うぇるかむほ〜む!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:STANZA

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月31日〜06月05日

リプレイ公開日:2006年06月08日

●オープニング

「ただいま帰りましたー!」
 弾むような声とともに、ギルドの扉が勢い良く開けられる。
「ああ、このニオイ! やっぱりキャメロットのギルドは落ち着きますねえ‥‥」
 室内の空気を胸いっぱいに吸い込んだ青年は、その細い目で懐かしそうに室内を見渡した。
 そう、糸目の受付係。彼は今まで異国のギルドに武者修行に出ていたのだ。
 だが、彼の地の水が合わなかったのか、体調を崩し、早々にこのキャメロットに舞い戻ってきたという次第だった。

「しかし暫く留守にしている間に新しい人が随分増えましたねえ」
 室内にたむろする冒険者達を見て、受付係は何かを思いついたようにポンと手を打った。
「そうだ、新人さんも大勢いるし、お馴染みの皆さんにも久しぶりに会う事だし、ここは親睦を深めるために‥‥ピクニックに行きましょう!」
 その時、1枚の依頼書が彼の細い目に止まった。
 ―――急募・オーク退治―――
「せっかく冒険者さん達と一緒なんですから、ただのピクニックではつまらないですよね‥‥」

●今回の参加者

 ea9144 虞 百花(24歳・♀・僧侶・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea9436 山岡 忠信(32歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb2645 ヒューベル・アーシュ・レイ(39歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5313 ライオネル・ロゥ(36歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「良い天気になって良かったですねえ。暑くもなく寒くもなく、まさにピクニック日和ですよ」
 オークの森に向かう道すがら、足取りも軽く浮かれ気分の受付係が隣を歩くヒューベル・アーシュ・レイ(eb2645)に声をかける。
「ヒューベルさんは確か初めての冒険でしたか?」
「ええ、本業は考古学者なのですが、たまには研究室から出て日の光を浴びないと枯れる、とこの子が言うものですから」
 ヒューベルは足元にぴったりと付いて歩く愛犬セタンタの頭を撫でながら、表情も変えずに答える。その様子からは本気なのか冗談なのか、よくわからない。
「僕はお茶と焼き菓子を持って来ましたよ。ここの焼き菓子はとてもおいしいと評判なんです。後で皆さんにもお分けしますね」
 ライオネル・ロゥ(eb5313)が菓子の入っているらしい袋をガサガサと振ってみせる。
 それを見て虞百花(ea9144)が目を輝かせた。
「私‥‥食べる‥‥係‥‥」
「あまり浮かれていると、待ち伏せにあうかもしれんでござるよ」
 周囲を警戒しながら先を行く山岡忠信(ea9436)が、振り返って注意を促す。
「おーく、とやらがいかなる化け物かは知らぬが、悪戯な罠などが無いとも限らぬでござるからな」
「この辺りはまだまだ森の入口ですから、大丈夫ですよ」
 受付係が脳天気に答える。
「奴等が出るのはずっと奥の、薄暗くて陰気な場所ですよ。ここはほら、木漏れ日がキラキラして、気持ち良いじゃありませんか。今はまだ、のんびりお散歩を楽しみましょうよ」
「‥‥そうか。それならば良いが‥‥」
 警戒を解いた忠信は、ふと受付係のバックパックに目を留めた。
「それはそうと、おぬしの荷は随分と軽そうでござるな」
「そうですか? 皆さんと変わらないように思いますが‥‥」
「拙者はぴくにっくの料理を調達するツテを持たぬ故、お主に期待しているでござるよ。何せおぬしは再開したてのギルドの職員でござるからな、記念に大盤振る舞いをしてくれる筈でござるよ。その為にこのぴくにっくを企画したのでござろう?」
「え、いや、その‥‥」
 返答に詰まる受付係に、忠信はにこやかに微笑みながら続けた。
「いやはや、楽しみでござる。もしも期待を裏切られたら、拙者は兎も角腰の愛刀が嘆きの余り何をしでかすか判らぬくらい楽しみでござるよ」
 笑いながら腰の刀に手をかけ、鯉口を切ってみせる。陽の光に冷たく光る刃が受付係の背筋を凍らせた。
「ご、ご冗談‥‥」
「はっはっは、もちろん、冗談でござるよ、もちろん」
 そう言って受付係の背を軽く叩くと、忠信は再び列の先頭に戻り、ライオネルと何やら談笑しながら歩き始めた。
 ‥‥冗談‥‥ではないかもしれない‥‥。
 その背を見つめる受付係の頭からは、先程までの浮かれ気分は跡形もなく吹き飛んでいた。

 そして。
 小一時間も歩いただろうか、そろそろ周囲の森が深く濃くなりかけた頃、一行は足を止めた。
「そろそろ‥‥でしょうか?」
 と、ライオネルが腰の剣に手をかける。
 ヒューベルもスクロールを手に、いつでも応戦出来る構えだ。
「ギルドの者、おぬしはどこか安全な場所に隠れて‥‥」
 と言いかけた忠信だったが、肝心の相手がいない。いつの間にか受付係の姿が消えていた。
「ギルドのかた‥‥は、先程‥‥私の‥‥驢馬を、貸してほしいと‥‥」
 百花が言うには、何やら忘れ物をしたとかで、慌てて町に戻っていったらしい。
「なるほど、そうか」
 忠信がニヤリと微笑む。
 丁度その時、前方の藪の影でちらりと動くものがあった。
「これは、期待して良さそうでござるな。では、腹ごなしにひと暴れするでござるか」
「私は‥‥回復専門‥‥。でも、怖いモノが‥‥見たいなら‥‥銀‥‥」
 百花が後ろに下がりながら呟く。彼女は銀が苦手で、目の前に晒されただけで別人と化してしまうらしい。
「しませんよ、そんな事。それに、誰も銀など持っていませんし」
 ヒューベルが愛犬を下がらせながら言う。
「この子が飛び出して来ないように、見ていて下さい」
「僕のペウも頼みます」
「拙者の馬も頼むでござ‥‥む、来るでござるぞ!」
 藪の中から影が4つ、無造作に顔を出す。待ち伏せと言うには丸見えで、罠が張ってあるわけでもない。なるほど、ここ暫く悪さをしても懲らしめる者がいなかったせいだろう、確かにかなり図に乗っているようだ。
「どうやら、キツイお仕置きが必要なようですね」
 ヒューベルが言い、アイスブリザードの呪文を唱えた。
 オーク達はまさか攻撃されるとは思っていなかったらしく、突然の吹雪に面食らい、右往左往している。そこへ忠信とライオネルが剣戟を叩き込み、更にスクロールを使ったヒューベルが魔法の炎を身にまとい、体当たりで追い打ちをかける。
 勝敗は、あっけなく決した。オーク達はさしたる抵抗も反撃もなく、ほんの一撃二撃加えただけで、散り散りに逃げていく。
「む、逃げるでござるぞ!」
「追いますか?」
 二人の問いに、ライオネルは剣を収めて言った。
「いえ、深追いは禁物でしょうね、オークの方が森を良く知っているはずですから」
「その通りです」
 背後から聞き覚えのある声がした。受付係がちょうど追いついたところだった。
「これで奴等も少しは懲りたでしょうから、当分は大人しくしているでしょう。依頼は充分に果たしたと思いますよ」
 額に玉の汗を浮かべ、たった今までモンスターと一戦交えていた三人よりも疲労困憊している。百花から借りた驢馬の背には、大きな荷物がくくりつけられていた。

「さあ皆さん、存分に楽しんで下さい!」
 オークの森を抜けた先にある小高い丘。小川が流れ、野の花が咲き乱れ、木々が程良く影を作る、そこはピクニックには絶好のポイントだった。
「しかし、ピクニックですか‥‥この様な事を楽しんだ事はあまり記憶に無いので、楽しみ方に困りますね」
 ヒューベルが苦笑する。
 書物によれば、ピクニックとは野において車座に座り、集団で宴を楽しむもの‥‥だそうだ。確かに皆で車座に座り、そして中央にはご馳走の山―――受付係が給料を何ヶ月分か前借りしたに違いない―――が並んでいる。しかし、宴を楽しむとは具体的にどうすれば良いのか。
 迷っていると、ライオネルが声をかけてきた。
「ピクニックの楽しみ方に決まりはありませんよ。こうして誰かとおしゃべりしても良いし‥‥」
「このように、ひたすら料理と酒に舌鼓を打っても良いのでござるな」
 忠信が上機嫌で後を続ける。
「いや、さすがはギルドの者でござる。期待に違わぬ大盤振る舞い、細い目に似合わず太っ腹でござるなあ!」
「いえ、まあ‥‥あ、あははは‥‥」
 乾いた笑いが喉から漏れる。気のせいか、その細い目には涙が光っているように見えた。
「私も‥‥ピクニックは‥‥食べる事が、幸せ‥‥」
 百花はライオネルに貰った焼き菓子をほおばっている。
「今度‥‥お店の‥‥場所、教えて‥‥」
 そして、ひたすら飲み食いに明け暮れる者、愛犬のお腹を枕に読書を楽しむ者、のんびりと空を眺める者‥‥ただひとり明日からの生活を思い暗雲を背負う者を除いては、それぞれ思い思いに午後のひとときを楽しむのであった。