【聖ミカエル祭】ガーガー大追跡!

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月26日〜10月01日

リプレイ公開日:2006年10月04日

●オープニング

●悪魔を退治した大天使を称える豊饒の祭り
「今年は聖ミカエル祭を盛大に行おう」
 商人ギルドマスターは集まった代表者達に口を開いた。商人達は互いに顔を向け合い、何か言い淀むような表情だ。
「‥‥この時期に聖ミカエル祭を行うのですか?」
 この時期に――。言いたい事はギルドマスターにも分かっていた。先の園遊会での噂はキャメロットはおろか、広い範囲に渡っている。
 ――悪魔の不穏な動きとラーンス・ロット卿のアーサー王への裏切りのような行為。そして円卓の騎士達の不和‥‥。
「9月29日に大天使ミカエルを称える『聖ミカエル祭』を各地で行なうのは慣わしではなかったか?」
 ――聖ミカエル祭。
 秋の訪れたイギリスの商人達にとって一大イベントの一つである。
 この祭りに欠かせないものに3つのGというものがあり、『手袋(Glove)』、『ガチョウ(Goose)』、そして『生姜(Ginger)』を指す。
 手袋には、本来決闘を申し込むという意味があるが、左手の場合、市場に店を開く許可の印として成り立っていた。普段はきちんとした出店許可証が無ければ露店を開く事ができないが、この祭りに限って名目上は左手の手袋だけで済むのである。要するに、他のギルドに加入している者が出店していないかの簡単な審査はあるという訳だ。ミカエル祭の月に入ると巨大な手袋が街中に溢れ、活気に漲る。
 ガチョウは、この時期収穫しやすい鳥で、饗宴などの主食として登場する。一度ローストしたガチョウに丁寧に羽を付け直してあたかも生きているような感じに見立てる料理が酒場でも見られるようになり、この料理を『イリュージョン・フード』と呼ぶ。
 生姜は料理の中に添えられる薬の一つとして伝えられているが、何より、偉大な天使に捧げる供物の1つとして成り立っており、聖ミカエル祭では必要不可欠なものだ。
 聖ミカエル祭が近づくに連れ、各地から露店を開くべく人々が街を訪れ、広場は活気に満ち溢れたものである――――。
 商人ギルドマスターは再び口を開く。
「このように不穏な噂が流れる時だからこそ、人々の活気を向上させねばならない。聖ミカエル祭を大いに盛り上げて、噂など吹き飛ばそうではないか!」
 確かに塞ぎ込んでいては、悪魔に付け入る隙を与えかねない。商人達は威勢の良い声を張り上げ、異論がない事を告げた。
「理解して頂き感謝する。しかし、承知していると思うが、祭りがあれば様々なトラブルも出るというものだ。冒険者ギルドにも力を貸して頂かねばならぬだろうな」
 こうして各地へ聖ミカエル祭を行う知らせが届けられ、冒険者ギルドには聖ミカエル祭に向けての依頼が飛び込むようになった。

●ごちそうが逃げた!
 祭りの準備で市場は活気づいていた。その中でも最も賑やかなのが、ガチョウを売る店が集まる一角だ。
 買い物客でごった返す中、そんな店のひとつから悲鳴が聞こえた。
「ガチョウが逃げたーーーっ!!!」
 その声に追われるように、白い羽毛を撒き散らしながら騒々しい集団が市場を駆け抜けて行く。
 ガチョウ達は人間達を蹴散らし、あるものは路地へ、あるものはありったけの力を振り絞って屋根に飛び上がり‥‥あっという間に、一羽残らず姿を消した‥‥。

●ごちそうを探せ!
「あれは、うちが仕入れた中でもとびっきりの上物なんですよ」
 ギルドのカウンターに両手を付き、がっくりと肩を落とす店の主人。
「今頃はもう、誰かに丸焼きにされているかもしれません‥‥でも、でも、出来る事なら、捕まえて、取り戻して欲しいんです。いえ、もう、調理済みでも構いません!」

●ごちそうの言い分
「ガッ! ガガガッ! (諸君、時は来た!)」
「ガガッガガガガッ! (今こそ我等が自由を手にする時ぞ!)」
「ガガガッガガーガガッ! (生きながら羽根をむしり、丸焼きにするばかりか、今度はそれに羽根を付け直し飾り立てるとは、何たる悪趣味!)」
「ガッ! ガガーガガガッ! (諸君、この期を逃してはならぬ! あの扉が開いたその時、我々は自由へ向けて羽ばたくのだ!)」
「ガッ! ガッ! ガガガッ! (では諸君、健闘を祈る! 自由の天地で再び相まみえん事を!)」
「ガーッ!!」

●ごちそうの行方
「え? ああ、ガチョウ? さっき3羽くらい、足元をものすごい速さで駆けてったわ」
「さっきまでそこの屋根の上にいたんだがね、捕まえようとしたら飛んで逃げちまったよ。驚いたね、死ぬ気になりゃガチョウも飛べるんだねえ」
「あ、ほら、また来た‥‥。あのガチョウ、さっきからここをウロウロしてるのよ。どこへ行ったら良いのかわからないみたい。え、あたし? 捕まえたりしないわ。せっかく逃げたのに、可哀想じゃない」
 ガチョウ達は逃げたは良いものの、行く宛てもなく市場の付近を走り回っているらしい。
 未だ、捕まえたという報告は入っていない‥‥。

●今回の参加者

 ea1137 麗 蒼月(30歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1407 ケヴァリム・ゼエヴ(31歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea2269 ノース・ウィル(32歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3785 ゴールド・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea3827 ウォル・レヴィン(19歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

エル・サーディミスト(ea1743)/ クリステル・シャルダン(eb3862

●リプレイ本文

 聖ミカエル祭に湧く大通りから少し入った小路には、普段と変わらない日常と静けさがあった。
 冒険者達とガチョウ達の、壮絶な死闘が始まるまでは‥‥!

 麗蒼月(ea1137)とアルフレッド・アーツ(ea2100)は、袋小路にガチョウ捕獲の罠を仕掛けていた。
 ガチョウに気付かれないよう上空に網を張り、念のため誘き寄せる為の餌をセットする。
「‥‥‥この餌‥‥美味しそう、ね‥‥」
 ガチョウの餌を、じーっと見つめる蒼月。
 誰かに『勝手に食べたら駄目だからねっ』と、言われたような気もするが。
「‥‥‥‥‥‥‥‥ごちそうさま‥‥」
「‥‥た‥‥食べちゃったんですか‥‥?」
 アルフレッドは驚きながらも目の前の事実を受け入れる。
「じゃあ、僕は‥‥上のほうを探してみますね‥‥」
 そう言うと、ふわりと空へ舞い上がった。
 残された蒼月は‥‥。
「‥‥ここで、待っていても‥‥イリュージョン・フード‥‥降って、来ない‥‥かしら‥‥」
 仲間が追い詰めた頃に戻る事にして、蒼月もごちそうを探しに出かけた。

「ガチョウちゃ〜ん、ふわふわのモコモコちゃ〜ん、どこですか〜?」
 ケヴァリム・ゼエヴ(ea1407)は空を飛びまわったり、道端で立ち話中のシフール達から目撃情報を集めながら、逃走中のガチョウ達を捜索していた。
 だが、見渡す限り、人、人、人。地面も見えない。人混みの中に紛れたら、空から探すのは難しそうだった。
「んー? あの白いモコモコは‥‥」
 視線を郊外の丘に転じた時、緑の中に白い点が見えた。
 近寄ってよく観察する。
 どうやら、近所の飼いガチョウではないようだ。
 後ろから追い立て、仲間のもとへ誘導しようかと思ったが、罠の場所からは少し距離があった。
「よ〜し、やってみちゃおっかな〜☆」
 ケヴァリムはガチョウの後ろからそ〜っと近付くと、その首根っこに抱きついた!
「ガガーッ!?」
 ガチョウは白い羽根を舞い散らしながら必死で抵抗する。そして‥‥ケヴァリムを首にぶら下げたまま、空高く舞い上がった!
「うわあぁ!? こ、こら、降りろ! 降りろってば! そっちじゃないよ〜!」

「お祭りで食べるガチョウの詰め物したローストとか絶品なんだよなぁ」
 ウォル・レヴィン(ea3827)はごちそうに姿を変えたガチョウを想像しながら、逃げた材料を探し歩いていた。
「思い出すだけでお腹がすく気がする‥‥ん?」
 人気のない路地裏の、積み重なった樽の影で、何か白いものが動いた気がする。
 いた。ガチョウだ。しかも、両足に足輪を填めている。色も店の主人から聞いた、赤と白。間違いない。
「俺達の楽しみの為、悪いが捕まえさせてもらうぜ!」
「ガッ!?」
 殺気に気付いたガチョウは、一目散に逃げだした‥‥露店の立ち並ぶ大通りに向かって!
「人混みに紛れようとしたって、そうはいかないぜ!」
 ウォルは、何故かダンスのステップでくるくる踊りながら人混みを掻き分け、駆け抜ける。
「お祭りで開催されるダンス大会、見に来て下さいねー!」
 と、明るい笑顔を振りまきながら‥‥。
 そして、角を曲がろうとしたその時。
 ――がいぃぃん!!!
 出会い頭に、誰かと正面衝突。
「うぉいってェェェっ!!!」
 それは、ヲーク・シン(ea5984)だった。
 どうせなら女の子が良かった‥‥とは、お互いに思った事だろう。
 そしてハタと気が付けば、既にガチョウの姿はない。
「‥‥俺の足元? すり抜けて行った? ‥‥気が付かなかった‥‥!」
 ウォルと別れた後、ヲークは暫し考え込む。
「捕まえる為ばかりでなく、見つける為にも四つん這いで動き回ったほうが良さそうだな」
 だが、四つん這いで人混みを駆け抜ける彼の視線は、何故か上斜め60度近辺に向けられていた。

「ふむ、聖ミカエル祭か‥‥」
 ノース・ウィル(ea2269)は、ガチョウの目撃情報を書き込んだ地図を片手に、露店が並ぶ賑やかな通りをそぞろ歩いていた。
「めでたい日だと言うのに、仕事とはいえ、ガチョウ追いかけとはな。冷静に考えると何をしているんだろうか、私は」
 そんな彼女の姿を屋根の上から眺めているのはカメノフ・セーニン(eb3349)。
「ふむ、向こうから四つん這いで突進して来るのはヲークかのう? このままじゃと‥‥面白い事になりそうじゃわい」
 カメノフは、どっこらせ、と立ち上がると、リトルフライで特等席へ移動する。そこからはノースの姿が真っ正面に見えた。
「さぁ〜て、そろそろじゃな。さん、にい、いち‥‥ほれ!」
 ぼんやりと地図を眺めていたノースのスカートがふわりと舞い上がり‥‥
 ズボッ!!
「!!!!!ッ!?」
 ヲークが頭から突っ込んできた。
「うひょひょひょ、ええ眺めじゃのォ〜〜〜」
 その光景をしっかりと目に焼き付けるカメノフ。
「いやいや、遊んどる場合じゃないのう」
 眼下の惨状を放置したまま、彼は本来の仕事‥‥ガチョウの捜索に戻っていった。

 一方、地上では‥‥顔面に思い切り蹴りを入れられたヲークが、大の字にのびていた。
 そんな彼をその場に残し、ノースは足早に歩き去る。
 鼻血をボタボタ垂らしながら、ヲークは起きあがった。‥‥その鼻血は蹴りを食らったせいなのか、それともスカートの中身を拝んだせいなのか、その原因は不明だったが‥‥。
「‥‥ガチョウは‥‥?」
 彼が追いかけていた筈のガチョウは‥‥見物人に混じって、ちゃっかりヲークを見下ろしていた。
「ふふふ‥‥余裕じゃないか。だが、これでどうだっ!?」
「グワッ!?」
 ヲークはおもむろに投網を広げると、ガチョウ目がけて投げる!
 周囲の人を巻き込みつつ、網はガチョウの真上に覆い被さった。
「よっしゃあ、ガチョウ1羽げっちゅー!!」
 ヲークは高らかに宣言した。鼻血を流しながら‥‥。

 ゴールド・ストーム(ea3785)は、ガチョウ捕獲用の投擲武器を作っていた。
 ロープの両端に適当な大きさの重石を結び付けるだけの簡単なものだが、ガチョウの首に巻き付けるには手頃な武器だ。
「さて、と。まずはガチョウを探さねぇとな」
 ゴールドは目撃情報を元に、適当に露店を冷やかしつつガチョウの行方を追う。やがて、一軒の家の裏庭で件のガチョウを見つけた。
「おまえ狩りは得意だろ? 上手く誘導してくれよ」
 連れている犬に声をかける。
 犬は一声吠えると、ガチョウに飛びかかっていった。
「よし、そのままあそこの小路に追い込むんだ! なるべく傷付けないように、上手くやるんだぞ!」
「ワン!」
 犬は、主人の命令を忠実にこなした。
 ガチョウは袋小路に追い詰められ、羽根をバタつかせながら必死に壁を超えようとしている‥‥だが、このガチョウには空を飛ぶ根性はないようだ。
「上手く出来てりゃいいがな‥‥」
 ゴールドは慌てふためくガチョウ目がけて、お手製の武器を投げつけた。
 ――ゴンっ!!
 本来ならロープが首にからまる筈なのだが‥‥片方の重石が途中で外れ、ガチョウの頭を直撃した。
 気を失ってぐったりと倒れるガチョウ。
「‥‥まあ、結果オーライ‥‥か」

 蒼月は露店から漂う甘い香りに誘われるように、あちらの店、こちらの店と渡り歩いていた。
「甘くて‥‥美味しい‥‥」
 買い食いしたお菓子を口に運び、うっとりと恍惚の表情を浮かべる。
 その目の端に、道の向こうから走って来るガチョウの姿が。
「‥‥あら‥‥」
 すれ違いざま、蒼月の鉄扇がガチョウの後頭部に炸裂した‥‥。
「捕まえたら‥‥食べて、いいのよね‥‥?」
 いけません。

 一方、屋根の上ではアルフレッドが、のんびり日向ぼっこをしているガチョウを狙っていた。
 気付かれないように上空から近付き、思いきり抱きつく。
「ゴガァッ!?」
 当然のごとく、ガチョウは大暴れ。アルフレッドの力では渾身の力を振り絞って暴れ回るガチョウを押さえる事は出来なかった。かといって手を離すタイミングも掴めない。ガチョウはアルフレッドを引きずったまま、屋根の上を走り回り‥‥落ちた。
 飛ぶ事は考えなかったようだ。いや、考えてはいたかもしれないが‥‥ガチョウはそのまま地面に激突した。
 直前に上空に逃れたアルフレッドは、恐る恐る覗き込んでみる。
「‥‥よかった‥‥気を失ってるだけみたいだ」
 どのみち、ごちそうにされてしまうのだが。

「はぁ、はぁ、はぁ‥‥キミ、なかなか根性あるねえ‥‥」
 ケヴァリムは野原の真ん中で『ど根性ガチョウ』と対峙していた。
「‥‥よし! キミのその素晴らしいファイトに免じて‥‥キミはもう自由だ!」
「ガ!?」
「ほ〜ら、こうして首にリボンを結べば‥‥うん、立派な飼いガチョウ☆」
「ガガ!?」
「もう捕まるんじゃないよ? 元気で生き延びるんだよ?」
 ケヴァリムは手を振って、強敵(とも)に別れを告げた。

「ああ! そっちじゃない!」
 ようやく見つけた1羽のガチョウを、罠を仕掛けた場所に誘導していたノースは咄嗟に手近の物を投げつけ、軌道を修正する。
 ところが‥‥
「ちょ、ちょっと、何するんだお嬢さん! お代、お代!」
 背後からの声に、ノースは立ち止まる。
 彼女が投げたのは、露店に置かれたリンゴだったようだ。
「す、すみません! あの、泥棒とか、そんなつもりは‥‥!」
 ノースは急いで支払いを済ませ‥‥ついでに、爆弾用にいくつか余計に買い込んだ。
 買い込んだ爆弾‥‥いや、リンゴをかじりつつ、ノースはガチョウを見失うまいと必死に追いかける。
 丁度その時、向こうの道から踊りながらガチョウを追いかけるウォルの姿が見えた。
 二人は協力して、罠の中にガチョウを追い込む。
 カメノフも首尾良く捕まえられたようだ。一仕事終えた彼は、ピグマリオンリングを装備して佇む蒼月のスカートを狙っているようだが‥‥。

 かくして‥‥数時間に及ぶ格闘の末、ガチョウ7羽とイリュージョン・フードがひとつ、店の主に返される事となった。
「うん、バレてないバレてない♪」
 ‥‥ホントか?