動樹命喰
|
■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:9〜15lv
難易度:やや難
成功報酬:6 G 30 C
参加人数:8人
サポート参加人数:6人
冒険期間:02月09日〜02月18日
リプレイ公開日:2006年02月18日
|
●オープニング
「‥‥と言う訳ですじゃ」
「なるほど‥‥樹と見分けの付かない化物がこの山林に数多徘徊する、か。確かに危険だな」
「えぇ、狩をしようにもこれでは迂闊に獲物がいる奥にまで入っていけませんのじゃ」
とある山林の麓にある一軒の小屋、そこに住まう老人の話に耳を傾けるのは異国から来たのだろう二人の男女‥‥尤も男性とは言えその彼、まだあどけない表情を残す子供で彼女の背に隠れていれば老人と言葉を交わす女性もまた、彼より年上にこそ見えるもまだ若い。
どう言う経緯で二人が知り合ったのか、気になる所ではあるが‥‥とそう考えていた老人の思考は彼女の素っ気無い声音によってその途中で掻き消されるも、そんな事は知らない彼女。
「暫くこの辺りで世話にもなるし、もし良ければ私達に任せて貰えると嬉しいが」
続き紡がれた声音は先より沈んだ調子で辺りへ響かせる。
「‥‥余りいい予感がしない」
「お手数をお掛けします」
すると老人、さっきまで考えていた自身の思考を恥じてか詫びる様に頭を下げれば彼女らに改めて願い出ると
「何、腕慣らしには丁度いい。それでは行って来る」
「‥‥‥」
銀髪を靡かせる女性、レリア・ハイダルゼムがやはり素っ気無く言えばその影に隠れるエドワード・ジルスもやはりそのまま、レリアの背から僅かに顔だけ覗かせて頷けば二人は山林へ向け、歩き出した。
「‥‥そう言う事で腕の立つ冒険者の力を借りたい」
数日後、京都の冒険者ギルドへ仏頂面を浮かべるレリアと相変わらず無表情なエドの二人が尋ねていた‥‥先日の一件はどうやら二人の手に余った様子である。
「因みにその人喰樹、何体程度いると踏んでいる?」
「そうだな‥‥少しは倒したが、それでも必要とする人員に私達を加えたその倍はいるだろうと思っている」
その一人、レリアから二人が退治しようとした人喰樹の数が予想以上に多かった事や敵にとって有利な場所から苦難した結果、それを確実に退治すべく協力者を募るとの彼女から簡潔な依頼内容を聞いて、受付を担当する青年の問いにレリアが淡々と答えれば
「‥‥人が多い所で動きが制限される場所だろうから、要求する人数は無難か」
「しかしその分、一人一人の負担は大きくなるだろう」
無愛想な青年は表情を崩さず、依頼内容に付いて厄介ではあるが問題がない事を改めて確認すると厳しい口調で一言だけ、レリアへ告げた。
「問題ない、この程度で根を上げる者は引き受けないだろう。早速手配する」
「宜しく頼む」
――――――――――――――――――――
ミッション:森の木々に紛れ蠢く、あやかしの樹を倒せ!
成功条件:完全に人喰樹を退治出来た時。(完全成功)
達成条件:半数以上の人喰樹を退治出来た時。(通常成功)
失敗条件:半数以下の人喰樹しか退治出来なかった時。(失敗〜完全失敗)
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
傾向等:純戦闘系(場:森林)、リプレイのノリは皆さんのプレイング次第。
NPC:レリア、エド(同行)
日数内訳:山林までの往復日数は六日、実働期間は三日。
――――――――――――――――――――
●リプレイ本文
●蠢く森
「獲物の少ない時期に狩場へも行けない‥って、人も動物も死活問題じゃなぁい。どうにかしないとねぇ〜」
元の依頼人である老人の小屋を前に戦いの舞台である山林を見上げる一行。
がっちりした体格の割、女性の様な仕草と口調で渡部不知火(ea6130)が漏らした呟きへ、その調子はともかく準備をしながら皆頷けば
「しかしまた人喰樹か‥‥移動や回避はしないが、動く枝や根が結構遠くまで届くぞ。しかも、手数が多くて皮も厚い。皆が一斉に切るか、魔法で攻撃した方が良いだろうな」
「‥‥人喰樹さんって、栄養は根で土から吸収しているんでしょう‥‥か? そ、それとも、『人を喰う樹』と言う、な、名前ですから、何かを食べて栄養‥‥つけてるんでしょうか?」
その森に蔓延る怪物を知る陰陽師の黒畑緑太郎(eb1822)がブツブツと、だが皆へ聞こえる様にその特徴を明確に告げると一行の中で一番に背が低い水葉さくら(ea5480)がその話を聞いて閃いた疑問に、一人呟き考え込む。
「はっ‥‥り、両方? で、でも、両方だと‥‥太りそう、です」
「それはないそうだ‥‥が餌か、多くの人々が犠牲になっているのでなければ良いが」
するとその次、思い浮かんだ答えを口にするもルクス・シュラウヴェル(ea5001)がその答えへ整った面立ちに苦笑を浮かべるも、今までの事を思ってその表情に影を落とすと
「‥‥まだ大事には至っていないらしい、がこのままである事も望ましくないだろう」
皆の最後、老人の元へ愛馬を託した際に簡単な話を聞いて来たのだろう騎士のアリアス・サーレク(ea2699)が静かに言えば、彼女の不安を掻き消す。
「そうだな‥‥しかし久しいな、レリア、エド。この地でも宜しく頼む」
「あぁ、海を渡った先でも見た顔の者と逢うとは思っていなかったが‥‥こちらこそ頼む」
「なら今更、肩肘を張らずともいいさ」
「性分でな」
そんなやりとりの中、まだジャパンの言語を覚えるに至っていないガイエル・サンドゥーラ(ea8088)が皆の会話をルクスに解され聞き入っていた時、アリアスと共に老人の小屋より戻って来たレリア・ハイダルゼムとエドワード・ジルスを見れば珍しくその表情を緩ませ、雑談に興じる二人。
「エド、宜しく」
そしてレリアの傍ら、背後に隠れているエドへ雪切刀也(ea6228)が近付き微笑み交わすも、益々持って彼女の背に隠れる彼。
「済まないな、どうにも人見知りが強くて」
「まあ、時期に仲良くなれればそれで良いさ」
その様子へ苦笑を浮かべ、頭を掻く彼へ詫びるレリアだったが刀也は気にせず笑うも
「‥‥ん?」
「さくらも人見知りが強いからな、悪気があっての事ではないから安心してくれ」
「分かった、があの者は?」
何処からか投げ掛けられる視線に気付くレリア、視界にさくらの姿を捉えて首を傾げると刀也の説明に頷けば次には全身、猫の着ぐるみ纏い背を向けている者を見つめる。
「ん、俺かねぃ?」
すると出立の準備をしていた哉生孤丈(eb1067)が彼女の呼び掛けに気付き振り返れば頷くレリアへ向き直り
「‥‥あぁ、この格好は趣味だよねぃ。そうお気になさらず、だねぃ」
(「気にするなと言う方が無理かと」)
解説する浪人だったが‥‥その解説に誰が思った事か、内心呟くも猫の着ぐるみが防寒着の代わりである事も考えれば見た目こそあれだが、まだ寒い京都において準備は万端であり難しい依頼でこそあるも、それを果たす気は十分に感じられる。
『これも、父なるタロン神が与えたもうた試練です。頑張って使命を果たして下さいね‥‥お土産は倒した人喰樹の枝で構いませんから♪』
「‥‥やれやれ」
その中、見送ってくれた友人の言葉を思い出したアリアスが一人、密かに嘆息を漏らしていたがその次、相談を始めた一行の姿が目に留まれば自身もその輪に加わるべく一行の元へ駆け寄った。
そして一行、一先ず話を纏めると足早に魔樹がいる森の中へと足を踏み入れた。
●倒伐
「同じ森と言っても、ジャパンの森はノルマンの森ともイギリスの森とも、また違った雰囲気だな」
「外国の森がどう言ったものか‥‥わ、分かりませんが‥‥此処は特別にひ、酷い‥‥です」
その森へ入って暫く‥‥油断なく辺りへ視線を配りながら何処か漂う、澱んだ空気にアリアスが率直に感想を述べるが、その彼の発言へまだ何処か馴染めていないさくらがおずおずと言えば、ジャパンへ来たばかりの皆は渋面を浮かべる。
「どの辺りに人喰樹がいたのかしらぁ、レリア」
「入って暫くは然程いなかったが‥‥そうだな、この辺りに固まっていた記憶がある」
「ふんふん、なるほど。固まっているのは厄介だねぃ」
その彼らより少し前を歩くレリアへ不知火が問えば、彼女の答えを友人から託された大雑把に記されたこの山林の地図へ書き加える孤丈。
「‥‥っ! き、来ます!」
とその時、さっきまでとは違う鋭い警告の声を発するさくらが両の手首と背負う杖に刀の鞘へ巻く虹色のリボンを舞わせ、小柄な体に似つかわしくない野太刀を流れる様な動作で抜刀すれば自身目掛け奔る枝より身を捻って、寸での所で回避する。
「‥‥見落としていたか」
さくらを襲った枝が奔って来た方を見てレリアが一つ、舌打ちすれば布陣を次々に整え得物を構える皆に遅れ、背負う大剣を抜けば
「手筈通り、頼む」
「‥‥あぁ!」
これから次々に奔るだろう太い枝の攻撃を見越し、一瞬で敵対する者の全てを弾く結界を構築しては弱めの結界ながらも次に走った枝の一撃を阻んだ事に安堵を覚え、ガイエルが皆へ告げると刀也の簡潔な返事と同時、迅速に人喰樹が一本へ駆ける皆。
「ふっふっふっ‥‥魔法が、使える。さぁ、喰らいたまえ!」
その中、ガイエルやエドと共に結界の中に留まる緑太郎が愉しげに肩を振るわせ笑えば即座に組んだ印を解し、樹の影を爆砕させると奔る枝を無視して駆ける五人はその袂へ飛び込むなり一斉に斧に刀に大剣を、その巨大な幹に根元や洞へと次々に振るい、切り裂いた。
「‥‥とりあえず、この辺りにいる人喰樹は一掃した事になるのかねぃ?」
「そうねぇ、そう思って大丈夫じゃないかしらぁ? 先手を取られっ放しで時間も掛かるし面倒だったけど、さくらのお陰で事なきを得ているしねぇ」
「そ、そんな事‥‥ない、です」
その日の夜、この日最後に人喰樹を倒した場所で夜営を築く一行の口調は辺りへ明るく、響いていた。
「まぁ、今日の所は順調に終わったと考えて問題なさそうか」
「今日の所は、な」
その輪の中、落ち着いた声音で改めて今日の結果を確認するアリアスへ相変わらず無表情なレリアは厳しく、返事をすると共に傍らにいるエドを僅かに見ると
「‥‥レリアの気持ちは判らぬでもないが、エドも役に立ちたいと思っての事。頼もしいではないか、見守ってやらねばな。だからこそ私も全力で護ると致そう」
「済まない‥‥」
「仲間でしょ、任せてよねぇ〜ん」
彼女と年近い騎士が何かに気付くより先、その気持ちを察したガイエルがレリアへ素っ気無くもそれだけ告げれば、どう返したものかと困るが‥‥一先ず頭を下げればレリアへ不知火は一つ、ウィンクを飛ばし微笑むとレリアは僅かにだけ笑った。
「静かなものだ」
月が闇の空が真頂点に昇る頃、一人夜営の番をする刀也。
動く事がない人喰樹の襲撃こそないが何かあっては今後に差し支える為、一人ずつ交代で番をするも‥‥人喰樹がいるからこそか、風にそよぐ枝葉が擦れる音以外は何も聞こえず僅かに安堵する彼だったが背後より草を踏み締める音が響くと、即座に振り返る。
「何だ、エドか。寝付けないのか?」
すると振り返った先、刀也の視界に映ったのはエドで僅かに微笑み呼び掛ければ次いで頷きながらも無言で近寄って来る彼を懐に抱えるが、急な事で何を話したものかと困る彼だったが
「‥‥もう、寝たのか」
余程疲れていたのか、ほんの僅かな間で寝息を立てるエドに気付けば刀也は苦笑を浮かべ、彼を抱えたまま暫く夜空を見上げた。
●疾風怒濤
それから時は僅かに過ぎて二日目もまた、無事に人喰樹を倒した一行は遂に最終日を迎えていた。
じーーー。
「‥‥顔に何か付いているか?」
「いっ! いえ‥‥何でも、ないです‥‥」
人喰樹がいる最後の場へ向かう一行の中、相変わらず視線だけ飛ばして来るさくらへレリアは何時もと変わらず、無表情に小さき志士へ問うと彼女は首を振るも
「私が言えた事ではないが、余り気兼ねしなくても構わないからな‥‥尤も私の場合はとっつき辛いだけかも知れないが」
「そろそろ、この辺りじゃないかねぃ」
珍しく口の端を僅かに緩め、言うレリアへさくらは何か言おうとして口を開くも周囲の雰囲気から警戒する孤丈が大分書き加えられた地図に視線を落としながら、呟く方が早かった。
「今までの傾向からすればこの情景‥‥近くにいそうな気はするが」
「そうか、この辺りだったな‥‥」
するとその彼の判断から緑太郎が周囲を見回せば、気の流れこそ上手く感じ取る事は出来なかったが今まで以上の澱んだ空気から判断するとレリア、何事か思い出し
「確かこの辺り、六体ばかりいた記憶がある」
「そんなにか」
「だが数はこれで大よそ、合うか‥‥どれ」
そう彼女が口にすればその背で同意して頷くエドを見てルクスが呻くとその中、緑の衣纏う陰陽師が念じてか細き光の矢を放つとそれは人喰樹がいるだろう方へ飛ぶが‥‥次いでそちらから地を打ち据える音が僅か、聞こえて来た。
「‥‥お、怒ったんでしょう、か‥‥?」
「ま、落ち着いてさくら。所在が分かっただけ良しとしましょう。それじゃあ‥‥行くかっ!」
そしてその音に一度だけ身を震わせるさくらだったが、その彼女を宥め不知火が微笑めば次いで本来あるべき口調に戻ると、音がする方へと駆け出した。
「っ、数が多いったらありゃしないのねぃ」
降り注ぐ枝葉の槍に体の各所を打ち据えられながらも一本の蠢く樹へ突貫する孤丈は、愛犬と共にそれへ立て続け戦斧を振るえば自身へ余裕を持たせるべく、愚痴を溢すと
「とにかく奴らの気をこちらに逸らさせりゃあいい、それだけ徹底してくれ」
「あぁ、分かっている!」
その彼の背、距離を置いてやはり人喰樹が奔らせる枝葉を可能な限り確実に阻み、断ち切る不知火がルクスへ叫べば彼女もまた、横へ歩を踏み彼へ応えると瞬時に組んだ印を組み解いて孤丈がひたすら連撃を見舞うのとは別の樹を魔法で拘束する。
「人喰樹なんて野暮な奴は、さっさとあの世へ行っちまいな! ‥‥だねぃ」
「時間が限られているんだ。手早く潰させて貰う‥‥ッ!」
未だにその身を打たれながらも孤丈が一閃、煌かせれば枝葉が散る中で開けた進路を突っ切り刀也は全体重を乗せ、強烈な戦斧の一撃を見舞うなり人喰い樹を深々と断ち切る斧を軸に飛んで身を僅か、捻って視界が届く範囲だけ辺りを見回した後に着地した彼の目に映ったのは
「纏めて、薙ぎ払うっ!」
余りに多い人喰樹の攻撃から囮に回るレリアの姿。
鋭く振るった剣閃から衝撃波を撒き散らすも、その一撃に枝葉こそ散るが人喰樹は倒れる筈なく、次には攻守が入れ替わり幾多の枝に攻め立てられるレリアだったが、舞う様にそれを避け続ける彼女‥‥しかしそれは数瞬。
「‥‥!」
唐突に血を吐き、膝を屈する彼女が見せた隙に人喰樹が枝を奔らせれば今まで全く変わる事がなかったエドの表情が強張ると、次に彼の放つ魔法はレリアの眼前へ効果を成し木の枝を寄り集め、盾を作れば振るわれる枝葉の槍を弾くも全ては止め切れず‥‥その衝撃を受けて彼女は木の葉の様に吹っ飛ばされると
「アリアス殿!」
その光景に魔術師達を一手に結界で護り、次に人喰樹へ行動抑止の魔法を施したガイエルが思わず英語で叫ぶも、既に動いていた騎士は闘気の盾を掲げ彼女の袂へ駆け寄っていた。
「無理はするな。がその血、先の攻撃のものでは」
「大丈夫‥‥だ、今に始まった事では」
次々に迫る枝葉の槍を盾で弾きつつ、僅かに心配して声を掛けるが彼女は苦しげに呻きながらまだ戦う一行の姿に、震える足を抑え立ち上がる。
「く‥‥ぅ、この調子ではジリ貧だねぃ!」
「だ、だけど‥‥それ、でも!」
魔性の樹が執拗なまでに降らせる、枝葉の槍にいい加減うんざりだと孤丈が叫べば彼が再び切り開いた道を今度はさくら、躊躇う事無くその道を駆けると次の攻撃が自身に迫るより早く、小さなその身を限界以上にしならせ次いで来る反動より豪快な一閃を振るえばまずは一本、完全に一本の樹を断ち切ると諦めずに次の樹へ駆けるのだった。
それから当分、戦いは嵐の様に続いた。
●見つめる森には
翌日、本来の依頼人である老人の小屋へ戻って来た疲労困憊の一行は昇る朝日の下、先まで居た山林を見つめていた。
「ありがとう、助かった」
「いいや、それはこちらの台詞だ。色々と世話を掛けた」
一先ず依頼を終えた事からルクスがジャパン語と英語とを分けつつ皆へ、感謝の意を告げればレリアを筆頭に全員頷くも
「しかし、あれで全部だったろうか?」
「‥‥んー、そこまで確認は出来なかったからねぇ。でも狩場まで安全な道筋だけは帰りに確認したし、一先ずは大丈夫じゃないかしら。ちょっとそれだけ、心残りだけど」
ルクスに訳されながら一つ、自身が気になる事を口にしたガイエルへレリアの背へ隠れるエドが首を傾げれば不知火も二人と同じ考えを抱いていたらしく、普段のおねぇ言葉ながら何時もより声に張りなく呟く。
「まぁ何にせよ、全員無事で良かった‥‥」
「全くだ」
だがそれでも、皆が無事だった事へアリアスが安堵して微笑むとガイエルも彼の言葉に頷いた。
「済まないがご老人、この近くに墓地はあるだろうか?」
「‥‥少し離れておりますが、京へ帰り路の途中にありますじゃ」
その光景を見ながらルクス、帰路の準備に取り掛かる一行を見守る老人へ墓地の所在を尋ねれば、彼は答えつつも彼女の意を汲みかね首を傾げるが
「それならば良かった、誰の者かは今となっては知れぬが‥‥無事に弔う事が出来そうだ」
「宜しく、お願いします。そしてありがとうございました」
肝心な事を告げていなかった事に気付いたルクスが一つ、幾本かの人喰樹の近くに落ちていた遺品だろう物とそれらを詰めた皮袋を掲げれば、老人は全力を尽くしてくれた皆へ頭を下げるのだった。
〜終幕〜