【聖野菜】葱サンタは愛の使者!?
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月23日〜12月28日
リプレイ公開日:2007年12月31日
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●オープニング
「聖夜祭‥‥か。もう、あれから一年が経つのだな‥‥」
今にも雪が降り出しそうな窓の外を眺めながら、赤ずくめの男、レッド・クリムゾンが呟く。
「そう、去年のあの日まで、俺の人生は真っ暗だった。だが、今は‥‥」
振り向いたそこには、子供達へのプレゼント作りに精を出す少女の姿があった。視線に気付いて顔を上げた少女‥‥ワンダは、手を止めて小さく微笑む。
「今年も、一緒に行きましょうね」
「ああ‥‥」
ワンダの故郷、葱サンタを信じる子供達が待つ、あの村へ。
「勿論、他の仲間も呼ぶだろう?」
「そうね、サンタさんは沢山いた方が楽しいし‥‥そろそろ、頼んで来てくれる?」
レッドは軽く頷くと、赤い葱を手に玄関を出る。思えばこの寒空の下、去年は褌一丁で飛んでいたのだ。だが今のレッドは冒険者から貰った温かい防寒着と毛糸の帽子がある。それに、ワンダお手製防寒具のアレコレも。
「ふ、俺もヤワになったな‥‥」
だが、悪くない。なんか、イイ。
レッドは赤い葱に乗ると、キャメロットの冒険者ギルドに向けて飛び立った。
「はいはい、葱サンタ募集ですね?」
受付係は慣れた様子で答えた。目の前の妙な格好をした赤い男にも、その尻に生えた赤い葱にも動じない。
「場所は去年と同じ村‥‥ただし、今年は何の妨害もない。もし何かあれば、俺が蹴散らしてやる」
子供達の年に一度の楽しみを奪おうとする奴は許さん、と、去年の妨害者は言った。
「仕事は葱サンタになって村の子供達にプレゼントを届ける事、それだけだ。後は‥‥去年のようにパーティを楽しんで貰えれば良い。村では準備を整えて待ち構えているだろう」
今年は日程に多少の余裕がある。手先の仕事に自信があれば、ワンダのプレゼント作りを手伝ったり、独自にプレゼントを用意して貰っても良い。
「それに‥‥正直、サンタ役にそれほどの人数は必要ない。だから、パーティだけの参加でも構わない。あの村は誰でも歓迎してくれる‥‥それに、ゲストは大勢いた方が盛り上がるだろう。葱に乗らない者も‥‥理解が‥‥いや、理解しようとする気さえあれば、歓迎する」
ただし、フライング葱及び類似の方法では村まで数時間程度だが、途中に大きな川や渓谷、それに森がある。それらを迂回する為に、普通に歩くと二日はかかるだろう。
「安心しろ、無理に勧めたりはしない。‥‥葱の魅力を世に広める事が、俺達の目標ではあるが、な」
そう言い残し、レッドはギルドを後にした。
●リプレイ本文
「ワンダさん、こんにちはー!」
「にゃっす! ワンダちゃん元気かにゃ〜?」
ワンダの自宅兼工房のドアを元気に開けて、一緒に入って来たのはチップ・エイオータ(ea0061)とパラーリア・ゲラー(eb2257)の葱サンタコンビだった。
「こんにちは、今年も二人でサンタさんをやってくれるの?」
出迎えたワンダの問いに、パラーリアが首を振った。
「ううん、今年はもう一人いるんだぁ〜」
二人の後ろから、自身を模した着ぐるみに身を包んだ龍一歩々夢風(eb5296)が顔を出す。
「葱サンタV3、龍くんでっす! 候補生レベル1だけど、頑張りマッスル!」
パラの二人も元気だが、龍一も力一杯元気だ。
その後ろから、レイジュ・カザミ(ea0448)と来生十四郎(ea5386)の二人が姿を現した。
「今年の手伝いは、この5人だ。よろしくな」
「ありがとう、私の方こそよろしくね」
十四郎の言葉にワンダは嬉しそうに顔を綻ばる。傍らに立つレッドも嬉しそうだ。
「パーティ当日までは、おいら達もワンダさんのプレゼント作りをお手伝いするね」
チップが言った。
「おいらはお菓子入りのブーツを作ろーと思うの。小さめの赤いブーツをいくつか縫って、クッキーや蜂蜜入りのスコーン、ラスクを端切れに包んで入れたら可愛いよね」
他にもいくつか作りたい物はあるが、それはまだヒミツだ。
「んとんと、あたしは葱サンタワッペンを革細工でつくって子供たちに配るねっ」
と、パラーリア。
「じゃあ僕は先に行って、会場の準備をしておくね」
「おう、じゃあこれ、持ってってくれ」
出ようとするレイジュに、十四郎がハムとチーズを手渡した。
「俺はこっちでプレゼント作りと袋詰めを手伝ってから行くんでな。あー、それに差し入れ用の酒の準備も、だな」
十四郎、とことんお酒好きです。
そして冒険者達の協力もあってプレゼント作りも順調に進み‥‥3日目。
「いよいよパーティだね」
出来上がったプレゼントを袋に詰め込みながら、葱サンタ姿のチップが言った。
「今年もこの季節がきたんだね〜。みんなが幸せになれるといいね〜」
葱サンタ2号のパラーリアが、チップの方を気にしながら小さな声で付け加えた。
「そっそれからあたしもっ」
「また村のみんなに会えるんだね、すっごく楽しみ♪」
彼女の言葉が聞こえなかったのか、それとも聞こえないふりをしたのか、チップが楽しそうに微笑む。
「今年はレッドさんもいるし、きっと去年よりも楽しいパーティになるよね。みんなに喜んでもらえるよーに、おいらも頑張るね」
「であであ不肖龍一、全身全霊を込めて夢のサンタさん頑張りマッスル!!」
まるごとりゅういちの着ぐるみの上から赤いサンタ服を着た龍一が、葱に乗って颯爽と飛び立つ。
1号、2号、そしてワンダとレッドが続く。十四郎は一足先に村へと向かっていた。そこでは、純朴で温かい村人や、無邪気な子供達がその到着を心待ちにしているのだ‥‥!
一方、初日から村に入ったレイジュは、せっせと会場作りに精を出していた。
「素敵なクリスマスを過ごして欲しいからね。この村の人々は皆暖かい人ばかりだし!」
レイジュは子供向けには甘いお菓子、カップル向けに可愛いハートのプティング‥‥ただし、いくつかはイタズラな辛いスパイス入りだったりするが‥‥を作ってテーブルに並べて行く。
酒樽持参で少し早めに到着した十四郎も、飾り付けや力仕事を手伝っていた。
そして‥‥
サンタが村にやって来た。
葱に乗って。
「サンタだ!」
「葱サンタだ!」
「今年も来てくれたんだねっ!」
去年と同じように、大人も子供も大喜び。いや、サンタと顔馴染みの分、皆去年よりも嬉しそうだ。
「メリークリスマス、今年も来たよ♪」
「にゃっす! 今年も村のみんなに幸せとプレゼントをおとどけするねっ」
1号と2号がランデブーをしながらプレゼントを配る。
「これでみんなも聖野菜隊(セイネギタイ)だよ〜♪」
2号が子供達に配っているのはお手製のサンタワッペンだ。
新顔のV3も負けてはいない。
「君もラブー!」
「あなたもラブー!」
「みーんなラブー!!!」
「今年も葱サンタさんが、みんなにラブを届けに来たヨ!」
まさしく全身全霊を込めてプレゼントを配りまくる。
チップが作ったお菓子のブーツや、十四郎の手になるクマや犬、ネコなどの小さなぬいぐるみや、鈴のついた布製のボール、お手製ではないが、サンタやスノーマンの人形、マフラー、ペンダント‥‥それに、ワンダが作った小さな葱サンタのマスコット。その数は村じゅうの子供は勿論、大人達を加えて全員に配ってもまだ余るほどだった。
そして、葱サンタが無事にプレゼントを配り終わった頃‥‥
「ようこそー! 素敵な聖夜のパーティ会場へ! まずは、オリジナルのつりーをごらんあれ!」
レイジュがサンタと入れ替わるように空へと舞い上がり、一本の大きな木の周囲を旋回する。レイジュが村に到着してから3日の間、せっせと飾り付けをしていた特製ツリーだ。勿論、葱の村らしく木の頂点にはフライング葱が燦然と輝いていた‥‥いや、葱は輝かないけど、黄金の葱じゃないし。
それはともかく。
「さあ、この木の下で告白をしたものは幸せになれるよー! たぶん」
それを聞いて素直に信じた何人かの村人達が、早速木の下に集まってきた。
それを見ながらレイジュはひとり呟く。
「昔はカップル撲滅に勤しんだ僕が、カップルの応援をするなんて‥‥ね」
独り身には淋しい季節‥‥だが、今年は何となくいい気分だった。
「今は可愛い甥や姪が出来たからかもね!」
「‥‥ま、たまにはこういう席で賑やかに飲むのもいいもんだ」
ちびちびとやりながら、十四郎がレッドに声をかける。
「折角の聖夜だ、今年も楽しいパーティになるといいな。なぁレッド?」
そして笑いながら、お手製の四隅に葱の刺繍を施した花嫁用のベールを手渡した。
「少し気が早いとは思うがいつか役に立てば‥‥な。好きな色に染めて、誰かさんに渡してやれ」
「だ、誰か‥‥とは、その‥‥」
「さあ、誰だろうな?」
顔を真っ赤に染めたレッドの言葉に、十四郎は含み笑いを漏らしながら、テーブルの向こうにいるワンダに視線を向ける。
「ねえ、すぐそこに教会もあることだし、二人で未来の予行演習してみたら? 聖夜だから、葱の神様もジーザス様もきっと二人を祝福してくれると思うんだ」
「よ‥‥予行演習っ? い、いや、俺達はそんな‥‥そ、そうだ、チップ。お前達こそ!」
「うん、おいらも大好きな人を誘って行くつもり。あ、そうだ、これ、クリスマスプレゼントね」
チップはそう言って、布の造花と葱をあしらった小さいハート型のリースを2つ、手渡した。
「片方はワンダさんにね」
「レッドさん、2人であの木の下へ行って見たら?」
レイジュまでもがレッドの背中を押す。
「レッドさんに出会ったのもこの場所からだったね。レッドさんはもう、クリスマスは淋しいなんて言わないでしょ?」
「そ、それは、寂しくはないが‥‥」
今では葱仲間も、そしてワンダもいる。だが、ワンダは‥‥
「そ、そのようなものではなくて、だな。その、葱を世の中に広める為の同志と言うか、共に歩む仲間であり、パートナーであり‥‥つまりその」
レッドは顔を真っ赤にして十四郎に貰ったベールを握り締める。
「そ、そのような相手とは‥‥思われていない、と‥‥」
一方パラーリアは女の子同士、ワンダの胸の内を聞き出そうと頑張っていた。
「ねえねえ、ワンダちゃんはレッドさんの事、どう思う?」
「どうって‥‥うん、良い人だと思うわ。最初は敵だったけどね。でも、今では葱を世界に広めるっていう私の夢に全面的に協力してくれる、とっても頼もしいパートナーよ」
「う〜ん、じゃあじゃあ、ズバリ聞いちゃうねっ! ワンダちゃんは、レッドさんのこと、好き?」
その瞬間、ワンダの頬がぽっと染まる。
「そっか。じゃあこれっ! ワンダちゃんにあげるねっ!」
そう言ってパラーリアが手渡したのは、真っ白なウェディングドレスだった。
「皆でお祝いしよう! 幸せはすぐそこだよ〜、ねっ♪」
「え? ええっ!?」
そんな、らう゛な展開が繰り広げられる傍らで、十四郎は村人達と酒の飲み比べを始めていた。
「俺が負けたら来年のパーティ用の酒を作ってやる。勝ったら‥‥そうだな、来年1杯奢って貰うとするか」
まあ、彼の場合は楽しく飲みたいだけなので、勝っても負けても来年の酒は作るのだが。
そして村の広場では‥‥龍一が裸舞と称する何やら前衛的なパフォーマンスを繰り広げていた。
「中の人などいない! なーんちゃって☆」
踊りながら着ぐるみの中から飛び出した龍一はフンドーシ一丁。そこにはジャパン語で「メリクリ!」と書かれていた。
そして‥‥パーティもそろそろお開きになりかけた頃。
「良かったら一緒に教会に行かない?」
パラーリアにプレゼントのリースと、ヘアバンドにレースの布を縫い付けたお姫様のようなお手製の冠を手渡したチップが言った。
「ずっと一緒にクリスマスできますよーにってお祈りしたいんだ」
その言葉にパラーリアは素直に頷く。
「‥‥まだ先の話だけど、いつか二人でまたここに来たいな」
祭壇の前で少し恥ずかしそうに呟いたチップに、パラーリアが言った。
「んとんと、ハロウィンのおくりものありがと〜♪ とおっても嬉しかったよお〜☆」
その指には、小さな指輪が光っていた。
「あたしもチップせんぱいがラヴだよ、これからは2人で思い出を作れたらいいにゃあって思うのっ。えとえとぉ〜〜〜」
――ちゅっ☆
教会の中は薄暗くてよく見えないが、どうやら今度のキスは‥‥ほっぺではなかったようだ。
「‥‥そう言えばレッドさん達、来なかったね」
「うん、まだちょっと早かったかにゃ〜」
だが教会から出てきた二人が例の木の下で見た人影は、多分‥‥