名称未定冒険者集団 発進!
|
■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 71 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月07日〜11月13日
リプレイ公開日:2008年11月15日
|
●オープニング
「という訳で、だボールス卿。フォンテ村への滞在許可をもらえるかな?」
「‥‥はい?」
キャメロットの王城、その正門前で唐突に始まった、そんな会話。
仕事を終えて帰宅しようとした円卓の騎士ボールス・ド・ガニスを待ち構えてたのはマナウス・ドラッケン(ea0021)だった。
「ああ、そう言えば‥‥」
その言葉に、ボールスは先日受け取った手紙の内容を思い出す。
「確か、温泉に仲間を集めて何かをしでかす企み、でしたよね?」
「‥‥それは、こちらの意図を微妙に、いや、かなりねじ曲げて解釈していないか?」
「そうですか?」
にこにこ。
どうもこの円卓の騎士、先頃記憶喪失から回復して以後、何だかとても腹黒くなった様な気がする。
‥‥いや‥‥元からか?
「人聞きの悪い事を‥‥まあ、言われても構わんが」
構わないのか。
しかしとりあえずボールスの意図的に曲げられた様に見える解釈を真っ当なものに戻すべく、マナウスは解説を始めた。
「ある程度名の知れている冒険者を集めて、とある組織を作ったんでね」
有事の際に集団で動いたり、何もなければ日がな一日のんびりダベっているような、そんな気心の知れた仲間達。
率いているのがマナウスという点で色々怪しく見えてしまうのは仕方がない。
「名称はまだ決まってないんだが、それを決める打ち合わせなんかも兼ねて懇親会を開きたい、と」
場所は温泉。温泉と言えばバースか、或いはボールスの統治下にある村、フォンテ。
という事で彼に白羽の矢が立ったらしい。
「日程は‥‥この時期だしそう長く無くても問題ない。一日二日ゆっくり出来れば十分だしな」
「あの村までなら徒歩で2日程ですから、中2日滞在として6日もあれば充分でしょうね。‥‥ああ、特に私の許可は必要ありませんよ」
統治下にあるとは言っても、運営を管理している訳でも、特に何か特別な計らいをしている訳でもない。住民にハーフエルフが多く、しかし差別はないというだけで、後はごく一般的な村だ。
それに村と温泉施設には多少の距離がある。わざわざ関わろうとするのでもない限り、立ち寄る必要もないだろう。
「まだ人が寝泊まり出来る様な設備は整っていませんが‥‥」
「温泉には入れるんだろう? それに、寝泊まりにも雨風が凌げる場所があれば良い」
「テントや寝袋持参で雑魚寝になると思いますが」
「結構。それだけあれば上等だ」
マナウスは頷くと、ふと思いついた様に付け加えた。
「ボールス卿達も一緒に行きます? たまには部下を労うのも上司の仕事だと思いますが」
いきなり敬語になってるのは何故だろう。
‥‥何か企んでいる様な気がする‥‥
「そうですね。でも、今回は皆さんの為の懇親会でしょう? 気を遣って頂けるのは有り難く思いますが、今回は水入らずで楽しんで来て下さい」
やんわり、断られた?
それでも強引に誘えば乗って来そうな雰囲気ではあるが。
まあ、それは押しかけた後で考えれば良い。
「くけけけけけけ‥‥」
ボールスが去った城門前の広場に、不気味な笑い声が響く。
‥‥このエロフ、やっぱり何か企んでる?
●リプレイ本文
温泉の村、フォンテ。
この村を冒険者達が訪れるのは、そう珍しい事ではない。
だが、その日村を訪れたのは、いつもとは少し毛色の変わった集団だった。
「新しく立ち上げたグループの懇親会とう事で、少し滞在させて貰いたいんだが‥‥宴会で少し騒がしくしてしまうかもしれないが、構わないだろうか」
代表であるマナウス・ドラッケン(ea0021)の言葉に、村人達は快く頷いた。
滞在と言っても温泉施設に泊まるなら村からは多少の距離もあるし、周辺には人家もない。少々騒がしくなったところで問題はないだろう。
「だが、その前にここで少し休ませて貰いたいんだが。アデルとも久しぶりに会う事だし‥‥」
それに、村の者とも少し話をしてみたい。
「普通のハーフエルフと話す機会は余りないしな」
「普通の? どういう意味だい?」
マナウスに悪気があった訳ではないだろう。だが、「普通の」と言うからには、その裏に「普通ではない」特殊な存在があると‥‥意識的にか、或いは無意識にしろ感じているという事だ。
「俺達は皆、ハーフエルフであろうとなかろうと、ごく普通の存在だが」
「いや、悪かった。偏見は持っていないつもりだったんだが‥‥」
彼の母親はハーフエルフだったらしい。だがそれでも、そうした言葉が出てしまう。問題の根は深い様だ。
一方こちらは女性達。
代表の苦悩を余所に、脳天気に盛り上がっているのは‥‥
「レアで〜す」
「フレイアで〜す」
ちらり。並んで立ったレア・クラウス(eb8226)とフレイア・ヴォルフ(ea6557)は脇に控えたレイア・アローネ(eb8106)を見る。
ここでやらなきゃ女じゃない、というその視線に、レイアは意を決して二人の真ん中に進み出‥‥
「レイア・アローネでございます」
――どかっ!
両脇からどつかれた。
だがこのネタ、若い者にはわからなかった様だ。
「何でそこでツッコミが入るの?」
ウォルが首を傾げ、アデルもまた無表情に三人を見つめている。
いや、アデルの無表情は今に始まった事ではないが‥‥
「まあ、姉妹じゃないが三姉妹みたいで面白いだろ?」
「確かに名前は似てるけどさ」
フレイアの言葉にウォルはまだ納得が行かない様子だ。
しかし滑ったギャグの解説をするほど虚しい行為が他にあるだろうか。
「忘れろ、良いな?」
フレイアがにっこりと‥‥凄絶に微笑む。
まあ、そんなネタ姉妹のやりとりは置いといて。
「また来ましたわ。アデルさん」
サクラ・フリューゲル(eb8317)の言葉に、アデルは安心した様に微かに微笑んだ。
「アデル、どうだ調子は?」
その様子に嬉しい驚きを感じながらレイアが言葉をかける。
「何もないならそれでいい。不安もあるだろうが、ゆっくりと‥‥な」
そして、ふと思い出した様に付け加えた。
「そう、君の父上と例の少年、交流があるようだぞ?」
「‥‥お父さん、今度‥‥ここに、来るって‥‥」
「そうか、良かったな」
アデルが大きくなる頃には少しは変わっていると良い‥‥そう願いつつ、レイアはその頭を軽く撫でた。
「明日がよき日でありますように――」
「さてと、じゃああたしはそろそろ猟にでも行って来るかね」
フレイアが席を立った。
「なら、俺は薬草でも採って来るか」
空木怜(ec1783)も続いて席を立つ。
「良薬口に苦しとは言うけど、ちゃんと料理に使える美味いのもあるぞ。ハーブとかはその代表だ」
もっとも、冬も近いこの季節では種類も量も限られてはいるだろうが。
「あ、なら私は動物に関して知識だけはあるから、サポートくらいは‥‥と思ったけど」
肉体労働は苦手という自覚のあるレアが続こうとして踵を返したが‥‥ふと立ち止まる。
「フレイア姉さんにはお手伝いなんか必要なさそうね」
それよりも、待っている間に村人に愛想をふりまきつつ占いや踊りでも披露した方が良さそうだ。
「場所を貸してくれたお礼も兼ねて、ね。そうだ、サクラ歌ってくれる? そしたら、それに合わせて踊るから」
「え、あの、私は魚でも獲りに行こうかと‥‥」
「良いじゃん、そんなの明日でも」
ウォルに言われ、結局サクラも巻き込まれる事に。
「むう、私は何をすれば良いのか‥‥」
例の出オチ以外にこれといった芸を思いつかないレイアが首を捻る。
結局彼女が選んだのは‥‥
「何? だ、誰とくっつくのか? 私? なんだそれは?」
村の子供達を捕まえて、ある事ない事を吹き込む事、だった。
「何だと? 『冒険者の異種族と人間は恋に落ちやすい』? 誰だそんなデマを流したのは!!」
心当たりはある。
「サクラ!」
だが、呼ばれたサクラはふいと視線を外す。
「何故そっぽを向く!? 知ってるのか!?」
まあ、確かにその傾向はあるだろうが‥‥冒険者が殊更どうこうという事ではなく、単に接触の機会が多く、相手の事を深く知る事が出来る場合が多いというだけという気もする。
ならば、一般にもその機会が増えれば‥‥と考えるのは楽観的に過ぎるだろうか。
「それはそれとして‥‥この村の事は色々聞いてはいたけど、こんな形で来る事になるなんてね」
レアが呟く。
確かに、サクラが言っていた様に、居心地は良さそうだった。
そして夕刻。
確保した食材や、その他様々な荷物と共に移動した彼等はオナ千四節の近くにキャンプを張った。
「‥‥オレ、良いのかな、ここに居て‥‥」
落ち着かない様子でウォルが呟く。
「だってこれ、仲間内だけの集まりだろ? オレ、場違いなんじゃ‥‥?」
「そんな事はありませんわ。お誘いしたのは私ですし‥‥」
サクラが言った。
「皆さんの了解も取ってありますから」
「そうそう、遠慮する事ないって」
獲って来た獲物を捌きながら、フレイアが言った。
「それに、料理も出来るんだろ? サクラの手伝いでもしてやりゃ良い」
「こういう時、料理出来る人がいるのは実にいい。冒険ならともかく休養で食事が保存食じゃね」
ご馳走とまでは行かなくても、せめて何か手を掛けた料理が欲しいと、怜。
「それにしても‥‥」
と、怜はまだあちこちが未完成のままになっている施設を眺め渡す。
「その道の通ならともかく、観光地としてはもうちょっとか」
源泉があっても、それで何かをしようとなると手間はかかるものだ。
「というか、村単位でやるのは珍しいか? こういう施設って金持ってる貴族とか国が出資して作られるのが多い印象があるな」
「まあ、村の事情がちょっと複雑だからね」
ウォルが言った。
「確かに上で仕切ってやっちゃった方が楽だし、簡単だけど‥‥これは村の皆でやらないと意味がないんだ」
「成程ね‥‥詳しい事情は知らないが、温泉は健康にいい。ただ体が温まるからってだけが理由じゃない何かがある」
何かは知らないが。
だが、その効用を広めれば観光地としてもそれなりに人が集まるスポットになりそうな気はする。
「飲んでもいいとか聞く事もあるが‥‥飲めるのか?」
「うん、ここじゃ普通に飲んでるよ」
「へえ‥‥じゃ、後で土産に持って帰るか」
フレイアが言った。
手ぶらで帰ると旦那が怖い、らしい?
「慣れないと腹を壊しやすいとも聞くから程々にな」
「それでは入浴マナーについてご説明させていただきますわね」
夕食を終え、暫くの間それぞれにのんびりと過ごした後でサクラが言った。
「あ、それならあたしも少しはわかるぞ」
フレイアが「ジャパン式温泉作法」を解説する。
「一つ! 湯船にタオル類を漬けるな」
「一つ! 無闇に飛び込むな」
「一つ! かけ湯は必ずはいる前に」
「一つ! おいたは程々に」
おいたって‥‥覗きとか、あんな事やこんな事、だろうか。
「後は‥‥こちらの温泉は湯着を着て入る事になっていますので」
サクラが女性達に湯着を手渡していく。
「覗かれても余り不都合はないかもしれませんわね」
だが‥‥
「‥‥ダメだ」
暫くお湯に浸かった後で、フレイアがもぞもぞと体を動かす。
「やっぱり素肌の方が気持ち良いんだよな〜。男性陣見てないからレッツトライ」
ウォルも流石にこの集団に混ざる度胸はないらしく、後で勝手に入ると言っていた事だし‥‥と、湯着を脱ぎ捨てた。
「え、ぬ、脱ぐのか!? よ、よし、皆が脱ぐなら私も‥‥っ」
続いてレイアが‥‥
後に続いた者がいるかどうかは知らない。記録係も追い出されたし。
そして真夜中。
湯船に再び人の気配が‥‥
「‥‥俺を信じて集まってくれた人がいるのは嬉しいと思う。でも俺は本当にこういう集団を作って良かったのかって考えるんだ」
珍しく弱音を吐くマナウスの隣で、レアはそれを黙って聞いていた。
「俺は、俺が間違ってると思った時に正してくれる事を期待しているのかもしれないな‥‥はは、ガラじゃないか?」
その後で二人がどうなったのか‥‥記録係は知らない。
ま、ご利用は計画的に、自己責任でお願いしますという事で。
翌日は仲間同士で手合わせをしたり、引き続き食材の調達に奔走したり‥‥或いは昔話を披露したり。
各自が好きな様に過ごし、やがて最終日の朝。
かねてから募集しておいた団の生漆器名称が決定した。
「ヴィズル=オースキ‥‥どっちもオーディンを指す言葉だったか」
怜が自らも第一に選んだ候補だ。
「しかし、『滅ぼす者』と『望む者』とは‥‥」
何を望み、何を滅ぼすのか‥‥それは各自に委ねられる事になる。
「長として俺が言うべきことは一つ。己自身が正しいと思うものに従え、それだけだ」
マナウスの言葉に、レイアが応えた。
「私は‥‥昔、色々あってな。それ以来、仲間を作ろうとは思わなかったのだが‥‥仲間がいるだけでこんなにも気分が安らぐのだな」
機会をくれたマナウスに感謝を。そして‥‥
「私はそこに寄り添い助力する事しか出来ないが‥‥宜しく頼む、団長」
彼等が何を目指し、何処へ行こうとしているのか、それはまだわからない。
だが、ひとまずは走り出した彼等の前途に祝福を‥‥。