‥」
とシャノン。
「なんだ、下がるのか? 丁度良い、俺もぶっ叩くのに飽きてきた所だ」
と、瑞雲が振り向いたその時。
死者達の群を隠れ蓑にして近付いてきた青白い炎が、ふいに背後に現れた。
「――!?」
すぱこーん!
咄嗟にそれをぶっ叩いた瑞雲だったが‥‥
「効いてねえ!?」
スマッシュEXで加算される威力は武器の重量の2倍。だが、端数はすっぱり斬り捨てられてしまう‥‥つまり、軽い武器でのスマッシュは命中率を下げるだけで、何の効果もなかったりするのだ。
そう言えば、元凶であるレイスは他より少しタフらしいと聞いた‥‥
「こいつ、ラスボスか!?」
「とにかく、逃げて下さい!」
ホーリーで援護射撃をしながらマロースが叫ぶ。
「ある程度離れれば追っては来ませんから‥‥!」
だが、ラスボスからは逃げられない!
それは仲間を倒された怨み故か、十字路を遠く離れてもしつこく追って来る。
「ここで倒すしかないみたいね!」
逃げるのを諦め、アクアは立ち止まって剣を振りかざす。その瞬間‥‥炎が消えた。
「――痛っ!」
アクアが小さな悲鳴を上げ‥‥
「アクアさん!?」
「やべぇ、取り憑かれた!?」
アクアの剣は今、仲間に向けられていた。
「すみません、拘束させて貰います!」
マロースがコアギュレイトを放ち、ほぼ同時にコバルトのブラックホーリーが飛んで来る。レイスは再び青い炎となって姿を現した。
「手間ぁかけさせんじゃねえぞ!」
丁度その辺りに突き立ててあった野太刀に持ち替え、瑞雲はレイスに渾身の一撃を叩き込む。
「これで、成仏して下さい」
「どうか、安らかに‥‥」
辰太郎が矢を放ち、マロースがピュアリファイで止めを刺し‥‥炎は消えた。
他に追って来る者はいない。
残りはまた明日‥‥。
「今日こそは、全ての死者に眠って頂きます」
翌日、囮に反応して起き出して来た死者達に向けて、マリエッタがトルネードのスクロールを使う。
「安らかに、という感じじゃないけど昇天して!」
それに巻き込まれ、しかし天には届かずに落ちてきた死者達に、今度はオルロックがファイヤーボムを撃ち込む。
それでも立ち上がり、向かって来る敵にはシャノンがグラビティーキャノンを、そして辰太郎がダブルシューティングで手当たり次第に矢を放つ。
「これだけいれば、適当に撃ってもどれかに当たりますね」
「的を絞る必要もないか‥‥」
コバルトも、起き上がった死者達に矢継ぎ早にブラックホーリーを撃ち込んだ。
「さーて、今日こそ一匹も残さず掃除してやんぜ」
ハリセンはもう飽きたらしい。今日の瑞雲は最初から野太刀装備だった。
「昨日はよくもやってくれたわねっ」
いや、昨日アクアさんに取り憑いたのはそいつらじゃないんだけど‥‥まあ良いか。
そして今日も、空には二体の火の鳥が舞う。
やがて十字路の付近から、動くものの姿は消えた。
「‥‥どうやら、全て片付いたようです」
デティクトアンデッドで確認したマロースが言った。彼女は更に、死体達にピュアリファイをかけて回る。念には念を、だ。
「十字路は、完全に囲んで墓地にしてあげたら良いのではないでしょうか‥‥」
辰太郎が言うが、ここが公道である以上は勝手に作り替える事は難しいだろう。
「ならばせめて、別の場所に埋葬してあげましょうか」
シャノンが言った。無縁仏達もきちんと掘り返し、簡単な墓を作ってやろう。
だが、元々ここに埋められていた元凶‥‥名も知れぬ悪党は、このままにしておくしかない。ここに埋められ、人々に踏みつけにされる‥‥それも彼に与えられた罰なのだから。
「ま、俺の国じゃあどんな悪党でも死んだらただの仏サマだからな」
瑞雲は十字路に清めの塩を振りまき、数珠を手に合掌する。そして発泡酒を一本、十字路に置き、手にした一本と軽く打ち合わせた。
「そんじゃま、一杯やっか‥‥なぁ、悪党さんよ」
名も知れぬ死者と酌み交わす酒の味は、果たして‥‥?