新春の主張 私がキャメロット自慢!

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:4人

冒険期間:01月21日〜01月26日

リプレイ公開日:2007年01月29日

●オープニング

 聖夜から続いたお祭り気分もすっかり抜けたキャメロットの冒険者ギルド。
 そこに、かなり出遅れた感のある派手なポスターが、でかでかと張り出された。

 曰く――。

『来たれ若人! 今こそ、キミの隠された才能を存分に花開かせる時!』
『我こそは王都キャメロットに燦然と輝く星! そう自負するそこのキミ! その輝きっぷりを大観衆の前で見せつけてみないかっ!?』
『一芸に秀でた者達の、芸にかける熱き想いが、今! 解き放たれるっ!』
『ただいま参加者絶賛募集中!!』

「‥‥何だ、こりゃ?」
 ギルドの常連、新米オヤジが、そのポスターを見て首をひねる。
「ギルドじゃ、こんなモンも仲介するのか?」
「まあ、たまには、ね」
 訊かれた受付係が苦笑まじりに答える。
「この前も、自分の屋敷でペットの競技会を開いた有閑貴族なんですけどね、どうもコンテストがお好きなようで‥‥」
 そして今回は、自慢大会。
 このキャメロットにおいて、自分がいかに異彩を放っているか、他人の追随を許さない特技を持っているか‥‥それを競うもの、らしい。
「どうせなら武闘大会とか、なんかの役に立ちそうなモンにすれば良いじゃねえか。この物騒な御時世に、何だってこんな‥‥」
「まあ、こんな時だから、でしょ」
 あの貴族がそこまで考えているとは思えないが。
「この国を覆う暗い影も、笑って吹き飛ばせるかもしれませんよ。ほら、ジャパンでもよく言うでしょ、笑うとカドが丸くなって、シアワセがやって来るんですよ?」
 何か違う気もする。
「そんなモンかねえ。しかしキャメロット自慢ってえと‥‥アレか?」
「‥‥アレ‥‥なんでしょうか‥‥」
 いや待て。
 それ以外にも自慢出来るものはある筈だ。
 ある筈なんだが‥‥。
「でも、アレは‥‥自慢と言うより、名物、ですよね?」
 いや、そうじゃなくて‥‥。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea1553 マリウス・ゲイル(33歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)

●サポート参加者

オーガ・シン(ea0717)/ セルゲイ・ギーン(ea6251)/ 大宗院 亞莉子(ea8484)/ 甲賀 銀蔵(ea8595

●リプレイ本文

「お集まりの紳士淑女の皆々様! これから始まります第一回私がキャメロット自慢、とくとご堪能あれ!」
 前回大会で解説者魂に目覚めた執事が熱弁をふるう。
「まずはエントリーナンバーワン! 大宗院透(ea0050)! 彼の自慢は駄洒落と変装‥‥ん? 彼?」
 執事は特設ステージに上がった『彼』を見て、思わず目をこする。
 そこにいるのは、どう見てもメイド姿の女の子なのだが‥‥
「それでは、私は変装技術と駄洒落について自慢させていただきます‥‥」
 言うやいなや、ステージの上に派手な爆発が起こった!
「むうッ!? これがかの有名な、忍法・微塵隠れ!? 透選手の姿が見えません! さあ、どこに現れるのか‥‥おおっ!? 赤い和傘がクルクルと回っています! その影から‥‥現れました! 今度は何と、ジャパンの伝統衣装、キモノを身に纏っています!」
「ふむ、事前に提出された企画書によると、あれは『和服京美人』と言うらしいね、キミ」
 主催者のコンテスト好き有閑貴族が口を挟む。
 たおやかなお姉さんに変装した透が軽く会釈をし、おもむろに口を開いた。
「おこんばんわ、『京都』では皆が困難に立ち向かうこと『共闘』していますわ」
 会場の体感温度が一度下がった!
 しかし、透は構わず演技を続行する。
 再びの爆発!
 そして、次に現れたのは選手控え席の前。
 娼婦に扮して他の参加者を誘惑する!
「あらぁん、いい『男』の条件はぁ、『お琴』を演奏できることよぉん」
 会場の体感温度がまた一度下がった!
 透は更に、ウェイトレス姿で主催者席に向かう。
「ご注文はいかがなさいます? 『和親』でしたらよい『ワイン』がありますよ」
 会場の体感温度が以下略!
 透が巻き起こすブリザードは、その後も止まる所を知らない。
 このキャメロットじゅう、いや、世界中の職業に扮して駄洒落を吐きまくる。
 そして、ポカポカと暖かい陽射しが射す小春日和の中、会場は雪と氷に閉ざされた‥‥。

「こんな時こそ、この僕の出番だね!?」
 レイジュ・カザミ(ea0448)は大鍋に作った特製スープを会場に配って歩く。
「実家のホテルのオーナーになったの♪ 各地を旅して料理を勉強したよ。本日は手料理を楽しんでいって♪」
 駄洒落で冷えた心と体に、暖かいスープが浸みる。
 しかし、残念ながら観客達にそのスープの深遠なる味わいを楽しむ余裕はなかった。
 そう、今の彼等には、とにかく暖かい物ならただのお湯でも安酒でも、何でも良かったのだ。
 その時、生気の戻った観客席から声援が飛んだ。
「レイジュさん、頑張って! 今こそ葱の魅力を皆にアピールするチャンスよ!」
 ワンダだ。
 フライング葱の開発者を祖父に持ち、自らも葱制作者として腕を振るう彼女が、葱を届けるついでに応援に来てくれたのだ。
 隣には、やたらと赤い青年もいる。
 ‥‥いつの間に、仲良くなったんだ? って言うか、くっついた?
 と、それは置いといて。
「何と言ってもネギリスって異名があるぐらいの国だからね! 僕は初代葱リスト。僕達初代の努力があったからこそ、葱は今に生きている!」
 レイジュは颯爽と葱に乗ると、空高く舞い上がった。
 乗り方の詳細は、敢えて伏せよう。
 そして、葱を巡る戦いの数々を、実演を交えながら熱く語る!
「真冬に戦った事もあったよ、葱を巡る戦いは本当に大変だった。けど、簡単にあきらめる僕ではないのさ。葱を通して、ライバルとも友達になれたしね!」
 そして‥‥レイジュは葱に乗ったまま、着ていた服をぱぱっと脱ぎ捨てた!
「僕こそがキャメロットの葉っぱ男!」
 会場にどよめきが走る。
 誰もが一度はその名を耳にした事が‥‥あるかもしれない。
 その、ナマ葉っぱ男が、今、彼等の目の前にいた。
「この名前そのものが僕の最大の魅力であり、最大の自慢! この名前はキャメロットだけでなく、世界に響き渡った。人は僕を、英国の伝説と呼ぶ!」
 いや、呼んでないから。多分。

 その時、選手控え席から立ち上がるひとりの勇者!
 まるごとすたぁに身を包んだ男は、きらびやかな五角形の角のひとつを葉っぱ男に突き付けた!
「我こそは、王都キャメロットに燦然と輝く星、きぐるみ戦隊すたぁれんじゃー! すたぁらぴす、マリウス・ゲイル(ea1553)!」
 ひとりだけど戦隊。
 ちょっと寂しい。
「葱の変態さんは、このすたぁれんじゃーが成敗いたす!」
「葱は変態じゃないよ! それに、僕のミミちゃんの自慢が終わってないのに!」
 しかし、レイジュの持ち時間は既にオーバーしていた。
 仕方がない、猫自慢は諦めよう。
 そんな訳で、マリウスの出番。
「今回は愛馬ティックとともに、 自慢の馬術を見せたいと思います」
 インパクトのある登場と、その衣装の割には、自慢は地味と言うか堅実と言うか。
 とにかく、マリウスは会場に設けられた馬場を、愛馬と共に華麗に‥‥華麗、に?
「馬の鼻先には、大鴉の杖に結び付けられた人参! 翼を広げた鴉が銜えた人参を、馬が必死に追うようにも見えます! そして、馬を御するのは、まるごとすたぁ! そのシュールなビジュアルさえなければ、難度の高い障害を次々とこなしていく人馬一体のパフォーマンスは実に見事なのですがっ!!」
 馬場を一周し終えたマリウスは、今度は馬を下りて自慢話に花を咲かせる。
「そうですね、最近の自慢は‥‥棲家を城に改築することですかね。これで私も、一国一城の主ですよ!」
 キャメロットの冒険者街に、何故か城。
 見た目だけで、中身は変わらないそうだが‥‥。
「もうひとつは、これ! 愛用の人参の鉢植えです! これで、新しいキャ×ロットの時代を作りましょう!」
 マリウスは鉢植えを高々と掲げた。
「ラーンス様にもぜひ見せたいです。 ほら、彼の苗字も入ってますし!」
 ‥‥まあ、確かに。
「これからは小さな命を大切に育てる時代ですよ! 人参はキャメロットを救う!」
 それ持って、平和親善大使として砦に行ってみる?
 いやいや、冗談です。
 行かんでエエから。

「続きまして、エントリーナンバー4!」
「エリー・エル(ea5970)です。宜しくお願いします」
 軍馬と共に颯爽と登場した神聖騎士は、観客席に向かって丁寧に一礼する。
「それでは、わたくしの自慢をさせていただきます」
 その時、またもやステージ上が煙に包まれた!
 その煙が薄れた時、そこに現れたのは‥‥
「はぁい、エリーでぇす☆」
「こ、これは何という事かっ!? これが先程と同一人物なのでしょうかっ!?」
 解説の執事が興奮した様子でまくしたてる。
 露出の多い大胆な衣装にヤラレタ訳でもあるまいが‥‥
「手許の資料によりますと、エリー選手の実年齢はさんじゅ‥‥」
 その時!
 どこからともなく黒猫の集団が現れ、執事を連れ去った!
「もぉ、執事さんたら☆ 何言ってるのかしらぁ? あ・た・し・は、23歳よぉん?」
 エリーは軽く膝を折り、小首を傾げる。
「それじゃあ、あらためて、行くわよ、みんな!」
 会場から「おー!」という野太い声が帰ってくる。
「ドレスタットではぁ、『プリティ☆エンジェル』してましたぁん。みんなぁ、よろしくねぇん!」
 再び、「おー」という地鳴りのような声。
 かの地から追っかけてきたのだろうか?
「私の自慢はぁ、この可愛さでぇす☆ ねぇ、可愛いでしょぉん。どう見てもぉ、この息子がいるように見えないでしょぉん?」
 エリーはステージの演出を手伝わされていた透を引っ張ってくる。
「姉妹みたいってぇ、よく云われうるしねぇん」
 ‥‥でも今、息子って言いませんでした?
 いえいえ、何でもありません。
 記録係まで黒猫に浚われては仕事になりませんから。
「それじゃあ、姉妹ユニットってことでぇ、『プリティ☆エンジェル』復活!」
 透もこの母には逆らえないらしい。
 二人は暫し、華やかなステージを繰り広げた。

「あー、これで最後だね、キミ」
 執事が連れ去られてしまったので、仕方なく主催者が解説を代わるが、何だか微妙に盛り上がらない。
 そして、ステージ上のヲーク・シン(ea5984)も、絶妙に盛り上がらない‥‥と言うか、盛り下がってる?
「ふ‥‥ふふ‥‥。何て言うか…出番が減っても良いから、連れ去られたいと思う俺は‥‥マニア?」
 独り言を呟いたヲークは、おもむろに自らの女性経験を語り始めた。
 とは言っても、華々しい成功談などひとつもない。
 あっちでフラれ、こっちでフラれ、その数、未公認ではあるが、ゆうに3桁を超える、らしい。
「ふ‥‥。これが俺の自慢‥‥じま‥‥」
 がくり。
「自慢になるか〜〜〜っ!!!」
 会場から、ぽつり、ぽつりと拍手が起こる。
 やがてそれは、会場全体を包み込む暖かい拍手の渦となった。
 ‥‥それが、余計に哀しさをそそる。
 しかし!
 ヲークの自慢はそれだけではなかった!
「俺は今までに2回、検閲という名の黒い集団に連れ去られた。一族のオーガ爺さんも含めれば全部で4回! 未だにこの記録をうち破った猛者は、このキャメロットにはいない! 多分!」
 まあ、いないだろうね、きっと。
「見よ! これが俺の‥‥命を懸けたギリギリのパフォーマンス!!」
 ヲークはそう叫ぶと、荷物からエロスカリバーを取り出し‥‥
「にゃーっ! にゃにゃにゃにゃにゃーっ!!」
 黒猫の集団が、あっという間に彼を浚って行った。
「え、いや、俺まだ抜いてな‥‥っ!」
 しかし、その顔には無事に目的を果たした男の、安堵と達成感があった。
 もう、何も悔いはない‥‥。
 ヲークは、恍惚の表情を浮かべ、旅立って行った。

 かくして、波瀾万丈の自慢大会は終わりを告げた。
 会場を凍てつかせる駄洒落を連発した透には「全てを凍らせる者」、その母親には「若作りクイーン」の称号が贈られた。
 なにげにブーイングが起こっているような気もするが、気にしない。
 そしてマリウスには「きゃ×ろっとのすたあ☆」、レイジュには‥‥
「ふむ、フライング葱、か。面白い」
 主催者にはウケたようだ。
「なに、アピールの場が少ないと困っているのかね、キミ? ふむ、ならば私がいずれ、一肌脱ごうではないか」
 何やら今度は葱関係のコンテストを開いてくれるらしい。
「それまでキミには、第一人者として普及活動に力を入れて貰おうではないか」
 って事で、「葱の勇者にして伝道者」の称号が贈られた。
 そして、ヲーク。
「ふむ、フラレー3桁は確かに超越レベルだが‥‥未公認の上に、それでは余りに哀しすぎるね、キミ」
 彼の称号は「連れ去らキング(3回目)」に決まった。
 彼もきっと、どこかの空の下でこの発表を聞いている事だろう。
 これから長い旅に出るというヲーク。
 旅先でも、きっと果敢に記録の更新に挑み続けるだろう。
 公認も、そして勿論、未公認記録も‥‥。