【斎宮雑事】寺子屋へ行こう!

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月02日〜08月07日

リプレイ公開日:2006年08月09日

●オープニング

●伊勢神宮
「‥‥はて、人が足りんか。此処の担当は誰だったかな?」
「えーと、確か神野珠だったかと」
 伊勢神宮、その内部にある一つの部屋にて伊勢の地図を広げ語るのは一人の老人と一人の青年。
 その地図のあちこちに記されている、赤い丸へ老人は続々と人の名を書き連ねていくが‥‥とある一箇所でそれを記していた筆が止まれば、首を傾げて呟く白髪の彼へ明朗な声音にて答えたのは青年。
「‥‥ふむ、しかし今は伊勢にはおらんわな」
「はい、伊雑宮にて急務に追われておりますので」
「‥‥さて、どうしようかのぅ」
「此処だけやらない、と言う訳には行きませんからね」
 その答えを聞いて老人、僅かな間を置いて青年が言った人物が現在置かれている状況に思い至れば、青年が語る彼女の詳細な話を聞きながら何処か気だるそうな表情を湛え思案するが、次にはすぐに眼前の青年より窘められる事となるが
「‥‥うむ、じゃが確か此処は」
「そうですね、過度に真面目過ぎる子ややんちゃ盛りで悪戯好きな子、引っ込み思案で酷く大人しい子だったりと癖の強い子が一番集まります。だから、伊勢神宮内で彼女以外に此処を任せられる人材は現状ではそうすぐには手配出来ないかと」
「‥‥はぁ、そうじゃの」
 口をもごもごと動かしては渋る様にその理由を述べようとして‥‥先よりも僅かな苛立たしさを持つ青年が老人の言葉を遮り言えば、尚も気だるげに振舞う白髪の彼。
(「‥‥こんの、やる気あるのか‥‥」)
 すると青年、内心では毒づきながらもそれは何とか己の内にだけ留める事に成功すれば、それを表へ出さぬ様に表情を取り繕うと
「‥‥さて、どうするかのぅ」
「そうですね、となると奥の手ですが‥‥冒険者の方々に任せてみてはどうでしょう?」
 再び同じ様な問いを繰り返す老人へ、一つの案を提示するのだった。

●寺子屋へ行こう!
「‥‥って言っても、教える側なのね」
「当然、言うまでもないだろう」
 伊勢神宮でのそんなやり取りから数日後、京都の冒険者ギルドにて貼り出されている一枚の依頼書を見て、冒険者の一人が最初こそ興味深く‥‥だが詳細を見て、嘆息を漏らせばやはり嘆息を漏らし、答えるギルド員。
「けどよ、何を教えれば良いんだ」
「別段、そこまでの指示は貰っていない。皆が考えて思う様にして貰えればいいと思う」
「まぁそりゃ、気楽で良いわ」
 とは言え教える側の立場でも興味を覚える者も少なからずいるらしく、遠目に見ていた年若い冒険者が一つの疑問を口にすれば、あっさり答えを返すギルド員へ冒険者は笑みを湛えるが
「だが変な事は教えない様にな、伊勢神宮は当然として冒険者ギルドの評判にも関わって来る。それだけ肝に銘じておいてくれ」
「そりゃ勿論!」
 事務的な彼より釘を刺されれば、肩を竦めながら今度は苦笑を浮かべて答える冒険者。
 その彼を見てギルド員は一つ頷けば、机の上にたまる山の如く積まれる依頼の数々が記されている紙片へと視線を戻しつつ最後に一言だけ、呟くのだった。
「後は‥‥そうだな、子供達の事を第一に考えてやってくれ。私達と違って気楽にも見える彼らだが、色々と抱えている事はあるだろうからな」

――――――――――――――――――――
 依頼目的:寺子屋にて子供達へ様々な事を教えよう!(教える内容は不問)

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は不要です。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。

 NPC:該当無
 日数内訳:七日間、寺子屋が開かれる京都近郊にあるお寺にて子供達と寝食を共にします。
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●今回の参加者

 ea0085 天螺月 律吏(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea0629 天城 烈閃(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6334 奉丈 陽(27歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9032 菊川 旭(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb0050 滋藤 御門(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb2373 明王院 浄炎(39歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb2905 玄間 北斗(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

明王院 未楡(eb2404)/ 明王院 月与(eb3600)/ チサト・ミョウオウイン(eb3601

●リプレイ本文

●いざ臨め
 京都より少し離れた所にある、とある寺の境内にて‥‥一行と、八人の子供達は邂逅を果たしていた。
「焔と五行なのだぁ〜、この子達も皆と一緒に勉強する仲間なのだ。よろしくなのだぁ〜」
 初顔合わせともなれば自己紹介は必須な訳で、一行が初めに続々と言葉を響かせれば玄間北斗(eb2905)も明るい声音と笑顔にて挨拶をする最中で子供達はそれぞれ、彼が伴う愛犬らを見つめ瞳を輝かせたり、欠伸をしたり、樹の影から一行の様子を伺ったりと様々な反応を皆へ見せつける。
「私は侍の天螺月律吏、よろしくな」
 しかしそれは今、別段気にせず物腰柔らかに天螺月律吏(ea0085)が一行の最後、子供達を見つめ言えば
「因みに文字で書くと‥‥御天と様の「天」に、螺旋の「螺」、お月様の月で『てんらげつ』だ。名の律吏だが、律令の「律」に官吏の「吏」で『ながり』なのだが‥‥少々難しい、かな?」
 自身の名が非常にややこしい事を自覚している彼は懇切丁寧に彼らへ教えるも、揃って首を傾げる子供達を見ると頬を掻いて苦笑を浮かべるが
「さて、次は君達の番だよな? 名前を一人ひとり教えて貰おうかな?」
「はいはーい、じゃあ俺、俺!」
 改めて目の前にいる子供達を見回して律吏、今度は彼らへと問えば一番快活そうな子供が飛び出して来ると皆はまず彼の自己紹介に耳を傾けるのだった。
「幼い頃には僕も寺子屋にはご厄介になりましたが、教える立場に回ると言うのも何だか変な感じですね」
 その光景を見つめながら静かな雰囲気を纏う滋藤御門(eb0050)は笑みを湛えながら、昔を懐かしんで呟くと
「子供に教えるには拙い、己の愛想のなさは‥‥自覚はしているが性分なんだよな」
「ん、何か?」
 彼の傍らにて同じ光景を眺めていた、寡黙‥‥と言うか無愛想なきらいのある菊川旭(ea9032)が様々な表情を見せる子供達を眩しげに見つめ呟けば、彼の微かに響いた呟きを全て捉えられず耳にした御門は旭へ振り返り問うが、苦笑を湛えるだけの彼は首を左右へ振って子供達を改めて見据えれば一人密かに決意した。
「いや‥‥それでも、誠心誠意やってみるか」

 そんな各自の自己紹介を終えて暫く、場を寺の中へ移して最先に動いたのは天城烈閃(ea0629)。
「癖が強いと言う事は、一種の才能でもある。特に皆に日々行なって貰う発表では、それぞれの個性が出てくるものだ。それを皆の前で誉められれば引っ込み思案な子達には、自分に自信を持つきっかけにもなる筈だ」
 と年の割、年寄り臭い‥‥と言うよりは非常にしっかりした、と言うべきか。
 とにかく自身抱くその想いを皆に明かした事から、思い思いに座っている子供達の前に今立って風の志士はそれを変えず、口にする。
「俺は『言葉』に付いて皆に教えたいと思う、とは言え別に読み書きをして貰う訳ではない。皆には今夜から順番に、その日にあった事の感想などを自分なりに短く纏め、ここにいる全員の前で一人ずつ発表して貰いたい」
『えー!』
「子供って可愛いですよね」
「ん?」
 先から変わらずに見せる子供達の様々な反応を見て、目の前にいる彼らとそう大差なく小さい奉丈陽(ea6334)が微笑み言うと、初日のみ妻子を連れ立ってこの依頼に参加した明王院浄炎(eb2373)が彼女を見つめれば
「楽しそうな笑顔とか、何か変な所に気付いたりとか‥‥自分が末っ子なので弟妹が出来る様な期待もありますけどね」
「あぁ、そうだな」
「その期待を叶える為にも僕達は真摯に、彼らのためになるべき事を教えないとね〜」
「はいっ」
「じゃ、張り切って行こう〜」
 子供達を視界に捉えたまま陽が紡ぐ理由に納得して彼は素っ気無いながらも、温もりを込めて呟き頷くと‥‥やはり陽と同じく子供達を見つめている井伊貴政(ea8384)も彼女へ励まし応援すれば、すぐに返って来た陽の微笑に釣られて左の頬に走る傷をも歪め柔らかな笑みを浮かべた。

 それより初日は人手が多かった事もあった為、子供達とコミュニケーションを図るべく‥‥ドタバタながらも遊びに明け暮れるのだった。

●朝日も昇り
 と言う事で、子供達と遊びを通して癖の強さを体感した一行のその翌日。
 それぞれがやるべき事は予め決めており、一先ずは問題ないだろうと言う結論に至れば烈閃に続くべく早速実践へと移していた。
「自分から戦いを挑む必要などない。守らねばならぬ者を背に持つ時、勝てずとも負けぬ力を身に付けよ」
 とは言え午前中、まだ頭も覚醒していない頃から勉学に励むのもどうだろう、と言う事で浄炎と北斗が中心になって体を動かす事に重きを置いてみる一行の目論見だったが
「‥‥果たして本当に、目に見える力を付ける事が有益なのでしょうか?」
「必ずしも、そうではないだろう‥‥が、お前達が将来何を目指すとしても体は資本となろう」
「無駄にはならない、と言う事ですか」
「勉強は何も学問ばかりじゃないからね」
 一人樹にもたれ掛かり、真面目な面持ちと落ち着いた声音で掴み掛かってくる少年らをあしらう浄炎へ問う少年がいたが、その問いへは動じる事無く厳かな声音で彼は真面目な面立ちの少年へ答えると更に問うて来る彼へ横笛を奏でる御門、楽器に興味のある子らへ手解きしながら視線を向け諭し掛けると
「その通りだ。故に無駄であるかどうかは、実際にやってみてから決めるといい‥‥まだまだ甘いっ、次っ」
 上演も頷いて彼へ視線を向けて口を開くと同時、その隙にと飛び掛って来た元気溢れる男子を二人纏めて叩き落とし、微笑んだ。
「どうしたのかな?」
「‥‥怖い」
「んー、そっか。まぁそうかもね」
 その光景を見つつ、木陰にて震えている少女を見付けた陽。
 人見知りが非常に強い彼女へそっと近付き尋ねれば、返って来た少女の答えに背後を振り返り‥‥浄炎と男の子達の様子を見て頬を掻いて頷くと
「じゃあお姉さんと遊ぼうか? それともわんこがいいかな?」
 未だ木陰から顔を半分だけ覗かせている少女へ呼び掛けるも、首を振る彼女だったが陽が養う柴犬が近付けばどうしたものか分からず、困惑する。
「大丈夫だよ、噛み付かないから‥‥ね?」
 その彼女へ尚も優しい声音で陽が呼び掛けると‥‥今度は少女、恐る恐るではあったが手を差し出し遂には柴犬の頭を撫でた、その時。
「あ、凄いのだー」
「!?!?」
 響く北斗の声にビックリして彼女が悲鳴ならざる悲鳴上げ、また樹の影へと隠れたのは。
「あ、ごめんなのだ〜。でも他の子は焔と五行に触ろうともしなかったから、今の所はお春が皆の中で一番に勇気があるのだ〜」
「そう、なの?」
「皆それぞれ、一番な物を持っているのだ」
「北斗ー!」
 その咄嗟な瞬発力に目を丸くしながらも北斗が彼女の名を呼び、褒め称えれば首を傾げる彼女に力強い言葉を贈り、頷き返すと彼を相手にしていた子供達に呼ばれれば北斗。
「だからもっと自信を持つといいのだー!」
 踵を返し、それだけ告げれば駆け出す彼の背と陽を見つめて少女はすぐ近くにいる僧侶が微笑んでいる事に気付いて、釣られてではあったかも知れないが今初めて微笑んだ。
●お昼時
 つつがなく‥‥とは言えない、育ち盛りである子供達故に賑々しいまでの昼食を終えた後。
「誰か、手伝ってくれないかなー?」
 バタバタと駆け出す子供達のその背へ、御門の声が響けば幾人かはその足を止めて首を傾げる。
「家のお手伝いをすればご両親、喜ぶと思うな」
「そうかなぁ?」
 その子供達へ御門は彼らに合わせた口調で諭す様に呼び掛ければ、男の子の一人は更に首を傾げるも
「‥‥じゃあ、手伝う」
 当初より引っ込み思案だった少女が一歩、先の一件にて自信を持ったのか他の子供達より前に出れば御門は彼女へ手を差し出して微笑み、言うのだった。
「それじゃ、お茶碗とか洗おっか?」

 そして遊ぶだけ遊べば一行と子供達は寺の近辺を散策する‥‥とは言え、これも勿論勉学の一環と言う事で此処では旭が主体となって植物の様々な事に付いて教えていた。
「それで、この草なのだが‥‥」
「この草、知ってるよー!」
「そうか、意外に物知りだな」
「えへへ」
 その先生役である旭がある草を指差せば、意外にも快活に動き回っていた少年が踵を返して答えるとぎこちなく微笑んで旭は頷くが
「だがこれが薬草にも使える事は知っているだろうか?」
「そうなの?」
 次に教えるべき新たな知識を指し示すと、首を傾げる彼へ再び頷いてその詳細を語り出す前に志士。
「では今日は‥‥染料にもなる、この草を皆に集めて貰いたいと思う。これを用いて後で皆と一緒に草木染の体験をして貰いたいと思っているので、宜しくな。後は‥‥余り遠くへ行かぬ様、気を付けてくれ」
『はーい』
 幾つかの草を掲げて次にやるべき事を皆へ指し示すと元気の良い返事と共に皆はその場より一斉に散るが
「あ、そっちは行っちゃ駄目だよ」
「なんだよぅ〜」
 直後、子供達の全員へと常に視線を配していた御門の声が辺りに響けば呼び止められた、子供達の中で一番に腕白で我慢が利かない子が不平の声を上げれば
「そっちは危ないからな、呼び止めたまでだ」
「遊ぶ時は遊ぶ、学ぶ時は学ぶ。しっかりメリハリを付けないとメ〜なのだ」
「ぶー」
「そっちには崖がある、それでも行こうとするのはどうしてだ?」
 その理由を明確に口にする旭に、彼と仲良くやっていた北斗も続けば少年は頬を膨らませるも‥‥直後、脱兎の如く駆け出すが何とか彼の前に立ちはだかって志士は再度少年へとその理由を淡々とした調子で問うも
「まぁそこまでにしておけ。乱の絶えぬ時世故、子供らの心に戦の傷跡が刻まれているのやも知れぬ事に腕白坊主の悪戯は、何を訴えておるのか見極めて叱ってやらねばならぬと思っている。情を求めているのか、それともただ躾けて貰う機会がなかっただけなのかを見極めてな」
「へっへ〜ん」
「とは言え‥‥だ。太助はどうやらその心配をする必要はなさそうか」
 彼らの間に浄炎が割って入り、まずは志士を宥めるかの様に言葉を紡げば、理解しているからこそ頷く彼の様子に頷き返すが‥‥何時の間にか浄炎の背にいた彼が調子に乗れば、その少年へ視線を移しつつ窘めると彼を旭の前へと差し出すのだった。
●夕焼け小焼け
「お腹空いたー!」
「我慢我慢」
 日もとっぷりと沈んだ頃、寺にて皆へ宛がわれた部屋に響くのは子供達の悲鳴だったが皆の中央に立つ律吏は先から変わらない句を紡ぎ、子供達を宥めれば
「そもそも人間、何時いかなる時にでも自分の我が通る訳ではない。人生を人と付き合い、時間と付き合い、自然と付き合い生きて行くには我慢も時には肝要で‥‥」
 『忍耐』に付いて再び語り出して微笑み、耐える子供達を見回すも
「そら、まだ足りてない」
 もう何度、手の甲を叩いた事か未だに元気が有り余っている少年の再度窘める。
 これより僅か前、境内の掃除をしていれば彼が見せる反応もある意味では当然だった‥‥が、改めて辺りを見回せば、先まで大人しかった子達も落ち着きがなくなってきてか肩を揺すり始めているのに気付いて律吏は貴政を見やり、頷くと
「よっし、食べていいよー!」
「いっただきまーす!」
「あ、こら。挨拶はしっかりしてからだぞ」
「むへ?」
 響く食事当番の掛け声に子供達、一斉に声を上げ感謝を込めて食前の挨拶を響かせ食事に取り掛かるが、やはり一部の子は待ち切れず挨拶をせず臨めば律吏に窘められるも、時既に遅し。
「‥‥ま、これだけ我慢したんだ。美味しいだろう?」
「美味しい!」
「嬉しいねぇ、まだご飯は沢山あるからお代わりしてな」
 彼へ苦笑を返しながら美麗な面立ちの侍は子供達へ問えば、即座に返って来た答えへ誇らしげに笑って彼は皆を促すと貴政へ子供達は一斉に頷き、美味なる夕餉を頬張るのだった。
●月下夜光
 そして夜の黒き空に眩しき月が浮かべば寝るまでの間、語られるのは冒険者である皆が様々に体験して来た冒険譚。
「‥‥と以上、巨大芋虫との奇妙な触れ合いでしたー」
 今紡がれていた、貴政の話が終わると反応こそ様々ではあったが表情を見る限りは概ね好評だった様で、思わず安堵の溜息を漏らす食事当番。
「目の前の事件を解決するだけでは助けられない事はある。でも‥‥出会って伝えた事が先々何かの糧になってくれていればと思っている。勿論、今回の寺子屋もな」
 すると彼の後、先に話を終えた旭がぎこちなく微笑みながら言うと意味にこそ首を傾げる子供達だったが、彼の真意は何となくで察しそれぞれ違う面持ちで旭を見つめ頷くも
「さて、それでは今日の出来事を発表して貰おうかな」
 次に響いた、烈閃の要求していた課題の提出を求められれば子供達は皆一斉に悲鳴を上げるのだった。

 と、この様に時間は毎日が慌しいながらもそれぞれが何かを充実させながら、日々を過ごすのだった。

●これからは知らず、されど
「そっちは終わったかな?」
「‥‥うんっ」
 最終日、五日間過ごした中で一番に豪勢な昼食を済ませた一行と子供達。
 一息だけ入れた後、烈閃の提案から皆で揃ってお世話になったお寺を出来る限り隅から隅まで掃除すれば、一通り確認して回る御門の問い掛けに暫しの間を置いてだったが、元気良く頷き答える当初は引っ込み思案だった女の子。
「それじゃ、境内の方へ行こうか」
 その彼女が浮かべる笑顔に釣られて御門も微笑めば、その手を取って境内目指し歩いて辿り着けば‥‥どうやら御門ら以外は全員、揃っている様子。
 その彼ら、慌てて皆の輪の中へと駆け込めば全員が揃った事を改めて確認した後に美麗な眉根を引き締めて烈閃が口を開くと
「態度や行動と言うのも、ある意味で一つの言葉だと言うのを覚えておきなさい。人は言葉で分かり合う生き物だ。だが言葉と言うのは、使い方一つで人を幸せな気持ちにもする事もあれば、酷く誰かを傷つける事もある。だから、よく考えて使わなければいけない。それを知って欲しい」
 真摯な面持ちにて子供達を見回し言えば、分かった様な分からない様な表情を湛える子供達を見て烈閃。
「ま、そう言う訳で皆に寺の掃除をして貰った訳だ。そしてこれで此処での寺子屋を終わりにする。皆にとって良き体験になったのであればいいが‥‥」
 自身、言った事に少し照れ臭さを覚えて頬を掻きながら真意を口にするも‥‥子供達は静かなまま。
「それでは最後に、お寺へ礼を言って解散にしよう。ありがとうございました!」
 その反応に対し、烈閃は僅かに神妙な面持ちこそ湛えるが最後に皆へそれだけ告げると率先して寺を見やり、一礼と共に感謝の意を叫んだ。
『ありがとうございましたー!』
 すると次に響く子供達の、寺にではなく一行へ向けての一礼に皆は暫く唖然とし‥‥遅れて笑顔を浮かべると、冒険者達もまた子供達へと頭を下げるのだった。
 確かに皆がそれぞれ、触れ合いを通して何かを学んだ事に感謝して。

 〜終幕〜