猫を探して、ついでに里親も!?
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月08日〜06月11日
リプレイ公開日:2008年06月16日
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●オープニング
「すみません、猫達を探して頂けないでしょうか‥‥」
いかにも疲れた様子で冒険者ギルドのドアを開けたのは、円卓の騎士ボールス・ド・ガニス。
その様子を見るなり、受付係は「ああ、やっぱり」と心の中で冷や汗をかく。半月ほど前、とある事件に関連して行き場を失った猫達を彼に引き取って貰ったのだが‥‥
「あの‥‥やっぱり、拙かったですか、あの猫達を押し付け、いや、引き取って貰ったのは‥‥」
拙かったと言うか、多過ぎたと言うか。ただでさえ引き取り手の見付かりにくい成猫が20匹程と、途中で見付けた子猫が3匹。いくら猫屋敷でも、その全てを飼うのは無理だろう。まあ、無理を承知で頼んだのだが。
だが、上目遣いで見上げた受付係に、ボールスはいつものように穏やかに微笑んだ。
「それは大丈夫です。いくら私が猫好きでも、きちんと面倒を見られる見込みがなければ無闇に増やしたりはしませんから」
‥‥だと良いけど。
「そ、そうですか‥‥」
受付係はとりあえず一安心と、小さく息を吐いた。
「ええと、じゃあ‥‥探す、というのは? 新しく来た猫達ですか? 慣れない環境を嫌って逃げ出したとか?」
受付係の問いに、ボールスは首を振った。
「いいえ。いなくなったのは、元からいたうちの猫達なのです‥‥」
猫屋敷の内外を我が物顔でのし歩いていた、15匹の猫達。思いがけぬ新参者の登場で、どうやらご機嫌を損ねたらしい。
「新しい猫達を迎えてからは今まで以上に可愛がって面倒を見るように気を付けていたのですが、私もなかなか時間が取れず‥‥それにやはり相手の数が多過ぎた様で」
縄張りを侵されたと思ったのだろうか。ある日、15匹が揃ってどこかへ消えてしまった。
「普段は敷地の外へ出ない様に犬達が見張っていますし、彼等もわざわざ犬達と騒動を起こす気もないらしく、逃げ出すような事もなかったのですが‥‥」
自分達だけのものだった世界に突如として現れた侵入者が余程気に入らなかったらしい。
そこを、侵入者を追い出すのではなく自分達が出て行くという道を選ぶあたり、何と言うか、やはり猫も飼い主に似るものらしい。
「いなくなったのは2日前です。そう遠くへは行っていないと思うのですが、どうにも見付からなくて‥‥。私も余り時間を割く訳にもいきませんし」
「ああ、そう言えば海の方でまた何かあったようですね‥‥ボールス卿も出られるんですか?」
「いいえ、私はこちらに残ります。向こうに人を取られて、警備が手薄になってはいけませんからね」
海での騒ぎも気にはなるが、王都の守りを疎かにする訳にもいかない。
「ギルドでもそちらに人を回すのが優先されるでしょうから、無理なら流して頂いて構いません。でも、もし手の空いている方がいらっしゃるなら‥‥」
新参猫の大部分は、ボールスがその人脈を使って信頼の置ける引き取り手を見付けていた。家出猫達が戻れる環境は整えてある。
ただ、6匹ほど引き取り手が見付からずに残ってしまったのだが‥‥
「ついでに、その子達にも里親を探して頂けると助かります。無理なら、残りは私が責任を持って面倒見ますから」
6匹位なら、先住猫達にとってもさほど脅威ではないだろう。時間をかければ互いに妥協し、それなりに平和共存してくれる筈だ。
ボールス本人は多忙の為に殆ど関われないが、猫屋敷にはウォルと、それに‥‥余り役に立ちそうには思えないが、エルも来ている。
彼等が協力してくれる筈だからと言い残して、ボールスは慌ただしくギルドを後にした。
●リプレイ本文
「猫さん達がいなくなって、困っているのですか?」
シャロン・シェフィールド(ec4984)は少し不謹慎かと思いつつも、くすくすと笑みを漏らす。
「円卓の騎士様がなんだか身近に感じられますね? 雲の上の天上人のような相手より、よほど好感も持てますけれど」
「ん〜、まあな。雲に乗ってフワフワしてるって意味なら、雲の上の人だけどさ」
こらこらウォル、初対面の相手に何を吹き込んでるか。‥‥まあ、間違ってはいない、様な気はするが。
「猫さんもいきなりの野良生活は大変でしょうし、早く見つけて差し上げましょう」
「そうだね、早く探してあげないと‥‥飼い猫ってご飯見つけるの不得意だったりしない?」
と、アルディス・エルレイル(ea2913)。
「特にボールス卿の猫なら、飼い主に似てボ〜っとしてそうだし」
おい。
「とにかく、まずは手分けして探してみようよ。それほど遠くには行ってないみたいだし、皆で探せばすぐに見付かるんじゃないかな?」
デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)がリトルフライで空に舞い上がる。猫屋敷の周囲にはごく普通の住宅街が広がっていた。敷地の広い貴族の屋敷から、狭いけれどきちんと手入れされた庭が付いている小綺麗な家まで‥‥所謂、高級住宅地という所だろうか。下町の様なゴミゴミとしたカオスっぷりは見られないが、猫が姿を隠せる様な場所はいくらでもありそうだった。
「わんこ達の話だと、猫さん達はかなりご立腹だったみたいだね」
愛犬ヴォルに猫達の匂いを辿らせながら、アルディスはひとり呟く。犬に乗ったシフールは道中で出会った人や動物に心当たりを尋ねるが、有力な情報にはさっぱり行き当たらなかった。
「15匹もの猫さん達、しかもリボンもつけているものが連れ立ってとなれば、流石に人目に付き、記憶にも残りそうですが‥‥」
夜中に移動しているなら誰の目にも触れない事もあるかもしれない。シャロンはフェアリーのリーオの目も借りながら屋敷の周辺を探す。餌や水を求めて、餌場や水場などでそこいらを縄張りにしている野良猫たちと喧嘩などもしているかもしれない。
「怪我などしていなければ良いのですが‥‥」
「ねえ、こんなリボンがついた猫を見なかった?」
ティズ・ティン(ea7694)は借りたスペアのリボンを見せながら、馴染みの魚屋など猫達が立ち寄りそうな心当たりに片っ端から声をかけてみる。自分も名付け親になった猫達が行方不明になったとあれば、他人事ではない。
「久しぶりにビルケ達の成長も見たいしね。でも‥‥どこ行っちゃったんだろ?」
「猫さん達が良く居る場所かー。裏路地や屋根上やろか?」
裏路地はまだしも、屋根の上を探すのは難しそうだ。藤村凪(eb3310)は地道に地上の隅々まで探す道を選んだ。そんな彼女の後ろから野良猫達がぞろぞろと付いて来るのは、荷物に忍ばせた小魚の干物のせいだろうか。しかし、その中に目当ての猫達の姿はない様だ。
「あんさんらもお腹空いとんねんなー?」
「にゃー!」
「しゃーないわ、少しだけ、お裾分けしよかー?」
「にゃー! にゃー!」
‥‥お礼に猫達の居場所を教えてくれたりは‥‥しないだろうなあ。
「ねこさんたち、いないね‥‥」
クリステル・シャルダン(eb3862)に手を引かれながら、エルが父親に劣らず落ち込んだ様子で呟いた。猫達が集まりそうな場所や、誰かが餌をやっている場所などを巡ってみるが、行方不明の猫達は見付からない。
「えりゅ、ねこさんたちにきやわえた? だかや、でてきてくえないの?」
泣きそうな顔で見上げるエルに、クリスは優しく微笑みその髪を撫でる。
「誰もエルを嫌いになったりしないわ。少し休んだら他の場所も探してみましょう?」
ただ、この近くにはいないだけ。
「猫さん達もきっと、エルが探しに来てくれるのを待ってるわ。だから‥‥ね?」
「う〜ん、どこかに隠れちゃってるのかなあ‥‥」
デメトリオスは路地の隅、人が通れない様な狭い隙間の淀んだ空気に尋ねてみる。その周囲には、いくつかの食器や水入れが置いてあった。どう見ても、猫の餌場だ。
「ねえ、この奥に猫さんが‥‥え、通った事があるの? どんな感じの猫さんだった?」
だが、流石にそんな細かい事まではわからない様だ。わかったのは、いつも大勢の猫達がここを通り道にしている事。
「奥にお屋敷があるみたいだけど‥‥」
狭いトンネルの様になった通路は、恐らくそこに通じているのだろう。周囲を高い塀に囲まれた、古い屋敷。
「誰も住んでないのかな?」
廃屋なら雨露を凌ぐには丁度良いか。
リトルフライで塀を飛び越え、屋敷の庭先に降り立ったデメトリオスの目の前で、驚いた猫達が一斉に姿を隠す。
「もしかして、今の‥‥?」
「ええと、ここで良い?」
その少し後、デメトリオスに呼ばれたアルディスは猫通路の前で竪琴を構えた。
「うん、ここからなら、中の猫さん達にも聞こえると思うんだ」
「わかった、じゃあ‥‥」
――ポロ〜ン♪
動物達を呼び寄せる力があるというその竪琴を、アルディスは静かに奏で始めた。
たちまち、周囲にいた動物達が集まって来る‥‥動物だけではなく、周辺に散っていた仲間達も。
――くいくいっ。
集まった動物達の中に見覚えのある猫達の姿を見付けたエルが、塀の上を指差しながらクリスの服を引っ張る。クリスは黙って頷くと「静かにしていましょうね」と言う様に自分の唇に指を当てた。
やがて静かな余韻を残して竪琴の音が消えると、アルディスはテレパシーで猫達に話しかけた。
『ジニア、キルシュ、ビルケ、ESTEAL、エミル、にゃおん、ネルケ、カルド、イリス、イオン、リコリス、デイジー‥‥』
とりあえず全員の名前を呼んでみる。
『うん、皆いるね? もう戻ってきても大丈夫だから、一緒に戻ろう?』
「ほぉら、楽しいよ?」
ティズが持参したネコジャラシを振ってみる。だが、猫達は警戒しているのか、その場を動こうとはしなかった。
「オモチャがあかんやったら、ごはんはどうやろな?」
凪が残り少なくなった干し魚をヒラヒラさせてみる。
「お腹空いてないのんかー? 美味しそうやで?」
――ぐうぅ〜〜〜。
「あかん。ウチがお腹鳴ってもーてどないすんねんな!!」
「いつものごはんなら、どうでしょうか‥‥」
クリスは普段と同じ餌を入れた皿を並べ、少し離れて見守ってみる。その嗅ぎ慣れた匂いと見慣れた皿、それに見慣れた人達の姿に安心したのか、猫達は一匹、また一匹と塀を降りて来る。
「良かった‥‥誰も怪我はしていない?」
遠巻きに様子を見ながら、クリスはそっと声とかけた。
「エルもボールス様もとても心配しているわ。それに、私もあなた達がいないと寂しいの。あの子達の引き取り先は探すから‥‥」
「もう、殆どいなくなったんだよ? 残りの子達も、おいら達がちゃんと別の家を見付けてあげるからさ」
デメトリオスは自分の猫達の頭を撫でて言った。
「‥‥ほら、イドラとキトラも説得頼むよ。後で美味しいお魚あげるからさ」
「にゃー」
「にゃ」
二匹の猫は、猫屋敷の面々とは顔馴染みだ。同じ猫だけに、彼等の事情もよくわかるだろう。
「‥‥ねえ、ビルケ。一緒に帰ろう?」
ティズが自分が名付け親になった猫に声をかける。
「‥‥にゃ‥‥」
呼ばれた猫はおずおずと近付き、差し出された手の匂いを嗅ぐ。
「うぅん、大きくなったね」
ビルケはティズにされるまま、大人しく抱き寄せられた。それをきっかけに、15匹の猫達はぞろぞろと冒険者達の周囲に集まって来る。
「どうやら、納得してくれたみたいだね」
アルディスが安堵の溜息を漏らす。
「後は里親探しやね。上手く見付かるやろか?」
残るは6匹。約束したからには、全員の引き取り手を探さねばなるまい。
冒険者達の心配を余所に、15匹の猫達は機嫌良く尻尾を立て、先になって歩く。どうやら籠に入れて運ばれる事はお気に召さなかったらしい‥‥。
「外見の第一印象も大切だもんね」
猫屋敷に戻ったティズは、6匹の猫達を少しでも良く見せようとブラシをかけたりリボンに凝ってみたり、理美容技能を活かして飾り立ててみる。
その間に仲間達は、猫探しの途中で会った人達に声をかけて歩いていた。
「飼えない事情があるなら、無理にとは言いませんが‥‥」
「トイレのしつけも済んでいますし、育てやすい良い子達ですよ?」
「ほんの少しの間だけど、円卓の騎士の飼い猫だったんだ。あ‥‥でも、恩を売るつもりなら、あげる訳にはいかないな」
結局、引き取り手が決まったのは三匹。残ったのはお馴染みのサバ白柄の猫達だった。
「ギルドにも里親募集の貼り紙、貼らせてもろたんやけどなー」
凪は残った猫達を撫でながら言った。やはり店でも手に入る、どこにでもいる様な柄の猫は人気がないらしい。
「柄は同じでも、中身はみぃ〜んな違うねんけど、なあ? あんさん、もし飼ってくれる所が決まらなかったらウチに来るか〜? 先住猫さん居るけど多分へーきや思うし、よかったら考えておいてな?」
「にゃあ」
「お? 来るのんか?」
どうやら、一匹は引取先が決まった様だ。
「ねえ、ウォルは飼わないの?」
「そうですね、お師匠さんのサポートをして心労を減らすのも、立派なお手伝いです。どうですか?」
ティズに言われ、そしてシャロンには腰を屈めて顔を覗き込まれたウォルは、思わず後ずさる。
「お、オレは‥‥犬派だもん。猫も嫌いじゃないけどさ‥‥それに、オレが飼ってもしょーがないじゃん?」
確かに、居候のウォルが引き取っても状況は余り変わらない、か。
「じゃあ、しょうがないね。私が引き取ってあげるよ」
「僕も1匹なら引き取れるよ」
ティズとアルディスが申し出てくれたお陰で、全員の行き先が無事に決まった様だ。
ボールスは家に帰る暇もない様だが‥‥知らせを受ければきっと喜ぶだろう。
「じゃあ、後は皆で‥‥遊ぼっか!」