【懐かしの3G】夏の終わりの24時間
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:5 G 55 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月07日〜09月12日
リプレイ公開日:2008年09月17日
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●オープニング
そこは、とある洞窟の入口。
そこで雁首を付き合わせ、何やらひそひそこそこそと話し込んでいる爺さんが3人‥‥それは3GS(すりーじーず)‥‥Great Generations Gathering「偉大なる世代の輝ける集い」のメンバーだった。
‥‥って、まだ元気だったんですか、ジ様達。
そして相変わらず、何か悪巧み‥‥と言うか悪戯と言うか、とにかく、何かを企んでいるらしい。
「この洞窟の奥にはの、らぶぁじぇる、とかいうモンスターがおるんじゃ」
「おお、知っとるぞい。ありゃ確か、真っ赤っかのイチゴゼリーの様なヤツじゃったのう?」
「そうじゃそうじゃ、わしゃ昔、下手を打って大火傷を負わされた事があったわ‥‥懐かしくも憎たらしい敵じゃったな」
正確には、ラヴァジェル。
火山などに生息するゼリー状の不定形生物で、とてもアツイ‥‥体内に高温の粘液を溜め込んでいるのだ。半端にダメージを与えると、そのアツイ一撃で手痛い反撃を食う、ちょっとイヤなヤツ。
それが、この洞窟の中に棲息しているらしい。
「っちゅー事は、ここは火山のふもとか何かに通じとる訳か? 中はアツそうじゃのう‥‥」
「まさか、わしらでそのじぇるを退治しようなんて事を考えちゃおらんじゃろうな? わしらが如何に元気で丈夫な年寄りじゃとて、そんな所でそんなモンと戦ったら、やられる前に死んじまうぞい?」
二人のジ様が心配そうに顔を合わせる。
だが、言い出しっぺのジ様は「いやいや」と首を振った。
「行くのは、ワシらじゃあない。冒険者の若いモンじゃ」
ふぉっふぉっふぉ、とジ様は上機嫌に笑う。
「近頃に限らず、若いモンは何かとタルんどるからのう。ここらで一丁、大先輩のワシらが気合いを入れてやらにゃイカンじゃろ?」
「おお、そうじゃ! それはエエぞい!」
「ふむ、いつまでも若く元気に頑張る姿を見せて、後輩どもにハッパをかけるのもワシらの大事な仕事じゃが‥‥たまには直接尻を叩いてやるのも良いかもしれんのう」
という事で。
「決まりじゃな」
「ぬっしっし‥‥」
「早速ギルドに依頼を出して来ようぞ!」
そして後日。
冒険者ギルドにこんな依頼が貼り出された。
「求む勇者! (年齢性別種族不問)」
「灼熱の洞窟に入り、ラヴァジェル6体を退治すること」
「洞窟の構造はシンプルかつ、広さ深さ共に迷う程の規模ではない」
「ただし、以下の条件付き」
「1.荷物の持ち込み制限あり。アーマー、携帯品、バックパックの合計で一人3EPまで。他、武器はEPに関わらず一品のみ(弓の場合は矢10本まで可)」
「2.薬品類の持ち込みは上記制限外。ただし解毒や怪我の治療用に限る(MP回復薬は不可)」
「3.24時間の耐久戦。敵を全て倒しても、24時間が経過する迄は外に出られない」
「4.途中棄権可。ただし棄権した者には報酬は支払われない」
「‥‥ま、要するにガマン大会じゃな」
ふぉふぉふぉふぉふぉ‥‥
三人のジ様達は、それはそれは楽しそうに笑った。
●リプレイ本文
「ガマン大会か。良いねえ」
倫理規定ギリギリ、と言うか既にあちこちハミ出しちゃってる感じの服装‥‥いや、あれを服と呼んで良いものかどうか‥‥まあ、とにかく。際どい格好をしたクリムゾン・コスタクルス(ea3075)が余裕の笑顔を見せる。
「情熱の国生まれのプライドっていうのが黙ってられねぇからな。参加させて貰うぜ? なに、あたいは情熱の国イスパニアの生まれだから、暑いのは平気さ」
‥‥アツいの意味が違う様な気もするが‥‥ま、良いか。
「こっちのお嬢さんも、やる気は十分な様じゃのう」
と、ジ様の一人が声をかけたのは‥‥
「お嬢さんと呼ばれる歳でもないがね。軍船乗りのイレクトラ・マグニフィセント(eb5549)だ、よろしくな」
「いやいや、ワシらから見りゃ腰が曲がっとらん限りは立派にお嬢さんじゃよ」
それは‥‥喜んで良いのだろうか。
「もっとも、あたしは初めてじゃないんだが‥‥覚えてるかな。一度、あなた達の挑戦を受けた事があるんだがね」
しかしジ様達、記憶力には余り自信がない様だ。
「良いさ、気にしないでおくれ。とにかく、また会えて嬉しいよ、3G。あなた達のアドバイスのお陰で、今はここまで来たさね。ありがとうな」
「わしらの道楽もきちんと役に立っとるんじゃなあ。嬉しいのう!」
子供の様にはしゃぐジ様達。
「では、始めるとするかのう」
「中には鳴子を仕掛けておいたからの」
「無理じゃと思ったら無理せず慣らすんじゃぞ?」
「‥‥ちょっと待てや爺さん達」
呆れた様な苦笑いを浮かべつつ、声を掛けたのは来生十四郎(ea5386)だった。
「野郎が目に入らないって気持ちはわかるが‥‥俺達にも挨拶くらいさせてくんねえか?」
言われて、ジ様達は今初めて気付いて様に、三人の褌衆に目を向ける。
「ん? 何じゃ、他にも挑戦者がおったのか?」
おい。
「男はどうでもエエわい。ま、せいぜいくたばらん程度に頑張るんじゃな」
酷いな。
「中でマチガイを起こすんじゃないぞい?」
起こすか!
「いや、その前に聞きてぇ事があるんだがよ」
と、十四郎。
「重量制限についちゃ承知してるが、着衣はどうなんだい?」
自分達はコレ‥‥褌で良いが。
「女性の薄衣程度は許してやっちゃくんねえか? 肌を晒して火傷でもしたら拙いからな」
「ほうほう!」
「坊主、見かけによらず、へみにすとじゃのう!」
「ワシらもそこまで鬼ではないワ」
これはイジメでも拷問でもない。だが‥‥拷問級に厳しい試練?
「さあ、逝って来ーい!」
という訳で、灼熱の洞窟に最低限よりもまだ少ない装備で足を踏み入れた冒険者達。
「あたいが先頭だね。視力には自信があるから、真っ先に敵を見付けてやるよ。先手必勝ってね」
クリムゾンが弓を片手に慎重に進む。
「これか、爺さん達が言ってた鳴子は‥‥」
ランタンで周囲を照らしながら殿を務めるリ・ル(ea3888)が、洞窟の壁に仕掛けられたそれに触れないようにチェックを入れた。それは緊急時の命綱。だが、それを鳴らしたら挑戦は即失敗だ。
「間違って鳴らさないようにしないとな」
入口付近こそ外気と変わらない程度だったが、奥に進むに連れて気温はぐんぐん上昇していった。
「灼熱の洞窟でホットな怪物退治&我慢比べか。いろんな意味でアツいぜ」
「ふしゅうぅぅぅ‥‥」
呟いたリルの隣で早くも汗だくになっているのは、暑苦しい筋肉ダルマ(誉め言葉である!)、マックス・アームストロング(ea6970)だ。
もしかして、コレが熱源なのではないだろうか‥‥。
と、冗談とは思えない冗談はさておき。
「そろそろポイントだな」
敵の出現ポイントは、予めジ様達が教えてくれていた。リルは背後からの不意打ちに警戒しつつ、周囲の岩の隙間等にそれが隠れていないかと目を凝らす。
やがて一向は狭い通路を抜けて、一段と蒸し暑い空間に出た。
広場の様になったその地面の、あちこちからボコボコと水泡が湧き出ている。
「温泉‥‥か」
一見固そうに見えるその場所は、殆どが泥を含んだ温泉だった。
「落ちたら素敵な事になりそうじゃないかね」
イレクトラが肩を竦める。その視線の先、広場の中心辺りに‥‥何か赤いものが折り重なる様に密集していた。
「あれか‥‥!」
クリムゾンが狙いを付ける。
「接近してくっつかれると、溶かされちまうからな。気を付けな!」
言いざま、クリムゾンは矢を放った。
続いてイレクトラも赤い塊に向けて矢を射かける。
――ぶしゅうう!
攻撃が命中した一体のジェルから、高温の粘液が吹き出した。
「あれの射程は3m、中傷以上のダメージを喰らうと使って来る。接近戦はちと不利かね?」
「ハッ! 万一褌を溶かされたら、吾輩紳士ではなくなってしまうのである!」
マックスが暑苦しく叫んだ。
彼の基準では、褌一丁の姿は十分に紳士的な範疇の格好、なのだそうだ。
「褌がなければ単なるモロ出し野郎ではないかっ!」
‥‥まあ、この国にはやたらと脱ぎたがる人種がいるのも確かではあるが。
「しかし、吾輩の武器はこの拳のみ! 正々堂々と接近戦を挑むのである! もし何か事故があっても、そこはお目こぼし願いたいッ!」
マックスは各種オーラを身に纏い、はいぱーマックスに変身した! いや、外見変わってないけど、そこは何となく気分で。
弓での攻撃に晒され、バラけた塊がゆっくりとこちらに近付いて来る。
「ゆくぞ、マックスチョおぉップ!!」
手近な一体に燃える拳を叩き込んだ‥‥が。
「うおあっちいぃ! である!」
そりゃ、高温の粘液を体に溜め込んでますから、中身が吹き出さなくても熱いのは当たり前で。
しかし、はいぱーマックスはそんな事で挫けはしない! 拳が燃えてケシズミになるまで戦うのだ!
一方、殿で警戒中のリルは、首の後ろに何かチリチリと嫌な感触を覚えた‥‥と言うか、何か熱い。振り返り、見上げると、そこには。
――でろーん。
天井の隙間から、今にも落ちて来ようとする真っ赤な塊が!
リルは咄嗟にカンテラを下に置き、手にしたフレイルを両手で構えた。こうした不定形の生き物には、大抵剣より打撃が効くものだ‥‥多分。
だが‥‥どうやら効きすぎたらしい。
――ぶしゅううう!
「あっぢいぃッ!!」
上から、高温の雨が降って来た。
いくら回避が高くても、そして警戒していても、天井から降ってくる雨はそうそう避けられるものではない様だ。
だがそこに、今度は恵みの雨。イレクトラが手持ちの水を、リルの頭から浴びせかけた。
「た、助かった‥‥いや、かたじけない。しかし、貴重な水を‥‥」
「なに、あたしは三日分持ち込んでるからね。この程度の余裕はあるのさ」
イレクトラは天井から落ちて来た塊に矢を撃ち込む。
「しかし、接近戦は厳しそうだね。ここは弓だけで行った方が‥‥とは言え、矢も充分とは言い難いのが難点さね」
言いながらも、イレクトラは次の矢を番え、獲物を探す。自分も仲間も疲れて来るであろう後半戦に備えて、なるべくなら矢は温存しておきたい所なのだが。
「いや、俺もソニックが打てるし‥‥」
「ああ、俺もソニック中心で行くつもりだ」
リルの言葉に、十四郎が相槌を打つ。
そして、二人は揃って暑苦しい筋肉ダルマを見た。
「わ、吾輩は大丈夫である! 高温粘液など、痛くも痒くもないのである!」
明らかに負け惜しみだが、それもまた良し。
「ある程度までソニックで削って、体ん中の粘液をあらかた吐き出させりゃ、接近戦でも行けるだろう」
十四郎が長棍棒を構える。
かくして、暑苦しい褌三人衆はあちこちで蠢くアツイ塊にアツイ戦いを挑んだ。
後に聞く所によると、それはそれは激しく壮絶なバトルだったそうな‥‥。
「‥‥全部で6体と言ってたな」
仕留めた残骸を数えつつ、湧き出す温泉に蹴り入れながら十四郎が言った。
「しかし、爺さんの記憶はアテにならねえからな」
「いや、今度ばかりはアテになったらしいぞ」
念の為にカンテラを手に周囲を見回って来たリルが言った。
「どうやらこれで全部らしい。 ‥‥さて、後は残りの時間をどう過ごすかだが‥‥」
怪我の治療と簡単な道具の手入れを終え、一行は適当な場所に円座を組む。
「しっかし暑いねえ」
まずは戦いで消耗したエネルギーの補給が肝心と、十四郎に分けて貰った満腹豆を口に放り込んだクリムゾンが言った。
「でも、長丁場を耐え抜くには、目の保養も必要だろ? あたいがいてよかったな」
むう、目の保養は確かにそうかもしれないが‥‥この場合、見る側は何かと消耗の方が激しい様な。
「ま、何もしないのも退屈だ。気を紛らわせる為に、ちょっとした賭でもしないか?」
リルの提案で始まった軽いゲーム。だがこれが、なかなかに白熱の戦いだった。
「1〜9までの数字を銅貨に見立てて、一度にひとつ、好きな数を出して行くんだ。一番高い数字を出した奴が総取りで‥‥」
まあ、物は試し。
「ん? あたいとリルが同じだな」
「そん時は俺とクリムゾンで山分けだ」
「ああ、なるほど、こうやって一回ずつ勝負していくのかい」
「そうか、最初から高い数字を使っちまったら後で負けが込む、かといって‥‥」
なかなか頭を使うな、と十四郎が唸った。
だが、皆がそうして頭を捻る中‥‥
「フシュ〜、いい塩梅の温度なのである!」
マックスだけは別世界に居た。身体のそこかしこから滲む汗が、鍛えこまれた筋肉を滑り‥‥落ちる前に気化していく!
それはまさしく、設備いらずの俺、いや吾輩サウナ!
‥‥嫌だ、そんなサウナ入りたくない‥‥。
「く‥‥、これしきの暑さに負けてたまるかい、何が何でも最後まで耐え抜いてみせらぁ」
不運にも熱源の隣に座った十四郎は、意地と体力を総動員して何とか元気なフリを保っていた。
「でも‥‥外に出たら、キュッと冷えた酒で一杯やりてぇな‥‥」
頑張れ皆。あと何時間、この暑苦しい戦いが続くのかは知らないが‥‥!