【揺れる王国】囚われの騎士

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:12月01日〜12月06日

リプレイ公開日:2006年12月05日

●オープニング

「王妃が見つからないのはラーンスといるからに違いない。あやつはグィネヴィアを余から奪ったのだ。騎士道を踏みにじるとは円卓の騎士としてあるまじき行為!」
 戦の決意を高めるアーサー王に、ラーンス派は釈然としない面持ちだった。
 王が本気で勢力を募れば、近隣から多くの騎士や公爵、伯爵が集まる事だろう。
 しかし、ラーンスは本当に罪人なのか? 様々な憶測が流れるものの、未だ深い霧の如く全容は見えていない‥‥。
「私達はラーンス・ロット様が無実だと信じている!」
「あぁ、ラーンス様は我々を引き連れて従えたまま王妃とお会いしていたんだ。王妃とラーンス様は一線を踏み越えてはいない!」
「それよりもアーサー王だ。一線を踏み越えた確証もなくラーンス様を罪人扱いとは!」
「そうだ! ラーンス様にのみ怒りの矛先を向けるのは、どうかしている!」
 ラーンスを支持する勢力は、王妃と騎士は一線を踏み越えてはいなかったと主張すると共に、ラーンス・ロットへ怒りを露に向けるアーサーへの不信感を募らせていた。
 この問題は王宮内に注ぎ込まれた濁流の如き勢いで、瞬く間に広がったのである。
 ――仕えるべき王を信じるか?
 ――無実の罪を着せられたラーンス・ロットを信じるか?
 森を彷徨う凄腕の剣士も予想通り、かの騎士だった。
 ――私の行為は決して王への信義、王妃への忠節、この国への忠義を裏切るものではない。
 私は、私の信念に基づき、真実を証明するまでは王宮には戻らぬ――――。
 ラーンスは冒険者にそう答えたという。
「しかし‥‥ラーンス様は騎士を切り殺したとも聞いたぞ?」
「否、あれは騎士として卑怯にも不意打ちを行った故、咄嗟の対応だろう。ラーンス様は責められる者ではない」
 事態は深刻な状況へ向かっていた。
 ラーンス・ロット派は王宮から離れ、信じる者が退いたと噂される『喜びの砦』へ向かおうと準備を始めたのである。
 喜びの砦へは10日以上の日数が掛かるらしいが、彼らの意思は固いものだった。 
 このままでは王国は二つの勢力に分断されてしまう。この事態を鎮められるのは――――。


 一方、ボールス家で猛威を振るった風邪の嵐は、漸く収束に向かおうとしていた。
「王子、お出掛けですか‥‥こほっ、けほん」
 風邪の治りかけた老執事が、外出の支度をする主人に声をかける。
「ええ、例の捜索の報告も揃った様ですし、そろそろお話を聞いて頂けるかと思いまして」
 ラーンスは少なくとも騎士道に反する事はしていない、償うべき罪があるなら償いはされるべきだが、ともかく本人の帰還を待って欲しい‥‥そう、王に報告するつもりだった。
 だが、王はボールスに多くを語る事を許さなかった。
「しかし、あの方も諫言に耳を貸さぬようでは‥‥先が思いやられますな」
「仕方がありません、心労が続いていらっしゃるのですから」
 穏やかに微笑むボールスに、老執事は溜め息をつく。
 最も信頼されてしかるべき部下の一人が、門前払いも同然の仕打ちを受ける‥‥普通なら叛意を抱いても不思議はない。
 この人はどこまで人が好いのか。
 それが仇にならなければ良いが‥‥。
「では、後はいつもの通りにお願いしますよ」
 そう言ってマントを羽織り、見送りに出てきた息子の頭を軽く撫でる。
「エル、今日はすぐに帰ってきますからね」
「ほんと? じゃ、えうとあそぼーね! やくそく!」
「はい、約束」
 指切りをして、ボールスは玄関を出ようとした。
 と、その時‥‥。 
「ワンワン、ワン!」
「ガルルル‥‥ッ!」
 庭に放されていた犬達が一斉に吠え始めた。
「二人はここにいて下さい。動かないで」
 その場にホーリーフィールドを張り玄関を出たボールスの前に、見慣れない――恐らくどこかの騎士だろう――男達が立ち塞がった。
「‥‥ボールス卿ですね?」
「そうですが‥‥あなた方は?」
 男達はそれには答えず、ボールスに詰め寄った。
「ご同行願いたい」
 物言いは丁寧だが、彼等の目の奥には敵意が宿っていた。
 植え込みの影からこちらを狙う射手の姿も見える。
 だが、ボールスは落ち着き払って相手の目を見据えて言った。
「‥‥家の者に手を出さないと、約束して頂けるなら」
 男達は黙って頷き、射手に武器を降ろすように合図した。
「とーさま?」
 マントの裾を引く感覚に振り向くと、エルディンが不安げに見上げていた。
「ごめんなさい、すぐに帰る訳にはいかなくなったようです。でも、出来るだけ早く帰りますから‥‥さあ、戻って。良い子で待っていて下さい、ね?」
 ボールスは息子を結界の中へ戻し、執事の視線に黙って頷き返すと、男達に周囲を囲まれるようにして屋敷を後にした。


「‥‥それが、2日前の事じゃ」
 小柄なシフールの少女を肩に乗せた 老執事の言葉に、受付係は耳を疑った。
「つまり‥‥何者かに拉致された、と?」
 老執事は黙って頷く。
「そんな‥‥円卓の騎士が、何故そんな簡単に!?」
「わしや、坊ちゃまを巻き込まん為じゃ。抵抗すれば、わしらに危害が及ぶ‥‥それに、我が王子は争いを好まれぬ」
「でも、そうは言っても‥‥!」
 食い下がる受付係に、老執事は首を振った。
「恐らく、相手は我等を快く思わん国粋主義者どもじゃ。事が公になれば、ラーンス派の多くが我等に味方するじゃろう。さすれば、この国の分裂は決定的になる‥‥それだけは、避けねばならんのじゃ」
「‥‥それは、わかりますが‥‥でも‥‥」
「王子の部下達も、今は大人しく家の守りを固めておる。じゃが、拘束が長引けば‥‥わしには彼等を止める事は出来んじゃろう。そうなる前に‥‥」
「ボールス卿を救出せよ、と? 場所はわかるのですか?」
「途中までは、ね」
 シフールの少女が初めて口を開いた。
「あたし、ボールス様のマントの中にこっそり隠れてたの。ボールス様が上手く隠してくれて、馬車に乗せられてからは座席の下にね」
「ええと、あなたは‥‥?」
「あたし? あたしはボールス様のコイビ‥‥むがっ!」
 老執事はシフールの少女をむんずとひっ掴んだ。
「うちの使用人ですじゃ。名をルーファ・ルーフェンと‥‥」
「ルルちゃんって呼んでね♪」
「‥‥はあ‥‥」
「だから、ボールス様の居場所までは案内出来るわ。でも、家の中までは入れなかったの。馬車を降りる時に、もう帰れって言われて‥‥どっちにしろ、あたしひとりじゃ何も出来ないし、助けを呼んで来たほうが良いかなって。あ、あたし、ちょっとだけどテレパシー使えるから」
「誰かの屋敷でしょうか?」
 受付係がルルのおしゃべりに圧倒されながら訊ねる。
「ううん‥‥人が住んでる感じの家じゃなかったわ。まるでオバケ屋敷? 暗かったから、よくわかんないんだけど」
 もう、ボールス様ったら人が好いにも程があるわよ、あんな奴等さっさとブッ飛ばして逃げちゃえば良いのに、ああ、でもそれをしないところがまたイイのよねえ、そうよ、強さは力じゃないわ、愛なのよっ‥‥とか何とか一人でしゃべり続けるルルを横目に、受付係は依頼書を書き上げた。
「‥‥まさか、円卓の騎士の救出を依頼されるとは‥‥」

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2856 ジョーイ・ジョルディーノ(34歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7694 ティズ・ティン(21歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb2962 凍扇 雪(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

セティア・ルナリード(eb7226

●リプレイ本文

「ったくロマンの無い事を」
 とは、依頼の内容を聞いたJ.J.ことジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)の第一声。
 何も生まない『ただの誘拐』は、彼の美学に反するらしい。
「OK、奪い返してみせるさ。久々に『掻っ攫い屋さん』の手並みの魅せ所って訳だ」

「いやはや円卓の騎士が誘拐されるとは、世の中わからないものですねぇ」
 囚われの王子‥‥もとい、騎士の元へ向かう道すがら、凍扇雪(eb2962)はいつもの冗談めかした調子で言う。
「何故、ボールス卿をさらう必要があったのでしょうか‥‥。ラーンス卿の状況に関係があるのでしょうか‥‥?」
 と、大宗院透(ea0050)。
「この一件、内乱を望んでいる者がいて、その一環だとしたら厄介だな」
 ルーウィン・ルクレール(ea1364)は最悪の事態も想定していた。
 国が二つに割れて、戦になる‥‥この任務に失敗すれば、その可能性は大きくなる。
「正直考えなしの騎士が多い。 煽っている奴の企みに乗って、その騎士の望まないことをするとはな」
 これから向かう場所に、その黒幕がいるかもしれない。
 可能なら、捕らえるべきか。
「とにかく、穏便に済ませたいな」
 一方、それに続く女の子組は‥‥まるでピクニックにでも行くかのような騒ぎだった。
「久しぶり、って、この前会ったばかりだね」
 ティズ・ティン(ea7694)は、案内役のシフール、ルルに手を振る。
「エルくんを人質にとられちゃったら、円卓の騎士でも無理ないよね」
「そうそう、家族に武器を向けるなんて、きったないよねー! 騎士のやる事じゃないわ!」
 ルルがぷんすかと頬を膨らませる。
「そうだよね、負けた訳じゃないよね。もし、そのまま見捨てたら、最悪だし」
「そんな事、する訳ないでしょっ! ボールス様はねっ、猫の子一匹だって見捨てたりしないんだからっ!」
「あー、はいはい、わかったわかった‥‥」
 ルルの剣幕に、流石のティズも押され気味だ。
「それよりさ、ボールス様って結構かっこいいけど、彼女とかっているの?」
「ちょっと! ケッコウって何よ、ボールス様はね、結構じゃなくて、ホントに絶対ものすごくカッコイイのっ!」
「はいはい‥‥それで、彼女は?」
「そりゃ〜勿論、あたしよ、ア・タ・シ♪」
「‥‥‥‥‥‥」
「ちょっと、何よそのワザとらしい沈黙は!?」
「べっつにぃ〜?」
 ‥‥女三人寄れば姦しいとはよく言うが、二人でも充分だった。

 一部賑やかな一行が目的の屋敷に辿り着いた時、陽は既に西に沈みかけていた。
 外からではとても人がいるようには思えない廃屋だが、裏手の厩には十頭余りの戦闘馬が繋がれている。
 少なくとも同じ数の騎士が、屋敷の中に潜んでいる筈だ。
「旅人が宿を乞うには丁度良い頃合いですね」
 と、雪。
「じゃあ、私も旅人役に回るね」
 ティズが立ち上がるが、雪に止められる。
「普通の旅人はそんな物を隠し持ってたりしませんよ‥‥と言うか、隠れてませんから、全然」
「えっ、そう?」
 ティズが背中に隠したつもりの偃月刀は、持ち主の背よりも遙かに長い。
 仕方なく上着の下にダガーを隠し、ティズは大声で泣き出す。
「え〜んえ〜ん、お腹空いたよ〜、疲れたよ〜、もう歩けないよ〜」
「あんな所に都合良くお屋敷がありますよ。休ませて貰えるように頼んでみましょう‥‥」
 雪はティズの手を取り、屋敷に向かって歩き出した。
「さて、こっちも一仕事始めるかね。ルルちゃんも一緒に来てくれるかい?」
 J.J.がルルに声をかけた。
「テレパシーで王子をキャッチ出来るか、呼びかけてみてくれ」
「わかってる、任せといて!」
「あー、それから‥‥色々危ないから離れないように、ね」
 外に見張りはいないようだが、中から見られていないとも限らない。
 ルルを肩に乗せたJ.J.と透は、枯草が繁茂する荒れ放題の庭に音もなく滑り込んだ。
「‥‥私は、ここで待つか」
 隠密行動は得意ではない。かと言って、無害な旅人に扮するにも無理がありそうだ。
 ルーウィンはその場に腰を下ろし、周囲を警戒しながら万一の事態に備える事にした。

『ボールス様、聞こえる!?』
 無防備な裏口から潜入した3人は、ルルのテレパシーでボールスを探しながら、真っ暗な屋敷の中を手探りで進む。
 遙か遠く、真っ直ぐな廊下の端にあるいくつかの部屋からは僅かに灯りが漏れ、人の話し声が聞こえていたが、廊下には誰もいない。
 二階へ続く階段は半分以上崩れ落ちている。ボールスはこの階のどこかにいる筈なのだが‥‥。

「ですから、一晩休ませて頂くだけで良いんです。連れもこの通り疲れ切っていますし、私もどうも体調が優れず‥‥」
 雪とティズは、玄関先で足止めを食っていた。
「ここは宿屋ではない。他を当たれ」
「でも、ここしかないんです! お願いです、夜露さえ凌げれば贅沢は言いません!」
 食い下がる雪に、応対に出た騎士は腰の剣を抜き払い、切っ先を突き付けた。
「我々は今、重大な使命を帯びてここに集っているのだ。キサマらなどに構っている暇はない。失せろ!」
「ちょっと! 何よその態度!? 困ってる人を助けるのが騎士ってものでしょ!?」
 先程までイタイケな少女を演じていたティズが食ってかかる。
「ふむ、確かにその通りだな」
 いかにも『主犯格』といった顔つきの騎士が割って入った。
「宿は提供しよう。ただし‥‥死体置き場としてな!」

 急に、廊下の向こうが騒がしくなった。
 それと同時に、手前の部屋でも人が動く気配がする。
 J.J.と透は扉の影に隠れ、飛び出して来た騎士達をやり過ごした。
「‥‥あそこに、まだ見張りが残っています‥‥」
 開いたドアの影からちらりと中を覗いた透が、部屋の奥にドアを見付ける。
「臭いな」
 屋敷の構造から見て、あの部屋に通じるドアは廊下にはない。
「あたしが囮になる!」
 止める間もなく、ルルが飛び出した。
「間抜けな騎士さん、こっちこっち〜!」
 見張りの騎士は、ルルに釣られて持ち場を離れる。
 その隙に透が背後から忍び寄り、スタンアタックをかけた。
 J.J.が手際よく鍵を開け、薄暗い室内に滑り込む。
「ボールス様っ!」
 その後ろから、ルルが鎌鼬のような勢いですっ飛んで来る。
 ボールスは部屋の隅に転がっていた。
 息はあるようだが‥‥右腕が嫌な角度にねじ曲がっていた。
「折られてるな‥‥」
 呪文封じの為だろう。十字架も、無論、武器も奪われていた。
「おい、王子様、大丈夫か?」
「ボールス様、ボールス様ぁ!」
 ルルが泣きながら頬をべしべしと叩く。
「‥‥う‥‥ッ」
 うっすらと目を開けたボールスに、J.J.が薬を手渡す。
「自分で飲んでくれよ? 男に口移しはゴメンだからな」
 透に助け起こされ、ボールスは左手でそれを受け取った。
「‥‥私も、ゴメンですよ‥‥」
 ニヤリ。
「みっともない所を見られてしまいましたね」
 空になった容器を返し、ボールスは名前を尋ねた。
「あんたを盗み出しに来た、しがない泥棒さ」
「あなたは‥‥透さん、でしたね」
 ボールスは二人に礼を言い、涙と鼻水で溺れそうなルルを膝の上に乗せた。
「あなたにも、心配をかけましたね‥‥それで、状況は?」

 玄関先で騒ぎが起こるのを見たルーウィンは、武器を手に立ち上がり‥‥ふと、誰かに見られているような気がして、後ろを振り返った。
 背後は、漆黒の闇。何も見える筈がない。
 だが、一瞬、黒い馬に乗った大男の影が見えた‥‥ような気がしたのだが。
「いや、今は‥‥」
 仲間を助けるのが先だ。
 ルーウィンは踵を返すと、屋敷に向かって走った。

「さいって〜!」
 いきなり攻撃を仕掛けてきた騎士達に向かって、ティズが叫ぶ。
「芝居なんかやめた! 道に迷った旅人とは仮の姿、その実体は‥‥」
 本当の目的は言えない。
「この屋敷にたむろす山賊どもを退治しに来たセイギの冒険者なんだから!」
「こ、小娘、我等を事もあろうに山賊だと!?」
「いや、山賊以下ですね」
 雪が言いながら、迫り来る刃を受け流し、相手を容赦なく切り伏せる。
 そこにルーウィンが参戦し、玄関ホールは剣戟の音に溢れた。

「これから、どうしますか‥‥」
 傷は癒えたものの、まだ足元がふらつくボールスに、透が訊ねた。
「とりあえず、ここを片付けましょう。騎士道にもとる卑劣な行いをした彼等に、弁解の余地はありません」
 ドアの前で気絶している騎士からクルスソードを拝借する。
 出来れば穏便に済ませたかったが、相手が戦いを望むならば仕方がない。
「思う存分、暴れて構いませんよ。彼等も戦って死ぬなら本望でしょう」

 しかし、彼等は最後まで、騎士に相応しい戦いぶりを示そうとはしなかった。
 ボールスの姿を見るや計画の失敗を悟った彼等は、屋敷に火を付け逃亡を図る。
 予め用意してあったのだろう、油をまかれた古い屋敷はあっという間に炎に包まれた。

「‥‥私は、主を守るという事は、正しい道を歩んでもらう事も含まれていると思います‥‥」
 燃え盛る炎を見つめながら、透が呟いた。
 その言葉に黙って頷き、ボールスは一同の無事を確かめる。
「‥‥皆さん、無事ですね? ジョーイさん、馬達は?」
 馬達とは、厩に繋がれていた戦闘馬の事だ。
「ああ、全部逃がした。だが、一頭くらい残しておけば良かったか‥‥これから戻るのに、足は必要だろう?」
「そうですね‥‥」
 言いつつ、ボールスはルーウィンのケルピー、グライアをうっとりと見つめる。
「その子、足が速そうですね‥‥貸して頂いても構いませんか?」
「‥‥ええ、でも‥‥言う事を聞くかどうか」
 ボールスはJ.J.が拝借してきた手綱を受け取り、ケルピーの首にかけた。
「グライアさん、お願い出来ますか?」
 ケルピーは大人しく、されるままになっている。
「では、暫くお借りしますね」
「あ、待って、あたしもー!」
 ルルをくっつけたボールスはケルピーに飛び乗ると、風のように走り去った‥‥。