円卓の騎士、暗殺計画!?
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月25日〜04月30日
リプレイ公開日:2008年04月30日
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●オープニング
それは、ギルドでお馴染みのモンスター退治や人助けなどといった真っ当な依頼群を押しのけて、掲示板の一番目立つ所に貼られていた。
「キャメロット美食クラブ」 ――求む、料理自慢の冒険者――
・参加者は各自一品づつ料理を作り、その腕前を競って頂きます。
・一番美味しい料理を作った人には賞品として「甘露」を、副賞として称号「キャメロット最強の調理人」を進呈。
・賞金は順位に応じて分配します。(合計10G)
・基本的な食材及び調味料は主催側で準備致します。
・それ以外の食材が必要な場合、各参加者が可能な範囲で準備して下さい。
「‥‥何ですか、これは?」
その日、たまたまギルドに立ち寄った円卓の騎士ボールス・ド・ガニスは、嫌でも目立つその依頼書に目を留めた。
それは、所謂ごく普通の料理コンテスト‥‥に、見える。しかし‥‥
「あの、何故ここに私の名前が?」
そこには、確かにこう書かれている。
『審査員:主催者フィーナ・ウィンスレット(ea5556)、及びボールス・ド・ガニスの2名』
そんなもの、受諾した覚えはない。いや、そんなコンテストが開かれるという話さえ聞いていなかった。
「おかしいですねえ、ちゃんと承諾は得ていると仰っていたのですが」
受付係も首を傾げる。
「まあ、確かに‥‥円卓の騎士がそんなものの審査員になるなんて、とは思いましたが、その‥‥ねえ?」
本当に承諾を得ているのだろうかと疑問に思いはしたが、何となく確認をしそびれて、言われるままにその依頼を貼り出したのだった。‥‥だって、怖いんだもん。
受付係の言葉に出せない思いを汲み取ったボールスが「それは、わかります」と頷いたその時。
「世の中には事後承諾という便利な言葉があるのですよ」
ご本人が現れた!
「勿論そちらのご都合も考えてあります。日付の欄が空白になっているでしょう?」
確かに、日程はまだ未定とある。
「都合の良い日、一日だけで構いませんから。いつなら参加可能でしょうか?」
フィーナはキヨラカに微笑む。どうやらボールスに拒否権はないらしい。美食には余り興味はないのだが。
「ええと、では‥‥4日目に」
「わかりました。では会場はボールスさんのお屋敷という事で」
何故そうなる。
「え、我が家のキッチンは調理には不向きですし」
まさか、もう使用不能になったのだろうか‥‥この間片付けたばかりだというのに。
「では、楽しみにしていて下さい。何しろ料理自慢が腕を競うのですから、さぞかし‥‥」
ふふふふふ‥‥。
謎の微笑みを残して、フィーナは去る。実はこの依頼、参加者のみに知らされる、ある「秘密」があった。それは‥‥
追記:当方で用意する食材について(参加者以外閲覧禁止)
・キャメロット近郊で取れる野菜青果
・肉(牛・羊、鶏、兎、チョンチョン)
‥‥チョンチョン?
それって‥‥毒、だよね? 人の顔によく似た形の胴体を持つ、巨大で不気味な毒蛾。食べるとほぼ間違いなく腹痛を起こし、場合によっては命の危険もある‥‥猛毒。
良いのか、そんなもの料理に使って?
って言うか、円卓の騎士に食べさせて良いのかっ!?
まさかこれは、手の込んだ暗殺計画!?
危うし、ボールス!
待て、結果!
●リプレイ本文
その日、ボールスの元に届けられたのは何故か解毒剤。そこに添えられた差出人不明の手紙には、こう書かれていた。
『食べられないものは多分入っていないと思いますが、念の為に』
その筆跡には見覚えがある‥‥と言うか、まず間違いなく彼女のものだ。
主催者が主催者だけに、ごく普通の真っ当な料理コンテストではないだろうと予想はしていたが、しかし解毒剤が必要な料理とは‥‥?
ボールスは厨房に不安げな目を向ける。
以下、調理の様子を参加登録順に、本人に実況して貰いましょう。
1.クリステル・シャルダン(eb3862)
季節に合わせて、テーマは春が良いですわね。
主菜は小振りのパンを薄めに切ったホットサンドが良いかしら。それから茹で卵を裏ごしにして‥‥サラダに散らせば彩りも鮮やかで春らしい一品に仕上がると思いますわ。春野菜を煮込んだスープを添えて、食後の紅茶には菫の砂糖漬けを添えて。
器は白地に淡い色で花模様の入った物を。審査員の方がお腹一杯になってしまってはいけませんわね。量は控えめに しておきましょう。
2.エスナ・ウォルター(eb0752)
えと、花嫁修業の成果を‥‥。ボールス様が食べられるなら、彼に食べさせても大丈夫‥‥ですよね?
彼の大好物、オムレツを作ります。まずはフレイムエリベイションで一層のやる気を引き出して‥‥玉葱を微塵切りにします‥‥涙が出ても負けませ‥‥きゃっ!
はう、指‥‥切っちゃいました‥‥。でも、大丈夫です。えと、次はそれを塩コショウで軽く炒めて‥‥軽く‥‥かる‥‥きゃあぁっ! た、玉葱って‥‥爆発するもの、なんですね‥‥。
うぅ、卵を混ぜるくらいなら‥‥上手に‥‥上手に出来たら‥‥彼に褒めて貰えるかな‥‥? 「美味しいよ」って、言ってくれて‥‥(塩、どばーっ)‥‥そして、ぎゅっ、て抱きしめてくれて‥‥(スパイス、どどーっ)‥‥きゃあぁっ!?
た、卵も‥‥爆発するもの、だったんですね‥‥。えと、作り直し‥‥え、時間切れ‥‥?
3.飛麗華(eb2545)
今回は牛肉を使ったシチューにしてみますか。
下ごしらえは丁寧にしておきます。できるだけ柔らかくなるように切れ目とかいれても食感をなくさないようにしないと。
出来れば他の人の調理の様子も見たいのですが‥‥そこは秘密なんですね。まあ、出来上がりを見るだけでも勉強にはなるでしょう。
4.マイ・グリン(ea5380)
‥‥使って‥‥良いのですね、これ。
‥‥毒が何処に溜まっているのか分からないので、取りあえず体当たりで作ってみるしかないですね。‥‥ただ、かかるのは人の命ですから、危険と判断すれば迷わず諦めますが‥‥まずは体液と内臓を抜いて、湯がいてからすり潰してみましょう。‥‥それを少々、鶏の挽肉に微塵切りの野菜、香草に混ぜて団子を作ります。
‥‥解毒剤で煮込んでから焼けば‥‥(暫し中座)
‥‥食用になるかどうか、気になれば試さないと気が済まないのは‥‥、悪い病気だと自覚しているのですけどね‥‥うっぷ。‥‥これは、捨てて‥‥安全な素材で作り直します。‥‥後は普通のサラダと‥‥時間は‥‥急げば間に合いそうですね。
5.理瞳(eb2488)
食べたら死ぬかもしれませんが‥‥ダイジョウブデス。
まずは、あの黄色いやつに蛇毒手を。大丈夫、殺しはしません。麻痺させるだけです。新鮮な材料をイキの良いまま、まるごと食べて貰えます。
残り時間は飾り切りでもしていましょうか。トレイの周囲を飾るクモやサソリやムカデ‥‥材料は旬の果物ですよ? 彩りも鮮やかでしょう? 真ん中に「でん」と横たわった黄色いアレをひときわ際立たせるような配色で。
‥‥オイシイデス。
6.ユイス・アーヴァイン(ea3179)
まずはチョンチョンと香草でダシを取りましょうかね〜。じっくり煮込んでダシが取れたら取り出して〜、別のチョンチョンを黒焼きに〜。
本来はじっくり焼くのですけれど〜、今回は時間が無いので、ぱぱっと炭になるまで焼いちゃいましょ〜。綺麗に真っ黒になった所で形がなくなるまで粉々にします〜。
ぶつ切りの魚と野菜、香草と一緒に炒めたものをチョンチョンスープに入れたら先程の黒焼きの粉と黒豆も加えて、じっくり煮込みましょ〜。
う〜ん‥‥佳い色ですね〜。見事に真っ黒です〜。最後の味付けに塩を少々‥‥味はチョンチョンに香草、炒めた魚と野菜がたっぷり出してくれている筈ですから〜、調味料はオマケ程度で〜。
さて、味見をしてみましょうか〜。料理は心ですよね〜。そう、マインド‥‥(ふら〜り)
7.ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)
むう、この世は余りにも「美食」なる悪徳がはびこっておるのだ! 庶民の中にはその日暮らしで食うや食わずの者もいるのだ。慈愛神の僕たる余が贅沢三昧など本来は余りすべきではないのだ!
と、ゆーわけで余のコンセプトはずばり「粗食」!! つまりそのへんにあるモノで何とかするのだ。貴重な異国産の調味料なんてもっての他、そこは天然素材に由来する天然の味をそのまま味付けするのだ。
食材は‥‥はてさて、何が良いであるかな‥‥まずは今、旬のものである桜であるな。木の皮を剥いだり、枝を煮たりすればなにがしかの甘みはでよう。花びらなぞは、生でよし焼いてよしの食材なのだ。後は‥‥雑草や野鳥の類であるな。身近で手に入るものは何でも使うのだ。
‥‥む? マイどのが何か捨てているであるな。勿体ないのだ! 拾って使うのだ!
‥‥さて、以上で調理は終了です。さあ、審査員の評価は如何に!?
「美食の審査ポイントは以下の3つです。味付け、見た目、匂い」
審査員その1、主催者でもあるフィーナ・ウィンスレット(ea5556)が言った。
「私は薄味が好みですので‥‥それに素材の持ち味を活かしている事、匂いが食欲をそそるかどうかもポイントですね」
片やその2、ボールスには例によって明確な基準はない。まあ、特に変わった嗜好の持ち主という訳でもないので、特に趣向を凝らしたものや珍味の類よりは、ごく普通の家庭料理の方が受けは良いだろう。
「‥‥微食の方は‥‥どれだけ不味いか、見た目がいかにインパクトがあるか、匂いが食事の概念をどれだけ破壊してるか、その三点でしょうね」
フィーナは隣のボールスには聞こえないように小声で呟き、キヨラカな微笑みを浮かべた。
大丈夫、闇鍋的料理に対する胃の強さには定評がある。それに、事前に胃に優しいハーブも摂取しておいた。解毒剤の準備も抜かりない。
「さあ、始めましょうか」
料理が出される順番はくじ引きで決められた。それぞれの料理には、参加者の番号が添えてあるのみ。材料や調理法に関する解説は一切ない。食べた時の率直な感想のみが判断基準だ‥‥それが食べられるものならば。
「大丈夫でしょうか‥‥まさか本当に使った方はいないと思うのですけれど‥‥」
審査の様子を物陰から心配そうに見守るクリス。だが‥‥
「‥‥うっ!?」
彼女の期待も虚しく、アレを使った人はいたのだ。しかも一人ならず。
でも大丈夫。そんな時には解毒剤を飲めば良い。寧ろ毒よりも厄介なのは‥‥
「‥‥何ですか、これは?」
皿に盛られた小さな山。作った本人はオムレツだと主張するが、どう見てもただの炭。しかし審査員は、そんなものまで食べなくてはならないのである。
「‥‥んぐっ!!? げほげほ、ぐげっ!?」
「ボールス様‥‥っ!」
我慢出来ずに、クリスが飛び出した。
「だ‥‥大丈夫ですか? あの、ええと、リカバーを‥‥!」
いや、とりあえず水を下さい。一応、そっちの黒い人にも。
――ジャ〜〜〜ン!
その時、何故か会場に鳴り響く銅鑼の音。それと共に、最後の料理が審査会場に運び込まれた。
大きなトレイの蓋を開けると、そこには‥‥
「――――っっっ!!!?」
さあぁぁーーっと、血の気の引く音が聞こえた様だ。
「ま‥‥まさか‥‥今までの毒は‥‥っ!?」
流石円卓の騎士、勘がよろしい様で。そう、それです。食べちゃったんです、それ。
「美味しそうですよ? ほら」
自ら料理を運んで来た瞳が、それの足をむしって自らの口に放り込んだ‥‥様に見えた。
‥‥あ、もう限界。
「円卓の騎士が、この程度の相手に背を向けるとは。食べないならフィーナに審査して貰いますが‥‥貴婦人を見殺しにするつもりですか?」
いや、危機に陥っているのが白い人なら見殺しになど出来る筈もありませんけど‥‥黒い人は、ねえ?
かくして、審査を放棄して姿をくらませたボールスが最愛の女性の看病を受けてどうにか復帰した時。
そこには主催者作の新しい料理が‥‥。
「ジャパン風コウモリの踊り煮食いです」
何だかよくわからないスープの中に、紐で縛られ息も絶え絶えのコウモリが浮いている。
「いや‥‥それは‥‥逃がしてやりましょうよ、可哀想ですから」
ボールスは折角作った料理(?)にリカバーをかけて逃がしてやった。
「‥‥面白くありませんねえ‥‥でも、虐めるだけだと可哀想ですからね。ボールスさんにはこれを差し上げましょう」
と、フィーナが取り出したのは、万能薬を目指して作られたものの、実際は死ぬほど不味いだけで何の効果もない、怪しい液体。
「飲んで下さい。さあ、飲みなさい」
「いや、その‥‥ま、間に合ってますから!」
万能薬なら、ここに。ボールスはクリスの後ろに隠れた‥‥って、オイ!
そして、クリスとマイが作ったまともな料理が並べられ、授賞式を兼ねたささやかなパーティが開かれた。
美食部門の一位がクリスなのは、見た目が一番安心して食べられそうだったというのが大きいかもしれない。何しろ他の料理がアレすぎたし‥‥ね。
微食の方は‥‥あれは調理ではない。世の理を超越した、それはまさしく超理。審査員約一名の独断と偏見により、キャメロット最凶最恐の超理人は‥‥理瞳に決定だっ!