石を拾え! 拾いまくれ!!
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:7人
サポート参加人数:1人
冒険期間:10月21日〜10月26日
リプレイ公開日:2006年10月29日
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●オープニング
モグラ似のオジサマ、モリソン・モーリーは上機嫌だった。
「いや〜、今年も立派なカブが採れたわな〜」
小麦の裏作で育てている、ハロウィンのランタン細工用のカブ。今年はとりわけ大きく、立派に育っていた。
だが、収穫を終えた次の朝、畑へ向かってみると‥‥。
「‥‥畑が、石ころだらけに?」
受付係の問いに、モーリーさんは小さな目をショボショボさせながら答える。
「そうなんだわ、昨日まではフカフカホワホワの、良〜い土だったんだわ。それが、今朝起きてみたら畑一面、ゴツゴツのガリガリになってたんだわ」
試しに鍬を入れてみたが、どこを掘ってもガキッ、ジャリッ、と、石に当たる。表面にバラまかれただけではなく、ご丁寧に土に混ぜ込んであるらしい。
石ころだらけの土では丸くて大きなカブは作れない。小麦だって良いものは作れないだろう。
「次の作付けまでに取り除かにゃならんのだわ。そうは言っても、とてもわしら家族だけじゃ取りきれんで、またここの若い衆に手を貸して貰えたらと思って来たんだわ」
「そうですか‥‥では、畑の石ころ拾い、ですね?」
受付係は依頼書に書き込みながら話を続けた。
「しかし、悪戯にしては度が過ぎていますよね。一体何故、誰が‥‥」
「あれだわ、あの悪戯好きの小悪魔どもなんだわ。今までも時々、小さな悪戯をする事はあったんだがね、こんなひどいのは初めてだわ」
「悪戯好きの小悪魔‥‥インプか、グレムリンでしょうか?」
「羽根の生えた、長いシッポのヤツラだで」
「‥‥インプですね。ついでに退治しておきますか?」
「そうだわなあ、今回ばかりは、ち〜っと懲らしめてやったほうが良いだかなあ」
インプ達は普段、近くの森を根城にしているらしいが、悪戯の成果を見る為に、わざわざ畑に出て来る事もあるようだ。
足跡の様子から見て、その数は5〜6匹‥‥。
「じゃあ、頼んだわ。また焼きたてのパンを用意して待っとるでな」
●リプレイ本文
「お〜、よ〜来てくれたわなあ〜」
モグラ似のオジサマ、モリソン・モーリーが、満面の笑顔で冒険者達を出迎える。
「まずは腹ごしらえでもどうだね、ほれ、良い〜ニオイがしとるだろ?」
確かに、家の周囲にはお腹が空いていなくても食欲をそそられる香りが充満していた。
今日は天気も良い。外にテーブルを出して、青空の下で食べるのも良さそうだ。
一同は、すぐ目の前に広がる石ころだらけの畑はとりあえず見なかった事にして、食卓のセッティングを手伝いにかかった。
「‥‥それで、ご主人」
食事をしながら、陰守森写歩朗(eb7208)が依頼人に尋ねる。
「悪戯インプどもの根城がどこにあるか、ご存知だろうか?」
「いんや〜、森の中っちゅう事はわかっとるがなあ」
そこから先、詳しい場所はわからないらしい。
「畑に来る時に、奴等がいつも通る道などは? いつも決まった場所から畑に侵入するとか‥‥」
と、シオン・ブルートリス(eb7910)。
「う〜ん、奴等は気まぐれだでなあ。いつも、あっちこっちから現れよるで‥‥ああ、でも大体は北の方からだわな。森が畑の北にあるで」
「‥‥なら、畑の北辺に罠を仕掛ければ、多少は効率が良いかな」
イグニス・アルビエイム(eb8187)の言葉に、シュネー・エーデルハイト(eb8175)が畑を眺めながら溜め息混じりに呟いた。
「多少は‥‥ね」
畑の面積は、とんでもなく広い。
何かトラップを仕掛けるにしても、一辺の全てをカバーするのはまず無理だ。
「畑で石拾いをしながら待ち伏せした方が良いんじゃないかしら?」
「まあ、とりあえずやってみるさ。ダメなら、後は畑仕事に専念する」
と、シオン。
「‥‥結構な重労働になりそうだね‥‥」
イレクトラ・マグニフィセント(eb5549)が苦笑いを浮かべた。
昼食後、冒険者達はシャノン・カスールの案内で森の中にインプ捕獲用の罠を仕掛けて回っていた。
目立たないように木の間に網を張り、地面に掘った落とし穴には枯れ枝などを被せ、森の出口近くにはライトニングトラップを仕掛ける。
「1時間しか保たないのが難点だな」
シオンの言う通り、この魔法は長時間の待ち伏せには向いていないようだ。超越にでもなれば話は別だが‥‥。
だが、それを抜きにすれば、彼等が作った罠はなかなか良く出来ていた。
なのに、夕方まで見張っていてもインプのイの字も引っかからない。
それどころか、周囲に彼等の気配すら感じられなかった。
一方、ひとり畑に残ったイレクトラは、依頼人に帽子と服を借り、すっかり農家のおかみさんになりきっていた。
「‥‥おかしくないかね?」
「ああ、よく似合うだよ」
「こうして農家の人間のフリをしていれば、奴等も油断して近くまで来るんじゃないかと思ったんだが‥‥」
その日、インプ達は畑にもやって来なかった。
「う〜ん、インプという奴は、夜行性なんだろうか?」
夕食時、 『悪魔学概論』の写本をこっそりと見ながら森写歩朗が首をひねる。
今日一日、影も形も見えなかった。
「そんな事はない筈だがねぇ。奴等も知恵が回るで、あんた方の気配を察して警戒したのかもなあ」
「やっぱり、イレクトラみたいに石拾いをしながら待ち伏せたほうが良いのかしら」
と、シュネー。
「どちらにせよ、全員でかからない事には終わりそうもないさね、あの石拾いは」
イレクトラが肩をすくめた。
夜の間、冒険者達は交代で見張りに立っていたが、インプ達は相変わらず現れる気配がなかった。
そして朝。
今日からは全員総出で石拾いだ。
畑の土は軟らかく、石を拾うのは簡単だったが‥‥何しろ数が多い。そして面積もハンパじゃない。
「‥‥これは、地道に力仕事だな。拾うと言うより、耕し直しの感じだぞ‥‥」
鍬をふるいながら森写歩朗がボヤく。畑を掘り起こし、出てきた石を土と一緒に大きな篩にかける。
「筋肉痛にならなきゃ良いが‥‥」
最初のうちはインプがやって来る気配がないか、周囲に気を配りながら作業をしていた彼等だったが、次第に石を拾っては袋に入れる単調な作業の魔力に囚われ、手と目はしっかり働きながらも意識はどこか遠く‥‥白昼夢の世界へ彷徨い出す。
そんな心地よい霧に包まれた意識の中に、突然耳障りな悲鳴が響きわたった。
「ぴぎゃあぁぁっ!!!」
その声に、全員が一斉に我に返り、そちらを見る。
シオンが畑の周囲に仕掛けていたライトニングトラップに、1匹のインプが引っかかっていた。
「よし、あいつを生け捕りにするぞ!」
隠し持ったスリングを取り出し、森写歩朗が地面に落ちて悶えているインプに駆け寄る。
ところが、どこに隠れていたのか、仲間の危機を見て取ったインプ達が一斉に襲いかかってきた!
「うわあっ!?」
さすがに、5匹いっぺんに襲いかかられては堪らない。
森写歩朗は思わず守勢に回る。
そこへ、シュネーのオーラショットが命中し、1匹が吹っ飛ばされた。
イレクトラがボロ布でカモフラージュした破邪の剣を抜き放ち、手当たり次第に斬り付ける。
シオンも手にした杖で、ペシペシと懸命に殴りつけた。
体勢を立て直した森写歩朗も、銀の礫をスリングにセットして狙いを付けるが‥‥なかなか当たらない。
「なに、石ならいくらでもある!」
数で勝負とばかりに、足元の石を拾って直接投げつけた。
「皆さん、どいてー!」
イグニスの声が響く。
彼は、イレクトラが用意していた投網をインプ達の上に投げかけた。
あまり上手くは広がらなかったが‥‥それでも、彼等の手足をからめ取るには充分だった。
かくして、ロープで縛られ依頼人の前に引き出された、インプが6匹。
「まったく、悪戯ならハロウィンの日に大いにやってほしいものだ。ただし、度を超さない程度に、だが」
シオンが腕組みをして彼等を見下ろしている。
「さ〜て、どうするかね?」
森写歩朗は楽しそうに指をバキボキと鳴らした。
その音と表情に、インプ達は震え上がる。
「この子達、話は通じるのかしら?」
シュネーがインプ達の顔を覗き込む。
「通じないなら、二度と近寄りたくなくなるように酷い目に遭わせた方が良いわね。野生動物は人を恐れるくらいでないと生きていけないわ」
その言葉に、インプ達は一斉にブンブン首を振る。
どうやら、こちらの言う事はわかるらしい。目を潤ませて、お願いポーズをとっている。その姿はお世辞にも可愛いとは言えなかったが‥‥。
「こんなひどい悪戯をするから、こういう目に遭うんだよ?」
イグニスが説得を試みる。
「二度としないと誓うなら、逃がしてあげても良いけど‥‥」
カクカクカク。首を縦に振る。
「その前に、石拾いを手伝ってくれないかな?」
カクカクカク。
「‥‥さて、信用しても良いものかね?」
イレクトラが疑わし気な目でインプ達を見つめる。
お願いポーズで見返すインプ達‥‥。
「まあ、ええだろ」
依頼人が頭をかきながら微笑んだ。
「どれ、ひと仕事してもらうだかね」
ロープを解かれると、インプ達は一斉に畑に広がった。
そして、ものすごい勢いで石を拾っていく。たちまち、畑の6ヶ所に石ころの小山が出来上がった。それでも、全体から見ればほんの一部ではあったが。
「‥‥負けてはいられないな」
イレクトラが畑に入ると、他の者も続いて石拾いを再開する。
「なあお前ら、どうやって石と土、混ぜた‥‥」
だが、森写歩朗が訊ねて振り返った時、今までそこにいた筈のインプの姿はなかった。
見渡せば、6匹全部、畑から消え失せている。
「あ、あそこ‥‥!」
シュネーの指差した先には、一目散に森に逃げ込む6つの黒い影が‥‥。
「す、素早い‥‥!」
シオンは呆然とその姿を見送った。
「まあ、仕方ないわな。奴等も少しは懲りただろうし‥‥それよりも、残った石を何とかせんとなあ」
依頼人の言葉に、一同は気を取り直して作業を再開した。
翌日からはインプに襲われる心配もなくなり、イレクトラは愛馬に鋤を引かせて土を掘り起こし、大きな篩にかけて石を取り除いていった。
勿論、仕事のご褒美に好物や良質の飼葉を与える事も忘れない。
「よく働いてくれたね、ご苦労さん」
「‥‥あら? この銀の石‥‥あ、ここにも」
シュネーが見付けたそれは、森写歩朗が投げた銀の礫だった。
こうして、単調作業から襲い来る睡魔と戦い、慣れない作業から来る筋肉痛と戦い、拾っても拾っても果てしなく出てくる石ころと戦いながら、日々は過ぎて行った。
今日も明日も明後日も、彼等はただひたすら石を拾う。
この苦行にも似た仕事を自ら買って出た彼等は、勇者だった。
勇者の魂に幸いあれ。
そして‥‥お疲れ様でした☆