にゃんころぱらだいす
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:08月10日〜08月15日
リプレイ公開日:2006年08月18日
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●オープニング
ガッシャーン!
ずどどどーっ!
ずだだだーっ!
バリバリげしげしズババババッ!
「お願い、もうヤメテ〜〜〜っ!!!」
悲痛な叫びに、何事かと16の瞳が一斉にそちらを向く。
「にゃん?」
視線の先には髪を振り乱し顔面蒼白で立ち尽くす、この家の女主人の姿があった。
「お願い。お願いだからやめてちょうだい。これ以上この家を、家具を、絨毯を‥‥私の生活を壊さないで!!」
だが、猫達に向かって懇願するその姿と叫び声は、彼等には喜びのサインと受け取られたらしい。
「にゃっ♪」
8匹の子猫は、ますます激しく遊び始めた。
棚の上の物を蹴散らし、タペストリによじ登り、家具で爪を研ぎ、絨毯に潜り込む。
ソファに置いてあったクッションは、既にボロボロに破れて中の羽毛が部屋中に舞っている。その羽根の動きを夢中で追いかける一匹が婦人のスカートを駆け上がり、鉤裂きを作った。
「‥‥もう‥‥もう我慢出来ませんわっ!!!」
婦人の叫びに、部屋の隅にのんびり寝そべる母猫が尻尾をパタパタ振りながら大アクビをした。
‥‥という事で。
婦人は鼻息も荒く、手近のギルドに駆け込んだ。
「あの‥‥あの小悪魔達を何とかしてちょうだいっ!」
「ど、どうなさったのですか、ミセス・ホリー? お、落ち着いて、詳しく事情を‥‥っ」
普段は穏やかで優しく、怒ったところなど見た事もないと評判の、彼女の剣幕にたじろぎながら、受付係はなだめるように問いかける。
「どうもこうもないわよ、あの小悪魔っ!」
「小悪魔‥‥?」
「猫よ猫! 子猫なのよ、しかも8匹も!」
大声で叫ぶうちに、多少は落ち着きを取り戻したらしい。婦人はひとつ大きな溜め息をつくと、家の惨状を語り始めた。
「‥‥お友達から預かった子達なのよ。暫く留守にするから、その間だけって。最初はみんな、とっても大人しかったのよ? 小さくてフワフワで、ホントに可愛い、天使達みたいだったわ」
それが、3日目の今朝、豹変したらしい。
「でも、だからといって籠の中に閉じ込めておくのは可哀想でしょ? イタズラさえしなければ、可愛い天使なんですもの‥‥」
「はあ、それで、そのお友達が迎えに来るまでの5日間、子猫の遊び相手をしてほしい、と‥‥」
「これ以上、家や家具を壊さないように、あの子達から守ってくれたら報酬も弾みますわ。もちろん、お食事もベッドも、必要な物は何でも‥‥だから、どうかよろしく頼みますわね?」
家からここまで歩いて数分だったが、こうしている間にもきっと被害は拡大しているだろう。
婦人は急いで屋敷に戻って行った‥‥。
●リプレイ本文
「うわあ、本当に子猫がいっぱいだ!」
レイジュ・カザミ(ea0448)の瞳がハート型になる。彼は早速、猫達の集団に飛び込んでいき、人懐こそうな茶色のキジトラを抱き上げる。
「僕の担当はこの子が良いな。名前はチャーミーで、どう?」
「みゃ?」
子猫は喉を軽く撫でられて、早くもゴロゴロと気持ちよさそうに目を細めている。
「じゃあ‥‥私はこの子にしようかな」
逢莉笛鈴那(ea6065)がシッポのまん丸い白猫の前に跪く。
「千代丸くん、よろしくね」
「では、こちらのシッポの長い白猫は拙者がお相手致そう」
子猫は尾花満(ea5322)が突きだした指先の匂いをチェックし、怪しい者ではないと判断したようだ。その指に鼻先をすりつけてきた。
「名前をつけても良いという話であったな。『コユキ』でどうだ? ジャパン語で雪を意味する言葉だ」
すりすりすり。気に入ったらしい‥‥満の指が。
「では、私はこちらの黒猫さんに‥‥」
と言いながら子猫の前で三つ指をつくのは大宗院透(ea0050)だ。
「私は透、こちらが影凪さんに影呼さんです‥‥。影狩さん、宜しくお願いします‥‥」
エーシュと名付けた子猫に、まるで人間相手のように挨拶する。紹介された2匹の猫も真っ黒だった。
「じゃあ、僕はあの、おしゃまで上品‥‥に、なりそうな黒い子で‥‥名前はシャミーで良いかな?」
ワケギ・ハルハラ(ea9957)が、おいで、と手招きする。小柄な黒猫はシッポをピンと立てて近寄ってきた。
「俺は、あいつだ」
と、リ・ル(ea3888)が窓枠に座ってじっと様子を窺っている短毛細身の黒銀サバトラ猫に目を向ける。
「仮名はレイだ。ほらレイ、おいでおいで」
相好を崩して手招きするが、シッポをピクピクと震わせるだけで近寄ろうとしない。
「成る程、幼くして既に孤高の猫か。だが、見ているがいい、達人級の鞭捌きで、おぬしの狩猟魂を鷲掴みにしてやるぞ」
リルの目がキラーンと光る。
「俺は残った子を担当するね」
ターバンで耳を隠したライル・フォレスト(ea9027)はミケとトラの2匹を膝に乗せる。別れが辛くなるからと名前を付けるのは遠慮していた。
「貰い先で素敵な名前を付けてもらうまで‥‥そうだな、ミャウとミュウでどうだい?」
「みゃ〜」
「みゅ〜」
これで、全員の担当が決まった。
「では、俺達はアスレチックの組み立てにかかるか」
と、リル。ライルと二人で子猫用の大型遊具を作る計画だ。
「家を傷つけたりはしませんし、終わった後は持ち帰りますから‥‥それから」
ライルが家の主人であるミセス・ホリーに断りを入れ、持参した耳栓を手渡す。
「夜中も子猫の相手で騒がしいかもしれませんが、申し訳ないけど我慢して下さい」
婦人は、何も壊さなければ少しくらいの騒音は我慢するわ、と言いながら、耳栓はしっかり受け取り、二階の寝室に引き上げて行った。
「じゃあ、僕達は先に猫達の食事を作ってこようか」
「私、友達に頼んで鶏のささみとか白身の魚を買ってきてもらったんだけど、赤ちゃん猫のごはんってそういうので良いのよね?」
「うん、味付けは基本的に薄くね」
レイジュと鈴那は台所へ姿を消す。
「猫の料理は人間とはちょっと違うんだ。それに猫は料理も気まぐれで、同じ料理でも食べたり食べなかったりするよ。だから、僕の飼い猫も良い食事を沢山用意してあげるんだ‥‥」
料理をしながら、レイジュは猫バカが止まらない。
子猫を育てるのは初めてだという鈴那は、次々と披露される蘊蓄の数々に感心して聞き入っていた。
「‥‥さて、皆が世話を出来ぬ間、拙者が一手に引き受けよう」
満は荷物から取り出したラーンス・ロットの金髪を2つに分け、それぞれを針を外した釣り糸に手早く結び付ける。
「そら、即席猫じゃらしの完成だ」
「みゃっ」
両手に持った毛束に、数匹の子猫が四方八方から飛びかかってくる。
「両手利きとバックアタックをフル活用すれば、前後左右どこから来ても遅れは‥‥あ、こら、背中に上るでない」
一匹が、がしがしと爪を立てながら満の背中をよじ登り、肩の上から獲物に向かってダイブする。
「‥‥まぁ、今更傷の一つや二つ増えたところでこれといって問題はないが‥‥新しい飼い主のところではやってはいかぬぞ?」
言いながら、目尻が下がる。
毛束は、子猫達に掴まれ、囓られ、蹴られて、あっという間に原型を留めない代物に成り果ててしまった。
「‥‥これはもう、使い物にならぬな‥‥」
円卓の騎士(の、髪と言われるモノ)を瞬殺した子猫達は、新たな標的に向かって突進する。
ターゲットはレインボーリボンだ。
適当な棒の先に結び付けられたそれは、ヒラヒラと不規則に動いて子猫達を翻弄する。
「ほらほら、捕まえてごらん!」
ワケギは楽しそうにリボンを振る。もう片方の子猫のミトンを填めた手にはシャミーが囓りついて、げしげしとネコキックを見舞っている。ミトンは既にあちこちが切り裂かれ、唾液でグチャグチャだった。
「風前の灯火ですね‥‥。リボンのほうはもう少し長持ちしそうだけど」
アスレチックが完成するまではリボンが糸屑になりませんように、と祈ってみる。
「‥‥いたたっ!」
ミトンがネコキックの前に陥落した。
「リカバーポーションを持ってきておいて正解だったかもしれませんね‥‥」
一方、部屋の隅では透と黒猫達が忍者修業に励んでいた。
「忍びの基本は己の気配を消す事です‥‥」
透は柱の後ろに影狩を座らせ、その影で猫じゃらしを動かす。
「影に潜んで気配を消したまま、素早く標的に近付き止めを刺すのです‥‥」
影狩は柱の影でもにもにとお尻を振り、猫じゃらしに飛びかかるが、透のじゃらしさばきは素早く、なかなか捕まえられない。
「影狩さん、立派な忍びになるための道は厳しいです‥‥」
子猫達が用意されたオモチャを全て撃破した頃、アスレチックが出来上がった。
階段状に配置された板に、登りやすいように麻紐を巻いた爪研ぎ兼用の柱、布のトンネルや登攀用の網まで完備された豪華版だ。
部屋の中に突然現れた見慣れぬモノに興味を引かれた子猫達が集まってくる。たちまち、アスレチックは猫まみれになった。
「よし、遊ぶぞ!」
一仕事終えたリルはホイップを取り出し、その先端をクネクネとくねらせてレイを誘う。
最初は気乗りしない様子でその動きを見つめていたが、突然ハンター魂に火が付いたらしく、猛然と飛びかかってきた。
「そーらそら、どうした!? こっちだこっち! おっと残念!」
取れそうで取れない、絶妙なタイミング。リルの目は真剣だった。彼は今、強敵と戦っているのだ。‥‥ただし、目尻は下がりまくっていたが。
「なるほど〜、やっぱりそうやって動かすのが良いのね」
食事の支度を終えた鈴那がリルの動きを観察する。
「私もやってみようっと」
鈴那は千代丸の目の前で紐に付けたネズミ型のオモチャを動かしてみる。だが、タイミングを掴むのはなかなか難しく、すぐに取られてしまう。
「じゃあ、これはどうかしら?」
布で作ったボールを投げてみる。千代丸は一目散にそれを追いかけて行った。追いつき、転がし、抱え込んでキックする。
「千代丸、持ってきて! ‥‥っていう訳にはいかないわね、犬じゃないんだから」
鈴那は苦笑しながらボールを取りに行った。
レイジュ達の作った食事は猫達に気に入られたようだ。ウニャウニャ言いながらかぶりつき、あっという間に平らげてしまった。
満腹した彼等は食後のお昼寝をし、起きてまた遊ぶ。子猫の生活は羨ましいくらいに単純で、気楽だ。
そして夜。生まれてからずっと人間と生活してきた猫達は、夜中にはそれほど活動しないらしい。それでも時々目を覚まして遊ぼうとする子猫達を、夜間の担当者が雑魚寝している仲間達を起こさないように気を付けながら相手をしていた。
「ほら、爪研ぎはここでするんだよ」
ライルは、目覚めの儀式とばかりに床や家具で爪を研ごうとする子猫を専用の爪研ぎ板の前に連れて来る。
板には薄くマタタビの匂いが付けられていた。不思議なマタタビではなく、ごく普通のものだ。
「子猫が別のものになっちゃったら大変だからって、友達が買ってきてくれたの」
と、鈴那。
ライルはそのマタタビを借りて、用意してきたネズミのオモチャにも少量すりつけてみる。
三毛猫のミャウは、それをいたくお気に召したようだ。転がしたり、銜えて放り投げては追いかけたり、ひとりで遊んでいる。誰かが寝ていようと、お構いなしにその上を踏んづけて走る。
「うぎゃっ」
その度に、冒険者達は浅い眠りを妨げられた。
そして、夏と言えども夜は冷え込む事もある。寝ている彼等に、子猫達はぴったりとくっついて眠った。猫好きにとって、それは至福の時。
だが、中には腹の上に乗っかってくる猫もいた。子猫とは言え、何時間も乗っていられれば流石に重い。そして寝返りも打てない。ベッドにされた者は巨大な猫に潰される悪夢を見たとか‥‥。
そして楽しい時は瞬く間に過ぎ去り、早くも最終日。
子猫達はトイレにまでシッポを立てて付いてくるほど、冒険者達に懐いていた。
「せっかく懐いてくれたと思ったらお別れなんて‥‥」
名残惜しそうにブラシをかけながら、顔を上げずにレイジュが呟く。
「新しいご主人様に可愛がって貰うんだよ!」
リルは腰に巻いたホイップの先端を尻尾のように垂らし、ユラユラと揺らしながら床の掃除をしている。そこにレイがじゃれついていた。
‥‥皆、幸せになるんだよ‥‥そう心の中で呟きながらアスレチックを片付けようとしていたライルに、ミセス・ホリーが話しかけた。
正しく遊んであげれば、猫という生き物は家を破壊したりはしないものだとわかったらしい。
「だから、ご縁があったら私も飼ってみようと思うの。その時の為に残しておいていただけないかしら?」