【凄腕の剣士】貴婦人の探し人
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:11月08日〜11月15日
リプレイ公開日:2006年11月15日
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●オープニング
――颯爽と森に現れては優麗な剣捌きで人々の窮地を救い、名も告げずに森へ消える凄腕の剣士。
その噂はキャメロットまで広がり囁かれるようになっていた。
どうやらキャメロットから2日程度の広大な森に凄腕の剣士は現れるらしい。
しかし、光輝の噂に彩られる剣士には不穏な噂も流れるものである。
――その人物とは何者だろう?
凄腕剣士の正体を突き止めるべく、数名の騎士が王宮から派遣され、ギルドに姿を見せる事となる――――。
その日の午後、冒険者ギルドをひとりの青年が訪れた。
「‥‥ボールス卿‥‥どうしたんですか?」
受付係の声に、中にいた者達が一斉にそちらを見る。
円卓の騎士、ボールス・ド・ガニス。
だが、普段着の彼は、そうと言われなければ誰にも気付かれないような、あまり目立たない存在だった。
「円卓の方々は、皆さん出払っていらっしゃるものと‥‥あの、例の人探しに」
「ええ、私もこれから出向くところなのですが‥‥」
ボールスが答える。
「その前に、少し調べたい事があるのです。最近の事件の詳しい報告書を見せて頂く事は出来ますか?」
「あ、はい、それは構いませんが‥‥あまりきちんと整理してないので、その‥‥」
受付係は恐縮しながら頭をかく。
保管庫に案内されたボールスは、丸めた羊皮紙が乱雑に積み上げられた棚の様子に苦笑しながら軽く溜め息をついた。
「‥‥なるほど‥‥」
「あ、あの、比較的新しい物は、この辺りに!」
山積みになっていた。
ボールスが保管庫に姿を消して暫く後、ひとりの貴婦人がギルドを訪れた。
「あの‥‥人を探して頂けませんこと?」
貴婦人は、とある田舎貴族の息女で、共を連れて近所の森を散策している時にモンスターに襲われたと言う。
それを、どこからともなく現れたひとりの騎士に助けられたのだと‥‥。
「その殿方は、お名前も告げずに去ってしまわれました。わたくし、どうしても今一度お会いしたいのでございます」
婦人は、僅かに頬を赤らめて付け加えた。
「お会いして‥‥きちんとお礼を申し上げたいのでございます」
その様子を見る限り、ただ単に礼を言いたいだけ、ではなさそうな雰囲気ではあったが。
最近よく耳にする凄腕の剣士。
恐らく『彼』に違いない。
同じ人物を思い描いたのであろう、いつの間にか保管庫を出て話を聞いていたボールスが口を開いた。
「その、人探し‥‥私にお任せ頂けませんか?」
「その彼って‥‥あっぱり、あの方、ですよね?」
貴婦人が帰った後、まだ店に残っていたボールスに受付係が訊ねる。
「ええ、恐らく」
「それで、その‥‥見付けたら、どうされるんですか? 国王陛下は捕らえろと仰せですよね?」
だが、ボールスは彼の従弟、言わば身内だ。
「‥‥とにかく、本人に会って、話を聞いてみない事には‥‥」
ボールスは、室内に灯る灯りの、揺れる炎を見つめていた。
「罪を犯した事が事実なら、それは償わなければなりません。しかし‥‥私は信じています。彼の、潔白を‥‥」
だが、ボールスの心もまた、僅かではあるが‥‥その瞳に映る炎のように揺らいでいた。
●リプレイ本文
依頼人の貴婦人を乗せた馬車を真ん中に、冒険者達の一行が街道をゆっくりと進んでいた。
「ボールス卿お久しぶりですね〜。爬虫類はお好きになられましたか〜?」
先頭を行くユイス・アーヴァイン(ea3179)が、体に巻き付けた蛇の頭を傍らのボールスの前に差し出す。
「ウチのコはこんなに大きくなりましたよ〜」
目の前に突き出された蛇に顔を仰け反らせながら、ボールスは苦笑する。
「本当に、随分大きくなりましたね。ただ、我が家では蛇にはご縁がないようで‥‥」
まだ慣れない、という事らしい。
「そういえば、ハロウィンの時は息子さんは大丈夫でしたか?」
クリステル・シャルダン(eb3862)が、心配そうにボールスの顔を覗き込んだ。
彼の息子は、ハロウィンのドサクサでグレムリンのオモチャにされていたのだが‥‥。
「ええ、町外れで置き去りにされたようで‥‥大声で泣いていましたので、すぐに見つかりましたよ」
「よかった、ちょうどお手伝いに行けなくて、心配しておりましたの」
「ありがとうございます。ただ、その後のパーティは結局お流れになってしまいましたが‥‥聖夜祭の時にも、何か出来ると良いですね」
「‥‥アーサー王に仕えるにはどうしたいいのですか‥‥?」
女学生の格好をした大宗院透(ea0050)が唐突に切り出す。
「陛下に‥‥ですか」
ボールスは少し考えてから答えた。
「私は騎士の事しかわかりませんが、戦場で功を立てるのが一番の近道でしょうね。でも、決まった道はないと思いますよ。己を磨いていけば、黙っていてもいずれは陛下のお目に留まるでしょう。ただ‥‥」
「ただ‥‥?」
「あなた方冒険者には、あなた方にしか出来ない事があります。今でも充分、陛下のお役に立っていると思いますよ」
「‥‥そうでしょうか‥‥」
少し遅れて歩く凍扇雪(eb2962)が誰にともなく冗談を飛ばした。
「いくら人助けをしてるといっても、モンスターがうろつく森の中をふらふらと彷徨っているんですからねぇ。 不審者ですよね、不審者」
その言い分に、馬車の中から貴婦人が顔を覗かせて抗議する。
「あの方は不審者などではありませんわ! それはそれは、ご立派で、お強くて、素晴らしい方です!」
必死の面持ちで抗議する貴婦人に、雪は冗談ですよ、と肩をすくめ、彼女には聞こえないように呟いた。
「やれやれ、美形って得ですね、うらやましい」
「ねえ、その人って、どんな感じだった? どの辺が格好よかったの?」
愛猫たちと共に馬車に乗り込んだデメトリオス・パライオロゴス(eb3450)が、貴婦人に問いかける。
「ええ、それはもう、とにかく夢のようなお方でしたわ‥‥どんな感じと言われましても‥‥」
本人も、あまりよく覚えていないらしい。
それにしても、呑気な集団だ。
前を行く一行の会話を聞きながら、殿を努めるシルヴィア・クロスロード(eb3671)は軽く溜め息をつく。
昼間とは言え、街道の旅に危険は付き物。いつ賊やモンスターに襲われるかもしれないというのに‥‥。
一見あまり強そうにも見えないが、円卓の騎士の存在は大きいようだ。
自分も、そこにいるだけで人々に安心を与えられるような騎士になりたい。
シルヴィアはそう思いながら馬を進めた。
町に着いた最初の日、冒険者達は近所で噂の剣士が目撃されていないか、それぞれ宿屋や酒場など人の集まりそうな場所で聞いて回る事にした。
「さる貴婦人が、森で別れた騎士を探してるんだけど、見かけた事ないかな?」
シャンピニオン・エウレカ(ea7984)の問いに、酒場の主人が答えた。
「ああ、だいぶ噂にはなってるが‥‥町に姿を見せたって話は聞かないぜ?」
どこで訊いても、反応は似たようなものだった。
どうやら、彼は森から出てくる事はないようだ。
「王妃様と一緒に出奔したという噂であるが、少なくとも今は一緒ではないようであるな」
もっとも、と、リデト・ユリースト(ea5913)は付け加える。
「それが、大方の予想通りの人物だとしての話であるが」
「依頼人がモンスターに襲われたのは、この辺りですね」
シルヴィアが手にした地図を広げ、周囲を見渡す。
森の中は静まり返り、鳥の声ひとつしない。
「『探し人』が『騒がしい人』だったら、楽なのですが‥‥」
依頼人に借りたドレスを着た透が、ぼそりと呟く。
「この近くに、古い砦の跡があるって聞いたんだ。上から探してみるね!」
そう言うと、デメトリオスは木々の間をぬってリトルフライで上空へ舞い上がった。
「私も上から探すである」
リデトも後を追う。
残った者達は地上の痕跡を探して歩いた。
「森の中を動き回るのって、あまり得意じゃないんですけれどね〜。ですけれどまぁ、情報は自分の足でしっかり確かめませんと〜」
ユイスはあくまでマイペースに、しかし丁寧に痕跡を探す。
だが、相手は余程注意深く動いているのか、先に貴婦人がモンスターに襲われたというその場所にいくらか踏み荒らされた跡が残るばかりで、他には目立った痕跡は見つからない。
リデト達が見付けた砦跡にも人の気配はなかった。
ただ、僅かに残った焚き火の跡から、今朝方まで誰かがここにいたらしい事はわかったが‥‥。
「今朝までここにいたのなら、まだそう遠くへは行っていないかもしれませんね」
シルヴィアはそう言って、ボールスを見た。
「目当ての彼かどうかはわかりませんが‥‥お願いできますか?」
「ボールス様には危険な役をお願いすることになってしまいますけれど‥‥」
申し訳なさそうに見上げる侍女役のクリステルに、大丈夫ですと声をかけると、賊に扮したボールスは傍らの雪に目で合図を送った。
「ちょっと失礼!」
その合図に、雪は目の前にいたシャンピニオンを鷲掴みにした!
「キャアァッ!!???」
まさか自分が標的になるとは思ってもみなかったシャンピニオンは、本気で悲鳴を上げる。
「このシフールの命が惜しけりゃ、金目の物を置いていきな!」
雪がドスの効いた声で凄んだ。
「盗賊などに、良いようにはさせません! 離しなさい!」
剣を抜いて飛び出してきたシルヴィアの前に、ボールスが立ち塞がり、その攻撃を軽く受け止める。
「キャアアァァッ!! 助けてぇぇッッ!!!」
貴婦人役の透は喉も裂けよとばかりに思い切り叫んだ!
果たしてその声は、噂の剣士に届くのか!?
「‥‥来ないであるな」
「‥‥うん、来ないね」
その様子を上空から眺めていたリデトとデメトリオスは、お互いに顔を見合わせる。
眼下ではシルヴィアとボールスの剣戟が続いていたが、身軽に攻撃を避けまくるボールスに対して、シルヴィアは既に息が上がりかけていた。
「もう一度‥‥叫んだほうが良いでしょうか‥‥」
透がそう言って傍らの侍女に扮したクリステルに顔を向けた時、背後の木陰から声がした。
「‥‥何をしている」
その声には、僅かに呆れたような響きがあった。
「――――!!」
シルヴィアは手を止め、声のした方へ向き直る。
ボールスはそんな彼女の前に出て、剣を握り直した。
「私を誘き出す為の芝居か、ボールス?」
声と共に姿を現したのは‥‥。
「ラーンス‥‥!」
ボールスは剣を納めると、従兄の前に歩み寄った。
「やはり、あなたでしたか」
「君も、私を探していたのだな」
ボールスは黙って頷く。
対峙したまま、二人は石像のように動かない。
重苦しい沈黙に耐えかねたのか、クリステルが口を開いた。
「ラーンス様、ボールス様がご自分の部下とではなく、 私達冒険者とこちらに来た理由はおわかりでしょう? ボールス様はラーンス様を信じていらっしゃるからこそ、 会いに来ましたのよ。 せめて理由くらいは聞かせて下さってもよろしいでしょう?」
「そうである。卿を信じる者は大勢いるであるよ。一人で逃げる事はないである」
上空から舞い降りたリデトがラーンスの目の前に漂う。
「卿が何を成そうとしてるのか従弟殿に言う事は出来ないであるか。 この場の事はこの場の事、私達は口外しないである」
更に、剣を納め、騎士の礼をとったシルヴィアも迫る。
「貴方と王妃様の真意が何処にあるのか私には分かりません。 私は貴方の事を良く知ってはいません。ですが騎士としての行いは耳にしています。 私は騎士としての貴方を信じます。私達では貴方の助けになれませんか?」
「円卓の騎士様にはボクも今まで何人かと会った事あるけど、皆素敵な人ばかりだったの」
雪の手から漸く解放されたシャンピニオンも畳みかける。
「ラーンス様もその一人だもん、王様を裏切ったりなんかしてないって、信じたいんだ。この出来事の裏で蠢いてる何かと、ボク達と一緒に立ち向かってくれるよね!?」
女性陣総出で言葉の袋叩き。
武では敵う者のない彼も、この攻撃にはたじろいだ。
「‥‥何から、どう、答えれば良いのか‥‥」
逡巡するラーンスに、今度は雪が問いかける。
「王妃とラーンス卿が失踪してから結構日がたってますが、王妃は見つけられたのですか? 女性一人でこれだけ長い間、森の中を彷徨い続けられるとは思えないんですよね」
その問いに、答えはなかった。
「‥‥まあ、信念を持って行動している方には何を言っても無駄ですしね。 貴方が国の敵とならない事を祈りますよ」
雪は首を横に振った。
「確かに、何を言っても聞いては下さらないのでしょうね」
ボールスが口を開く。
「ひとつだけ、聞かせて下さい。私は‥‥私達は、貴方を信じても良いのですね?」
その問いに、ラーンスは黙って頷いた。
「‥‥わかりました。陛下にも、そのように申し上げましょう」
「すまない」
ラーンスはそう言うと、きびすを返して森の奥へ戻ろうとする。
「はてさて〜、何か忘れているような気が〜?」
ユイスの言葉に、透が本来の目的を告げた。
「‥‥先日助けたご婦人が、お礼を言いたいそうです‥‥これも仕事なので会って頂けないでしょうか‥‥」