【伊勢巡察隊】市街防衛

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 16 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月01日〜06月12日

リプレイ公開日:2007年06月08日

●オープニング

●伊勢市街
 まだ日も高い、昼の内‥‥伊勢市街では最近見慣れた光景が何時もの様に展開されていた。
「お、おいっ! また鬼が出たぞー!」
 その光景を前にすれば唐突に男性の野太い声が辺りへ響き渡ると町民達は一斉に、己が家を目指して今日も駆け出す‥‥何時から、と言われれば本当につい最近の事で町民達でも答えようがないが二日か三日に一度はやって来るその群れに町民達は成す術なく、家に隠れては伊勢の藩士達が来るのを待つだけ。
「まぁた、あのちんまい鬼かい」
「とは言え、武器も持っているし‥‥怖いねぇ」
「とりあえず、隠れる他にないだろう。ほら、早く! 時期に藩士が駆け付けてくれるから」
 今の所は大きな被害もない事から駆けながら言葉を交わす町民達はしかし、軽い調子の割に表情に暗い影を僅かだが宿している。
「しかし一体、近頃の伊勢はどうなっちまったんだい‥‥」
「あちこちで嫌な話しか聞かないしねぇ」
「国司様に藩主様は良くやってくれるけど、この状況が何時までも続く様じゃ」
 それは伊勢藩にて再び漂い出した不穏な空気‥‥町民達でも過去の事例からそれを敏感に察している為、百鬼夜行に包まれた一時の伊勢の街並みを思い出しながら家路を駆ける町民達は自身の家へ着く頃には不安だけ募らせていた。
「天照様、どうか私達をお守り下さい‥‥」
 伊勢藩が頼りにならない訳ではない、しかしこの状況において人々は以前にも増して祈るのだった‥‥天照大御神へ。

「‥‥そうか、分かった。引き続き警戒の強化を行ってくれ」
 その日の夕刻、部下達から鬼達の鎮圧が報告を受けて伊勢藩主の藤堂守也は鎮圧自体、然程の時間を要さなかったとの話を聞いても尚、難しい表情を浮かべていた。
「頭の痛い話ばかりじゃの」
「北畠様‥‥客人の対応は宜しいのですか?」
「なぁに、構わんて。市街がこの様な状況ではおちおち話してもおられんわ」
 そんな折、部下達と入れ違いに入って来た伊勢国司が北畠泰衡には先日来たばかりの客人に付いて問い尋ねるも、国司として至極全うな答えが返ってくれば
「で、どうすべきかの?」
「‥‥民の不安は払拭したい所。そうなれば伊勢藩として大々的に打って出て、その根源を完全に叩く他ないでしょう」
「その間、市街の防備は?」
「無論、行います。しかし藩士の大部分を動かす為、冒険者を中心に構成した伊勢巡察隊の再開を考えています。多からずとも過去に実績はありますし、人々にとっても知れた存在なれば」
「伊勢が抱える軍備の一つ、と受け止めて貰えるのなら構わんじゃろ」
 渋面を湛える藩主に国司がその場に座り込み改めて問い質すと‥‥暫しの沈黙の後、答えを紡いだ守也へ尚も上がる問題に付いて尋ねればそれにはすぐ、伊勢藩主が返すと僅かだが考え込んで後、泰衡は頷くが
「しかしそうなると、華倶夜の面々はどうするのじゃ?」
「それは追々、と言う事で現状は待機を命じています。むしろ今はまだ動く時ではないかと‥‥色々と解決せねばならぬ事がありますので」
 名前が上がっていない部隊に付いて最後、確認をすれば益々顔を顰める守也に苦笑を返して国司は漸く立ち上がるのだった。
「‥‥小物ばかりと言う話じゃったし、問題なかろうて。好きにするが良い」
「はっ、早急に掛かります」

――――――――――――――――――――
 依頼目的:伊勢市街の界隈を徘徊する鬼達から、市街へ被害出さぬ様に守り抜け!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は伊勢藩が準備する為、不要です。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
 また伊勢巡察隊の証として利き腕とは逆の腕に付ける緋色の肩布は依頼期間中のみ配布、貸し出しますが決して乱暴狼藉は働かない様に‥‥大丈夫かと思いますが、その際はどうなっても知りません。

 対応NPC:藤堂守也(期間中、同道はせず)
 日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は一週間。

□伊勢巡察隊に付いて
 過去、有事の際に冒険者を募り、彼らを中心に構成して市街の防衛に当たった部隊。
 町を、人を守る為に創られた組織だが完全な確立は未だされておらず、状況によって伊勢藩主がその都度、編成しているが存在自体は隊証として通っている緋色の肩布と共に伊勢に住まう人々は多からずとも知っている。
 尚、人々と市街の防衛に当たって必要とされる権限に付いては最低限与えられる。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ec2130 ミズホ・ハクオウ(26歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ec2502 結城 弾正(40歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ec2719 トゥ(36歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec2738 メリア・イシュタル(20歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ec2942 香月 三葉(36歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●集いし剣
「ここが伊勢かぁ、美味しい物が多いと聞いたけど楽しみだね‥‥って、仕事で来たんだった」
「でも、時間があればお伊勢参りには行きましょうね」
「そうだね!」
 伊勢の市街が門前にて、集うは五人の冒険者‥‥皆が皆、伊勢を訪れるのが初めてだからこそその中の一人がコロポックルのトゥ(ec2719)が道中より湛えていた笑顔を絶やさず言えば、しかし依頼での来訪である事を思い出すとすぐに自身を戒めるがミズホ・ハクオウ(ec2130)がその後、金髪をたなびかせながらも穏やかな声音にて呼び掛ければ笑顔を弾けさせ応じるトゥだったが
「しかし‥‥話の通りだな」
「何が、ですか?」
 次に響いた結城弾正(ec2502)の厳かな声が響けばそれを聞き止めてはマイペースに小首を傾げては尋ねる僧侶の香月三葉(ec2942)と共に視線を改めて市街の方へ注ぐと
「伊勢の民は不安に慄いている。何とはなくだがその雰囲気が伝わってくる‥‥これを少しでも払拭するには我等が姿を人々に見せ続けるしかないと思う。体力的にはきついが、短期間故に乗り切ろう」
「うん。戦うのはまだ慣れてないけど、頑張るよ」
「初めてのお仕事ですけれど、街の平和の為に頑張らせて貰いますよ」
 何となくではあるが、市街に漂う雰囲気を察して三葉の問いへ弾正が答えを返すとこれよりやるべき事を改めて皆の前にて告げれば、トゥはやはり三葉と共に再び頷き応じると
「それでは鬼退治へ出立される藤堂さんの元へ一度、参りましょう」
 他の皆もまた頷いたのを確認してから、強く吹いた一陣の風に白き髪を舞わせながらメリア・イシュタル(ec2738)が促すと一行は初めて伊勢へその足を踏み入れた。

●市街防衛の為
 やがて伊勢藩主が藤堂守也の元を訪れた一行はその後、伊勢市街の比較的中央に位置する『伊勢巡察隊』の仮詰所への出頭を促されれば急遽集った仮拵えの隊員達と伊勢藩士らが揃う中、再び結成された『伊勢巡察隊』が前にて伊勢藩主は毅然とした態度にて皆へ向かい、伊勢の情勢等を事細かに話す。
「‥‥それでは以上。暫くの間、市街を宜しく頼むぞ」
『はい!』
 そして暫し‥‥その最後を締め括ると、返って来た返事を聞いて顔を綻ばせれば藩主は踵を返して仮詰所を後にすると
「これより伊勢藩の主力が抜け、残る伊勢藩士と協力して『伊勢巡察隊』が市街防衛の要となる。各々やるべき事、先に話した伊勢巡察隊の心構えを忘れずに臨んでくれ‥‥それでは、解散」
 『伊勢巡察隊』が取り纏め役だろう、意外にも年若い藩士が続き簡潔に挨拶をすれば早く場を解散させると幾つかの組に別れる中で一行。
「それでは、俺達も続くとするか」
「最初でもあるから‥‥そうね、一先ず皆で町へ出向きましょう」
 続々と仮詰所を後にする組を見つめながら弾正が皆へ声を掛けるとハクオウもそれには賛成して緋色の肩布を巻きながら頷けば、皆を見回しては言うとその最先に立っては一番に外へ出た。

「ほう、久し振りじゃな」
 それより、一行は自身らが担当する職人達が集まる区画へと揃い足を運べば‥‥緋色の肩布を一様に巻く皆の姿を見て僅かにではあったが顔を綻ばせる住人達。
「鬼の件でなくても、もし何か困り事があったら遠慮なく教えて下さいね」
「夜はなるべく出歩かないで、戸締りをきちんとして下さい」
「あぁ、分かっているよ。あんたらこそ無理するんじゃないよ」
 その、多少なりとも柔らかくなった雰囲気の中で尚もハクオウと三葉が住民達に顔を覚えて貰うべく意をも持って笑顔で声を掛ければ、それにも応じる人がいるのを見て長き槍を担いでは威風堂々と闊歩する弾正。
「伊勢藩の主力が抜けた事は既に町の人々へ知れているも‥‥存外に悪くない雰囲気だな」
「過去の『伊勢巡察隊』の実績もあるんだろうけどね」
「そうなると、これから『伊勢巡察隊』が町の皆に与える影響は‥‥」
「私達が少なからず、担う事になりますね」
「うぁ、そう考えると少し少し緊張してきた‥‥かも」
 先の藩主が話を思い出し、しかし意外にも気さくな人々の姿を見れば安堵するもトゥが何気なく呟けば、それを聞いて彼は今更にその名の重さに気付くと頷くメリアの傍らで笑顔を浮かべながら、声音だけは振るわせるコロポックルだったが
「そうですね、でも‥‥」
「これだけやり甲斐のある仕事は中々にないだろうな」
「えぇ、ですから先ず私達は私達なりに出来る事を確実にしていきましょう」
 再び頷いては白き髪を携える幼き戦士が微笑むと、その後を継いで弾正が鼻を鳴らし静かに笑えば三葉がその最後に言葉にして締め括ると改めて決意を固め、頷く一行。
「うぉーい、一寸済まん! 陳列していた刀剣の類を入れていた棚が纏めて崩れやがった! 悪いけど手伝ってくれねぇかー?」
「あ、はい‥‥少し、お待ち下さいね」
 その直後、一行から多少前にある刀剣を取り扱う店から助けの声が響けば応じるメリアの声が掻き消えるより早く、一行はそちらへと駆け出すのだった。

 それから暫く‥‥一通り担当する区画を見回った一行はやがて交代制に切り替えると、先ずは弾正にトゥとメリアの三人が堂々と笑顔を絶やさず穏やかに街中を見回り、人々と会話を交わせば
「交代ですよ、ここは私に任せて暫くはゆっくり休んで頂戴」
「ありがと」
 交代を告げに来たハクオウに肩を叩かれたトゥはやはり笑顔にて彼女の申し出に応じると、他の二人に頭を下げては仮詰所へ踵を返す彼女。
「ただいまー」
「お疲れ様です」
「うん、一仕事後のお茶はおいしー」
「長い事見回りをするんですもの、何時も張り詰めては疲れるだけですからね」
 元気良くその戸を開ければ出迎える三葉の前へ腰を下ろすと、すぐに自身の目前へ出されたお茶を口に含めば笑顔で僧侶へ頭を垂れるとその感謝の意を前に三葉も笑顔で応じるが
「そう言えば、鬼の姿は見ましたか?」
「今日はまだ‥‥見てないかな?」
「こっちもだな」
 一番の懸念である鬼達に付いて次いで尋ねるとトゥは首を傾げて考える事暫し、やがて口を開けばその答えに追従する様、別の『伊勢巡察隊』に所属する藩士も頷くと
「‥‥早速、伊勢藩の主力が鬼達の中枢にぶつかっているのでしょうか」
「さてな、今の所はまだ連絡がないみたいだがその可能性もあるだろう」
「でも、まだ始まったばかりだよ?」
 その話を踏まえて三葉は日が落ちてきた外を見ながら己の推測を並べるが‥‥鬼退治へ出向いた伊勢藩主力からの定時連絡がまだである事を先の彼が言うとトゥが此処で口を挟めば、直後に揃って呻く三人だったが
「‥‥とにかく、見回りしてきますね」
 ここで考えていてもしょうがないと三葉が割り切れば、眠気覚ましの香草が入ったお茶が注がれる湯飲みを置くと立ち上がり言えば、仮詰所の出入口へ向かおうとし‥‥踏み出したその一歩目で唐突に足元を滑らせ転べば、強かに打ち据えた額を撫でながら至って真面目な面持ちにてマイペースに呟くのだった。
「‥‥このまま、鬼が出て来なければいいんですが」

 そして刻は過ぎ、夜も夜中。
「皆、しっかり戸締りをしているね‥‥あっ」
 月が雲に隠れる中で提灯を掲げては一軒一軒、丁寧に裏口までも確認してトゥが戸締りの程を見て回っていたそんな時‥‥暗がりの中、僅かだが光った双眸を見て取ると自身なりに素早く物陰に隠れれば見守る事暫し。
「‥‥見付けちゃった」
 やがてそれが小鬼の群れである事に気付けば、最初こそうろたえる彼女ではあったがすぐに意を決すると近くの石材屋へ駆け込めば、近くに転がっている鋭そうな石を見繕い拾うと、すぐに詠唱を織り紡いでは己の周囲の光を屈折させて不可視の衣を纏うとたどたどしい足運びで子鬼達の眼前へ躍り出れば
(「えーと‥‥ここら辺?」)
 自身の存在に気付いていない事に先ず安堵し、次には歪む視界に惑いながらも軽く掴んでいた鋭利な石を子鬼達の進行方向だろう所へ静かにばら撒けば‥‥それを踏み締め、何事かと叫び駆け回るそれらを前にトゥ。
(「今の内、今の内に」)
 内心にて呟きながら残る片手で予め握っていた呼子笛を口元へ運べば、それを高らかに鳴らした。

「ぬぉぉっ!」
 それから大した時間も経ず、その場に真夜中の見回り当番だった弾正にハクオウが掛け付けると三人、自身らの丁度倍の数になる小鬼を前に怯まず正面からぶつかれば
「腕試しの機としては持って来いだな‥‥さぁ、次の相手はどいつだ?!」
「‥‥数は少し、多いわね。暫くは三人だけ、ちょっと厳しいかも知れないけど‥‥」
 長大な白銀の槍を裂帛と共に振るい、先ず一匹の小鬼を道の片隅へ吹き飛ばせば鼻を鳴らし挑戦的な笑みを湛え呟くも、一行の中で一番に場慣れしているハクオウは鳴弦の弓が弦を弾き、鬼達を牽制しながら場を改めて見回しては冷静に判断を下すも‥‥自身の背後から微かに響いた土を踏む音を捉えれば
「遅くなりました、援護します!」
「でも私達だって力を合わせれば、きっと中々のものよね」
「勿論です」
 次に眼前へ飛来する矢を見つめては響いたメリアの声を聞くなり、表情を綻ばせてハクオウは皆へ呼び掛ける様に言葉を紡ぐと、それに応じて遅れ参じた三葉も頷き返せば
「強くなりたい‥‥だからこそ私は、必ず守り通して見せます!」
 次いで一行目掛け飛び掛ってきた鬼達の意を拒むべく詠唱の代わり、己が意を高らかに掲げ放つと次の瞬間に構築された結界が皆を守るべく覆えば、三葉は眼前にて狼狽を露わにする鬼達へ毅然な瞳の光を持って貫くのだった。

「案外、何とかなるものだな‥‥」
「だから、言ったじゃない」
「‥‥ふっ、そうだったな」
 それから暫く‥‥と言う程の時間も経たず、鬼達は自身らが適わない相手と悟ってか踵を返しその場を去れば、未だ慣れない実戦を終えて弾正が安堵の溜息を漏らすとハクオウはその様子に苦笑を湛えながらも声を掛ければ、釣られ笑う侍だったが
「だが、あれは流石に俺達だけの手には負えないんじゃないか?」
「‥‥そうですね、応援を呼びましょうか」
 先まで雲の隠れていた月が今になって現れるとその下、先よりも数の多い子鬼達と少し装備がまともな小鬼を視界の中に収めれば、誰よりも早くメリアが判断すると再び街中に甲高い笛の音が鳴り響いた。

●それからそれから‥‥
 やがて、依頼期間である一週間を終え‥‥市街の様子は初日から変わらずに続くも、予定よりも早く戻って来た伊勢藩主以下、伊勢藩の主力部隊が鬼達の中枢の討伐を果たせば、それより後も鬼達の有無に拘らず『伊勢巡察隊』の任を全うした一行は初めて来た時と同じく今、市街の門前の前に佇んでいた。
「一先ずは何事もなく終わったな」
「えぇ、ですが何処へ行っても不穏な空気ばかり‥‥」
 一週間と言う長きに渡り滞在した伊勢の街を改めて見つめながら、名残惜しそうに‥‥しかし万事が上手く行った事に弾正が胸を撫で下ろすと頷くメリアではあったが、次に今こそ来た当初より穏やかだが初めて目の当たりにした伊勢の不穏からジャパンの各地にて起こる様々な事件を思い出せばその表情を曇らせるも
「それを払うのが私達の役目でもあるのでしょうか?」
「そうね、こう言った依頼ばかりじゃないけれど‥‥ね」
「それじゃあ、これからも頑張ろうねっ」
「あぁ、そうだな」
 初めての依頼を終えて三葉が改めて、これより自分が成さなければならない事を誰へともなく尋ねると‥‥果たしてハクオウが笑顔で応えれば、トゥが皆に檄を飛ばす中で弾正もまた力強く頷く様を見届けると彼女は自身がこれより歩むべき道を確かに見出したからこそ、頷き返せば
「それにしても思っていた通りに伊勢って良い所ね、今度は是非ゆっくり来たいわ」
「今度こそ、お伊勢参りをしにね!」
 その後、一行は踵を返し伊勢の町を後にする‥‥もその途中、ハクオウは最後にもう一度だけ市街の方へ向き直れば髪を掻き揚げながら呟くと、それを聞き止めたトゥもまた同じ気持ちにて笑顔を浮かべるのだった。

 こうして、伊勢の平和はまた一時だけだろうが守られた‥‥果たして次は何があるか分からずとも、しかし伊勢に住む人々は伊勢藩と『伊勢巡察隊』の存在がある限りは次も必ず守り通してくれると信じて止まないだろう。

 〜終幕〜