殲滅!

■ショートシナリオ


担当:STANZA

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 55 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月13日〜05月18日

リプレイ公開日:2007年05月21日

●オープニング

「困るんだよな、ホント」
 依頼人ロバート・カニンガムは、カウンターの前で大袈裟に溜め息をついた。
「ほら、こないだ、半年くらい前‥‥オーグラだっけ、モンスターを退治して貰っただろ?」
 そう、彼は先日オーグラに浚われた恋人を助けて欲しいと依頼してきた大うそつき‥‥
「あー、その話はもう、アレだ。過去の事として、だな‥‥忘れろ。今の俺は自他共に認める立派なナイト、ただし修業中、だ!」
 それを立派と言えるかどうかは些か疑問だが‥‥まあ、彼なりに努力はしているらしい。
「いや、俺の事は良いんだよ、どうでも。マリアンヌがそれで良いって言ってくれてるんだから、良いんだ、うん」
 さりげなくイヤミにノロけつつ、ロバートは続けた。
「それより、あの巣があった場所、あそこに戻って来た奴等がいてな。勿論、前のはきれいさっぱり片付けて貰ったから、あれとは別の奴等さ」
 うそつき男ロバートの恋人マリアンヌがオーグラに浚われた、あの事件の後、巣の入口は大岩で塞いで貰ったのだが、そこはオーグラ達にとって余程使い勝手が良いのだろう。
 森の様子が何となくおかしい気がして念のために見に行ってみると、巣穴の入口を塞いでいた大岩がどかされ、その前で‥‥
「喧嘩してたんだよ、鬼と豚が」
 オーグラと、恐らくはオークロードあたりだろう、それが火花を散らしていたのだ。
「豚にとっても、あの巣は魅力的だったらしい。縄張り争いってヤツなんだろうな。それで潰しあってくれるなら良いんだが、どっちかが勝っちまったら厄介だろう? 特にオーグラは‥‥な」
 だから、再び被害が出ないうちに双方共に退治し、二度と使えないように巣穴を潰して欲しい。
 それが今回の依頼だった。
「ああ、勿論俺は出しゃばったりしないさ。もう懲りたし‥‥来月には式を控えてるんでね。危ない真似は出来ないってコト♪」
 式ってやっぱり結婚式だろうか、と、受付係は思う。
 来月という事はジューンブライドか‥‥。
 くそう、羨まし‥‥いや、そんな私怨、いや私情は置いといて、仕事仕事。
「では、オーグラが2頭に‥‥オークロードは?」
 受付係の微妙に不機嫌な様子には気付かずに、ロバートは答えた。
「5〜6匹だったと思う。まあ、別々にでも纏めてでも何でも構わないから、とにかく頼むぜ、俺達の新生活の為に、な」

●今回の参加者

 ea1249 ユリアル・カートライト(25歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2756 李 雷龍(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5322 尾花 満(37歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea9669 エスリン・マッカレル(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea9951 セレナ・ザーン(20歳・♀・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

「ご結婚されるのですか、おめでとうございます」
 依頼人ロバートの案内で森へと続く道を辿りながら、ユリアル・カートライト(ea1249)が微笑む。
 それを聞いて、尾花満(ea5322)がロバートの肩を軽く叩いた。
「そうか、ついに結婚が決まったか」
「ああ、あの時は世話になったな。お陰で俺も目が覚めたよ」
「ふむ、騎士としての修練も怠りないようで何よりだ」
「ロバート殿も騎士修行の身か」
 過去のヘタレっぷりを知らないエスリン・マッカレル(ea9669)は、素直に共感を覚えたようだ。
「戦いには参加せずとも、見る事も修行。共に精進し騎士として大成したいものだな」
「ん、ああ、まあ‥‥な」
 その曖昧な答えを聞く限り、前途は多難のようではあるが。
「ジューンブライド、素敵ですよね」
 シルヴィア・クロスロード(eb3671)が、我が事のように嬉しそうに微笑む。
「おめでとうございます。どうぞお幸せに」
「良い機会だから此方の妻も紹介したかったのだが、生憎と最近体調を崩しておってな」
 満の言葉に、ロバートは相手の顔をじっと見つめた。
「‥‥なんだ、拙者が所帯を持って居るのがそれほど意外か?」
「いや‥‥ 奥さんが体調崩すってのは、つまりアレかな、と。オメデタ? 俺んトコもマリアンヌが3人くらい欲しいわ〜、なんて言っててさぁ」
 満の答えがどうだったのかは良く聞こえなかったが、そんなノロケ話に軽〜くムカつきながらもニコヤカに微笑むアクテ・シュラウヴェル(ea4137)が、何かの気配に気付いて小声で注意を促した。
「藪の中に何かがいるようですわ」
 インフラビジョンで確認したところ、犬ほどの大きさのものが、5頭ほど。
「やはり、これのせいでしょうか?」
 これとは、李雷龍(ea2756)が持つ強烈な匂いの保存食。
 皮袋に入れしっかりと口を縛っていても、動物の鼻は誤魔化せないようだ。
 町なかでは野良猫に付きまとわれ、そして森の中では‥‥
「狼のようだな」
 エスリンは藪の陰に見え隠れする獣を目掛けて矢を放った。
 ――ギャンッ!!
 その鋭い声を合図に、残りの狼達が一斉に飛び出してきた。
「お、おい! こんなトコで戦闘になるなんて聞いてないぞ!」
 ロバートは情けない声を上げると、一目散に手近な木によじ登る。
「‥‥あれで、これからどうやって妻を守っていくのか‥‥」
 雷龍が呆れたように呟いた。
「良いんだよ俺は! 出来ないものは出来ないと潔く認めて、他人に任せるのも立派な勇気だぞ!」
 それは確かにそうなのだが‥‥彼に言われると逃げ口上にしか聞こえないような。
 ともあれ、依頼人を守るのも仕事のうち。
 これからオーガとオークロードを相手にしようという冒険者達にとって、狼の群など物の数ではなかった。
「獲物をおびき寄せる餌として鹿か兎でも狩ろうかと思っていたのだが」
 どうやら、その必要はなさそうだ。
「2頭分もあれば充分だろう。残りはどうする? 食用に供しても良いが‥‥」
 エスリンの問いに、満とアクテは思わず顔を見合わせた。
 彼等にとっては、かつて雪山でお世話になったちょっぴり懐かしい味‥‥と言うか、出来れば二度と味わいたくないような。
「‥‥多少はマシな調理法でも考えてみるか‥‥」
 期待はしない方が良さそうだが。

「この近くで、魔法が使えそうな広い場所はありますか? もし良ければ、どなたかに私のフライングブルームで上辺から下見して戴くのも良いかと思うのですが」
 アクテの問いにロバートは暫し考え込み、首を振った。
「いや、ここが一番広いんじゃないかな」
 目の前にポッカリと口を開けた洞窟。
 以前に来た時は、この周囲には藪が生い茂り、視界もさほど開けてはいなかったのだが‥‥今、藪は乱暴に踏みしだかれ、木々はなぎ倒され、立派な広場が出来上がっていた。
「‥‥双方が争った跡、のようですわね」
 セレナ・ザーン(ea9951)が残された足跡や血痕などを調べて言った。
 どうやら、決着が付かないままに双方傷つき、一時撤退しては傷が癒えた頃に再戦という不毛な争いを繰り返しているようだ。
 延々とそれだけを続けてくれているなら、他に被害を及ぼす事もなさそうだが‥‥
「だからといって、これから結婚しようという幸せな男女の未来に暗い影を落とすわけには参りませんわね。必ず全て退治せねばなりませんわ」
「ええ、森や動物たち守る為にも、完膚なきまでに叩いておかなければなりませんね」
 ユリアルが地形を確認しつつ突然の襲撃に備える中、餌となる狼の肉が広場の真ん中に置かれた。
 少ない獲物を奪い合い、双方が疲弊したところで攻撃を仕掛ける‥‥エスリンの提案だ。
 そして、シルヴィアのリクエストに応えるべく、火で炙って強烈な匂いを更に猛烈にした魚の干物を、満が高い木の枝にくくりつける。
「手が届かずに悔しがって飛び跳ねる姿が目に浮かぶようですね」
 シルヴィアは楽しそうにクスクスと笑った。

 やがて周囲の藪に身を隠した彼等の前に、期待通りに奴等が現れ‥‥これまた期待通りに獲物を巡って争いを始めた。
「おがっ!」
「ふごごっ! がーっ!」
「おがーっ!!」
 オーガ達は敵はおろか、身内同士でも餌を奪い合っている。
 既に当初の目的‥‥巣穴を巡る縄張り争いは食欲の前に完璧に忘れ去られているようだ。
 やがて中の数頭が、木の枝にぶら下がっている干物に気付いてドスドスと歩み寄ってきた。
 だが‥‥
 ――どすうぅーーーん!
 オーガ達は飛び跳ねてはくれなかった。
 その代わり手が届かないと見るや、干物がくくりつけられた木に向かって体当たりをかました!
「うわあっ!?」
 ――ドサッ!
 その衝撃に、まさかそんな行動に出るとは思わず、ちょうどその木の上に避難して成り行きを見守っていたロバートが振り落とされた。
「おがっ!?」
 新しい肉が落ちてきた。しかも、ピチピチフレッシュな人肉が。
 人肉大好きなオーグラが涎を垂らしてロバートに近付く。
「‥‥危ない!」
 アクテが咄嗟にマグナブローを唱えオーグラを吹っ飛ばし、ほぼ同時にユリアルがグラビティーキャノンで残りの敵をなぎ倒した。
 それを合図に、冒険者達は一斉に攻撃を開始した‥‥互いに潰し合う事を期待していた敵はまだまだ元気一杯だったが仕方がない。
 敵が倒れている隙に、満が腰を抜かしたロバートを安全圏にかっ浚う。
 相手の無事を確認すると、満はそのまま手近のオークロードにダブルアタックで攻撃を仕掛けた。
「オフシフトを使うまでもない‥‥か。だが、油断は禁物であろうな」
 それまで何かを体内に溜め込むように、静かにかつ穏やかに事の成り行きを見守っていたルーウィン・ルクレール(ea1364)が最前線に飛び出す。
 彼は冒険者達の存在に気付き、攻撃の矛先を変えたオーグラの一撃を受け止めると、カウンターを叩き込んだ。
「すこーし、ストレスを溜めていまして‥‥」
 声にも表情にも出さないが、ふっふっふ‥‥という不敵かつ楽しげな笑いが聞こえてきそうだ。
 一方、雷龍は自らにオーラボディとオーラパワーをかけ、何が起きたかわからずにまごついている一頭の背中に回ってストライクEXを見舞った。
 いきなり背中から攻撃を受け、怒ったオークロードは振り向きざまにスマッシュを放つが、雷龍はそれを左手の十手で受け、ストライクEXで反撃する。
 当てられると少々痛いが、早めにオーラリカバーを使いつつ、彼は相手の体力を削っていった。
「数としてはほぼ同数でも、前衛の数では負けていますわね‥‥」
 セレナは味方に当たらないような位置でソードボンバーを放って何体かを同時に攻撃する。
 向かってきた敵にはデッドorライブからカウンターを仕掛けた。
「‥‥思ったほど馬鹿ではなかったようですね」
 飛び跳ねるオーガを見られなかった事を残念に思いながら、シルヴィアはユリアルが唱えたアグラベイションで動きの鈍くなった敵を狙い、遠慮なくスマッシュEXをぶちかます。
「これ以上後ろへは行かせません!」
 その後ろから、ひとりの味方に敵が集中しないように、ユリアルがプラントコントロールを使って足止めをする。
 アクテは希望者にバーニングソードとフレイムエリベイションをかけ終えると、足止めされた敵を狙ってマグナブローを見舞った‥‥魔力の続く限り、容赦なく。
 そしてエスリンは仲間が苦戦している相手を狙って援護射撃を続けた。
 敵わないと見て逃亡を図る敵に追い打ちをかけ、向かってくる敵には槍に持ち替えて戦う。
 やがて、洞窟前の広場から動くものは姿を消した‥‥勿論、冒険者達以外の。
「お疲れ様〜。あ、怪我した人は俺が薬持ってるから‥‥マリアンヌが心配してどっさり持たせてくれたからさ♪」
 腰を抜かして見ていただけのロバートが陽気に笑う。
 彼が木から落ちなければ、もう少し戦いが楽になっていたかもしれないのだが‥‥まあ、存分に暴れ、大した怪我もなかったのだから良しとしよう。
「後はこの巣穴を塞ぐだけですが‥‥地道に塞ぐのは効率が悪いですし、爆発系の魔法があればいいのですが」
 雷龍が背後に口を開けた洞窟を見て言った。
「それに、オーガ達の死体をそのままにして置く訳にも行きませんね」
 村人達が怖がるだろうし、衛生面でも問題があると、シルヴィアは穴を掘って埋める事を提案した。
「洞窟の奥に放り込んではどうでしょうか? どうせ塞ぐなら有効利用したほうが‥‥」
 戦いを堪能して多少はスッキリしたらしいルーウィンが言う。
「それもそうだな‥‥穴を掘るのも手間であろうし」
 と、満はファイヤーボムとストーンのスクロールをアクテに手渡した。
「そうですね、洞窟を崩すついでに燃やしてしまうのが良いでしょう。ただ‥‥」
 アクテは思い切り魔法を使って、魔力もすっきりカラッポだった。

 翌日、前の日にオーガ達の巨体を洞窟の奥に引きずり込んだ冒険者達は、一晩休んでから洞窟の封鎖にかかった。
 まずはアクテが落盤も狙いつつ、オーガ達を焼き尽くすべくファイヤーボムを放つ。
 轟音と共に洞窟の天井が崩れ、落ちた岩の隙間から肉の焼ける匂いが溢れ出してきた。
「この匂いに釣られて、また他の何かが集まって来そうですね」
 周囲の監視の監視を買って出たユリアルが苦笑する。
 その匂いと煙を塞ぐべく、セレナがバーストアタックで洞窟の入口を崩した。
「これを石化させるのであれば、隙間を埋める必要があるな」
 崩れた岩の隙間に満とシルヴィアがスコップで土を流し込み、アクテがそれをストーンで固め‥‥完成。
「いや〜、ありがとう! これで俺も安心してマリアンヌとの新婚らぶらぶ生活を堪能出来るよ!」
 盛大にノロケるロバートの足元に、何故か突然、大きな穴が口を開けた‥‥。