天照を探せ?
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■ショートシナリオ&
コミックリプレイ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 91 C
参加人数:7人
サポート参加人数:3人
冒険期間:06月14日〜06月23日
リプレイ公開日:2007年06月25日
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●オープニング
●素っ頓狂な依頼
京都、冒険者ギルドにて護衛の者を珍しく連れたってはやって来た伊勢は斎宮の王、祥子内親王は今日もギルド員の青年へ一つの依頼を告げていた‥‥が。
「‥‥済まない、もう一度言ってくれ。何を探して欲しいと?」
「天照様」
「‥‥‥もう一度、いいか?」
「だから、天照様」
「‥‥‥‥幻聴か?」
「あ・ま・て・ら・す・お・お・み・か・み・さ・ま!」
その内容から彼は己の耳を疑い何度か繰り返し聞くも、終いには怒鳴りたてる彼女の剣幕を見届ければ遂に嘆息を漏らし彼はその依頼‥‥天照捜索の依頼を彼女が本気で頼みに来た事に気付くと
「何でまた、と言うかそこら辺を闊歩しているものなのか?」
「人の姿になる事位、容易いでしょう」
「そうかも知れないがそもそも、伝承では‥‥」
しかし当然の様に思い浮かんだ疑問をぶつけてみれば、あっさりと返してくる斎王に戸惑いながら日本神話が一端を思い出してみるも
「どうやら、表向きにされている伝承とは一寸違うのよねー。その辺りの話はややこしいからまた別の機会にするとして‥‥調査の結果では天照様ってあちこちを流離っているみたいなのよ」
「‥‥何故」
「太陽神だから?」
「‥‥疑問系は止めろ」
それに対し、またしてもあっさりとした声音で答えを返されれば、その理由に付いて簡潔な言葉で尋ねる彼だったが‥‥首を傾げる斎王の答えにはやはり呻き訴えるが
「ともかく、人の姿を取っている可能性が非常に高い事が分かったからとりあえず手近な所から探そうか、と言う話になってね。ほら、伊勢も色々とやばい事になって来たしいよいよ持って神様の力も借りられるのなら借りたいなー、って」
「‥‥因みにだが、各地を流離っている以外の可能性はあったりするのか?」
「間違って何処かに封印されたとか?」
「‥‥だから疑問系は‥‥」
「何よ、その反応。とにかく色々とひっくり返してみたら最近になって漸く『人の姿を成しては下界に降りては今も、何処かを放浪し人々を見守っている』って記述のある文献を見付けたんだから、一先ずはそれを手掛かりに捜索しようって纏まったんだから依頼の内容に対しては変わりなしっ!」
その彼の様子は気にせず、祥子内親王が言葉を続ければ既に何度ついた事か分からない嘆息を漏らしながら最早疑問を紡ぐだけで精一杯なギルド員の青年へ再び首を傾げると不満げな表情を浮かべる彼へ遂には切れる斎王‥‥ってそんな反応で果たしていいのか。
「分かった‥‥それなら大まかな所在や分かれば天照大御神の身形に付いて、多少でも教えて貰いたいのだが」
「さぁ、全然全く持って分かりません!」
「‥‥胸を張って言われても‥‥」
「さっき言ったじゃない、『手近な所から探そうか』って‥‥当てがあったらとっくに話しているわ」
「あぁ‥‥」
「うん、とまぁそう言う事だから宜しくね。じゃ、私忙しいからこれでっ!」
と思ったのは他の者もそうだったのだろうが、最早お得意様となっている斎宮の王には頭が上がらないのか、彼は初めて首を縦に振ると依頼とすべく必要となる情報を尋ねるが‥‥毅然とした態度で言い切る斎王を前にいよいよ頭を垂らすとその暇、護衛の一人が斎王へ何事か話し掛ければ直後に踵を返して彼女はそれだけを言い残し、冒険者ギルドを去るのだった。
「‥‥もしもだ、もしも本当の話だとしても、それを冒険者ギルドに依頼として任せるか、普通‥‥?」
そして斎王が消えてより後、漏らした青年の囁きが囁きのままに虚しく冒険者ギルドの中にて響き渡るのは当然だったろう。
ともかく主命はどの様な形であろうと受諾された以上、果たして依頼は此処に成立する‥‥一体どうなる事か、それは天照すら知らない。
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依頼目的:天照大御神の捜索?!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は斎宮側が準備する為、不要です。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
対応NPC:祥子内親王(同道せず)
日数内訳:伊勢神宮まで四日(往復)、伊勢神宮をスタートとし依頼実働期間は五日とする。
●捜索場所の一例
□伊勢神宮
天照大御神を奉るジャパン屈指の寺院が一つで、霊刀『白焔』が封じられていたからこそ、未だ何かが秘されている気がしなくもない。
□斎宮跡
前斎王までが使っていた斎宮で要石が一つをその内部にて奉っているも、先日の戦闘により未だその爪痕が残る。
□天岩戸
伊雑宮の近くにある見た目、巨大な岩塊で天照大御神が寝所として歴史に名を残すも、どうやら真実は違うらしい?
□伊雑宮や夫婦岩等、有名な史跡や寺院
様々な意味で大きな伊勢神宮がある事からその周辺にもまた多種多様な史跡、寺院がある‥‥急がば回れ?
□その他
不穏な空気こそ再び流れているも、市街の活気は相変わらずで常に伊勢神宮を参拝すべく多くの人々が出入りしている。
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●リプレイ本文
天照大御神の捜索。
それは最近、伊勢神宮の命題として急に上がった話題である‥‥一時期に比べ、今の伊勢は静かだからこそ次なる闇の動きに備え、対抗策として考慮された。
にしてもその名とは裏腹に、朧な存在である神の捜索に打って出た斎宮の長が斎王の考えは果たして、何処までを見据えてのものだろうか。
まだ全てを語るには早過ぎるのか‥‥彼女の真意も未だ朧なままだがしかし、斎王からの依頼を受けて冒険者達はその姿すら記録にない天照大御神の捜索に臨むのだった。
●調査:伊勢近隣
伊勢神宮を前、斎王の元に集った一行は少ない時間故に早く散開して天照捜索の任に当たる。
「かの神の名から頂いた我が名。この機会に願掛けを、天照大御神を探し出せます様に」
その伊勢神宮が近くにある月夜見宮を訪れては先ず、願掛けを織っていたのは見た目麗しい天城月夜(ea0321)で、その本殿の前で長く祈りを捧げると
「無論、只でとは言いません‥‥次、来る時は伊勢一番のお団子を供えると言う事でどうでしょう?」
次いで供物を捧げようとして、しかし生憎と丁度良い物がなかったか僅かに呻くも一つ、神前にて約束を交わせば次いで返って来た静寂の後、踵を返した彼女。
「よし、参るとするか。行くぞ、白夜‥‥茶屋に!」
決然と次なる行動へ移るべく、傍らにて静かに控えていた天馬へ声を掛ければすぐに跨るなり、羽ばたいた‥‥その団子を捜しに伊勢の町へ。
「‥‥ああ言った足があるのはやはり、便利だな」
それから遅れる事数瞬、市街の方へ飛び去っていく月夜を見付けたガイエル・サンドゥーラ(ea8088)は涼しげな表情で彼女の事情を察し、苦笑を湛えながらも密かに羨ましがるが
「とは言えこれも修行と思えば私にとってはこちらの方が都合良いか‥‥しかし、この近隣だけでも結構な数に昇るな。どうやらこれは思っていたよりも骨か」
僅かな間だけでそれを拭い去れば、しかし伊勢神宮の近隣にあると言う寺院の位置に数を控えてきた和紙へ視線を落とせば、境内を進みながら眉根を顰め‥‥やがてその眼前に一つの石碑を見止めると、それがまだ何か知れずとも胸中に潜む不安から呟かずにはいられなかった。
「さて、焔摩天‥‥主は一体、何を考えている?」
●調査:二見方面
一方、斎宮がある伊勢は二見‥‥無論、ここにも足を運んでいる者はいた。
「この辺りで最近、何か変わった事や変わった人を見ませんでしたか?」
「以前はほれ、でっかい伊勢海老とか沸いたんじゃが最近では特になぁ‥‥」
それは陰陽師が護堂万時(eb5301)で、果たして彼は夫婦岩とその下に沈んでいると言われている興玉神石がある二見興置神社を訪れ、丁度参拝に来ていた人々へ話を聞いていたが‥‥今の所、取り立てて目立った収穫はなく嘆息を漏らせば
「取りあえず、夫婦岩の近辺は収穫がなさそうですね。ルクスさんの方は上手く行っているでしょうか?」
確か二見へ来ている筈の、エルフの神聖騎士が姿を思い出せば彼女の行く末を案じた。
それより暫し後。
「ふむ、梅雨時期とは言え祭を行っている所もあるのだな。流石は多く寺社を抱える伊勢と言った所か」
その彼女ことルクス・シュラウヴェル(ea5001)が何をしているかと言えば、二見興置神社の近くが漁村で行われていた祭の只中を闊歩し、名産品等を見て回っていた。
『お祭が好きそうな神様の様だからな』
良く知られている岩戸開きの話より、彼女がその結論に至れば祭を行っている場へ足を運ぶのは当然で‥‥しかし、此処でも同様に目立った情報が得られないと解すれば
「それでは温泉の方へ、足を運んでみるか?」
「‥‥ルクスさん?」
一人、ボソリと考えていた事を囁くが‥‥ルクスと何とか合流を果たす事が出来た万時がその囁きを聞き止め、怪訝な瞳で見つめると狼狽して彼女。
「いや、そのだな‥‥人の多そうな所を好みそうな神とも聞くし、この周辺で神掛かった様な不思議な出来事か伝承がなかったかに付いて、しっかりと話も聞いてくるぞ‥‥それではな」
「は、はぁ」
身を一歩後へ退きながらもしかし、尤もな事を言うとそれには何とか賛同する陰陽師のすぐ後に再び口を開けば、颯爽と踵を返してルクスは足早にその場を去ると生返事を返した後に万時はこれからどうしたものか、一人悩むのだった。
「‥‥それならそれで、私も温泉へ行って情報収集に努めるべきでしょうか?」
●調査:天岩戸方面
伊勢にとって重要な史跡、と言えば先ず挙げられるのがこの天岩戸だろうか。
「最近、畑を見て不思議に楽しそうにしていた方とかいらっしゃいませんでしたか? 天照大神様とか♪」
それ故に一行の狙いの一つがかの地であり‥‥その近隣、伊雑宮の程近くにある村落に至ったルーティ・フィルファニア(ea0340)は気さくに農作業へ励む老人へ尋ねていたが
「‥‥? いや、見ておらんがの」
「それでは不思議な方がもしいらっしゃったら、『天岩戸で待ってます』って伝えて下さいね♪」
「あ、あぁ。分かったよ」
唐突な質問、と言うよりは少々意味の分からない疑問に際し老人は戸惑いつつも首を傾げ答えるとルーティはその事には気付かず、更に一つの老人からしてみればやはり意味の分からない願い事を申し出ると、彼は今度こそ言葉を濁らせつつも応じると一礼をして去って行った彼女の後姿を見つめ、囁くのだった。
「‥‥不憫じゃの、まだ若いと言うに」
一方の伊雑宮を訪れるガイエルは先ず、伊雑宮の宮司が息子である矛村勇の様子を見るべくその本殿に顔を出すが
『只今修行中、御用の方はまた夜にお訪ね下さい』
「ふむ、レイ殿もおるから大丈夫だとは‥‥」
生憎と彼はおらず、風のそよぐ中で張り紙に躍る文字を認めた主の存在も確認すれば一先ず安堵しようとする彼女だったが、どうにも嫌な予感は拭えず紡いだ言葉を途中で止めると改めて本殿へ向き直れば、瞳を閉じて本心に抱く言霊を織り願った。
「伊勢とそこに暮らす人々の安寧祈願と共に‥‥是非、天照様へお目通り願いたく思います。故にこの願い、聞き入れて貰いたく存じます」
ガイエル以外に伊雑宮には誰もおらず、張り詰める程に厳かなる雰囲気の中でやがて言霊は掻き消えると‥‥唐突に吹いた風を受け、靡く髪を押さえながら重い雲が立ち込めてきた天上を見上げ、呟いた。
「‥‥だがやはり、空気は余り良くないな」
その間、天岩戸へ辿り着いたルーティは辺りに人がいない事から密かに魔法を用い天岩戸の周囲より地へ穴を開けて、直接の接触と内部への介入を試みていたが
「‥‥ぷは。結局、天岩戸の内部には入れませんでしたね。残念」
空洞こそある様だが周囲の全てが隈なく覆われている魔的な岩塊にウォールホールが効果を現さず、うな垂れる彼女だったが
「何があるのか、気になる所ですが今はその時じゃないですよね。さて、今日はこれで‥‥っと」
頭上を見上げると太陽が既に西の空へ傾き掛けている事から一先ず、天岩戸の調査を打ち切ると踵を返し伊雑宮へ戻ろうとし‥‥だが途中で何事か思い出せば、懐から一枚の紙片を取り出して天岩戸にある神殿の入口へそれを置いて駆け出した。
因みにその紙片には何が記されていたかと言えば、以下の通りである。
『一寸お邪魔しています。出来れば暫く待って頂けると嬉しいですが、面倒でしたら構いません。後で宴を催すので宜しければ明後日のお昼頃、伊勢神宮までお越し下さい』
果たしてこれが吉と出るか、凶と出るかは未だ誰も知らない。
●調査:斎宮跡
要石が安置されている中でも比較的重要視されているのがこの斎宮跡。その方へ韋駄天の草履が持つ速度にて、駆ける柴犬らと共に歩み寄るのは小さな巫女の緋月柚那(ea6601)だった。
「♪東から西へ〜、東から西へ〜。果て無き旅路は続く〜、ふらりふらりと〜」
果たして彼女の口より紡がれた歌はリズムこそ正確ではあったがその音程は今一つ‥‥ではなく、やがてその斎宮跡が門前に辿り着いた彼女は辺りを見回した後に首を傾げる。
「はて? ここは何時から廃墟になったのかの? 頼もー! 誰かおらぬのか!」
「誰もいない様ですよ」
「うぉ! ビックリしたのじゃー」
そう思ったのはあちこちに走る傷からか、眉を顰めながらも大声を発すると何時の間に来たのか、万時からの唐突な答えが響くなりすぐに飛び上がっては大仰に驚くと
「それは失礼しました。ですが此処は以前までの斎王がおわせられた地で、天岩戸が封印を強固とする要石を安置する神聖な場所。遠巻きにこそ携わる方がいるでしょうが、今となっては此処に詰めている者はいないと言う話です」
「成る程‥‥そうなると近くに村があると言う話じゃったし、聞き込みに励んだ方が良いかの?」
「そうですね、若しくはこの内部を調べるか」
礼を持って小さな巫女へ詫びれば一先ず、自身が仕入れた情報を彼女へも与えるとそれを受けて柚那は暫し考え込むがやがて一つの結論へ至ると、ついで万時も一つの案を彼女へ告げれば
「それならば丁度良い、二手に分かれるとするか」
「そう、ですね。そちらの方が今日だけでも効率が上がりますし」
「となると、うちは近くにある村で詳しく話を聞いてくるのじゃ! それでは万時よ、お互いに頑張ろうぞ!」
すぐに頷いて柚那は早く陰陽師へ無難な案を持ちかけると、相応の早さで彼も巫女へ応じればそれを聞いては彼女、自身の動きを告げると共に柴犬らと一気に村の方へ駆け出せば
「まだ人の手が及んでいない所が多くあるでしょうこの斎宮跡。さて‥‥要石以外に一体、何かあるでしょうか」
その姿が見えなくなるまで見送って後、万時は大きな正面の扉に走る傷に隠れる様に刻まれている文字を見付けなぞれば、今も厳かに建つ斎宮跡を見上げるのだった。
●閑話休題
それより二日置きに情報交換を挟む一行ではあったが、最終日が近くなるにつれその殆どの面子は伊勢市街へと舞い戻り今までの調査を見直すべく、更なる調査に励んで‥‥。
「お団子屋、茶屋巡りは必須なのじゃ! 参るぞ!」
いるかと思えば、二匹の柴犬を伴っては茶屋巡りに励む柚那の様に違う意図を持って動いている者もいたのは此処だけの話。
「もしかして、天照大神様ですか?」
とは言え決して皆がそうではなく、見た目こそ立派な巫女の装いに身を固める大宗院鳴(ea1569)の様に地道な捜索を続ける者もいたが
「あ、え‥‥? いや‥‥」
「さぁ、伊勢神宮へ行きましょう。皆、待っていますよ」
伊勢神宮等での長きに渡る調査の末に鳴が自身、導き出した天照像に合致しそうな青年に挨拶を交わせば、彼女に対し頭を下げつつも返って来た曖昧な返事にも拘らず彼女は見知らぬ彼の手を握れば伊勢神宮を目指し駆け出す辺り、鳴の場合こそ天然ボケなだけだが見えぬ目標故に皆の集中力が途切れていたのは事実だった。
「相変わらずでござるな」
そんな光景を次々と目の当たりにしながら、果たして嘆息を漏らしたのは月夜ではあったが
「あ、店主。供え物として団子を捧げたいのじゃが、この辺りで一番に美味しい団子は何処の店のものか知らぬか?」
その彼女もまた得られた(団子の)情報の少なさから未だ、月夜見宮と伊佐奈岐宮に伊佐奈弥宮へ供える為の伊勢で一番に美味い団子を探しているのだった。
さて、四日目までわずかばかりの情報しか得られる事が出来なかった一行は無論、天照大御神を見付ける事叶わず、しかし考えられる事は全て行った一行はその夜。
「私達は四日間、身を粉にして貴方様をお探ししました。どうか、手掛りだけでも教えて下さい」
切り札とも言えるだろう、ダウジングペンデュラムがその持ち主である万時の願いと共に煌くと、出所が不確かなジャパン全土に伊勢の地図の上を皆が見守る中で踊り‥‥。
●そして、最終日
「‥‥良くも呑気に宴会を開けるわねぇ、流石に今の状況じゃあ私もこれには」
伊勢神宮の近くにある酒場にて、皆の報告を受ける筈であった斎王は真っ昼間から皆が繰り広げる酒宴を目の当たりに、珍しくも皆の前で肩を竦めて見せるが
「お褒めのお言葉、ありがとうございます。と、そう言えば遅くなりましたが誕生日を迎えられたと言う事で‥‥これを」
「拙者も持った来たでござるよ♪」
「道中で見繕ったものだが、受け取って貰えると幸いだ」
「うちもじゃー!」
「‥‥ありがとう」
その皮肉を軽く流してルーティが頭を垂れれば、ふと何事かを思い出すと懐から一つの冠を取り出し斎王の前へ置けば、それを皮切りに月夜、ルクス、柚那もそれぞれに斎王への贈り物を眼前へ置くと流石にそれには満更でもなかったか、微笑む斎王だったが
「‥‥天照大神様はきっと、やらしい事が好きなんだと思います。ですから色々と用意してみました」
「そ、その魔剣はっ!」
酒精にて頬を染める鳴がその傍らにて己の推測(若しくは妄想)を呟けば直後、背嚢の中から怪しげな道具と共に一本の怪しく彩られた剣を取り出すと、それを見た月夜が驚愕にその表情に変えるがそれと同時。
「あいた」
「‥‥今度やったら、没収だからね」
「あ、はい」
「でも、柚那‥‥」
「傍目からビーム!」
「ぃきゃぁぁー!」
それを見止めていた斎王は鞘から魔剣を抜き放とうとした鳴の後頭部を小突き、あわやの所で留めさせるとこれまた珍しく三白眼にて睨み据えて警告すれば、すぐにそれを仕舞う巫女ではあったが念の為、手持ち無沙汰そうな柚那を促すと早く経典を開いた彼女はそれに封じられていた魔法を解き放ち、斎王の代わりに鳴を戒める。
「しかし、有力な手掛かりは一つもありませんでしたか」
「そうだな‥‥」
「もう一度やってみてはどうじゃ、そのだうじんぐ‥‥ぺんぺんを」
「そう言えば昨日は夜にやったからな、もしかしたら日の出ている今だと‥‥」
しかし、その光景の中でも浮かない表情を浮かべる万時は未だ嘆息を漏らすとガイエルもまた、彼に倣うがそれを見た柚那が経典をしまいながら一つ提案すると、切り札の名前が間違っている事に彼は突っ込まず、ルクスの囁きも聞き止めると陰陽師はもう一度だけ、懐よりダウジングペンデュラムと地図を取り出し天照が居場所を探り出す。
「駄目元で、やってみますか」
そして、陰陽師の呟きと共に揺れるペンデュラムは昨夜と同じく暫くは揺れたままであったが‥‥今日はやがて、伊勢のある場所でその動きを止める。
『あ』
果たして見つめていた皆が呻く、ペンデュラムが示したその先は答志島だった。
果たしてその導きが正しいとは必ずしも言えない。だが可能性の一つが示されたのは確かで、それを受けた斎王は考え込みながら暫し皆と杯を交わした後に別れるのだった。
「状況は既に、人の手だけで覆せぬ領域にまで至っているのなら‥‥しかし、今の私達に力を貸してくれるでしょうか?」
一つ、消えない不安を囁きながら。
〜一時、終幕〜