【美女(?)と野郎】幽霊屋敷の新年会
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:01月06日〜01月11日
リプレイ公開日:2008年01月16日
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●オープニング
「あー、ゴメン! ほんっと、悪かったと思ってる! 大事な聖夜祭の時期にほったらかしにしたのは謝るから、機嫌直してくれよ。‥‥なっ?」
‥‥などと、臍を曲げた恋人に言うような台詞を壁に向かって吐いてるのは、吟遊詩人のガイ・シンプソン。
彼とその相棒、レディアス・ハイウィンドのコンビは、聖夜祭節の間じゅうあちこちの‥‥主に女性の集まるパーティの席に引っ張りだこで、家に帰る暇もなかったのだ。
「‥‥まあ、引っ張りだこだったのは、主に‥‥って言うか完璧にレディの方だったけどさ」
ガイは魂が抜けるような、深〜い溜息を漏らす。
相棒であるリュート弾きのエルフは、言葉を話さない。口がきけない訳ではないのだが、ガイも知らない「ある事情」により、貝のように口を閉ざしているのだ。だが取り巻きの女性達にとっては、それもまた神秘的で、魅力的に映るらしい。
レディが静かにリュートを奏で始めると、その周囲にはあっという間に十重二十重の人垣が出来るのだ‥‥主に女性の。主に、というのは彼が女性、しかも絶世の美女と見紛うばかりの美貌を備えているが故の事だった。
それに比べて自分は、とガイは沈鬱な表情を浮かべる。
集まって来るのはムクツケキ男どもばかり。いや、相手が誰であろうと人気があるのは素直に嬉しいのだが、ガイも17歳の男の子、彼女の一人位は切実に欲しい、そんなお年頃だった。
‥‥まあ、それは置いといて。
彼が今、話しかけているのは、二人が住んでいるこの家に取り憑いた少女の幽霊だった。幼くして亡くなった音楽好きの少女の霊は、二人がこの家に住むようになって以来毎日のように聞こえてくる歌や演奏を楽しみにしていたらしい。らしい、と言うのは‥‥彼女もまた、全く言葉を話さないから。表情も乏しいので、何を考えているのか全くわからない。だが、演奏が始まるといつも決まって現れるのは、それが気に入っているという証拠だろう。
だが‥‥その彼女、アイリーンが、姿を現さない。
「やっぱりアレだよな‥‥俺達が留守にしてたせい‥‥だよな?」
――たむっ!
ガイの問いに、やはりこの家に取り憑いている、楽しい事が大好きなポルターガイスト、ポルちゃんが太鼓を鳴らして答える。一度だけ鳴らすのは「イエス」の意味だ。
「う〜ん、どうしたら機嫌直してくれるんだろうな‥‥」
‥‥返事はない。わからない、もしくはそんな事は自分で考えろという意味だ。
「やっぱ演奏会、かな。大勢集めて、いつもよりちょっと派手で、豪華に‥‥お客さんも呼んで、パーティとかも‥‥」
――たむっ!
「‥‥わかった。じゃあ、手配してくるから‥‥機嫌直せよ、な?」
最後の言葉は、恐らくそこに居るであろう少女に向けたものだ。
‥‥自分の回りにはどうしてこう、無口な連中ばかりが集まるのだろうかと溜息をつきつつ、ガイは冒険者ギルドへと向かった‥‥。
●リプレイ本文
「僕に出来る事はあんまりなさそうですが‥‥客集め位は出来るかな」
「ちょおっと待てっ!」
挨拶もそこそこに町に出ようとした李雷龍(ea2756)を、ガイが慌てて呼び止める。
「その前に‥‥それ、置いて来いっ!!」
それ、とは‥‥彼が連れているウイバーン。体長3m。翼を広げれば5m。立派な鈎爪と、毒針の付いた長い尾を持った正真正銘のモンスター。しかも、懐いてない。
「あ、す、すみません!」
雷龍は慌てて住処に引き返し、その危ないペットに留守番を命じた。
そして数刻後。
広場の一角に、何やら楽しげな楽の音が流れ始める。
アルフィエ・グレイシェル(ec0964)がリュートを爪弾き、その傍らでシリウス・ディスパーダ(ec4270)のオカリナが歌っていた。
アルフィエは本職の吟遊詩人だが、本来は騎士であるシリウスの演奏はそれほど上手くはない。だが、音楽を楽しみたい、音楽で人を楽しませたいと願い、心を込めた彼の演奏は道行く人々の足を止めさせた。
「楽というのは良いな‥‥、得手不得手に関わらず聴く者も、奏でる者の心も弾ませる」
演奏が終わって一息ついた彼が漏らした感想に、アルフィエも笑顔で頷く。二人とも、心の底から音楽が好きなようだ。
そして集まった来た見物人に、雷龍が声をかける。
「今度、あるお屋敷で小さな演奏会があるのですが‥‥」
場所は、少女の幽霊とポルターガイストが棲むという、その筋では有名な幽霊屋敷。いや、今では別の意味で有名かもしれない。即ち、美形の吟遊詩人レディアス・ハイウィンドの屋敷として‥‥。
「‥‥俺は?」
宣伝活動から戻った三人に、ガイが涙目で訴える。
「ここ、俺の家でもあるんだけど‥‥」
「そう言えば、誰もガイさんの事は言っていませんでしたね‥‥」
雷龍の言葉にがくりと項垂れ、ガイは地面にのの字を書き始めた。
「いいんだ、どうせ俺は添え物なんだ‥‥」
そんな彼の後頭部にドカンと一発飛び蹴りを見舞ったのは、イフェリア・アイランズ(ea2890)だった。
「こらーっ! シャキっとせんかい、シャキっと!!」
イフェリアはふよふよと中に浮きながら、腕組みをしてガイを睨み付けた。
「正月早々辛気くさいやっちゃな〜。よっしゃ、うちが景気付けにどが〜〜〜んと一発かましたるわ!」
「‥‥かますって‥‥何を?」
既に頭に一発かまされたガイが、これ以上何をする気だとイフェリアを見る。
「ジャパンには『笑う門には福来たる』っちゅー言葉があるんや。新春っちゅうたらお笑いや、お笑い!」
寸劇と言うかコントと言うか、猿回しと言うか。相棒のフェアリー、弥生と組んで何かを披露するつもりらしい。
「‥‥でも、ウケるかなあ、アイリーンに‥‥」
問題の少女が好きなのは、音楽。果たして寸劇で喜んでくれるのだろうか?
「ん〜、まあホレ、他のお客さんが楽しんで笑っとれば、その幽霊はんも喜んでくれるやろ、な? あ、そや! 期間中はここに泊まってもええんやったな?」
「良いけど‥‥幽霊と一緒だぜ?」
「んなもん関係あらへん。気にしてて冒険者なんかやってられっかいな!」
――すぱかーん!
イフェリアがガイの頭を景気良くひっぱたく。‥‥まあ、しふしふさんなので痛くはないが。
「ん〜、チチデッカい姉ちゃん幽霊はんやったら、むにむにしながら‥‥」
「あ、アイリーン8歳だから」
イフェリアの野望は見事に打ち砕かれた。
一方その頃。
「‥‥全く、気の利かぬ者達じゃ。わらわがアイリーン嬢の代わりに罰を与えておくゆえ、安心するが良い」
朱鈴麗(eb5463)が屋敷の広間でどこにいるかもわからない二人(?)の幽霊に向かって話しかけていた。
その姿を見て、沢良宜命(ec3755)が声をかける。
「‥‥あ、うちはテレパシーが使えますよって〜、必要なら通訳させて貰いますえ〜?」
「いや、聞こえておるじゃろう。それにアイリーン嬢は無口じゃからのう、聞こえておっても返事はせぬのじゃ。のう、ポル殿?」
この屋敷を訪れるのは二度目、そして彼等にも面識のある鈴麗はそう答え、そしてポルターガイストに問いかける。
――たむっ!
足元の太鼓が一回、鳴った。
「さよか〜」
命はおっとりと答える。
「そやけど、音楽好きの幽霊の女の子の為の演奏会‥‥幻想的な催しやねぇ。うちにも出来る限りを尽くさせて頂くわぁ」
「ならば、まずは飾り付けを手伝うてくれんかのう?」
そう言って、鈴麗は鏡餅と天の破魔矢、それに西洋門松を取り出した。和洋折衷の正月飾りで屋敷を彩るつもりらしい。
「あ〜、ええねぇ。それならうちの神楽舞も、それほど浮かへんかもしれんわぁ」
そして練習と打ち合わせ、様々な準備を終えて、いよいよ演奏会の当日。
「君の奏でる楽を聴いていると、普段は曖昧でしかない己というものを自覚出来る気がする‥‥、切ない音色だが、美しい。どこまで力になれるかは判らぬが、努力させて頂こう」
騎士らしく襟を正したシリウスが、二人の主催者を前に丁寧に頭を下げる。
「こっちこそよろしく頼むな! とにかく楽しんで貰えれば良いからさ、聞く方も聞かせる方も」
「僕も‥‥歌や演奏でならば、少しでも力になれるかなって‥‥」
にこやかに答えるガイに、アルフィエが少しおずおずと言った。
「あの、それで‥‥一緒に演奏させて貰って良いでしょうか?」
「おう、さっき練習聞いてたけど、あんたも結構な腕前だよな。俺もまだまだ上目指してっからさ、一緒に頑張ろーぜ!」
「は、はい!」
アルフィエの背を軽く叩き、既に満員となった演奏会場‥‥広間へ出ようとしたガイ、そしてレディを、誰かが後ろから呼び止めた。
「待つのじゃ、二人とも」
振り向いたガイは、そこに立つ振袖姿の少女に首を傾げる。はて、見覚えがあるような気はするが、誰だったか‥‥?
「‥‥ああ、鈴麗か! えーと、なんだっけ、馬にも衣装?」
「馬子じゃ、馬鹿者!」
まあ、それはともかく。
鈴麗は持っていた何かを二人に差し出して言った。
「アイリーン嬢を寂しがらせた罰として、ガイ殿は『まるごととりい』、レディ殿は『スターキャップ』を着用して客の前に立つのじゃ」
「ええっ!?」
「当然じゃろう!」
口を尖らせたガイを、鈴麗は厳しい表情で一喝した。
「聖夜祭の時期に忙しくなるのは判っていた事であろう? 事前に説明し、時期をずらして祝うと約束しておればアイリーン嬢も納得したはずじゃ。それを怠ったのじゃからそなた達に非がある。そうであろう?」
それなりの罰があった方が、彼女も許しやすいだろうし‥‥とは、言わない。少なくとも、二人に聞こえるような声では。
「そりゃ、そうだけど‥‥でもっ! 何で俺だけこんな被り物なんだよ!?」
「ふ、レディ殿の綺麗な顔が隠れては勿体無いではないか」
そして再び床にのの字を書き始めるガイ。
「どうせ俺は添え物で引き立て役だよ‥‥」
だが見た目は引き立て役でも、舞台の上ではガイが主役だった‥‥例えどんな格好であろうと。
そしてレディは、星飾りの付いたド派手な帽子でさえ、恐ろしい事に違和感なく似合う。
「流石、プロですね‥‥」
アルフィエが呟く。いや、彼等の外観ではなく、その歌と演奏が。
「出来ればレディ殿の歌声も聞いてみたいものだが‥‥」
口をきかないという事情も気になるな、と、シリウス。だが、詮索するほど野暮ではない。
「う〜ん、綺麗な顔立ちの人やねぇ」
流石に命は女性だけあって、ガイの男歌よりもレディの外見の方に興味があるようだ。
「せやけど〜‥‥喋らない言うんは〜、何か余程の理由があっての事なんかなぁ?」
余程の理由なら、余程の事情がない限り他人に話す事はないだろう。
やがて演奏会も前半のプログラムを終え、中休みを兼ねた余興が披露される。
「てけてんてんてん、てれつくてけてん!」
ガイの口真似による出囃子に乗って、イフェリアと相棒の弥生が舞台に立つ‥‥と言うか、浮く。
「まいど〜なんや〜」
「んや〜」
「本日はお日柄もよろしゅう〜」
「しゅう〜」
「新郎新婦におかれましては〜‥‥って、なんでやねん!」
「ねん!」
「ねん、やのーて、止めてーな!」
「な?」
観客は‥‥とりあえずウケている、らしい。
そしてお次は命による神楽舞だった。巫女装束を纏い神楽鈴を手にした命は、アルフィエが奏でる龍笛に合わせて舞い踊る。周囲では鈴麗がウオーターコントロールで操る水が共に舞い、その間を縫うように妖精のルーチェがライトの明かりを持って飛んでいた。
「水に光が反射して美しいですね‥‥しかし困ったな、僕が披露出来るものといえば、演武くらいなのですが、場にそぐわないですしね‥‥」
「いい、大丈夫だ! 行け!」
躊躇う雷龍を皆で後押しし、レディが適当に伴奏を付ける。
それが終わった後は、誰もが知っているような曲を全員で‥‥勿論、観客も交えて大合唱。会場は大変な盛り上がりを見せ、演奏会は無事に幕を閉じた。
しかし‥‥
肝心の主賓は姿を現さない。
「やっぱり、自分の為だけに歌って欲しいのかな?」
客達が帰り、静かになった広間でアルフィエが言った。そして彼の合図で、仲間達はこっそり練習したアイリーンの為だけの歌を歌い始める。
♪かくれんぼはもう終わりだよ おなかの虫も鳴いている 早くおうちに帰らなきゃ♪
♪漂ってきたねいい匂い おなかの虫も待っている 早くおうちに帰ろうよ♪
♪大好きなシチュー 大好きなパパ 大好きなママ 大好きなコリー♪
♪さあ あと一歩だけ踏み出そう ドアを開けて「ただいま」って言おう♪
♪大好きがいっぱいなあの家が キミを笑顔で迎えてくれるから♪
「‥‥お帰り、アイリーン」
歌い終わった時、そこに少女がいた。
無表情で何を考えているのかはよくわからないが‥‥出て来たという事は、彼女もこの演奏会を楽しんでくれたのだろう。
――たむっ!
部屋の隅で、太鼓がひとつ楽しげに鳴った。