【何でもござれ】ドッキリビックリ七五三
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 72 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月12日〜11月19日
リプレイ公開日:2006年11月20日
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●オープニング
●とある村にて
『可愛い子には旅をさせろ』、と言う諺を文字通りに実践させている村があると言う。
「‥‥とは言え」
「今年はちょっと状況が、ねぇ」
と言う事で場面はその村の大きな家が中に移る‥‥と村内の大人達が介し、今年の七五三をどうするかで皆が一様に悩み、丁度嘆息を漏らしていた。
例年であれば先の諺の様に子供達だけを送り出しては伊勢神宮まで行かせれば、その道中にて大人達は子供達の精神を強く育むべく障害を設けてはそれを乗り越えさせているのだが‥‥今年はどうにも状況が違うらしい。
と言うのも伊勢もそうだが京都全体で見ても実の所は此処最近、余り宜しくない話をたまに小耳に挟んでいたからこそ。
不透明な状況だとは言え、その中を子供達は当然ながら、自衛手段が殆どない大人達だけで執り行うのはどうか‥‥と言う話が出れば今、大人達は今まで長い間途絶える事がなかった伝統をどうするかで悩んでいた。
「しかしこの儀式は長い間、村で行なわれている唯一の伝統‥‥途絶えさせる訳には」
故に村長はその伝統の断絶を恐れ、渋面浮かべ言い渋るも
「でもそれじゃあ、何かあった時はどうするんですか‥‥!」
「あぁ、分かっておるよ。だから困っておるんじゃ」
「気持ちは少なからずとも分かりますが‥‥でも、そこまで分かっているのなら困る必要は何処にもないんじゃなくて!」
無論、今年の七五三の対象である娘を持つ母親に凄まじい剣幕で詰め寄られれば、蓄えられている豊かな白い顎鬚を撫で母親を宥めるも、その答え方に益々彼女はいきり立てば母親の気迫を前に後ずさる村長だったが
「あの‥‥それなら、冒険者の方に任せてみてはどうでしょうか? ドッキリさせる側と子供達を護衛する、その両方をやって貰えれば‥‥」
つい昨年にこの村の娘と結婚し、ようやっと馴染んだばかりの青年の声が場に弱々しくも響けば皆は暫し考え込むのだった。
●抜擢
「だからって何故、俺にそんな役回りが回ってくるんだー!」
「暇だと言う話を聞いたのでな、お前の主から」
「‥‥それを言われるとなぁ」
と言う事で場所は変わり、京都の冒険者ギルド。
ギルド員から急に呼び出しを喰らう、騎士のヴィー・クレイセアは彼より依頼の話を聞くなり思わず叫ぶも‥‥青年より次の話を切り出されれば事実、何をしているのか慌しく駆け回っている主の通りである事から言い淀む他になく、彼は自身の銀髪を掻けば観念すると
「今回の依頼の主たるは村から伊勢神宮までの道中、子供達の護衛だな。そのついで、子供達の前に障害を設置して驚かせては強い精神を養わせる‥‥聡い子もいるだろうから、簡単に人為的だとばれるのは宜しくないか」
「何度も言わずとも分かる。まぁ‥‥そうだな、子供達の未来の為ならば止むを得ないだろう」
「因みに存在は気付かれない様にな、冒険者であると言う事も同様にだ。子供達が自身で出来る事はさせる様に」
「‥‥全部駄目か、面倒臭いな」
ギルド員は改めて口を開き、今回の依頼内容を述べるも不機嫌そうな表情を浮かべているヴィーはそれとは裏腹に真面目な声音でさも当然と言わん様に言い放つも‥‥次に響いた彼の警告を聞けば騎士が渋面を浮かべるのは当然だったが
「まぁお前一人だけ、と言う訳ではないから大丈夫だろう‥‥皆と協力して事に臨んで欲しい。頼んだぞ」
「任せろ、子供達を阿鼻叫喚の地獄絵図な憂き目に遭わせるのなら多分得意だ! 何かと言えば自身、意外にも驚き易い性格の割にはな!」
書き終えた依頼書を貼りながら、青年がもう一言だけ添えると‥‥すぐに返って来た騎士の返答に対してギルド員は訂正の一言を付け加えるのだった。
「‥‥やはり心配だから、同道する冒険者の指示に従ってくれ」
「ぇー」
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依頼目的:七五三を迎える子供達の護衛(ドッキリ込み)!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
対応NPC:ヴィー・クレイセア
日数内訳:移動七日(往復)、依頼実働期間はその道中丸々。
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●リプレイ本文
●旅は道連れ、世は情け
長く大きな街道にて、何やら妙な一団が見受けられたのはそろそろ風も冷たくなって来た十一月は初旬の頃。
その一団とは皆が皆、三歳から七歳程度の幼き子ばかりが五人だけだったから当然と言えば当然だろう。
尤も季節柄、知る人は少なからずともいるその光景に一団とすれ違う人々はそれぞれに様々な反応を見せていたが
「大人は一緒じゃないんですか?」
「うん、毎年の事だからね」
「もう一人前って認められているんですね‥‥凄いです」
「そんな事な‥‥ってて! 何だよ、いきなり足なんか踏んで!」
「知らないわよ!」
一団の中心で旅の目的が同じ事から同道したチサト・ミョウオウイン(eb3601)が感嘆の声を上げると、彼女と話していた男の子は首を左右に振りながら‥‥それでも嬉しげな表情を浮かべると直後、その傍らを歩いていた女の子に足を踏まれる事となれば、その微笑ましい光景にその一団が分からずとも顔を綻ばせていたのは事実。
「まぁまぁ二人とも落ち着くのだ。何はともあれ、道中の御友達が出来て良かったのだよ〜。旅は道連れ、世は情けなのだぁ〜」
「そうですね」
そんな一団の先頭‥‥進むべき方角に背を向けて歩きながら、子供達の集団を引き連れては一触即発な様相を示す二人の子らへ、一団の中で唯一の大人である玄間北斗(eb2905)が明るき声音を発し宥めれば、チサトもまた頷くと
「ん、分かった」
先に女の子と揉めていた男の子は懲りず、嬉しげに首を縦に振れば彼女が無言の鋭き視線を浴びたまま、目的が伊勢神宮への七五三参りと偶然にも一緒だった二組は歩き続けるのだった。
尤も途中で偶然を装って合流した二人が実はその村の大人達から密かな護衛兼、道中のトラブルメイカーを依頼された冒険者である事を当然、まだ知らない‥‥。
●
そんな一団を影から見守る者あり‥‥それなりに一団から距離を置き、木陰より見守るのは北斗達と同じ依頼を引き受けた冒険者達。
「しかし‥‥変わった風習よねぇ」
「ふむ、そうだな」
「何だってこんな面倒臭い事を‥‥いずれは親元から旅立つってぇのに」
その光景を遠目に捉えつつ、紡いだ言葉の割に感心する源真弥澄(ea7905)に同意しながら辺りを鬱蒼と包む木々に苦戦しつつ前へ進むヴィー・クレイセアの返事へ呆れる様にクリスティーナ・ロドリゲス(ea8755)が肩を竦めるも、身軽な足取りで彼を追い越せば
「いずれ旅立つのなら自分達が見送れる時に、って言う事でしょう。きっと」
「そんなもんなのかねぇ」
「‥‥何時か、私もあんな風に子供達を旅立たせる事があるんだろうか」
「もしかして、好い人でもいるの?」
「あ、いや、その‥‥」
木陰を密かに進む一団が最後方を進んでいたシルキー・ファリュウ(ea9840)が今回の護衛対象である子供達の親が気持ちになってハーフエルフの彼女が疑問に答えるも、先を進んでいたクリスティーナはシルキーの言葉を理解出来ずに振り返れば半眼湛えて首を傾げるが、彼女は苦笑を浮かべると再び視線を子供達が一団へ向ければ‥‥静かに呟いた筈の独り言が弥澄に聞かれてしまい途端、言い淀むも
「おいこら下郎共、そんな話よりもまずは将来有望、未来安泰な子供らを追い駆けなくて良いのか」
「っと、そうだな。でもそんなに体力が有り余っているなら、こいつを持っていてくれよな」
「なっ、貴様いきなり何を!」
「か弱い女性ばかりなんだから、少し位いいじゃない」
「‥‥っ、しょうがあるまい」
次にヴィーの叱咤が響くも、クリスティーナはそんな彼の態度など気にする事無く狩猟用の小道具が詰まった袋を放れば、その事に文句を言った彼は直後に弥澄に窘められると止むを得ず袋を携え、大人しく従うのだった‥‥が尤も、大人しかったのはこの時だけだった事に影なる護衛達はやはり知らなかった。
●試練の刻 〜甘口?〜
さて早速、その道中へと視線を移そう。
「父様もかあ様も冒険者なんです。私も‥‥大きくなったら、父様達の御手伝いが出来る様にって、魔法を教えて貰ったり御勉強したりしているんですよ」
「じゃあ今回の七五三は私達と‥‥」
「同じ、ですね。両親は二人とも今、依頼を受けている最中なので」
「それでこのおにいちゃんがいるのかー」
「そうなのだよー」
「うんうん、なるほどなるほど」
出会ったばかりの頃に比べると今ではすっかり和気藹々と会話を交わす様になった、チサトに北斗と子供達。
互いに自身の話を交わせば見えてくるそれぞれの状況を‥‥果たして本当に分かっているのか、のんびりと相槌を返す五歳だろう男の子へ皆が視線を向けてはその表情を緩ませた、その時。
「危ないっ!」
風切音と共に辺りへ響いた声に早く反応した北斗が手前を歩いていた幼子の着物が襟を掴み引き寄せればすぐその後、一瞬前までその子の頭があった位置を貫く木の矢を一団は確かに見て顔面を蒼白にするも
「大丈夫かっ!」
「う‥‥ん」
場の動揺を気にせず、藪の中から飛び出して来たクリスティーナが叫び尋ねればすぐにその雰囲気を察して彼女。
「済まないな、うっかり手元が狂って獲物から逸れてな‥‥ってどんな集まりだよ」
子供達の近くを掠めるだけの狙いが言葉の通り‥‥その内容こそ違うが、あわやの事態に陥ったかも知れない事を本気で詫びると
「ま、精々道中は気を付けろよ。色々な無理やら無茶が何時、何処で降って来るか知らないからな‥‥」
自身の事は常日頃の事とさて置いて、子供達の一団へ唇の片端を上げては警告を告げると肩をいからせ歩き出せば、その仕草にて子供達を密かに威圧させつつ去っていくのだった。
●
とそんな事があったからこそ、出鼻を挫かれた子供達はそれより迷走する。
「ごめんなさい‥‥」
「まぁ過ぎた事を悔やんでもしょうがありません、よね?」
「そうなのだ、それに夜営もまた良い経験になる‥‥と言う事でこれから、皆で今日の夕飯を作るのだー」
それは二日目、日が沈みかけ夜を迎えようとする刻になればその日の日中に先導する北斗の密かな罠‥‥道中にて子供達が興味を引く物の傍を幾度も通り過ぎる、と言う罠に掛かってしまった彼らはまだ暫く、必要な旅の路銀が心もとない事を唯一の大人に漸く打ち明けるとそれでも笑顔を湛える北斗の提案によりまずは今日、この道中で初めての夜営を行なおうとしていた。
「さて、本番本番っと‥‥ほらヴィー、さっき預けた道具をよこせ」
そしてそれは無論、影なる護衛達も知っておりクリスティーナが最初のミスを帳消しにすべく奮起すれば振り返るなり事前に聞いた話と今の所は違う、大人しいままの騎士へ手を突き出し言うと
「我の靴を一度舐めたら、一つやろう」
「‥‥本気か?」
「月に昇る勢いで本気だが」
突拍子のない答えに彼女、こめかみに青筋立てて詰め寄るも何を考えているか分からない騎士は至って真剣な面持ちで答えれば途端、始まる取っ組み合い。
その先手はクリスティーナが取り彼の肩を掴んで組み合えば、負けず嫌いなヴィーもそれならばと応じるが
「ばれるから、こんな所で揉めない」
「むぅ」
すぐに弥澄に窘められる事となり、軍配で頭を叩かれたヴィーは呻くも相手が女性である事をここで何故か思い出すと止むを得ず自身から折れ、クリスティーナより預かった荷物を返せば子供達を見守っていたシルキーが彼らの動きを察し、皆へ声を掛けた。
「そろそろ動くみたいです、私達も動きましょう?」
そして月が僅かずつ高くなれば星が輝きを増す頃‥‥子供達の全員が全員、動き出してから二時間は軽く経過してから漸く夕食にありついていた。
「ちょ‥‥っと、度が過ぎたかな? 幾ら罠って言っても荷が勝ち過ぎたかも知れないね」
「数が多かったかもな」
「私は少しだけのつもりだったけど」
そんな彼らを影から見守りシルキーは大分くたびれた様子を見せる子供達を見つめ、頬を掻くと‥‥草葉を結わえる等のお手軽簡単な罠を数多こさえたクリスティーナが反省すれば、子供達が夜営場所を離れた後に場にいたチサトと打ち合わせた上で必要な道具を幾つか隠した弥澄はその後、子供達が戻って来るなり見せたドタバタ劇を思い出しては苦笑するが
「‥‥ちょっと、行って来ますね」
「気を付けて」
「なら我も‥‥」
「あんたは此処にいなさい、それよりも‥‥」
意気消沈とする子供達の様子がとても気になるシルキーはいても立ってもいられずに立ち上がると、その気持ちを察して弥澄は引き止めず彼女を見送るが次にヴィーも立ち上がって彼女の後に続こうとすれば、それは引き止めて志士‥‥何かの存在に気付き辺りへ視線を配すると次いで、嘆息を漏らすのだった。
「今日は色々と慌しい事」
しかしそんな事は知らないシルキーは放浪の吟遊詩人と名乗り、子供達と接触すれば一団が七五三参りの途中である話を聞いてから、それならばと皆の為にと弾き語りを披露する。
それより彼女、「ちょっとしたおまじない」と言っては微笑み竪琴掻き鳴らせば、銀色の光をその身に纏わせる中で遂にはその口から様々な物語を紡ぎ出す。
「こ、怖いよぉ‥‥」
「まだまだ子供だなぁ」
それは時に遠くで荒々しく鳴る、草葉が奏でる音で子供達を驚かせながら‥‥それにも拘らず彼女は終始笑み、今までに自身が経験してきた話の数々を竪琴から奏でられる音に乗せる。
「これで私の夢語りはお終い‥‥まだ旅路は長いかも知れないけど、頑張ってね」
しかしそれは永劫ではなく、時期に全ての音が止めばシルキーは竪琴を仕舞うと最後‥‥様々な表情を見せていた子供達を見つめて、呪歌を使わずに本心からそう願うからこそ一団の健闘を祈って立ち去るのだった。
●試練の刻 〜少し辛め〜
さて、道中もやっと終盤‥‥近年稀に見る不運、と言うか試練続きな一団は伊勢神宮を目前に、道を見失う。
尤もその手引きは子供達より早く出発しては先回りに成功した冒険者が別働班、伊勢神宮への道案内が立て看板を引っこ抜いたからこそで、無論惑う子供達。
「ねぇ北斗、どうすればいいかな‥‥?」
「一人前なら、自分の行動に責任を持つものなのだ。人に頼る前に自分でやれる事、やらなきゃいけない事をちゃんと考えるのだ」
「うーん‥‥」
さすれば一団の中で唯一の大人である北斗に尋ねるのは当然であったが、子供達の中で一番の年長者が問い掛けに対して彼は厳しい答えを返すだけで、彼は次に窮するも
「じゃあこっち!」
ざわめく他の子供達を前にすれば先日出会った吟遊詩人の激励を思い出すと何時までも惑っている訳には行かず、他の皆を呼び寄せれば相談の末に先ずは二股に分かれた道が一つを指し示した。
「こっちの道で合っていたか?」
「伊勢の界隈に住んでいるのに、この辺りの道を知らないんですか?」
「見ざる、言わざる、聞かざる」
丁度同じ刻、影で子供達を見守る護衛者達がヴィーは彼らが行く先を見つめ、誰へとも無く問えば呆れるシルキーに対して彼はしらばっくれると
「ま、今は付いて行く他にないわね‥‥ってこら、ヴィー!」
「やはり黙って見てはいれん!」
シルキー同様に呆れて弥澄、惑いながらも先に立って道を進む子供達へ視線を移した時‥‥皆を覆う藪を飛び出したヴィーの後姿をすぐに見止めれば呼び止めるも、無論止まる筈も無く彼は単身、先を行く一団の元へ駆けるのだった。
「なら抜かなきゃいいのに‥‥」
弥澄が湛える苦笑を勿論、見る筈も無く。
その頃、先を進む子供達が一団は伊勢神宮を探し放浪を続けていた‥‥無論、北斗の口添えがないままに。
「もしかして、迷った‥‥かな?」
「かも、知れませんね」
しかし未だ視界の片隅にすら見えない伊勢神宮を懸命に探す子供達の一人が不安の声を遂に上げれば、チサトはそれを否定せず‥‥肯定もしなければ、再び動揺する子供達。
「どうしよう」
「何でも出来る人なんて一人もいません‥‥だから、誰もが自分に出来る事を精一杯にするしかないんです。そうすれば」
不安はまだ幼き皆へとすぐに伝播するが、それでも諭す様にチサトが皆へ優しい声音を響かせて呼び掛けた直後。
「引き返して、最初の道を右だな」
「え?」
「だから正しい道は向こうだ、そこから先は我も分からないから他の者に聞くがいい」
背後から唐突に現れる、厳つい鎧を身に纏った闖入者に子供達は一斉に驚くが彼はそれでも正しき道を指し示すと、答えこそ貰うが子供達は彼の真意が分からずに首を傾げると
「一生懸命生きているから、頑張っているから‥‥誰か、手を差し伸べて御手伝いしようって思うんです。でも何時もそれを期待してはいけませんよ?」
「‥‥うん!」
「ま、そう言う事だ‥‥とそれじゃあ頑張れよ、ボーイズ&ガールズ!」
その理由、先に紡いだ話の続きを説いてはチサトが微笑むと、彼女の意に同意する騎士とチサトを見比べて子供達が暫くの間を置いた後に頷き返せば、その騎士は背後を振り返り一瞬だけ固まると、次には高らかに手を掲げ一団を激励しては恐るべき速さで去って行った。
●
「つーかあいつ、何処に行くんだ?」
そんな光景を遠くより見守りながら三人‥‥そのやり取りを子供達が今、浮かべる表情から何となく察して顔を綻ばせるも、だがまた違う方へ駆け出すヴィーにクリスティーナは何事かと半眼湛えるが‥‥その理由はすぐに分かる。
「‥‥伊勢神宮への案内板、抜いたのは君達かね?」
「あ‥‥」
直後に背後より何者かから声を掛けられると三人、ぎこちなく振り返れば‥‥何時の間にやら背後に立っていた伊勢神宮の神官だろう男性と視線が合うと彼女らは揃い微笑むが、彼の表情は厳しいもので次に場が凍る中、ヴィーが置いていった件の看板だけは我関せずと虚しくも乾いた音を立てて三人を笑うかの様に倒れた。
●それからそれから‥‥
しかしその後は何事もなく、伊勢神宮まで至った一団は無事に七五三参りを終えると帰路は北斗達と別れて故郷の村へ帰り着けば、驚きの光景を目の当たりにする。
「良く頑張ったね、お帰り」
それは道中で知り合った吟遊詩人ことシルキーの労いに、僅かだが見知った幾つもの顔が居並び出迎えてくれる光景で、それから漸く一連の騒動が真相に子供達は気付くが‥‥だからこそ彼らは笑顔で一行の元へと駆け寄るのだった。
〜終幕〜