【黄金葱】秘密の城

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月31日〜08月06日

リプレイ公開日:2008年08月09日

●オープニング

 巨匠‥‥世界史上初の快挙を成し遂げた漢、フライング葱の開発者を、人は尊崇の念を込めてそう呼ぶ。
 しかし実は、葱の開発には誰も知らない裏の歴史があったのだ!

 ‥‥いや、本当に裏の歴史があったかどうか、その真偽は不明だ。何しろ誰も知らないのだから。
 しかし、葱リストの間ではいつの頃からか、あるひとつの伝説がまことしやかに語られるようになった事だけは間違いない。
 それこそが‥‥

 黄金の葱伝説!!

 それは巨匠がフライング葱を開発する遙か以前に、謎の人物が秘かに作り上げた葱のプロトタイプと言われている。誰が言ったのかは知らないが、とにかくそう言われているのだ。
 そして、プロトタイプは強い。強すぎた。
 採算や安全、安定性を度外視した一点物のスペシャル葱。そのスペシャルさは金箔に覆われたその外装からも容易に想像が付くだろう。
 スペシャルにしてゴージャス。勿論、値段など付けられない超レア物だ。

 ‥‥そんな、スペシャルゴージャスな超レア物を欲しがる者は、当然の事ながら多かった。
 黄金葱はその存在故に度々争いの原因となり、世は乱れた。

 しかし、葱はいつの時代も愛と正義と平和の象徴。それが人々の間に争いを招くなど、あってはならないのだ。
 黄金葱の作者は森の奥深くに「葱城」を建て、そこに黄金葱封じたと言う。
 深い森は侵入者を阻み、城を、そして黄金葱を探しに行った者は一人として戻らなかった。

 やがて、黄金葱とそれを封じた城の存在は、人々の記憶から消えた。
 とある冒険者が、たまたまその姿を目撃するまでは。


「いやぁ、驚いたね。何でこんな深い森の中に城が建ってるのかってさ‥‥しかも、この国のモンじゃない。異国風の‥‥そう、あれは多分、ジャパンの城だな」
 冒険者達が集う酒場で、ひとりの男が声高に冒険譚を披露していた。
 男はたまたま、イギリス南部にある大森林の上空をフライングブルームで飛んでいた。見渡す限り、緑色の絨毯の様にどこまでも続く森は、まるで果てがないかに見えた。
 その中に、ぽつんと‥‥緑色ではないものが見えたのだ。そう、朝の光の様な、黄金色の輝きが。
「何かと思って近付いてみたらさ‥‥あったんだよ、城が。で、その‥‥天守閣っての? その上に黄金の‥‥そう、あれは葱の形をしてたな‥‥」
「その話、詳しく聞かせてくれないかな?」
 男の前に、酒がコトリと置かれた。
「興味があるんだ‥‥とてもね」
 僕の奢りだと微笑んだのは、レイジュ・カザミ(ea0448)だった。
 葉っぱ男として知る者も多いだろう彼は、イギリス‥‥いや、ネギリスを代表する偉大な葱リストにして、葱の伝道者。葱に関わる、しかも幻の黄金葱に関する話となれば、黙っている訳にはいかなかった。

「‥‥ただの伝説、作り話だと言われていた黄金葱。それが、本当に実在するとしたら‥‥手の届く所にあるとしたら!」
 葱リストとして、じっとしていられる筈がない。
「僕の‥‥いや、僕達の葱魂にかけて! 必ず黄金葱を手にしてみせるよ!」
 探検、冒険、発見。そう、それは漢の浪漫。
 かくしてレイジュと愉快な仲間達の、黄金葱を巡る壮大な冒険の旅は、今ここに始まったのである!

●今回の参加者

 ea0061 チップ・エイオータ(31歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea1168 ライカ・カザミ(34歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea5386 来生 十四郎(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2257 パラーリア・ゲラー(29歳・♀・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ec4936 ファティナ・アガルティア(24歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「これが葱なの?」
 旅立ちの日、ライカ・カザミ(ea1168)は手にしたそれをじっと見つめる。
「見た目はただの葱だけど、これで弟が数々の伝説を作ったなんて信じられないわね」
 彼女の弟、レイジュ・カザミ(ea0448)が事あるごとに語って聞かせた葱武勇伝の数々。それを聞かされる度に、ライカは気になっていた‥‥葱とはどんな物か、そして嬉々としてそれを語る弟の将来はどうなってしまうのか。
「お姉ちゃん、僕が扱い方を教えてあげるよ!」
 しかし、レクチャーを申し出たレイジュにパラーリア・ゲラー(eb2257)から待ったがかかる。
「ダメだよぉ〜、いくら姉弟でも男の子が教えるのはイケナイと思うんだぁ〜。それに、今回は新人のファティナちゃんもいるんだし〜」
 だから二人には自分が教えると言い、パラーリアは革細工のフライング葱ワッペンをライカとファティナ・アガルティア(ec4936)の二人に手渡した。
「今日の記念に、プレゼントだよ〜♪ そいで、葱の乗り方はね〜」
 と、実演して見せるパラーリア‥‥いや、見せなくていい。てか、見せちゃダメっ!
「え‥‥ね、葱って‥‥そうやって乗る物‥‥なのですか?」
 実演こそ見られなかったものの、何となく理解したファティナは手にした葱を思わず取り落としそうになる。
「大丈夫だよ〜、お薬もあるから、ねっ♪」
 慣れないと辛いみたいだからと薬を差し出すパラーリアだが‥‥いや、そういう問題じゃないから。
「ありがとう。でも、折角だけど‥‥あくまでも普通のブルームと同じ様に乗るわね? それでも良いんでしょう?」
「え、そうなのですか? 良かった〜!」
 まあ、二人にはこれから経験を積んで行くうちに「正統な乗り方」と葱リスト達が称する技法をマスターして貰えば良い。
「じゃあ、ふたりは今日から『葱少女隊きゅ〜と』だよ〜♪」
 パラーリアが言った。‥‥ただし、見習いだが。

 かくして、葱リスト達は冒険の旅へと飛び立つ。
 まだ見ぬ黄金の葱を求めて‥‥!

「‥‥でかい冗談をかます奴もいたもんだな‥‥」
 来生十四郎(ea5386)が簡単の溜息と共に呟く。
 深い森の中に突如として姿を現したジャパン風の城。その天辺には確かに金色に光る、何か細長い物が飾ってあった。
「巨匠の前に葱が作られてたのもびっくりだけど、お城がジャパン風なのもびっくりだね」
 と、チップ・エイオータ(ea0061)。
「黄金の葱作った人ってジャパンの人? 葱は世界の合言葉?」
「とにかく、あの金ピカが本当に黄金の葱かどうか‥‥この目で確かめてみねぇとな」
 彼等が降り立った、その目の前には巨大な扉。
「これ‥‥葱の形、よね?」
 そこに彫られた溝を指で撫で、ライカが言った。
「これは‥‥!」
 レイジュの目が光る。
「きっと、ここに葱を填め込むんだ。そうすると扉が開く‥‥黄金葱の開発者は、後の時代に葱が作られる事を期待して‥‥いや、予見していたんだねっ」
 ‥‥そう、なのだろうか。
「葱をはめないといけない仕掛け‥‥普通の葱でも開くのかしら」
 舞い上がる弟に対し、姉は妙な所ばかりが気になっている様だ。
 ‥‥まあ、それはともかく。
 冒険者達は手にした葱を、扉の窪みに填めて行く。6つの窪み、全てに葱が填められた時‥‥!
 ――ギイィィィ‥‥
 ご期待通り、扉が開いた。
「皆、用意はいいかい? この先は何が待っているかわからない。決して、油断をしてはいけないよ」
 開いた扉から葱を外して手に持つと、レイジュは先頭に立って城の中へと足を踏み入れた。

 最初は暗さのせいか何も見えなかったその空間に、宙に浮かぶ立体迷が現れた。
「‥‥ジャパンのお城って、こうなってるの?」
 予め城の内部構造について十四郎から教わっていたチップが、そこで得た知識と目の前に拡がる光景との余りのギャップに首を傾げる。
「いや‥‥あれは一般的な特徴であって、だな‥‥」
「流石は風雲キンネギ城♪ サクっと制覇して黄金葱をゲットだよ〜♪ チップせんぱい、がんばろーねっ☆」
「うん、パラーリアさんが危ない時は、おいらが守るからね」
「えへへ〜、あたしもチップせんぱいが罠にひっかりそ〜な時は、にゃっと手を差し伸べて助けるんだ〜♪」
 ‥‥二人共、十四郎の言い訳なんか聞いちゃいねーし。
「じゃあ、お姉ちゃんは僕と一緒だね」
 レイジュが姉に手を差しのべる。
「お姉ちゃんは僕が守るよ!」
「ふむ‥‥単独行動は避けた方が良いか。なら、俺は‥‥」
 と、十四郎はファティナを見る。
「俺で悪いが、一緒に行って貰えるかな?」
「悪いなんて、とんでもありません! あの、私‥‥罠とか結構はまり易いので‥‥でも、大先輩と一緒ならきっと何があっても大丈夫ですよねっ」
「ああ‥‥まあ、そう‥‥かな」
「じゃあ、行くよ! 目指すは天辺の天守閣!」
 きっと上を目指して行けば辿り着けるだろう‥‥多分。
 冒険者達は葱に乗り、まずは立体迷路の最下層に降り立った。
「落とし穴とかがあるかもしれないから、慎重に‥‥」
 チップは手にした弓の先で床を叩きながら慎重に進む‥‥勿論、もう片方の手はパラーリアの手をしっかりと握って。
 だが、その時‥‥
 ――ドォン!
 地響きと共に、背後で大きな音がした。振り返ると、そこには‥‥
「壁!?」
 二人は仲間と分断されてしまった!
「‥‥仕方ないね、後で合流出来るかもしれないし‥‥とにかく先に進もう」
 そして、壁の向こうでは‥‥
「あれ? 何でしょう、この紐は‥‥?」
 まるで「引け」と言わんばかりの位置に垂れ下がっている。そんな怪しげな物を‥‥ファティナが見逃す筈はなかった。
「えいっ!」
 思いっきり引いてみる。途端に‥‥
 ――ドザーッ!
 レイジュ達の頭上に、どこからともなく滝が現れた!
「うわあっ!」
「きゃああっ!」
 流れて行く姉弟と、見送るファティナ。
「‥‥お嬢さん、頼むから‥‥いや、悪気はないんだろうが」
 そこらの物に、やたらと手を出さないでくれと十四郎。
「はい、ごめんなさい‥‥」

 こうして三手に分かれた葱リスト達は、それぞれに天守閣を目指す!

「うう、びしょ濡れだ‥‥」
 滝に流された姉弟は、気を取り直して再び迷宮に挑む。葉っぱ男の勘でズンズン先へ進む弟に、姉は魔法で仕掛けの確認をする暇もなく、はぐれない様にひたすらくっついて歩いていた。
 ――カチッ。
「‥‥今、何か踏んだ‥‥?」
 ――ぼとっ。ぼとぼとぼとっ!
 その途端、上から降って来たものは‥‥
「蟲ーーーっ!?」
 姉弟揃って黄色い声を上げて逃げ惑う、その通路の先からは‥‥
「石ーーーっ!?」
 ――ごろん、ごろん‥‥
「お姉ちゃんあぶなーい!」
 ――べしゃ。

 チップとパラーリアの行く手を、トゲトゲの壁と床が阻んでいた。しかもこのトゲトゲ、動いている。オマケにトゲ付きの釣り天井までセットになっている親切丁寧ぶりだ。
「上手くタイミングを計って間を抜けて飛ばないと‥‥でも、こんなトラップ、おいら達なら何でもないよね」
「うんっ! 二人でアクロバットなランデブーだよっ☆」

 そして、十四郎とファティナは‥‥
 歩いていた。ひたすら同じ場所を、ぐるぐると。
「きっとこれは、隠し通路を見付けないといけないのですよ」
 ファティナがキョロキョロと辺りを見回す。
「こんな時は、色の違う壁を押せばすぐ解決なのです!」
「いや、待て! 不用意に‥‥っ!」
 だが、十四郎が止める暇もなく‥‥
 ――ガタン!
 ――どざぁーっ!
 そこは、ウォータースライダーの入口だった‥‥。

「み、皆、無事!?」
 暫く後‥‥それぞれのルートから漸く合流を果たした葱リスト達は、お互いの無事を喜び合い、そして‥‥最後の難関に挑む。
 それは、城の端から端まで続く長大な吊り橋。
「ここでは、何かの力に邪魔されて葱が使えないんだ」
 レイジュが言った。
「だから、歩いて渡るしかない‥‥」
 橋の下にはネットが張ってある様にも見えるが‥‥それは巨大な蜘蛛の巣だった。
「でも、ここを渡ればゴールはすぐそこだよ!」
 指差したその先には、上へ続く階段が延びている。階段の上からは、金色の光が降り注いでいた。
「じゃあ、おいらが先に渡って向こうから支えるね」
 チップが一気に走る。
「もし橋が落ちちゃっても、きっと、右足が沈む前に左足をだしてけばだいじょうぶだよね〜♪」
 続いてパラーリア、ライカ、レイジュ、ファティナ‥‥殿は十四郎だが‥‥
「こ、怖かねぇよ、でも絶対揺らすな!?」
 だが、言われて素直に従うチップではなかった。
「ゆ、揺らすなって‥‥! くそぉ、後で座布団の刑にしてやる!」
「へへ、出来るならどうぞ〜♪」
 まあ、ともあれ‥‥
「全員、無事に渡り終えたね?」
 一行はいよいよ最後の階段を上る‥‥が。
 いくら上っても、上から差し込む黄金の光には全く近付く気配がない。
「‥‥おかしい‥‥」
「ああ、どうも変だな‥‥さっきから」
「ええ、ずぶ濡れになった筈なのに、服がいつの間にか乾いているし‥‥」
「おいらも、さっきトゲトゲにちょっと引っかかっちゃったけど、今見たらどこも破けてないんだ」
「まさか‥‥幻覚?」
 その時。
 聞き覚えのない声が響いた。
『よくぞ見破った、葱を継ぐ者達よ!』
 声と共に、階段も、そして金色の光も消えた。
 今、葱リスト達が立っているのは‥‥城の入口、入ってすぐの何もない空間だった。
 そこには迷路も罠も、何もない。ただ、四方を壁に囲まれた空間があるだけだった。
「僕達‥‥もしかしてここに入った時から一歩も動いてないの!?」
 レイジュの声に答える様に、ぼんやりとした人影が現れた。
『‥‥我は、かつて黄金の葱を作りし者なり‥‥』
 彼こそが、史上初の葱開発者‥‥の、ゴーストだった。
 彼は自分が作り上げた黄金葱が争いの種になる事を嫌い、それをこの城に隠したのだ‥‥自らがその番人となって。
『我は待っていた。我が黄金葱を託すに相応しい者達が現れる、この日を!』
 ゴーストの半透明な手が、上空を指差す。
『試練を乗り越えし者達よ。さあ、持って行くが良い。そして、黄金葱で世界に平和を‥‥愛と正義をもたらすのだ。決して、二度と再び、あれを争いの道具にしてはいかん‥‥』
 そして、ゴーストは消えた。

「これが‥‥黄金の葱!」
 ただの中身のない箱と化した城の中を、葱リスト達は上を目指して飛び‥‥そして、遂に対面したのだ。
 伝説の、黄金の葱と。
「罠‥‥なんて、ないよね?」
 チップが慎重に辺りを調べる。
「うん、あの人が僕達に託すって言ったんだ。罠なんか仕掛ける筈がないよ」
 そして、レイジュはそれを手に取った。ずっしりと重たい、黄金の葱を。
 ‥‥その時‥‥
 ――ゴゴゴゴゴ‥‥
 足元が揺れる。天守閣に飾られていた黄金の葱が失われた為にバランスを崩したのだろうか‥‥或いは単なるお約束か。
 黄金葱城は崩壊した。跡形もなく。
 葱リスト達の手に、黄金の葱を残して‥‥。