さる さる さる さる !!
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月10日〜11月15日
リプレイ公開日:2006年11月16日
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●オープニング
その日、キャメロットの船着き場から陸揚げされたのは‥‥
「ウキー! ウキャキャ! キャー!」
真っ赤なお尻の、おサルが7頭。
彼等はこのイギリスで見世物にする為に、遠い異国から海を渡って遠路はるばる連れて来られたのだった。
もちろん、この国に来たのは彼等の意思ではない。
そんなわけで、彼等は決意した。
故郷の山に戻るのは最早不可能。ならばこの新しい土地で新たなサル山を築くしかない。
檻が港へ降ろされる瞬間、彼等は一斉に四方を囲む壁の一辺に向かって体当たりした。
ごろん、ごろん! がったん、ばき!
檻は転がり、壊れた。
「ウッキー!」
港を駆け抜けるサルの集団を止められる者は誰もいなかった。
「‥‥まだ、見つからないのでしょうか‥‥?」
サルを仕入れた飼い主‥‥いや、雇い主と言うべきか、売れない曲芸団の団長と名乗るその男は、心配そうに受付係に尋ねた。
「あの子達が見つからない事には、借金も返せません。もちろん、こちらの依頼料も」
現在、無料で引き受けてくれるという篤志を募って、サル探しが行われていた。
「ですが、手がかりもない、どこへ行ったかも全くわからないのでは‥‥」
探しようがない。
目の前の男の困り果てた様子に、とりあえず依頼を受理してはみたものの、受付係もそれが成功裏に終わるとは思っていなかった。
殆ど匙を投げられた団長は、がっくりと肩を落とした。
「あの子達に芸を仕込めば、良い客寄せになると思って、無理な借金までして買い付けたのに」
レインボー戦隊ウッキーセブン。
七色の首輪に七色のベストを着た、小さな曲芸戦士。
ウケる。これは絶対にウケる!
船の中でも特訓を繰り返し、既に全員が『お手』と『おまわり』を完璧にこなせるまでになっていた。
彼等との信頼関係も築けたと、そう思っていたのに‥‥。
その時、誰かが扉を開けて入ってきた。
「おや‥‥モーリーさん?」
モグラ似のオジザマ、モリソン・モーリー。彼の畑で、また何か起きたのだろうか?
「そうなんだわ、今度は得体の知れない生き物が現れてな、リンゴ畑が大損害なんだわ」
「リンゴ‥‥そんなものまで作ってるんですか?」
「まあ、多角経営っちゅうヤツだわな。それはそうと、あれは何じゃろなあ、ゴブリンでも、インプでもない、茶色い毛にツルツルの顔、真っ赤なお尻で‥‥」
「そ、その子達!」
団長はモーリーさんに掴みかからんばかりの勢いで迫った。
「その子達は、首輪をして‥‥ベストを着ていませんでしたかっ!?」
「あ、そうだわ、それもおかしな事だわ〜と‥‥」
「み、見付けたあぁぁぁっ!!!」
団長はモーリーさんを抱きしめ、キスの雨を降らせた‥‥。
●リプレイ本文
「こんな依頼だなどとは聞いてなかったんだが‥‥」
これから楽しいサル捕り合戦が始まると言うのに、レイモンド・ケイン(eb8668)は浮かない顔で溜め息をついた。
騙された。楽な依頼があると聞いたのに。
「よっ! がんばろーぜっ!」
騙した(?)張本人、バルスィーム・ナァナーム(eb8461)が、人の気も知らずに後ろから背中をどつく。
「曲芸団の猿だったんだよな。なら芸で対決とかっ」
「そうですね、『お手』や『おまわり』が出来た位で一人前の戦隊気取りなど、片腹痛い猿達です」
ルナ・ルフェ(eb7934)は、戦隊物については一家言あるらしい。
「ぜひともとっ捕まえて、戦隊物の作法をイチから叩きこんでやりたいところですわ」
「ふむ、我々も戦隊の役をするのか。ならば私は青を担当しよう」
クールな外見に似合わず、意外にノリが良いのはローガン・カーティス(eb3087)だ。
「ポージングは話し合っておかないとな」
「エンデはまるごとくまさん着て、ピコピコ踊って誘うデスぅ」
と、エンデール・ハディハディ(eb0207)。
「では私は、白いマフラーを風に流し、戦闘馬に乗って颯爽と登場してご覧に入れますわ」
九紋竜桃化(ea8553)はホワイト担当のようだ。
「ワシは芸事向きのきゃらではないからの、しりあすに罠係りを務めたいと思うちょります」
依頼人から大きな桶と薪の束を受け取ったグリーン・ロッド(eb8610)は、早速今は何も作っていない畑の真ん中で湯を沸かし始める。
暖かい温泉でサルの気を引こうという作戦だ。
「頑張ってサルを捕まえよう〜!」
サスケ・ヒノモリ(eb8646)は、手伝いに来た留菜流笛と共に、両手に手桶を持つと井戸まで水を汲みに走った。
「モーリー殿の話では、朝と夕方によく現れるそうだが」
仲間が罠の準備をする間、リンゴ畑ではローガンと桃化がサルの襲撃に備えて見張りをしていた。
焚き火に手をかざし、時々インフラビジョンで周囲の様子を探る。
「猿の曲芸は、故郷で良く目にしましたが、実際に仕込む方は、大変でしたのですね」
桃化は幼い頃に見た猿回しを思い出しているようだ。
「故郷に戻れないのは気の毒だが、慣れない土地で冬を越えるのは難しい。このイギリスの地で一流芸人として楽しく暮らせるとよいのだが」
「そうですわね。その為にも、きちんと調教してさしあげないと」
桃化は手にした鞭をビシッと鳴らした。
一方、畑ではサル温泉の準備が着々と進められていた。
依頼人からありったけの鍋と釜を借りて湯を沸かす。
薪にランタン用の油をぶちまけたので、火力は強い。
人海戦術で、沸かした湯を次々と桶に移していった。
「真面目な力仕事ですが、お楽しみはやることをやってから心置きなくするべきですね」
寒風吹き荒ぶ中での作業だが、ルナの額には大粒の汗が光っていた。
湯桶の中には熱した石が入れられ、更に全体をテントですっぽりと覆う。湯が冷めないようにとの、サスケの発案だ。
「あっためると良い匂いがするデスぅ〜」
エンデが天護酒を半分ほど、ドボドボと桶の中に入れる。
酒風呂だ。甘い香りが周囲に広がっていく。
テントの前にはいくつかのリンゴと、甘い味の保存食。残った酒も並べられた。
「ほらほら、おサルさん来ないとエンデが食べちゃうデスよ〜」
その声に誘われたのか‥‥畑の周囲に広がる森の中から、サル達が姿を現した。
「現れたようだな」
ローガンと桃化は焚き火の火を丁寧に消すと、仲間の元へ向かった。
「よーし、来た来たっ」
バルスィームはテントの裏に隠れて様子を窺う。
だが、サル達は人の気配を察してか、警戒して一定の距離以上には近付こうとしない。
「やっぱり芸対決しかないのか!?」
サル達に芸人魂があるなら、どんちゃんやってたら必ず来るはず!
「では、まずは私が!」
ルナがすっくと立ち上がり、何もない畑に向かって大声で呼びかけた!
「さあ、ここで素敵なゲストよ!」
そこには、小さいお友達と大きいお友達がいた。何も見えないが、確かに観客は存在するのだ!
「さーみんな! 声を揃えて‥‥ウッキーウッキーウッキーセブーンっ! 」
ルナは観客に向かって首を傾げ、片手を耳に当てる。聞こえないぞ〜、のポーズだ。
「どうしたー声が小さいぞー! 恥ずかしがらずにさあ! レインボー戦隊ウッキーセブンー!」
「‥‥ウキャ?」
サル達が反応した。
レインボー戦隊ウッキーセブン。それは自分達のユニット名だ。
呼ばれている。
行かねばなるまい!
サル達はおずおずと前に出て、一列に並ぶ。
「さあ、ウッキーセブンの皆さん、今日はどんな芸を見せてくれるのかな!?」
その声にサル達は輪になると、手を叩きながらグルグルと回り始めた。
どうやらこれが『おまわり』らしい。
その時、どこからともなく現れる馬上の戦士!
戦士は白いマフラーを風になびかせ、手にした鞭で大地を叩く!
「甘い!」
ビシイッ!
「それがあなた達の自慢の芸なら、私達の敵ではないわね。一流の芸とは‥‥」
「こういうものさっ!」
マスカレードで顔を覆った赤い戦士が、光る球を手に立ち上がる!
「見よ、ひっさーつ! ライトDEジャグリング!!」
まんまな技名だが、ツッコミ所はここにあらず!
赤い戦士は光球を頭上に放り投げる。
だが、どうした事か!
「こ‥‥光球が‥‥落ちてこない!?」
ライトで作った光球は重力の影響を受けない。つまり‥‥上に投げられたそれは、どこまでも上へ飛んでいってしまうのだ!
「し、しまった、これじゃ必殺技が‥‥!」
「諦めるのは早いわ!」
何故か傍らにいたレイモンドの首ったまに抱きつきながら、ルナが叫ぶ。
「何か‥‥何か策がある筈よ!」
「そうです! その光球はまだ生きています!」
先程まで不機嫌に塞ぎ込んでいたレイモンド。
だが、今の彼は先程までとは違う。ハーフエルフに抱きつかれるという試練を経て、彼は今、生まれ変わった!
「ジャグリングを封じられても、私達にはまだ出来る事があります!」
「レッド、お前ひとりを戦わせはしないぞ!」
青いコートを翻した戦士が握り締めた拳を付き出した。
「チームワークが大事なんデスぅ〜」
クマの着ぐるみに身を包んだ小さな戦士が、皆の前でピコピコと踊り出す。
「そ‥‥そうか! ありがとう、みんな! 俺は大事な事を忘れていたぜ!」
レッドは素早く飛び上がり、遠ざかる光球をひっ掴むとブルー目がけて投げつけた!
「ブルー!」
ブルーはそれをキャッチすると、素早くホワイトに投げる!
「ホワイト!」
「ピンク!」
「イエロー!」
レッドの手の中で光球が次々と生まれ、目にも止まらぬ速さで仲間達の間で回される。
クルクルとめまぐるしく動く光球、それをバックに踊り続けるクマ。
その光景に、サル達の目は釘付けだった。
「じゃあ、そろそろ行くぜ! グリーン!」
レッドは最後の光球を踊るクマに投げ、クマはそれを高く掲げるとビシっとポーズを決める!
「緑の森を守るデスぅ! ゲイニングリーンデスぅ!」
「荒野を駆ける白き風!」
馬から下りた戦士は、やはり片手に持った光球を高く差し上げる!
「ゲイニンホワイト!」
「青き炎の旋律! ゲイニンブルー!」
「桃色のミラクル話術! ゲイニンピンク!」
「幸せの黄色いバナナ! ゲイニンイエロー!」
イエローは大きなバナナに変身した!
「燃える芸人魂! ゲイニンレッド!」
名乗りと共にマスカレードを投げ捨てるレッド! その背後に炎が舞い上がる! ファイヤーコントロールを使ったブルーの演出だ! ニクいぞブルー!
「一流の芸人には一流のコダワリがある!」
一列に並んだ6人が、手にした光球を一斉に空へぶち上げる!
「コダワリ戦隊・ゲイニンジャー!!」
ぴっかぁーーーーーーーーっっっ!!!
その瞬間、レッドの体がまばゆい光に包まれた!
光は、瞬きもせずにゲイニンジャーの華麗なる戦いを見つめていたウッキーセブンの目を直撃する!
「ウキーッ!?」
目が眩む! 何も見えない!
そこへ上空から襲いかかる黒い影!
――バッサーッ!
それは、グリーン・ロッドが投げた魚捕り用の大きな網だった。
「ホホホ、大漁大漁♪」
哀れウッキーセブン、一網打尽‥‥。
「皆で協力すれば出来ない事などありませんっ♪」
半分バナナのゲイニンイエローが、ニコヤカに微笑んだ。
だが彼は、夢から覚めた時、激しい後悔に襲われる事になる。
「‥‥アレは私じゃないアレは私じゃないアレは私じゃない‥‥」
「俺は触らなかったぞ?」
結局、サルは入らなかった酒風呂に浸かりながら、サスケが慰めにもならない言葉をかけた。
‥‥かくして、戦いは終わった。
ウッキーセブンは破れた。
蜂蜜酒に漬けたリンゴを手に、頭を垂れて大人しく檻に戻る戦士達。
だが、君達には明日がある!
いつの日か、君達がまた我々の前に姿を見せる日を、見違えるほど成長した君達の挑戦を、我々は待っているぞ!
そしてゲイニンジャーよ!
次の機会にも勝利の女神が君達に微笑むとは限らない!
我々は常に、最高の芸を求めているのだ!
精進せよゲイニンジャー!
戦え、我等のゲイニンジャー!!