季節外れの大掃除

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:01月27日〜02月01日

リプレイ公開日:2008年02月06日

●オープニング

 年も改まって久しいある日のこと。冒険者ギルドにこんな依頼が張り出された。


 依頼内容:メイドさん(?)募集
 勤務地:キャメロット
 賃金:100G(採用人数にて分割)
 待遇:交通費支給、各種保険完備、危険手当付き
 資格等:資格不要。初心者歓迎。経験者尚良。
 補足:錬金術師の棲家を綺麗にする仕事です。
    和気藹々とした楽しい職場です。
    作業着として揃いの服をご用意します。
    終了後にはお茶会を予定しています。

 ※派遣先も同時募集:同様に掃除をして欲しいという方も歓迎。
           その場合は参加者の有志が分担してお伺いします。


 依頼人はキャメロットの冒険者街在住、フィーナ・ウィンスレット(ea5556)だった。
 彼女の家では年末に掃除をしそびれたと言うか、そもそも普段から掃除をしていないと言うか‥‥もしかしたら現在の家に居を構えてから一度も掃除をしていないかもしれない。となると、家の中は果たして一体、どれほどの惨状を呈している事だろうか。
 だが、殆どの者は知らない。彼女の家そのものが、そこでグツグツと煮立っている大鍋の中身さながらの混沌の坩堝である事を。
「フィーナって‥‥あの人だろ、ほら、よくネコ連れてエチゴヤの辺りを歩いてる‥‥」
「ああ、そうそう、あのネコを連れた美人さん」
 掲示板の前に集まった人だかり‥‥主に男性から、そんな声が上がる。
「でも、なんか今イチ近寄りがたいって言うか‥‥」
「そうそう、なんかね、綺麗すぎてさ」
「あんな美人さんなら、きっと家の中だって綺麗に片付いてるんだろうに‥‥」
「ああ、そうか。ほら、終わったらお茶会って書いてあるじゃん? きっと掃除は口実で‥‥」
「なるほど、いきなりお茶会しますって言うのもアレだし‥‥」
「なんつーか、奥ゆかしいねえ。俺、ますますファンになりそう♪」
 ‥‥違う。違うんだ君達。それは誤解だ。大いなる幻想だ‥‥
 ‥‥と、実態を知る者は心の中で思う。が、誰もそれを口に出す勇気はなかった。

●今回の参加者

 ea2436 三好 石洲(46歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・ジャパン)
 ea4267 ショコラ・フォンス(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5556 フィーナ・ウィンスレット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3343 イリーナ・リクス(37歳・♀・ファイター・人間・ロシア王国)
 eb8106 レイア・アローネ(29歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ec3769 アネカ・グラムランド(25歳・♀・神聖騎士・パラ・フランク王国)

●サポート参加者

ジルベルト・ヴィンダウ(ea7865)/ エティエンヌ・ルトゥノー(eb7906)/ ジャンヌ・シェール(ec1858

●リプレイ本文

「神よ、お許し下さい。好奇心が抑えられませんでした‥‥」
 依頼人フィーナ・ウィンスレット(ea5556)の自宅の玄関先で天を仰ぐ三好石洲(ea2436)は、噂の美人ウィザードの部屋がどうなっているか見てみたかったらしい。
 そして、玄関を開けた瞬間に彼が見たものは――!!
 ――ぴきぃぃーん!
 どこからともなくそんな効果音が聞こえたような。
「フィーナちゃん家の大掃除かぁ。楽しみな様な、恐ろしい様な‥‥」
 眼前に広がる余りにカオスな光景に絶句し、固まった石洲の後ろからひょいと顔を出したアネカ・グラムランド(ec3769)も、同様に凍り付く。
 別に、玄関を開けると同時にアイスコフィンの魔法が発動するような罠が仕掛けられている訳ではない。ただ‥‥少しばかり、その、何と言うか‥‥
「魔窟へようこそ、皆さん」
 出迎えた主人の言葉に硬直が解けた二人は、はっと我に返る。
 掃除好きの心に火を付けられた石洲が、瞳の中にメラメラと熱い炎をたぎらせながら言った。
「実験室は我輩にお任せ下さい。見違える程、綺麗にしましょう!」
「ぼ、ボクも‥‥と、とりあえず、精一杯頑張るよ!」
 アネカも気合いを入れて拳を握り締める。
「はい、よろしくお願いしますね」
 依頼人はキヨラカに微笑んだ。

「フィーナさん、妹がお世話になっております」
 作業着として渡されたエプロンを付けながら、ショコラ・フォンス(ea4267)が丁寧に挨拶をする。彼はこの惨状を見ても大して驚きはしなかった。
「物凄い足の踏み場も無い部屋を見たことがありますので」
 これ以上の惨状を呈した部屋が実在するとは信じがたいが、ともかく彼は慣れた様子で窓を開け、明るくなった室内全体をざっと見渡してみる。
 衣類や荷物が放置され半分物置き状態となっているリビング。そこにはゴミも捨てられずにそのまま、更にその上には埃がうっすら‥‥いや、こんもりと堆積している。最近、と言うか長いこと手を付けられていない事は明らかだ。本棚らしき棚も見受けられるが、その中身は大方がゴミと埃の下に埋もれているらしい。
 台所には到底食べられそうもない、もしくはこれが以前は食べ物だったとは想像しがたい物体が所狭しと転がっていた。中には一見まだ大丈夫そうな食材もあるにはある様だが‥‥調理をしようにもシンクには洗っていない食器や鍋が積み重なり、調理場としての機能は完全に麻痺している。
 そして実験室。ここは頻繁に使っているらしく埃はさほど目立たない‥‥が、床には何かをこぼした形跡があり、歩くとベタベタと気持ちが悪い。実験器具などの壊れ物があるので、ここの掃除には注意が必要だった。
「とにかく、このゴミを何とかしない事には掃除どころではないわね」
 昼はホームヘルパー、夜は娼妓だと自己紹介をしたイリーナ・リクス(eb3343)が覚悟を決めたように服の袖を捲る。ゴミはその都度外に出していって少しづつ場所を確保したいと考えていた彼女だったが、目の前に積み上がったゴミの大軍にはそんな生半可な手段は通用しそうもなかった。
「‥‥錬金術師さんのお宅って、こうなっているのですね‥‥」
 興味を引かれて初日だけでもと手伝いを申し出たジャンヌ・シェールが感心したように呟く。だが、初日の作業はゴミ捨てだけで終わってしまいそうだった。

 翌日、ゴミを捨てまくって漸くまともに掃除が出来るようになった室内で、本格的な作業が開始された。

 実験室では、石洲が依頼人の立ち会いのもとに家具の中身を取り出していた。そこにある物を一旦全て外に運び出す為に少しでも軽くしておこうと考えたのだが‥‥
「要らない物は除けて下さい。後で捨てましょう」
 もしかして、その中身も殆どゴミだったり?
 そして部屋の中央に鎮座していた大鍋から実験道具に薬品の類まで、全ての物を運び出してスッキリとした部屋を、床から天井まで徹底的に磨き上げる。それが終わったら、家具の裏側から下まで丁寧に埃を落とし、磨き上げた上で部屋に戻していった。汚れが付いたままの実験器具なども同様に、原因不明の汚れは依頼人に指示を仰ぎながら適切な方法で洗浄し、棚や引出にきちんと収めていく。

 一方、リビングではショコラとアネカが奮闘していた。
「掃除中は汚れるといけませんからね」
 ショコラはふさふさの髪を外して荷物の中にしまう。それは、妹が自分の髪で作ってくれたカツラだった。
「あ、これはただ頭を丸めているだけですよ?」
 アネカの視線に気付き、ちょっと言い訳してみたり。
「あ、ええと、ショコラくんは家事が得意みたいだから、ボクはそのお手伝いをする感じで‥‥」
 慌てて視線を逸らしたアネカは家小人のはたきを取り出す。
「これを使うと埃が良く取れるみたいだけど、どんな感じなのかな?」
 試しに手近な埃を払ってみる。すると‥‥流石は魔法のはたき、たったの一掃きでスッキリと、意地悪な姑が人差し指でなぞっても文句の付けようがない程に綺麗になった。
 それが終わると、今度は埃の下から出てきた本の整理だ。
「えっと、まずは大雑把に種類分けして‥‥ええと、種類‥‥?」
 読めない。
 流石は専門書、タイトルに何と書いてあるかさえ、今のアネカにはさっぱりわからなかった。
「それは私がやりますよ。アネカさんは本を綺麗に拭くのを手伝って貰えますか?」
 ショコラにもやはり意味はよくわからなかったが、とりあえず種類ごとに纏める位は出来そうだった。

 そして台所ではイリーナがせっせと仕事に励む。溜まりに溜まった汚れた食器を洗い、床や壁まで綺麗に磨く。埃ひとつ残らないまでに、完璧に。
 その傍らで、レイア・アローネ(eb8106)がそれを控え目に手伝っていた。
「掃除は得意ではないが、困った時はお互い様だ。。友人の依頼を無碍にするわけにもいかないしな」
 とは言え‥‥もとより家事が得意でない事は自覚している上、てきぱきと手早くこなすイリーナのお陰で、彼女に回ってくる仕事は殆どない。
 そして、あらかた片付けの終わった台所でイリーナに教わりながら二人で用意した昼食を皆に配り終わると、本当にやる事がなくなってしまった。
「む、これではいかん。何か私にも出来る事を探さなくては」
 だが、ざっと見て回った結果、どこも手は足りて‥‥いや、あった。一ヶ所だけ手付かずの場所が。
「ふむ、地下室か。これはやり甲斐がありそうだ」
 そしてレイアはリビングで崩れた本の山からアネカを掘り出すと、共にその「禁断の地」へと向かった。

「え? あの、でもフィーナちゃんは入っちゃいけないって‥‥」
 腕を引かれるままに引きずられてきたアネカの声は、使命感に燃えるレイアの耳には届かない。地下室には手を触れないようにと言われた事前の注意も、どうやら聞こえていなかったようだ。
「で、でも‥‥ボクもちょっとだけ、覗いてみたいかな‥‥なんて」
 そして地下室に通じるドアを開け、真っ暗なその空間に足を踏み入れた途端‥‥
「キィッ! キィキィキィ!」
 ――ばさささーっ!!
 何かが勢い良く暗闇の中から飛び出して来た。
「きゃああっ!?」
「うわあっ‥‥こ、コウモリ!?」
 黒い小さな影が数羽、開け放たれた窓に突進する姿が見えた。それはフィーナが実験用に飼育しているものらしい‥‥って、何の実験? そして何故コウモリ?
 と、それはひとまず置いといて。
「し‥‥閉めて! 窓! 逃げちゃう! 早く早くーっ!!」
 アネカが叫ぶ。
 その只事ならぬ声に、窓の近くにいた者はとにかく慌てて窓を閉めた。行き場を失い、パニックを起こしたように家の中を飛び回るコウモリ達。
「つ、捕まえてくれ! 頼む!!」
「キィキィキィ!」
 ――ガシャーン! どさどさ、ばさーっ!!
 あーあー、せっかく綺麗に片付けたのに‥‥。

「入っちゃ駄目って言いましたよね?」
「い、いや、待てフィーナ、私は知らなかったのだ。私はただ心の底からの親切心でだな‥‥っ!」
「悪い子には反省が必要ですね?」
「いや、聞こう、聞いてくれ。私とお前の仲じゃないか? な?」
 だが邪笑の麗人はそんな言い訳など聞く耳を持たなかった。
「お二人とも、そこに座って下さい」
 寒風吹き荒ぶ中、防寒具なしで小一時間のお説教‥‥勿論フィーナ本人はレジストコールドをかけて、だ。そしてお説教の後は、更に素敵な罰が二人を待っていた。
「暫くうちで反省なさい」
 それは、フィーナ宅の無期限専属メイドの刑。勿論、コウモリの脱走騒ぎで壊れた物の弁償も二人の給与から天引きだ‥‥誘った側であるレイアの方に、少し多めに。
「‥‥くく、これでいい労働力が手に入りましたよ‥‥」
 顔面蒼白の二人を前に、フィーナはほくそ笑む。果たして、提供するのは労働だけで済むのだろうか‥‥?

 そして漸く全ての掃除が終わり、綺麗に片付いたリビングでは約束通りにお茶会が開かれた。
 ショコラがセッティングしたテーブルに、パン焼き職人である石洲が差し入れた籠いっぱいのパン、そして本来の機能を取り戻した台所でイリーナが作ったお菓子と軽食が並べられる。お茶は疲れがとれるようにとフィーナが用意したハーブティーだ。おかしな物は入ってない‥‥と、思う。多分。
「皆さんお疲れ様でした」
 依頼人のそんな労いの言葉に、本気で疲れた様子で溜息をつく約二名。
「今度は機会があればレイアさんのお部屋でもお掃除しますか」
「なっ!? いや、遠慮しておこう。いいから。いや、本当にいいから、な!?」
 レイアが慌てて首を振る。どうやら部屋を見せたくないようだ‥‥この魔窟以上の惨状なのだろうか?
「そう言われると、ますますやりたくなってきますね‥‥」
 アヤシゲな微笑みを浮かべたフィーナを見て、再びカツラを装着してお茶会に臨んだショコラが言った。
「お話に聞いていた通り、キヨラカな方ですね」
 キヨラカがカタカナなのは‥‥何故?