【何でもござれ】大所帯のお留守番

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 83 C

参加人数:10人

サポート参加人数:7人

冒険期間:01月30日〜02月10日

リプレイ公開日:2006年02月05日

●オープニング

「なんだいなんだい、あんたの所もかい」
「こうも皆して重なるなんて珍しいねぇ、全く‥‥」
「まぁ時期が時期だからねぇ、正月も終えて暫く経てば何処も懐が寒い訳だし」
 江戸から少し離れたとある村の片隅、井戸の脇で雑談話に花を咲かせていた三人のおばさん達。
 尤もこの雑談、主催した誰かしらが江戸へ物売りに行くのでその間、自身が養う子供の面倒を見て欲しいと言う暗黙の申し出だったりするのだが‥‥今回は三人が三人とも、同時期に江戸へ行く様で困り果てていた。
「今回は量も多いから、おとっあんも連れて行かなきゃならないし‥‥」
『うちもだよ』
 一人の緑の着物を身に纏うおばさんの溜息から残る二人が相槌を打てば、どうやら三組とも家には子供達だけしか残らない様子‥‥が近くには他にも家が何軒か建っている、ならばそちらへ頼めばいいではないかと思うのだが。
「合計で、えぇと‥‥二十一人かい?」
「確かそうだったと」
 指折り数えて確認するもう一人の赤い着物を着たおばさんが呟いたその数は‥‥そう、此処にいる三人のおばさんが抱える子供達の合計だったりする。
 村に住まう人は皆気が知れている相手だが、それだけの大人数を慣れていない人へ気安く任せる事が出来ないのである。
 一つの家に平均七人、そりゃ毎日が戦な訳で下手な人なら留守の間も精神が持たないかも知れない‥‥とそれはいささか大袈裟かも知れないが、そう言う事でおばさん達はどうした物かと悩んでいた。
「そうだ、冒険者の人にお願いするのはどうかねぇ?」
 とその時、それを打開する(かも知れない)案を青い着物を着るおばさんが提示する。
 ある意味で冒険と言えなくもないが、尤も冒険と掛け離れている気もまたして青い着物のおばさんはその表情に逡巡を宿すも、他の二人はそんな事にはお構いなく話を進める。
「‥‥いい案だけど、高くないかい?」
「いやぁ、そうでもないみたいよ。ある程度融通は効くみたい」
『うーん‥‥』
 現状、寒い懐を案じて緑の着物のおばさんが紡いだ意見に赤い着物のおばさんが口を挟むと、次いで三人は唸って首を捻る。
 しかし、他に選択肢がある訳でもなく三人のおばさんが出した答えは結局。
『お願いしに行ってみようかねぇ〜』

「‥‥そんな事で、こんな依頼が来た」
『‥‥‥』
 そのおばさん達が交わしたやり取りから数日後‥‥江戸にある冒険者ギルド、物静かなギルド員がついさっき舞い込んできた急ぎの依頼を大雑把に紹介すると、その場にいた冒険者達は色々な意味で唖然とする‥‥そりゃそうだ。
 二十一人の子供を一週間、安い報酬の為に十人で相手にしなければならない。
「‥‥困った時はお互い様、だ」
 その戸惑う様子を傍目に青年、気にする事無く一言ボソリと呟けば詳細が記された依頼書を皆の眼前に突き出すのだった。

――――――――――――――――――――
 ミッション:三組の両親が江戸へ物売りに出ている一週間の間、子供達を守れ!

 成功条件:一週間、何事もなく子供達が揃って無事に過ごした時。(完全成功)
 達成条件:何事かあったが、それなりに期間中を無事に過ごした時。(通常成功)
 失敗条件:子供達に何らかの害があった時。(程度により失敗〜完全失敗)
 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。

 傾向等:まったりのんびり大戦争(矛盾しています)、子供好きの方等にお勧め?
 日数内訳:移動に往復四日、実依頼期間は七日。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea2605 シュテファーニ・ベルンシュタイン(19歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea6065 逢莉笛 鈴那(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6282 クレー・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6337 ユリア・ミフィーラル(30歳・♀・バード・人間・ノルマン王国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9399 ミヒャエル・ヤクゾーン(51歳・♂・ジプシー・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb0050 滋藤 御門(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb0311 マクシミリアン・リーマス(21歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2573 夜久野 鈴音(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3917 榊原 康貴(43歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●サポート参加者

アシュレー・ウォルサム(ea0244)/ 滋藤 柾鷹(ea0858)/ ヴァルテル・スボウラス(ea2352)/ セラフィン・ブリュンヒルデ(ea4152)/ クライドル・アシュレーン(ea8209)/ アウレリア・リュジィス(eb0573)/ 神哭月 凛(eb1987

●リプレイ本文

●数多
「だ、大丈夫かな‥‥ハーフエルフを差別しない国って聞いたけど」
「それは良く分からないけど変にビクついていると返って不自然に見えるから、余り構え過ぎない方がいいよ」
 晴れたある日の昼下がり、目的の村を目指して歩く一行の中で赤いフードを目深に被っては心配げな声音を響かせるエヴァリィ・スゥ(ea8851)だったが、その様子に黒髪揺らし苦笑を浮かべながらユリア・ミフィーラル(ea6337)が彼女とは逆、明るい声音を持って諭せばそれにエヴァリィは頷くが
「そ、そうですね‥‥」
「見えましたね、確かにあれだけ子供がいると壮観と言うか」
 やはり何処か落ち着かず肩を震わせるとその時、マクシミリアン・リーマス(eb0311)が視界に数字だけでしか聞いていない沢山の子供達が見え、穏やかな声を響かせ一つ笑えばその子供達、一行を見て忙しなく駆け回る。
 そんな様子に一行はこれからの苦労が脳裏を過ぎると
「手に負えるだろうか?」
「‥‥頑張りましょう」
 まだ冒険者として経験は足りない榊原康貴(eb3917)が不安を抱くも、やはり彼同様に冒険者として駆け出しである夜久野鈴音(eb2573)が何とか言葉を捻り出し励ませば、一行は着実に村へ向けて歩を進める。
「やりがいがありそうっ‥‥」
 もその一行の殿では逢莉笛鈴那(ea6065)はその彼らとは逆、熱く燃えていたりと人それぞれながらやがて、依頼人達の前へ辿り着いた。

 余り時間がないらしい三組のおじさんおばさん達は一行と合流すると、子供達の紹介に諸注意事項を皆へ告げる。
「‥‥とまぁこれで全員だね、注意する事はさっき言った通り。後は最低、赤ん坊の世話と子供達から目さえ離さない様に注意さえして貰えれば、どうにでもなるでしょ」
(「随分と大雑把やなぁ、まぁ納得やけど」)
 おばさん達の飛び交う説明をそれぞれ、受け持つ者が何とか覚えていく中で最後の締めに赤い着物を着たおばさんの言葉へ苦笑を浮かべるクレー・ブラト(ea6282)、さっきから駆け回ってばかりな彼女の子供達を見て一人で感心していると
「それと村にある寄合所‥‥まぁ少し汚いけど、使っても構わないってお許しが出たよ。物を壊さない程度で遠慮なく使っておくれ」
「よ〜し、主夫修行だと思って頑張るぞ〜!」
「いいねぇ、その意気。それじゃあ、宜しく頼んだよ!」
 まだ続く赤いおばさんの話はユリアらが問い合わせた寄合所の件に付いて、許可が下りた事を最後に皆へ言えばクレーの言葉に笑いつつ三組の両親は踵を返すと、その場に残る総勢三十一人は仲良く一斉に手を振って見送るのだった。

●交流
 それから少し後、点になったが未だ見える両親の背を目で追う子供達。
「これから一週間、宜しくね」
 その光景を目に留めた滋藤御門(eb0050)が手近にいた女の子の頭に手を置き微笑み、誰よりも早く挨拶を交わすと
「皆様、親御さんが無事に帰って来る事を祈りましょうね〜」
 空を舞っては緑の髪をはためかせ、笑顔を振り撒き御門に続き子供達へ挨拶するシュテファーニ・ベルンシュタイン(ea2605)‥‥女の子を中心に回る彼女の何処か落ち着きのないその振る舞いは何か選別している様な気もするが、それは思い違いだと考えたい。
 と元気だったり落ち着いていたり人見知りしたりする子供達と和やかに皆が挨拶を交わしていた時だった。
「ポォォ〜〜ッ!」
 突然に響き渡る高らかな声に皆は一様に身を震わせ声がした方へ振り返れば、ミヒャエル・ヤクゾーン(ea9399)がそれらの視線を受ければその次、しなやかに腕を振り上げ怪しげなポーズで口に咥える魔法のバラを使い、自身の背後に一瞬だけバラの花弁を舞わせる。
(「薔薇の花吹雪の中に立つ僕‥‥オ〜、なんて完璧なんだ」)
「それ、あかんやろ‥‥」
 そして自己陶酔に突入する彼を見てクレーは溜息を付き、窘めようと一歩踏み出したが
「わー、すげー!」
「もう一回やってー!」
 どたばたべしゃぐしゃ。
「む、むぐぅ‥‥」
 その彼が行動するより早く純粋な子供達が数人、好奇心を持って一斉にミヒャエルへ飛び掛ると彼はその質量を支え切れず、潰される。
「‥‥子供相手なんや、もうちっと大人しめに振舞ってくれや」
「ジャパン語は完璧じゃないんだよ〜」
「それは関係あらへんよ‥‥」
 しかし潰されていても表情を緩めている子供好きなミヒャエルへ、クレーは釘だけ刺すも返って来た答えに呆れるが
「よっし、それじゃお留守番‥‥始めよっか!」
 経緯はどうあれ、その様子を見て鈴那が表情を綻ばせれば明るい声音を皆の耳へ響かせると一行はそれぞれに受け持つ家の子供達を纏めて、それぞれの家へ散った。

 ‥‥も皆が散った時には既に夕刻が差し迫り、陽光は放つ光のその色を変えていた。
「と言う事ですまんけど、そこで暫く立って反省しぃや〜」
「オーゥ、分かったよ。それじゃあ玄関前で立っている事にするさー」
 三軒の内の一軒、赤い着物のおばさんが切り盛りしている家に辿り着いた十人は夕餉の準備をする為に家の中へ駆け込むが、クレーは先の行動からミヒャエルへペナルティを課すと彼も反省している様で大人しく、それに従う。
「よ〜し、元気が余ってみたいやし夕食の時間も近いから家事を手伝って貰おうかな〜?」
 するとその次に彼、家の中へ真っ先に駆け込んで行った幾人かの子供達へ声を掛ければ早速目前に迫る夕飯の準備を一緒に始めるも
「そうだ、『家内安全のお札』を飾ろう。二つ飾れば効果もきっと倍だね!」
 また幾人かの子供‥‥まぁこちらの方が数こそ少ないも、戸口に立っているミヒャエルをじっと凝視しているとその彼、ふと閃いてバックパックから二枚の札を取り出す。
「ふむ、それはいい案かも知れないが‥‥効果まで倍になるか分からないのでは」
「まぁ、細かい事は気にしないのさー。気持ちが大事さ」
 先の汚名を雪ぐ為の行動だろう、戸口のどの辺りにそれを貼ろうかと悩む彼の姿を家の近くにある井戸まで水を汲みに行こうとする康貴が見とめ、感心しつつも疑問を浮かべるがミヒャエルはそんな事は気にせず、笑って札を二枚貼り付ければ
「‥‥そうだな」
 顔に目立つ傷があるだけ、少々怖い感じがする康貴が静かに微笑めば連れ立って来た子供達も彼に釣られ、大仰に頷いた。

 そして同刻、青い着物のおばさん宅にて。
 女性陣が強いと言う今までのスタンスをいきなり崩す訳にも行かないだろうと言う事から、シュテファーニと鈴音に女の子達を見て貰っている中で鈴那は長男と二人、寄合所へ持ち込む料理を手際良く作っていた。
「へー、慣れているだけあって包丁捌きは上手いね。私より上手いんじゃないかな」
「‥‥そんな事、ないです」
 英国で学んだパンを鈴那が拵えるその傍ら、台の上に立っては年の割、器用に包丁を扱いまな板の上に転がる根菜を刻む九歳の長男を褒めると、余り褒められる事に慣れていないだろう彼は頬を染め否定するが
「ううん、頑張ってる男の子って私は好きだよ」
 その彼へ素直な気持ちを微笑み言えば、長男は尚照れて鈴那から顔を背けると再び包丁を躍らせる‥‥台所のすぐ隣にある居間から響く、シュテファーニが五本の筆を用いて織った歌を鈴音が横笛奏で長女達が歌う、その中で。

 そして夕闇迫る頃になり一行と二十一人の子供達は場所を変え、寄合所にて再び集うと子供達とも協力しそれぞれの家で拵えた料理に皆、舌鼓を打つ。
「流石、言うだけの腕前をお持ちで」
「おいしー!」
「へへ、料理に関してはあたしの専門だしね‥‥けどお箸って使い方が難しいね。こう、かな」
「違うよお姉ちゃん、この指は添えるだけだよー」
 一行の中で一番に卓越した調理技術を持つユリアが慣れない材料にも拘らず作った料理を口に運び、マクシミリアンや子供らの素直な感想に笑顔で返すもその調理の達人を筆頭に最近、ジャパンへ移り住んできたばかりの者達は箸の使い方がいまいち分からず子供達より手解きを受けていたりする。
「んー、なるほど‥‥とあたし達が担当している子供達、話の通りにしっかり者が揃っているけどこれまた話であった衝突が多い、って言うのも的を射ているなら衝突が起こった時にどうするかが大切かな」
「そう、ですね‥‥」
「速やかに、穏便に、ですね。基本は」
 と箸の扱いに苦戦しながらもユリアは同じ家を担当する二人に向き直るとまだ短い時間ながらもこれまでで感じた事について、意識合わせの為に話し掛ければそれに同意するエヴァリィとマクシミリアンへ頷き
「ま、少なくとも今の調子なら大丈夫そうだけど‥‥もしもの時は宜しくね」
 ユリアも二人へ頷き掛けた、次の瞬間。
「それは私のだー!」
「えへへ、早い者勝ちー!」
「なら私も遠慮はしないぞ」
「あー!」
 人数が多いだけあって慌しい食卓では様々にある料理の奪い合いがヒートアップして来たのだろう、ミヒャエルが目の前にある器から根菜の煮物が一欠片を奪われ叫ぶとそれを奪った子の、やはりその目の前にある肉じゃがの入った器から今度は康貴が慣れた手つきでしっかり煮えた豚肉を口へ運べば、次にはその子の絶叫を響き渡らせるのだった。

 と言う事で初日はそれなりに慌しいながらも平和に終え、子供達と最初の交流から一行は僅かながらも確かな手応えを感じた‥‥のだが。

●珍事
 初日を終えてから数日が経ち、意外にも平穏に過ごす一行と二十一人。
 まぁ子供達も初めて見る村の外から来た冒険者達を前にある程度緊張していたのだろう、比較的大人しく過ごしていたのだが。
「うーん、暇だなぁ」
「暇だね、兄ちゃん。雪も大分解けちゃったし」
 赤い着物のおばさんが長男と次男、最近は降り積もっていた雪を用いて良く遊んでいたのだが家の周辺にそれがなくなるとどうした物かと悩んでいた。
「なら近くの山に行かない? あそこならまだ雪が残っているよ」
「‥‥そうしよう!」
 がその時、その場へやって来た青い着物のおばさんが長女、提案を一つすれば長男は頷くも
「でも、弟達はどうする? 連れて行きたいけどはぐれちゃうとまずいし」
「そうね‥‥それなら」
 次男は自身の下の子らを気にすれば、それにも彼女は答えを準備していたらしく二人へそれも解消出来る案を明示した。

「いい場所だね」
 と言う事でそれから暫く、近くの山まで来た一行の半分と幼子以外の子供達。
 御門の感想に対し、青い着物のおばさんの次女が頷くと
「でしょ、何時もは此処で遊ぶの。でも雪が積もると迷い易くなるからこの時期は私達だけの時は来ちゃ駄目なの」
「まぁ、確かにこれではな」
 その理由に納得し、彼らのお誘いに自身らも着いて行けば問題ないだろうと思っていた康貴は周囲の白だけの風景へ目を細める。
「折角だから勉強したいんだけど‥‥」
「たまにはいいんじゃない、息抜きも大事だよ」
 そんな中、子供達の中で一番にしっかりしている緑の着物のおばさんが長男は雪合戦に興じる皆の姿を見ては今更にぼやくも、それを御門が宥めたその時。
「‥‥人数、少なくないでしょうか?」
「そう言えば」
 一休憩を挟むべく、合戦場より離れた鈴音が念の為にと人数を数えてその事に気付けばマクシミリアンも頭数の少なさを察し、一先ず皆を呼び集める。
「三人か‥‥何処へ行ったか、心当たりはあるか?」
「何時もはこの辺りで遊んでいるから‥‥」
 そして康貴が子供達の人数を数え、この場にいない子供達の数を把握し返って来た答えには何も言わず、その子の頭へ手を置けば
「探さないといけませんね、子供達を見ていて貰えますか‥‥こっそり魔法を使って探して来ますがどなたか、付いて来て貰えますか」
「お兄ちゃん達、見付かる‥‥?」
 マクシミリアンはこの場で魔法を使う事に抵抗を覚え、やや浮かない面立ちを浮かべつつも決断すると同行する旨を告げた御門を伴い、踵を返すもその背に振る質問へは
「えぇ、きっと。約束します」
 顔だけ振り返り、確かな笑顔を持って断言して白の中へ消えた。

「だから言ったんだよ」
「でも貴方、着いて来たじゃないの」
「‥‥何だよ」
 そしてマクシミリアンと御門が去るとその場に落ちる沈黙‥‥はほんの少しだけ、勉学に励みたいと言っていた先の子が声を荒げると、皆を誘った娘が頬を膨らませれば場に奏でられる不協和音。
「‥‥少し、落ち着いて」
 その険悪な雰囲気に対し、静かだが優しくエヴァリィが彼を宥めるも
「‥‥そもそも、あんた達もしっかり見ていればこんな事には」
「八つ当たりはみっともないよ、兄貴」
「五月蝿い!」
「まぁ、そうだな」
 益々持っていきり立つ彼には弟の言葉も届かず、むしろ叱咤して返すとその彼へ、康貴は自身らにも非がある事からそれを素直に肯定した。
「だけど、私達がここで揉めていてもしょうがないでしょう。責任を感じるのはいいですが、焦らないで下さい」
「‥‥‥」
「私達も‥‥探しに、行きませんか?」
 そしてその彼の次、おずおずと前に進み出るも声音だけはしっかりと何時もの調子を保って鈴音が彼を諭すと押し黙るその子へ、エヴァリィが手招きを一つし呼び掛ければ
「納得したいのなら、まず自分も動かないと‥‥」
 差し伸べられたその手を彼は握るが、その時になって御門の声が辺りへ響き渡った。
「見付かりましたよー!」

●解放
「お帰り‥‥なさい」
「やぁー、お疲れさん!」
 そしてようやく一週間が経過し最終日の昼下がり頃‥‥三軒の両親達が帰還を果たし、エヴァリィの出迎えに元気良く手を掲げて答えると次いで両親達、辺りの雰囲気から何事かに気付いて首を傾げると
「何か、雰囲気が変わった気がするねぇ」
「そうでしょうか?」
「‥‥そうだね、どうやら色々と礼を言わなきゃならないみたいだけど」
 率直に思った事を言うも、御門が表情を緩めて言えば天を仰いだ後に彼女と目を合わせれば一つ笑い、どうした物かと考え込むが
「あ、お帰りー! お土産はー!!!」
「‥‥この大所帯だ、勘弁しておくれ」
 母親達の帰還に気付いた子供達が一斉に駆け寄って来れば御門とエヴァリィを押し合い圧し合い、踏み潰すと飛び付いて来た子供達を抱きつつ緑の着物を纏うおばさんは豪快に笑って一行へ感謝こそすれ言葉だけで済ませるのだった‥‥恐るべし、大所帯。

 〜終幕〜