【ご近所の勇者さま】魔王をやっつけろ!

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:11〜lv

難易度:易しい

成功報酬:2 G 74 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:12月27日〜01月01日

リプレイ公開日:2008年01月04日

●オープニング

 わるいまおうがあらわれた!
「はーっはっはっは! 勇者よ、姫は貰って行くぞ!」
 まおうはおひめさまをさらっていった!
「返して欲しければ、この俺様を倒してみせろ!」
 ゆうしゃたちはまおうをとりかこんだ!
「悪い魔王め、許さないぞ!」
「お姫様を返せ!」
「それ、やっつけろー!!」
 ゆうしゃたちのこうげき!
 ――ドカ! バキ! ボコ!
「う、いたたた…参った、ストップ! 降参!」
 まおうをたおした!

 今、キャメロットのとある一角に住む子供達の間では、勇者ごっこがブームになっていた。
 魔王や、その手下の役を務める‥‥と言うか、させられているのは、子供達の父親だ。
 しかし‥‥

「子供は手加減というものを知りませんからね、もう、あちこちアザだらけですよ」
 冒険者ギルドを訪ねた男‥‥子供達に付き合わされている父親の一人は「ほら」と腕まくりをして見せる。そこには大きな青タンが広がっていた。
「どうも、私らが相手では弱すぎて面白くない様なのです。おまけに演技が下手くそだの、熱が入ってないだのと、うるさくて‥‥」
 だから、自分達の代わりに子供の相手をして貰えないだろうかと、男は言った。
「つまり、悪い魔王と、その手下の役を私達の代わりにやって欲しいのですが‥‥思い切り悪役らしく、強くて倒し甲斐がある、子供達が思い切り暴れてもビクともしないような、そんな強敵が欲しいのです」
 戦闘のプロなら子供に叩かれた位でアザを作るような事もないだろう。子供達も一度思い切り暴れれば満足する筈だ。
「聖夜祭節のプレゼントとして、楽しい思い出を残してやりたいので‥‥どうか、お願いします」
 男は子供達の親から集めたものだと、金袋を差し出した。
「内容は、魔王が手下と一緒に女の子をひとり浚って逃げるのを、子供達が追いかけて退治するという単純なものです。子供達に怪我さえさせなければ、後は何をやっても‥‥どうアレンジしても構いませんので」
 見事な魔王っぷりを期待している。そう言い残して男はギルドを後にした。

●今回の参加者

 ea1249 ユリアル・カートライト(25歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea2890 イフェリア・アイランズ(22歳・♀・陰陽師・シフール・イギリス王国)
 ea7468 マミ・キスリング(29歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb2628 アザート・イヲ・マズナ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb5451 メグレズ・ファウンテン(36歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ec2141 イヴァン・ボブチャンチン(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ロシア王国)
 ec3138 マロース・フィリオネル(34歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec4154 元 馬祖(37歳・♀・ウィザード・パラ・華仙教大国)

●サポート参加者

フローラ・タナー(ea1060)/ 李 雷龍(ea2756)/ リアナ・レジーネス(eb1421)/ 雀尾 嵐淡(ec0843

●リプレイ本文

「くっくっく、勇者に憧れるガキどもか‥‥」
 イヴァン・ボブチャンチン(ec2141)は何ら演技などしなくても、素のままで魔王になれそうな凄惨な笑みを浮かべた。
「将来の冒険者予備軍となるならば楽しそうだな。強いヤツが増えるならば協力は惜しまん」
 だが、悪役はまだ子供達の前には姿を現さない方が良いだろう。
「くっくっく、本番を楽しみにしていろよ、ガキども‥‥」
「では、私も姿を隠しておくとしましょうか」
 素のままではとても悪役には見えないユリアル・カートライト(ea1249)が言った。
「悪役の中身が知られていたのでは、少々興醒めかもしれませんし」
 悪役側が子供達から見えない場所で準備に取りかかった頃、正義の味方役のマロース・フィリオネル(ec3138)は子供達を集めて遊びのルールを説明していた。
「良いですか、まずは‥‥5人ずつ、3班に分けたいと思います。5人の勇者に、正義のお姉さんが3人‥‥そのうちの一人は私が」
 残る二人はマミ・キスリング(ea7468)とシフールのイフェリア・アイランズ(ea2890)だ。
「私は、勇者殿達をフォローする騎士役をさせていただきますわ。よろしくお願い致します」
「よっしゃ、うちがお天気‥‥やなかった、ナビ姉ちゃんをやったるで〜♪」
「‥‥俺は残る子供の相手をすれば良いのか‥‥」
 アザート・イヲ・マズナ(eb2628)が、どうも勝手がわかないといった様子で言った。
「依頼で子供に接したことは‥‥ある。15人‥‥ゴブリンとは違うんだろうな‥‥」
 当然です。
「では、どうやって分けましょうか?」
 マミが居並ぶ子供達を見て言った。
「誰もに活躍の機会があるように‥‥仲がいい者同士にするか、逆にいつもはあまりつるんでいない組み合わせでより仲を深めるかという作戦もありますし‥‥どうしましょう?」
 だが子供達、いやガキどもはそんな思惑などお構いなし。
「オレ、勇者!」
「なんだよ、勇者はオレだぞ!」
「えー、待ってんのなんかつまんないー!」
「ぼく、最初の組がいいー!」
 などと口々に言い出し、収集が付かない。
「ええい、やかましわーーーッ!!」
 ガキどもの頭上にイフェリアの褐が飛んだ。
「ごちゃごちゃぬかすと、口ん中手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたるでぇッ!?」
 ガキどもが水を打ったように静まり返る。このナビ姉ちゃんは魔王よりも怖いと認識したようだ。
「あー、もうええ! くじ引きやくじ引き! それで文句あらへんやろ!?」
 ガキどもはカクカクと頷いた。
「よ〜しよし、ええ子らや。ええかー? 弱いモンいぢめとか『勇者』の道を外しそうになったら、ドタマゴスゴスイワししてでも止めるさかいな、気ィつけや〜?」
 カクカクカク。
「ふふ‥‥小さい勇者さま達は、少々元気が良すぎるみたいですね?」
 物陰からその様子を眺めていたユリアルが小さく笑う。
「でも、こういう遊びは楽しそうです。私も童心に戻るつもりで、張り切って演じましょう。一度、悪い魔法使いとかやってみたかったんです」

 そして、準備完了。
 マロースの施した化粧で変身した勇者達にはマントと皮兜が貸し出され、メグレズ・ファウンテン(eb5451)が木材から切り出し、雀尾嵐淡がそれらしい装飾を付けた「勇者の剣」を渡された。
 戦場は民家の裏手に広がる空き地。危険がないようにと、元馬祖(ec4154)とリアナ・レジーネスによって石や危険物は極力排除されていた。
「よっしゃ、行くでぇ! 第一班、出陣や!」
 空き地に浚われ役の女の子の悲鳴が響き渡る。
「はーっはっはっはぁ! 勇者どもよ、姫を帰して欲しくばこの俺様を倒してみろ!」
 魔王の声だけが、空き地に響く。そして現れたのは‥‥
「我が名はグートゥ‥‥魔王に仕えし『冥府の三卿』が一人‥‥」
 まるごとすけるとんとスカルフェイスで悪役になりきった馬祖が現れた。
「我はエレパース。同じく三卿が一人‥‥見知り置き願おう」
 その背後から現れた禍々しい装備に身を包んだメグレズは、馬祖が小柄なせいもあってか、余計に大きく見える。
「同じく‥‥冥府の三卿‥‥」
 最後に腰を曲げ、骸骨の飾りが付いた不気味な杖にすがるようにして現れたのは、黒いローブのフードを目深に被ったユリアルだった。顔色は悪く、そして皮膚はゴツゴツとした岩のようなものに覆われている。
「魔王の‥‥呪いだ‥‥だが、それと引き替えに手に入れたこの力、とくと味わうが良い‥‥!」
 ユリアルはしゃがれた声でそう叫ぶと、手にした杖を振りかざす。
「魔王様に逆らう奴は許さんぞ!」
 ユリアルは適当に邪悪っぽく聞こえるような呪文を唱え、グリーンワードを発動させる。その瞬間、ユリアルの体が茶色の光を発した。そして、手近な子供の頭をそのゴツゴツした手でがっしりと掴んだ。
「どうだ! これでもうお前の体は儂と同じ、石となるのだ!」
「大丈夫! 気合いです! そんな呪いは気合いで跳ね返すのです!」
 マミが叫んだ。言われて、子供は大声を上げる。
「うわああぁぁぁッ!!」
 ――パリーン!
 誰かが効果音を入れた。
「呪いを跳ね返したわ! さあ、今のうちに、あの悪い魔法使いを!」
 マミは言い、自らもオーラボディとオーラエリベイション、そしてオーラシールドをかけて強化する。
 そして5人の勇者にタコ殴りにされた悪の魔法使いは‥‥
「わ、儂の魔法が効かぬとは‥‥! ま、魔王様ーッ!」
 心底悔しそうに手を振り上げながら、オーバーアクションでがっくりと倒れ伏す。だが、それは演技ばかりでもなかったかもしれない。いくらストーンアーマーで強化したとは言え、そして子供の力とは言え‥‥木刀は少しばかり痛かった。
「むう、魔法使いがやられたか! しかし、我等二人の鉄壁の守りは通さぬ!」
 オーラボディで強化した馬祖は身軽に動き回り、マミや子供達の攻撃をかいくぐっていく。
「無念の底に、沈んで散れ、勇者ども!」
「――うわあっ!!」
 子供の一人が攻撃を喰らってひっくり返る‥‥攻撃自体は寸留めだが、いきなり目の前に突き出された拳に驚いたのだろう。
「どうした、それでも勇者か、腰抜けが!」
 一方メグレズはその巨体を揺らしながら、ゆっくりと子供達に近付いていく。
「大敵、臨戦!」
「‥‥どういう意味?」
 子供の問いに、ナビ姉ちゃんが答える。
「んー、スゴイ奴が現れたっ、てトコやね」
 そのスゴイ奴は子供達の頭上に手を振りかざし、何やら邪悪な呪文を唱えた。その途端、白い光が溢れる。
「これでお前達を守る魔法の効果は消えた」
 実はその反対で、子供達の周囲にホーリーフィールドを張ったのだが‥‥
「ストライクビート!」
 安全を確認した上でソードボンバーを放つ。武器はハリセンと言えども、腕力の分だけダメージは入るのだ。
 その攻撃を妖精の盾で受け止めたマロースは、ホーリーで相手を攻撃する。なんちゃって悪人には効果はないが、それらしく見える所が便利な魔法だ。
 やがて適当に攻撃を受けた所で二人は倒れ伏し、魔王召還の呪文を唱える。
 マロースの奏でるリュートの効果音に乗って現れたのは‥‥
「‥‥オレか? オレは本物の魔王だ。ふっふっふ‥‥部下が世話になったな‥‥!」
 ブラックローブに鉄仮面、そしてデモンズシールド‥‥頭にはマロースが作った立派な角が生えている。それに何より、言っちゃ悪いが元々悪役面。どこからどう見ても、立派に本物の魔王様だ。
 子供達は思いっきりビビっていた。それを見て、マミが飛び出す。魔王と一騎打ちをしようというのだ。
 しかし‥‥
「ごめんなさい。私の力では敵わないようです。どうか、仇を、お願い‥‥!」
 がくり。
 それを見て、勇者達は奮い立った。勇者の剣をめちゃめちゃに振り回し、魔王に向かって行く。だが‥‥
「はーははは、ヌルいヌルい! うぬらの小さな力1つ1つでは蚊が刺したほどでもないわッ!」
 ほんとに、魔王はビクともしない。木刀の攻撃はけっこう痛い筈なのだが。
「ほれ、魔王も言うとるやろ、皆の力をひとつに合わせるんや!」
 ナビ姉ちゃんに言われ、子供達は力を合わせて一点に攻撃を集中させる。
「せーのぉッ!!」
 ――どかーん!!
「ぐうぅ‥‥ッ! こ、この魔王が、チビ勇者ごときに‥‥っ! しかし、これで勝ったと思うなよ‥‥オレは必ず復活する‥‥!」
 その言葉通り、魔王はあと2回復活‥‥って言うか、これを3回も繰り返すのか。

 一方その頃‥‥待機中の子供達を預かるアザートは、彼等と遊んで‥‥遊んで、いるのか、これは?
「オニごっことか言ったか‥‥面はあるが、これで何をするのだ?」
 アザートはとりあえず持参した鬼の面を被ってみる。鬼ごっこという遊びを知らないようだ。
「‥‥追いかければ良いのか‥‥? ああ、そっちはだめだ、さっきの5人の番だ」
 抜け駆けして最初の勇者達に混じろうとした子供を引き止める。
「‥‥いや、泣いてもどうにもできない‥‥」
 子供に泣かれて困り果てているアザートの袖を、小さな女の子が引っ張った。
「おままごと、しよ?」
「‥‥おままごと? それも何かの遊びなのか? お父さん? どうやればいい?」
 最初は待機組の10人だけだった筈が、いつの間にか子供の数が増えていた。
 そして最初の組が興奮した様子で戻り、次の組に交代する‥‥が、アザートはひたすら子守役。寒さを気遣い、笛や竪琴を教え、連れてきた犬達と遊ばせ‥‥
「ひ‥‥ひひーん」
 果ては駿馬の被り物を被り、子供達を背中に乗せて馬の役。
 だが、なんとなく楽しい。子供達もこの一風変わった子守役と過ごす一時を楽しんだようだった。

 そして全てが終わり‥‥
「すっげー面白かった!」
 子供達が口々に言う。どうやら満足して貰えたようだ。
「次は魔王の逆襲だよなっ!? 魔王って、倒してもぜったい復活するもん!」
 ‥‥リベンジを期待されているようですが‥‥どうしますか、魔王様?