【ボクらの未来】冒険者レベルゼロ
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■ショートシナリオ
担当:STANZA
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:7人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月20日〜12月25日
リプレイ公開日:2006年12月28日
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●オープニング
「なあなあ、コレなんか良いんじゃん?」
ここは冒険者ギルド。
掲示板の前で、人間とシフールの少年が依頼の品定めをしていた。
二人とも、どう見ても冒険者になれる年齢ではなさそうだが‥‥。
問いかけた受付係に、シフールの少年が答える。
「え? うん、オレはね。でもこいつは、こう見えても来月で12歳なんだぜ?」
指差された少年は、ペコリと頭を下げた。
「あ、どうも‥‥この間はお世話になりました。ほら、チャドもちゃんと挨拶!」
言われて、シフールの少年も照れ笑いをしながら頭を下げる。
「ああ、そうか、君達はこの間の‥‥」
森にマンドラゴラを取りに行って、カエルに呑み込まれそうになった子供達。
少年の胸には、あの時取り戻して貰ったペンダントが光っていた。
「ええと、君は‥‥エスト君、だっけ?」
「はい!」
「‥‥それで‥‥君も冒険者になりたいって思ったの?」
受付係の問いかけに、エストは頬を紅潮させて頷く。
「はい、あの時助けてくれた人達、とってもカッコ良かったです! それで、母さんに話したら、なっても良いって!」
母さん‥‥孤児だった彼等を引き取ってくれた育ての母は、どうせ無茶をしたがる年頃ならば、冒険者になってきちんと知識や技術を身につけたほうが良いだろうと考えたようだ。
「でも僕、自分が何に向いてるのか、よくわからなくて‥‥」
まあ、10歳を過ぎたばかりの少年に自分の適性を見極めろと行っても無理な話だ。
「だから、先輩冒険者の皆さんに付いていって、戦いを見させて貰ったり、アドバイスとか貰えたらなあって」
そこで少年が目を付けたのが、目の前にあるゴブリン退治の依頼だった。
『森に棲むゴブリンに家畜小屋が壊され、村の大事な羊が3頭、盗まれてしまいました。ゴブリンの巣に行って、無事であれば取り返して下さい。今後の為にゴブリンを全滅させて下されば報酬も弾みます。なるべく強い人をお願いします』
「相手はゴブリンだし、付いて行っても良いでしょ? 邪魔はしないし、足手まといにもならないからさ!」
そう、エストは言う。
だが、たかがゴブリンの排除に中堅冒険者を募るのも妙な話だ。
「まあ、村までの道中で皆さんに話を聞く位なら構わないでしょう。仕事中は村で留守番していると約束するなら‥‥」
「ええっ!? それじゃ意味ないじゃん! オレ達、戦うトコが見たいのにー!」
チャドの抗議に受付係は首を振った。
「だめ」
受付係は二人の子供を諭すように言う。
「良いかい? 依頼は普通の‥‥モンスター知識もない人が頼む事が多いんだ。当然、モンスターの名前を間違えたり、似たような奴と勘違いする事もある」
「じゃあ、これもゴブリンじゃないかもしれないの?」
「まあ、行ってみないとわからないけど、ね」
結局、二人は村で留守番する事に同意し、同行を許可された。
しかし‥‥。
「あのオッサン、心配性なんだよな」
準備の為に一旦ギルドを後にした二人だったが、チャドはブツクサと文句を言う。
「なあ、こっそり後をつけてみようぜ? ちょっとくらい強い奴が出てきたって大丈夫さ」
「うん、でも‥‥」
エストはあまり乗り気ではないようだが‥‥。
「そのほうが勉強になるじゃん、な?」
勉強と言われて気持ちが動く。
「‥‥うん、そうだね。見てるだけなら‥‥大丈夫だよね」
●リプレイ本文
「ねむいーさむいーやるきないー歩きたくないー」
まだキャメロットの市内も抜けないうちから、橘木香(eb3173)はぼやき始める。
「あったかいお布団が恋しいのですよぅ‥‥」
「‥‥なあ、あの姉ちゃん大丈夫か?」
シフールのチャドが、相棒のエストに耳打ちする。
その耳に、最後尾を歩くカメノフ・セーニン(eb3349)の声が聞こえた。
「女の子が多くて、じいちゃん感激じゃ」
ユルんだ浪人がいるかと思えば、こちらはいかにもスケベそうな爺さん。
「‥‥冒険者って‥‥」
何だかとてっも不安になる二人。
そんな二人に、シャンピニオン・エウレカ(ea7984)は陽気に声をかける。
「冒険者になりたいんだ?」
「う‥‥うん、まあ」
エストの答えも、何だか曖昧になってくる。
「ボクが君くらいの歳には、まだそんな事考えもしなかったから‥‥素敵だと思うよ♪」
「そ、そうかな」
「なあ、姉ちゃんは何やってんの?」
チャドがずけずけと聞く。
「シフールってさ、なんか出来る事あんの? 武器なんか持てなさそ−だし、なんか役立たずっぽくね?」
この子は遠慮というものを知らないらしい。
「んー、そんな事ないと思うけど。僕は僧侶やってるけど、役に立ってると思うよ、多分」
「俺も戦闘は苦手だけどさ、だからって役立たずって事はないと思うな」
蝶々羽根シフールのケヴァリム・ゼエヴ(ea1407)がニコニコと笑う。
「自分のできること精一杯頑張れば良いんじゃないかな〜、なんてね☆ 」
「ごめんなさい、こいつ、口悪いから‥‥頭も悪いけど」
言いつつ、エストはチャドをひっ掴み、バックパックに放り込んだ。
「それで、エストくんは何になりたいの?」
ディアナ・シャンティーネ(eb3412)が、じいっと顔を覗き込む。
可愛いお姉さんに見つめられて、エストは頬を染めた。
「へ〜、お前、こーゆーねーちゃんがタイプか?」
バックパックから顔を出したチャドがからかう。
「う、うるさいっ! あ、ええと‥‥よくわからなくて。僕、何に向いてるように見えますか?」
そう言われても。
ディアナは対人鑑識を試みるが、相手はまだまだ未知数な部分が多い子供。
正直言ってよくわからなかった。
「才能云々より、性格的なとことか、目指すところがポイントじゃないかなって思うの」
と、シャンピニオン。
「迷ったら、いろんな自分を想像してみて一番燃えたやつにするのもいいんじゃないかなー」
いいかげんな事を言っているようだが、案外それが核心かもしれない。
「あの‥‥、君は? 何をしてるの?」
エストは寡黙に歩き続けるマイ・グリン(ea5380)に声をかけた。
見たところ自分とそう違わない歳なのに、雰囲気はとても大人びている。
「‥‥レンジャー、です」
「‥‥ふうん‥‥」
とにかく、色んなタイプの人がいるみたいだから、皆の戦い方を見てみよう。
そうすれば、自分がなりたいものが見つかるかもしれないと、エストは心の中で思う。
「‥‥依頼受けなきゃよかったかも」
木香が、ゆる〜んと呟いた。
「これを、踏んでみるのだね」
その日の野営時、ウィルフレッド・オゥコナー(eb5324)は子供達を自分のテントに呼んだ。
エストは言われた通りに小枝のような木ぎれを踏んでみる。
――パキッ
案外大きな音が出る。
「これは鳴子」
木の板を纏めて作った鳴子をカランカランと鳴らしてみせる。
「風が吹く場所では使い難いけれど、これを張り巡らせておくと何かが引っ掛かった時に音が出て、接近が分かると言う寸法だね」
「へえ、冒険者って、こんなのも自分で作るんだ?」
「まあ、色んなスキルがあるからのう」
たった今、ディアナのスカートをめくってガン無視されたカメノフがよろよろと寄ってくる。
やはり、スカートめくりは相手の盛大なリアクションがあってこそ‥‥か?
「どんなスキルでも、いつどんな所で役に立つかわからんからのう。何でも、ようは使いようじゃ」
サイコキネシスでスカートをめくるのも。
「ところで、二人とも飯はちゃんと持ってきたかのう?」
「うん、ちゃんと持ってきたよ」
とは言うものの。
帰りの分は考えていなかったらしい。
「やれやれ、仕方ないのう、ほれ」
カメノフはドンキーに積んだ予備の保存食を渡す。
「あたしも、用意してきたのだね」
ウィルも、どさり。
「俺からはこれ、クリスマスプレゼントだよ☆ 異国の冒険の雰囲気だけでも味わって下さいな〜☆」
ケヴァリムからは抹茶味の保存食を貰った。
「おいし〜!」
「あま〜い!」
「冒険者って、イイな!」
いや、そんなに甘くないから、冒険者稼業は。
「でも、残念だな〜、チャドくんの羽が俺と同じ蝶々羽なら、色々教えてあげられたんだけど。イタズラする方法とかねっ」
「俺が蝶々羽根だったら、捨てられてなかったかもなー」
チャドが他人事の様に言う。
「そうだね、きっと、捨てる代わりに売られてたんじゃない?」
エストのツッコミも親友相手には容赦がない。
「ひでーっ!」
「‥‥なかなか良いコンビなのだね」
「あ、そうそう。2人のカエル退治のお話、噂は聞いてるよん♪ なかなかやるじゃんっ☆」
ケヴァリムの言葉にチャドが舞い上がる。
「え、オレって有名!?」
「俺もドジ踏んじゃって、カエルさんの晩ゴハンになりかけたりしちゃった事もあるケド、シフールにとっては体の大きな相棒の支えって、とっても大切なんだなっ♪」
「そっか、じゃあ僕は、チャドのサポートが出来るようなのを選べば良いのかな‥‥ねえ、チャドは何になりたいの?」
「俺? もっちろん、ナイトさ! 円卓の騎士になるんだ!」
‥‥ええと‥‥頑張って下さい。
そして、道中で好き勝手に意見を言い、アドバイスをした冒険者達は、二人の子供を村に預けて、ゴブリン(?)退治に向かった‥‥筈だった。
「ばっかもーん!」
――ごいん!
エストの頭上に拳大の石が降ってきた。
「冒険者の登録もしておらん様なやつがこんなところに来るんじゃないわい。怪我をしても命を失っても自分の責任なんじゃぞ?」
カメノフに叱られた。
流石、年の功。
スカートめくりが生き甲斐でも、言う時は言う。
言われたほうは、通常比1.5倍ほど情けない気分になるようだが。
「まあ、来てしまったもんは仕方がないのう」
目的の洞窟はもう目の前だ。
「今から帰すのも、難しいのだね」
ウィルが諦め顔で言う。
その為に割ける、時間も戦力もなかった。
「エストくん、これ、使ってみる?」
ディアナが荷物にあった儀礼用の剣を手渡す。
軽くて威力も低いが、初心者には丁度良い。
「‥‥武器や防具は、自分の身体に合った物を選ぶ事です」
マイが二人にパラのマントを手渡す。
これを使えば二人が標的にされる事はないだろう。
「‥‥いくら強力な武器があっても、扱えなければ意味がありませんしね。‥‥まあ、武器防具に限った話でも無いですけど」
その時、洞窟から何かが現れた。
カメノフの予想通り、ホブゴブリンがぞろぞろと‥‥いや、中に1匹だけ、体格の良い奴が混じっていた。
また村を襲いに行くつもりだろうか?
「では作戦開始、だね!」
機先を制して、ウィルのライトニングサンダーボルトが空を裂く!
その音に、今まで立ったまま居眠りをしていた木香が飛び起き、人が変わったように暴れだした!
木香はパニックに陥ったモンスターの群れに飛び込むと、手当たり次第に斬りつける。
「あのねーちゃん、やっぱり怖い‥‥」
普段はアレでもやるときはやる。
とは言え、木香の落差は激しすぎて、お子様には付いていけない。
木香に続いて、愛犬に二人を守らせたディアナが飛び出した。
「危険だって判って来たなら、ちゃんと見てるんだよっ? これからは君達がこうやって誰かを護るんだからね!」
シャンピニオンが二人にグットラックをかけ、仲間の援護に回る。
マイまでもが二人の前に立ち塞がった。
「‥‥よし、僕も‥‥!」
ディアナに借りた剣を抜き、飛び出そうとしたエストをマイが止めた。
「‥‥殺す事、殺される可能性に対する覚悟が出来ていないなら、そこでじっとしている事です」
殺す事。
殺される覚悟。
そんなの、考えた事もなかった。
ただ、カッコイイから、自分にも何となく出来そうだから‥‥。
洞窟の前からは、血の匂いが漂ってくる。
その時、手負いの一匹が斧をめちゃくちゃに振り回しながら、二人を目掛けて突進してきた!
「うわあああっ!」
エストは手にした剣をデタラメに振り回す。
――ドスッ!
マイの投げたダガーが急所に突き刺さり、ホブゴブリンはエストの足元に沈んだ。
「あ‥‥ありが‥‥と‥‥」
膝が笑っていた。
「お嬢ちゃんがた、どいておれ!」
カメノフがグラビティーキャノンを放ち、倒れた敵に木香とディアナが止めをさしていく。
その隙に、ケヴァリムが洞窟の奥へ入り込み、羊達を探した。
「羊ちゃ〜ん、ふわモコちゃ〜ん!」
だが、無事な姿で見つかったのは一頭だけだった。
まあ、一頭でも無事なら上出来と言うべきだろう。
「ほら、羊ちゃん、こっちだよ。仲間の所へ帰ろうね」
ケヴァリムは羊を怖がらせないように巧みに誘導し、洞窟の外へ連れ出した。
帰り道、二人の子供はやけに大人しかった。
「良かったら、その剣‥‥」
プレゼントするとディアナに言われたが、今のエストはそれを振り回す気にはなれなかった。
チャドまでが、下を向いて反省モードだ。
「‥‥戦闘技術イコール冒険者としての資質ではありません」
と、マイ。
子供でも、シフールでも、出来る事は沢山ある。
どれを選ぶかは、自分次第。
だが、どれを選んでもそれなりの覚悟が必要だ。
「僕、もう少し考えてみます。自分が何になりたいのかじゃなくて、何をしたいのか‥‥って」
やりたい事が見つかれば、必要なものも見えてくる。
二人の目の前では、ウィルのスカートをめくろうとしたカメノフが電撃を食らってシビレていた。
それも多分、ひとつの道‥‥なのか?
ともあれ、二人の少年が冒険者として歩き出すまでには、まだ少し時間がかかりそうだった。