【何でもござれ】〜遭難者を救助せよ!〜

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 91 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:08月28日〜09月06日

リプレイ公開日:2004年09月01日

●オープニング

「まだちょっと季節的には早いけど、緑が眩しい時に登るのも中々おつですね」
「思っていたよりは悪くないね」
「所で山頂まではまだなの? もうそろそろ着くと思うんだけど」
 四人の男女が話しながら山道を登る中、一人の女性が昨日から登り始めているにも拘わらず一向に山頂へ着かない事を気にして、先頭を歩く男性に尋ねる。
「それなんだけど・・さ」
「どうかしたか?」
 尋ねられた彼が口篭もるのを訝しり、もう一人の女性が改めて尋ねるとその彼が
「んー・・なんて言うのかな。取り敢えず・・迷った?」
『えーーーーーー!!!』
 彼の言葉に、三人は悲鳴に近い声を上げるも彼の言葉はまだ続いた。
「しかも・・地図までなくしちゃった」
 首を傾げて、テヘと付け加える彼に三人は一斉に持っていたバックパックを投げ付けた。

「遭難者の救助をお願い出来ますか?」
 受付のお姉さんの第一声がまずそれだった。
「昨日、山登りから帰ってくる予定だった四人組の男女が今朝になっても戻って来ない事に心配した一人の親御さんが今さっき、依頼として持ち込んで来られました」
「でもまぁ、今の時期なら食料さえあればそれほど心配する事でもないんじゃないか?」
 その場にいた一人の冒険者が突っ込むも
「まだ気温も高いですし、保存食もそれなりに持ち込んでいる様なんですが最近、その山で熊を見た、と言う報告もあるんですよ。山は広いんで出くわす心配もないかとは思うんですが・・とにかく親御さんがかなり心配されている様なので」
「まぁ心配し過ぎな気もするけど、確かに万が一があっちゃあなぁ」
 受付のお姉さんの言葉に頷く冒険者。
「だけど、そう言った仕事もオレ達がする事なのか?」
「余り細かい事は気にしないで下さい」
 依頼の内容にふと疑問を持ったまた別な冒険者が思った事を口にするも、さらりと彼女は言い放つも
「戦うだけじゃなく、困っている人を助けるのも冒険者の勤めじゃないかな?」
 もっともな事を言うと彼女は微笑んだ。

●今回の参加者

 ea0186 ヴァレス・デュノフガリオ(20歳・♂・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea0481 セルライト・セルディン(22歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 ea0504 フォン・クレイドル(34歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4449 ロイ・シュナイダー(31歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5072 御剣 赤音(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea5442 エリカ・ユリシーズ(33歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea5456 フィル・クラウゼン(30歳・♂・侍・人間・ビザンチン帝国)
 ea5768 ネル・グイ(21歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)

●サポート参加者

アーサリア・ロクトファルク(ea0885)/ レイヴァート・ルーヴァイス(ea2231)/ シルフィード・インドゥアイ(ea5287)/ ノエル・エーアリヒカイト(ea5748

●リプレイ本文

●捜索隊、出陣
 高く聳える山を見上げる一同。
「迷子の人捜しなんて初めてで、言っては悪いですが少し楽しみですよ」
 苦笑を貼り付けて言うセルライト・セルディン(ea0481)の言葉に少なからず一同も彼女同様に苦笑いを浮かべる。
「でもこれからの時期を考えると、こう言う事も増えるんでしょうね」
 手伝いに来た友人達も交えて遭難した人達の特徴等を皆に伝えると、エリカ・ユリシーズ(ea5442)がそんな事を口にした。
「その度に借り出されるのは勘弁してもらいたいものだ」
 そんな彼女の言葉を受けて静かに呟くロイ・シュナイダー(ea4449)だったが
「それでも受付の方が言っていたじゃろう、困っている人を助けるのも冒険者の勤め、とな」
 そんな彼に凛々しい表情で御剣赤音(ea5072)が言うと、ロイはバツ悪そうに頭を掻いた。
「大方地図でも無くしたのだろうが親を心配させるのは関心せんな、何にせよ無事だといいが」
「ま、あたしにかかればこの位の依頼は楽勝だね〜」
 フィル・クラウゼン(ea5456)はその顔に似合わない心配そうな表情を浮かべ山を見上げるも、彼の頭に止まるネル・グイ(ea5768)がいささかフィルのかっこ良さげな雰囲気を阻害する。
「あんまじゃれてばかりいないで、さっさと探しに行く事にしよう」
「そうだな、頼まれてから此処に来るまででそれなりに時間が経っている。最悪の事態を避ける為に捜索を開始しよう」
 そんなフィルとネルの様子を見ながら皆を促す姉御肌のフォン・クレイドル(ea0504)に、賛同するヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)だったが
「‥‥で、どう動くんだったか?」
 天然ボケな彼の今更な質問に一同は口を開け、御剣だけがそんな彼を鞘で小突いた。

●一日目
 山に入ると一同は合流場所を決め、二手に分かれると四人の遭難者の捜索を開始する。
 一つの組は森に慣れているヴァレスに風の魔法に長けるセルライト、そして獣との遭遇に備えた前衛のフォンと御剣。
「しかし探すだけ、って言うのも退屈だねぇ。あたいは暴れられればそれでいいんだけど」
「でもそれも困るじゃない、今回の依頼は迷子になった人を探す事なんだから」
 木に傷をつけながら先頭を進むヴァレスの後を追いながら退屈そうに呟くフォンに、初めて受ける依頼ながらも気負いなく先輩に釘を刺すセルライト。
「ははっ、それもそうか」
 フォンは豪快に、自らの肩に止まるシフールに笑いかける。
「とは言え、これだけ広い山から探すとなるとさすがに骨だな」
 そして先頭を歩くヴァレスはまだ山に入って然程時間は経ってないにも拘らず、しかし慣れているからこそ広大な山を歩きながら思った事を口にする。
「それでも探す他ないじゃろう、大事に至る前になんとしても見つけないと」
 そんな彼を励ます様に御剣は力強く諭した。
「ま、そうだよな」
 そう言って見詰め合う彼らの様子を後ろで眺めながら
「‥‥あたいら、邪魔か?」
「かも知れないけど、そんな事も言ってられないよ。依頼はちゃんと解決しないとね」
 後ろで呟く彼女達の背中は少し寂しげだった。

 もう一方の組は、先頭を歩き周囲に気を配るロイに頭上を飛び交い何事か言っているネルの相手をしながら遭難者達が残した痕跡がないか探すエリカとその友人達、そして殿を務めるのは感覚の鋭いフィル。
 一頻り、皆を和ませていたつもりかは分からないがエリカの頭上から離れ空高く舞い上がるネルは上空から辺りの様子を伺うも
「なーんも見えないや、こりゃ困った」
 呟きながら、それでも彼女は上空からの捜索を止めなかった。
 唯一言葉が通じない、でもそんな彼女の様子を地上で見上げながらエリカ達も奮起する。
「山に入ってそれなりに時間が経ちましたけど、ここまでで最近人が通ったりした様な跡は見付かりませんね」
 木の節に一つ、ダガーで傷を入れて状況を伝えるエリカに反応してフィルも
「動物達が通った跡も、ここまでで特に目立つものはなかったな」
 手近にある木を見つめながら呟いた。
「奥に奥にと迷い込んでいるのだろうな」
 彼女達の話を聞いてまとめるロイに皆が頷いた時、上空から舞い降りてきたネルは、今度はロイの頭に止まると
「そろそろ日が沈むよー」
 身振り手振りを交え西を指し、一同はその方向を見やる。
 日没までまだ暫く時間はありそうだが、確かに太陽は西へと進んでいた。
「どうやら一日目は見付からず終いか。もう暫く進んだら野営を築く事にしよう」
 フィルの提案に一同は頷くと、僅かな時間でも無駄にしない様に歩く速度を上げる。
 そんな彼らをのんびりロイの頭上で眺めながら、ネルは分からない言葉で喋っているのをいい事に
「頑張れよー」
 と気楽に言うのだった。

 さて、再びもう一方の組に視線を戻してみよう。
「切裂け烈風っ、ウィンドスラッシュ」
 日が沈んでから野営を張り、ヴァレスが散策しながら得た山菜を元に夕食を作り、保存食と共に頬張りながら火を絶やさず周囲の警戒を交代でしていた所の野犬の襲撃だった。
 地に這う草の擦れる音を敏感に聞き取ったセルライトの魔法から始まった戦いだったが
「お主に恨みは無いが‥許せよ」
「はっ、こんなものかいっ!」
 焚き火を恐れてか、その数は少なく魔法に続く御剣とフォンの刃の下に三匹程が沈むと遠巻きに見ていた残りの犬達は踵を返して山の中へと消えていった。
「寝込みを襲うなんてなっていませんね」
「まぁそれが分かれば苦労なんかしないさ」
 戦い終わって、持って来た発泡酒にまたちびりと口をつけて言うセルライトに戦闘では木々の群れに巧みに身を潜め、野犬達から隠れていたヴァレスが隠れていた木から様子を伺い、静かになった事を確認するや呟いた。
「熊とかだったら面白かったんだけどねぇ、なんか中途半端で変に目が冴えちまった。暫く見張っているからあたいが眠くなるまで休んでなよ」
 フォンだけが立ったまま彼らにそう言うと、返事を待たずに腰を下ろして長剣の手入れを始める。
 そんな彼女に、三人は礼をすると再び眠りにつくのだった。

 こうして一日目は終わりを告げる。
 ちなみにフィル達の組はその夜、何事もなく朝を迎えた。

 そんな事は露知らず、それから暫く
「お休み‥ヴァレス」
 見張り番が回って来た御剣は、ヴァレスの近くに座り込むとそっと頭を撫でた。
 そして日がまた昇る。

●二日目
 朝を迎え、出発の準備を整える二組。
 先んじて動き出したのはフィル達のグループはズンズンと山奥へと進んでいく。
「今日見つけられないと遭難してからもう五日になるな」
 変わらず冷静に呟くロイに一同が頷いた、その時だった。
 がさり
 いち早く気付いたフィルが音のした方向を見やると、そこには親子の熊が二頭いた。
「静かに」
 各々が武器を構え臨戦態勢を取る中、それを制しフィルは静かに熊と睨み合う。
 一同もそれに倣うと途端張り詰める空気、時間だけが只過ぎていく。
 そして‥‥先に目を逸らしたのは親熊だった。
 近くにいた小熊の身を案じて、そして何もして来ない冒険者達に興醒めたのだろう、二頭の熊は元来た道を戻って行った。
「やるな、フィル」
「小熊もいたし、無駄な事はしたくなかっただけだ」
 ロイの賞賛に無愛想に答えるフィルは不敵に微笑んだ。
 
 それから一時間程、歩き続けるフィル達一行にやっと朗報が届く。
「ブレスセンサーに人間サイズの呼吸が四つ、反応あったよっ!」
 エリカの友人がピンポイントで唱えていたブレスセンサーのやっと発揮された効果に一同は安堵し、人が通った痕跡を見つけたエリカがそれを追いながら道なき道に踏み込んで十数分、遂に遭難した四人を発見するに至った。
 冒険者の姿を見て、抱き合っていた四人はヘタッと腰を砕かせる中
「まぁ無事で何よりです、親御さんも心配しているから早く帰りましょう」
 狼煙を上げる準備をしながら微笑むエリカに、遭難者達はコクコクと頷いた。

●エピローグ
「ま、無事で何よりじゃったな」
 合図の狼煙を確認して合流地点で先に待っていたヴァレス達が、遭難者と彼らを見つけたフィル達に労いの言葉を掛けると一同は揃って下山の準備を始める。
 そんな中、御剣は骨折していると思しき男性の前に屈むとたどたどしい手付きながら応急的な処置を施し、声を掛けて微笑んだ。
「申し訳ありませんでした、まさかここまで大事になっているとは思ってもいなかったので‥」
 遭難者のリーダー格らしい男性、フィルが合流地点に向かう途中で聞いた話だと彼が地図を失くし、且つ骨折をしてあの場所から動けなかった理由を作った張本人、がシュンと顔を下げて一同に詫びる。
「まぁこうして無事‥じゃない人もいるけど、大事にならなくて良かった良かった」
「そうそう、でもあたし達がいなかったらどうなってた事か」
 そんな彼を励ます様に、頭上を飛び交う二人のシフールに他の三人が食いついた。
『でも彼、こんな事を言ったんですよ。食料もまだあるし、山降りるのも面倒くさいから怪我治るまでこの山に住むか、って!』
 絶叫する三人にしょぼくれるリーダーだったが、そんな彼の肩を後ろから誰かが叩いた。
「‥山篭り、と言うのも修行にいいかも知れないな」
「熊倒すまで一緒に篭るか?」
 嬉しそうな表情を浮かべてリーダーは勢いよく後ろを振り返ったが、ロイとフォンの誘いに彼は益々表情を暗くして呟いた。
「‥‥ごめんなさい、大人しく下山しましょう」

 こうして怪我人こそいたものの、冒険者と合流してから四人の遭難者は無事に依頼を達成したのであった。