【我等3G】3Gの挑戦!
|
■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月17日〜11月22日
リプレイ公開日:2006年11月25日
|
●オープニング
「なっちょらーん!」
朝っぱらから、ジ様のダミ声がギルドに響く。
「近頃の若いモンは、まったくもって、なっちょらん!」
一体何が気に入らないのか‥‥いや、人間、年を取ると何にでも文句を付けたくなるものだ。
特に若者は、いつの時代も老人にとっては『なっちょらん』存在らしい。
「そこでじゃ!」
カウンターの前に顔を揃えた3人のジ様。
「我等3GSが、若いモンの性根を叩き直してやる事にしたのじゃ!」
「すりーじーず‥‥」
3人の、爺さん?
ジャパン語の素養がある糸目の受付係は、目の前のご老人達を見てそう呟く。
「ぐれいと・じぇねれいしょんず・ぎゃざりんぐ、じゃ!」
まだまだ元気いっぱいな、コテコテのジ様がカウンターを叩いて主張する。
「第一線を退いた、一流の引退冒険者だけが入会を許される、名誉ある組織じゃよ、お若いの」
それよりは多少柔らかそうなジ様が、穏やかに付け加えた。
「はあ、それで、その、ご依頼と言うのは‥‥?」
「何じゃ、聞いとらんかったのか!?」
いや、まだ何も言ってませんから、『なっちょらん』以外に。
「わしら、若いモンにちょいと稽古を付けてやろうと思ってな」
真っ白いヒゲをたくわえたウィザード風のジ様が言う。
「ここからちょっと‥‥そうじゃな、1日くらい歩いた所にある洞窟に、宝物を隠したんじゃ」
「だが勿論、お宝に辿り着くまでには、様々な試練が待ち受けておる!」
「と言うかの、わしらがトラップを仕掛けたんじゃよ」
「その試練を乗り越え、見事お宝に辿り着き、根性を見せてみよ!」
「保存食を忘れたなんちゅう、情けないヘマはするでないぞ?」
「諸君の挑戦を楽しみに待っておるぞ!」
‥‥ジ様達はてんでに言いたい事を言い終わると、受付係の制止も聞かずにさっさと出て行ってしまった。
「行ってしまいました‥‥」
3GSというアヤシゲな団体名の他は名前も告げず、依頼料も置かずに。
「その、お宝とやらが報酬の代わりなのでしょうか‥‥」
その時、さっきの老人達のひとり、少し柔らかそうなジ様がこっそりという感じで戻って来た。
「や、済まんのう、あの二人、ノリだけは良いんじゃが」
そう言って、丸めた羊皮紙をカウンターに置いた。
「これは?」
「洞窟の地図じゃよ。トラップの位置や種類が書き込んである‥‥ただし、挑戦者達には見せんでくれよ?」
その地図を見る限り、洞窟はさほど入り組んでもいないし、仕掛けられた罠も単純な物ばかりだ。
「なるほど、これなら初心者でもそう危険はないでしょうね」
「ただ、あの二人と‥‥それにワシも、洞窟のどこかに潜んでおるからの。ほれ、お化け屋敷と一緒じゃわい。そこだけは、何が飛び出すかわからんぞ?」
ジ様は楽しそうに笑いながら、ギルドを後にした。
●リプレイ本文
「ホント、年寄りの冷や水ってこの事ね。 仕方がないから、挑戦、受けてあげるわ」
レイ・カナン(eb8739)が、ぽっかりと口を開けた洞窟の中を覗き込みながら楽しそうに言う。
「宝探しなんてワクワクする。どんなお宝を隠したのかな」
シア・シーシア(eb7628)は荷物からランタンを取り出して灯を付けた。
「敬老精神、慰問」
ぼそりと呟いた佐伯小百合(eb5382)の言葉にイレクトラ・マグニフィセント(eb5549)が頷いた。
「そうさね、全部終わったら爺様達に色々と講義を受けたいね。冒険者の心構えから、探索など行動して行く上での考え方とかな」
「さて、覚悟を決めたら‥‥そろそろ行こうか?」
目の良いシアがランタンを手に歩き出す。
その横にメイスを両手で構えた小百合が並び、レイとイレクトラが後ろに続く。
洞窟は2人で並んでも余裕がある大きさだった。
「覚悟って程のものじゃないけどね。ほら、こんな罠‥‥」
レイが早速、地中に隠すように張ってあるロープを見付け、ひょいと飛び越えて行く。
「ふ、子供騙しね」
暫く行くと、行く手に何かが置いてあるのが見えた。
「‥‥宝箱」
小百合が足を止める。
「まさか、もうゴールって事はないよな?」
シアは歩きながら書き記してきた地図を見る。
そこにはまだ殆ど何も書かれていなかった。
「これも‥‥罠、かね?」
と、イレクトラ。
「一見、罠はなさそうだし‥‥鍵もかかってないな。どうする?」
宝箱を遠巻きにチェックしながら、シアは仲間を振り返る。
「それ、いかにも怪しげじゃない? 油断させておいて‥‥開けたら氷付け、とか」
レイが疑わしそうに言う。
「危険、回避」
「そうさね、やたらに手を出さないほうが良いかもしれない。お宝は最後と、爺様達も言ってたからね」
4人は宝箱を諦めた。
やがて洞窟内の道は僅かに上り坂になり、その勾配は急に角度を増してきた。
しかも、道はまっすぐに続いている。
「これは、もしかして‥‥」
レイが立ち止まり、耳を澄ます。
真っ暗な洞窟の奥から、地響きのような音と、振動が‥‥。
「やっぱり!」
ごろん、ごろん。
期待に違わず、大岩が転がってくる。
「は、走れ! 逃げろ!」
4人は、坂を転がるように必死で走る。
実は、洞窟の幅に比べて岩のサイズはかなり小さかった。
冷静に考えれば、左右によければ簡単に避けられるのだが‥‥4人にそんな余裕はなかった。
曲がり角を目指して、ひたすら走る!
――ズシン、ドーン!
岩は、洞窟の壁に当たって砕けた。
「‥‥はあぁぁぁ〜〜〜」
危うく難を逃れた4人は、暫く立ち上がる事も出来ずに、腰が抜けたようにその場に座り込んでいた。
「‥‥さてと、そろそろ行くかね」
漸く呼吸を整えたイレクトラが立ち上がる。
他の3人も続いて立ち上がった。
「もう、岩は打ち止め‥‥に、してほしいな」
全力疾走など何年ぶりだろう。
シアの心臓はまだ踊っていた。
だが、レイのダメージは更に大きかったようだ。
先程までの余裕はどこへやら、口をきく元気も、走っている間にどこかへ落としてしまったようだ。
「もう少し、休むかい?」
だが、イレクトラの言葉にレイは首を振って歩き出した。
「なかなかの根性だね。でも‥‥」
そっちは反対方向だ。
幸い、岩の追撃はなく、4人は無事に坂を上りきった。
だが、彼等はそこで再び試練に遭遇する。
道が二股に分かれていた。
どちらかは、ハズレだ。
「‥‥さて、どっちに行く?」
シアの言葉に、イレクトラが懐から水晶のダイスを取り出した。
「これでも振ってみるかね?」
「お、ダイスか。じゃあ、偶数が出たら右だ」
カランカラン‥‥2だ。
「右だな」
だが暫く行くと、そちらは行き止まりになっていた。
4人は仕方なく引き返す。
が、いつまで経っても先程の分かれ道が現れない。
既に行きと同じ程度、歩いている筈なのだが‥‥おまけに、道が下り坂になってきた。
「‥‥不覚」
岩に追われて走った道だ。
「おかしい‥‥幻覚にでもかかったか?」
シアが、先程分かれ道があったと思しき石の壁を丹念に調べる。
――と、その壁が突然グラリと傾いた!
「危ない!」
イレクトラが咄嗟にシアの腕を引っ張る。
――ズシイィィン!
石の壁は、砕けて散った。
その向こうに、先程の分かれ道。
「‥‥ストーンウォールか‥‥」
敵は地のウィザードらしい。
洞窟の中では厄介な相手だ。
しかも、この近くにいる。
「気を付けろ、いきなり足元に穴があくかも‥‥うわっ!?」
言ってるそばから、足元の地面が消える。
「ふぉっふぉっ、まぁ〜だまだじゃのう〜」
どこからか、ジ様の楽しげな声が響く。
「油断大敵」
穴に尻餅をついたシアに手を差しのべながら、小百合がぽつりと言った。
「ほ〜れほれ、こっちじゃ、早く来んか〜い!」
今度は別のジ様だ。
「‥‥やれやれ、爺様の相手も楽じゃないさね」
4人は、左の道‥‥ジ様達の声がした方向に、慎重に進む。
上下左右に注意を払い、ジ様達の襲撃に備えつつ、罠を見破って行く。
罠自体は他愛のないものばかりだったが、なかなかに神経のすり減る作業だ。
「‥‥私、そろそろ限界かも‥‥ほら、あそこに幻覚が」
歩き疲れたレイが指差すその先には‥‥籠に盛られた果物の山。
「‥‥いや、幻覚じゃない。幻覚ではないが‥‥」
どう見ても、罠だ。
だが、レイは果物の甘い香りに引き寄せられるように、フラフラと近付いていく。
手を伸ばしかけて‥‥止めた。
こんなあからさまな罠、引っかかる訳にはいかない。
そう、こんな罠にはきっと、一撃で致命傷クラスの仕掛けがあるに違いない!
「私は‥‥っ」
レイは伸ばした手を後ろに引っ込めると、一歩、また一歩と誘惑から遠ざかる。
「こんな所で、倒れる訳にはいかない‥‥!」
「よし、偉いぞレイ!」
「よく踏ん張ったね」
「立派」
仲間の賞賛を浴び、レイは元気を取り戻したようだ。
暫く行くと、広場のような場所へ出た。
他へ続く道はない。
ここが終着点のようだ。
「‥‥宝箱」
またしても、小百合が発見した。
今度は本物のようだが‥‥。
「ふぉっふぉっ、ようここまで辿り着いたもんじゃ」
広場にジ様の声が響き渡る。
「じゃが、お宝は渡さん、行くぞい!」
いつの間にか、ジ様達は4人の後ろに回っていた。
ファイターのジ様が手にした木剣でイレクトラに打ちかかる!
咄嗟の事に、イレクトラは反応出来なかった。
――バキッ!
「襲撃対応」
小百合がその間に割って入り、メイスでジ様の剣を弾き返す。
「うおぉっ!?」
その反動でジ様はよろけ、尻餅をつきそうになる。
「無理禁物、腰あぶない」
小百合はジ様の骨ばった手をとり、引き戻してやった。
「むう、ならばワシが相手じゃ!」
今度はレンジャーのジ様が挑んできた。
「あの的の中心の、より近くを射抜いた者の勝ちじゃ」
と、遙か遠くの的を指差す。
「その勝負、私が受けようじゃないか。胸を借りるつもりで、挑ませて貰うさね」
イレクトラが放った矢は、的の真ん中近くに命中した。
「ほう、なかなかやるのォ。じゃが、ワシの腕はそんなもんでは‥‥」
だが、弓を構えるジ様の腕は震えていた。
的も、ぼんやりと霞んで見える。
「‥‥はあ、トシには勝てんのォ‥‥」
ジ様は、寂しそうに俯いた。
「じゃあ、魔法対決は僕とレイが相手かな?」
シアの言葉に、ウィザードのジ様は力なく笑って首を振った。
「あ〜、ダメじゃ。わしゃ、もう魔力がスッカラカンじゃ」
‥‥かくして、あっけないほど簡単に、勝負は決した。
「さあ、約束じゃ、宝箱を開けるが良い」
「安心しろ、鍵以外に罠などかかっとりゃせんわ」
「鍵開けのスキルくらいは持っとるんじゃろうな?」
ジ様達の声援(?)を受けて、シアが箱の鍵を開ける。
中から出てきたのは‥‥。
「か、紙切れ?」
「バカモン、よう見んかい!」
よく見れば、4枚の紙切れにはそれぞれに数字が書かれていた。
「それが当選番号じゃ。それぞれ、好きな数字を選ぶが良い」
言われるままに、4人は数字を選んだ。
「よし、選んだな? では、プレゼントの発表じゃ! 当選番号‥‥1番!」
小百合には、若木のツリー・ラッキースター・ヒイラギのリースが入った聖夜の飾り付けセット、イレクトラにはサンタクロースハット・サンタクロースローブ・真っ白なつけヒゲのサンタクロースセット、シアにはまるごとトナカイさん・真っ赤な付け鼻・サンタクロース人形のトナカイセット、レイにはダグザのマント・スウィルの杯・まるごとえんじぇるの食い倒れパーティーセットが、それぞれ当たったようだ。
「どうじゃ、これからの季節に役立つ物ばかりじゃろう!」
‥‥確かに、これからの季節にはピッタリのアイテムだ。
だが、役に立つかどうかは‥‥。
「それからな、これは頑張ったご褒美じゃ。少ないが、何かええモンでも食べると良い」
そう言って、お小遣いをくれた。
「しかし、よく最初の宝箱を開けんかったのう」
冒険者と元冒険者は、洞窟の広場にテントを張り、焚き火を囲む。
「あれには罠も何もない、この洞窟の地図が入っとったんじゃが」
「それにお嬢ちゃん」
と、レイに先程の果物籠を手渡す。
「これも、罠でも何でもなかったんじゃよ。じゃが、よく我慢したな。これはご褒美じゃ」
「ほんと!? これ全部、食べて良いの!?」
一方では、シアとイレクトラがジ様相手に話に花を咲かせていた。
「楽しいジ様達だ。僕も引退したら入りたいな」
「私は軍船乗りだが、冒険者としても、先達の士から学ばなければいけない事は一杯あるのさね」
「ほう、わしらの話が聞きたいと? 長いぞ? 終わるまで、ここから出さんぞ?」
「望む所だ」
「むう、その言葉遣いがなっちょらんと言うのじゃ!」
熱いお茶をすすりながら、小百合がぼそりと呟いた。
「‥‥ためになる」