答志島にて

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:15 G 38 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月18日〜07月30日

リプレイ公開日:2007年07月26日

●オープニング

●何を想う者
「‥‥うざいのぅ」
 払われた掌、次いで迸る光と嘆息が漏れた後‥‥果たして目の前にて先まで怨叉を響かせていた死霊を一瞥しては正しく一挙手のみで掻き消すと、『それ』は木立の隙間から見える下界を高みより見下ろして溜息を一つ。
「しかし久方振りに立ち寄ってみればこの有様か‥‥嘆かわしい限りじゃ」
 次いで響いた声に含まれていたのは嘆きか悲しみか、それとも呆れか。
「本当に人の世とは、儚くも移ろい易い」
 しかし漏らした言葉の本質の割、表情にはそれを出さず視界の片隅に移った村落を見止めればやはり溜息と共に再び、呟きを漏らすも
「‥‥それとも、妾の力が弱まっているか?」
 次には己の掌を握り締め開けば‥‥自嘲の笑みを湛えては己の小さな掌を見つめ小さく、小さく囁くと
「そろそろ、眠りに着くべきやも知れぬの‥‥」
 近く決断を下さねばならない事に『それ』は小さな肩を竦め、やがてその場より踵を返すのだった。

●再度の捜索願
 一方、伊勢は二見‥‥海岸沿いに伊勢の人々を見守らんと大きく建つは斎宮のその中心が斎王の間にて。
「‥‥取りあえず、答志島の方も捜索させるべきかしらね?」
「少なからず、行く先が指し示されたのでしたら駄目元で臨んでみるのが斎王様では?」
「言うわね、まぁ良いわ。そう言うのなら早速、冒険者ギルドで人を募りましょう」
 漸く目に見えて少なくなった書類の山から顔を覗かせている現斎王である祥子内親王は机上に今、置かれている一枚の和紙に記されている案件に付いて側近へと問い尋ねていたが‥‥別段惑う事もなく、彼女が答えを放てばそれを受けた斎王は不敵に笑んだ後に告げると丁度その時、閉じられていた筈の襖が開かれ音が響く。
「戻りました‥‥」
「あら、レリア。祭りではお疲れ様‥‥で、今までの首尾はどうだった?」
「生憎と」
「まぁそうよね。いかんせん、情報が少な過ぎるのだから‥‥」
 次いで厳かに響いた、声の主が名を呼べば彼女に与えていた任の報告を受けるべく、尋ねるも‥‥すぐに返って来た端的な答えを聞けば溜息を漏らす斎王だったが
「でも、先日は話す事が出来なかったけど有益だろう情報は仕入れる事が出来たわ。と言う事で帰って来て早々で悪いけど答志島へ向かって頂戴。何かあるらしいから」
「また、漠然としていますね」
「しょうがないでしょ、こっちでも文献の調査は続けているけどあれからはもうさっぱりで‥‥頼れるものなら何でも頼るわ、この際」
「何もせず、暇を持て余している位なら手伝わせて貰います」
「何時も悪いわね」
 眼前にあった和紙を彼女、レリア・ハイダルゼムへ突き付けて言えばそれへ目を走らせながら漏らした彼女の不満は即座に宥め、その最後は決然と言い放てばそれを受けて彼女は僅かだが肩を落とした後、やがて新たな任務を引き受けるべく首を縦に振ると頬を掻いて斎王。
「そう言えば、珠の方はどう?」
「一先ずは元気です、忙しいとぼやいてはいましたが」
「ま、結構な数があるからね。でも『闇槍』も付けているし、余程の事がなければ大丈夫だろうけど」
「しかし、珠である必要は‥‥」
「彼女が望んだのだから、しょうがないじゃない。不向きなのは分かっているけど」
 別な任務を与えている斎宮の幹部が巫女の名を出し、別件に付いても尋ねると返って来た答えを聞くなり苦笑を浮かべる斎王へレリア、友の心配をするからこそ提言するも‥‥頷きながらも返って来た答えを聞けば彼女には次に紡ぐ言葉が見付かる筈もなく、押し黙ると
「ま、とにかくレリアは天照様の調査を継続して頂戴。今度はギルドに依頼して冒険者の皆を付けてあげるから」
「‥‥一人の方が気楽だが、当て所がないよりはましか」
 再び彼女を宥め、斎王は天照捜索の任務を再度告げると嘆息を漏らしつつも彼女は京都の冒険者ギルドへ向かうべく踵を返し、斎王の間を後にするのだった。

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 依頼目的:答志島にいる『かも知れない』天照大御神を探せ!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
 答志島へ至る為の船は斎宮にて手配します。

 対応NPC:祥子内親王(同道せず)、レリア・ハイダルゼム
 日数内訳:目的地まで七日(往復)、依頼実働期間は五日。
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●今回の参加者

 ea0340 ルーティ・フィルファニア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6601 緋月 柚那(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea8088 ガイエル・サンドゥーラ(31歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb3503 ネフィリム・フィルス(35歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 eb5301 護堂 万時(48歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●いざ、答志島へ
 鳥羽のとある漁港にて普段、その場で見掛ける事はないだろう冒険者達の姿があったのは果たして天照大御神の捜索だと漁師達の誰もが知る筈もなかったが、それでも冒険者達はその存在が今にもいる事を信じ、唯一の手掛かりとして以前に得られた答志島へ至るべく斎宮が手配してくれた船を眼前にしていた。
「ふむ‥‥今まで伊勢で色々働いていたが、神探しまでするとはなぁ」
「まぁまぁ、何時もの事じゃありませんか」
「そこで否定出来ない所が何とも、伊勢らしいと言うか」
 お世辞にも大きいとは言えない、その船を前に頭を掻きながらぼやいたのは鋼蒼牙(ea3167)だったが、斎宮が抱える『五節御神楽』の同僚であるルーティ・フィルファニア(ea0340)に宥められれば彼は肩を竦め、遠くに見える島を見つめると今度は誰かしらが漏らした溜息が響く。
「はぁ〜」
「どうか、されましたか?」
「今が鮑の時期ではないのが少し、残念でして‥‥」
「は、はぁ」
 その溜息の主が大宗院鳴(ea1569)は普段の巫女装束姿ながらも表情を曇らせており、だからこそ何事かと陰陽師の護堂万時(eb5301)は尋ねるがやはり溜息と共に返って来た答えを聞けば彼、生返事を返すのが精一杯。
「アマテラス‥‥言葉の響きから推測すると、きっとふわふわで甘いお菓子ですね。私、頑張って探しちゃいます!」
「い、いえ‥‥一寸、と言うか大分違います」
 とそれぞれに思う所がある中でつい最近、京都に着たばかりであるルンルン・フレール(eb5885)が名前すら知らなかったその存在を見付けるべく、己の推測を織り交ぜては決意を漲らせるもそれはすぐに万時に訂正されるが
「私、ジャパンには忍者の先生を探しに来たんですよ。最近の転職ブーム、私も忍者になるのが憧れで誰か紹介して貰えませんか?」
「‥‥えーと、蒼牙さんならどなたかご存知では?」
「何でそこで俺に振るよ‥‥一応言っておくが俺は知らんよ」
「えー、そこを何とか!」
 別段気にした風も見せず彼女、万時の方へ唐突に振り返れば問うと言葉を詰まらせる彼の代わり、ルーティが蒼牙へも振るとルンルンの視線を次いで受けた彼は身を仰け反らせつつ答えを返すが彼女はそれでも食い下がらず、尚も二人に詰め寄れば
「‥‥果たして大丈夫なのじゃろうか?」
「さて、そればかりはまだ何とも言えんが‥‥きっと大丈夫だろう」
「そうじゃの、久々にレリアもおる事じゃしな」
 その光景を前に何時もの事とは言え、小さな巫女の緋月柚那(ea6601)が珍しく不安を露わにするも最近転職を果たしたガイエル・サンドゥーラ(ea8088)が苦笑を浮かべつつも彼女を宥めると、頷いた後に柚那は別の方で巨人の剣士と語らうレリア・ハイダルゼムを見やる。
「よぉ、レリアっち。元気そうじゃないか」
「以前は世話になったな」
「何、気にしなくてもいいさね」
 とその寡黙な剣士は以前、言葉の通りに世話になったネフィリム・フィルス(eb3503)と何時もの無愛想な表情を湛え、挨拶を交わしていたが
「それよりも消息不明だったんで心配していたけど、こんな所にいたんだねぇ」
「‥‥こんな所、と言うか伊勢の近隣をあちこちと回っていた」
「て言うと?」
「天照大御神の捜索で以前から借り出されていてな‥‥尤も、今程の情報もない状態でだが」
「‥‥苦労していたのだな、情報もない中で」
「何、今更な話だ。それよりもそろそろ行くとしよう、答志島へ」
 ネフィリムの次に発した疑問にはすぐレリアが答えれば、剣士へ同情の念を禁じえずガイエルもボソリと囁くも肩を竦めるだけ竦めてやがて彼女は踵を返すと、賑やかな一行を促しては歩き出すのだった。

●捜索開始
 鳥羽から船で半日程を要し、やがて辿り着いた答志島の港。
「何か静かな所じゃのぅ〜」
「鮑‥‥」
 伊勢で一番に大きな島とは言え、その中央が開けていない事を考えれば住む人も少ないだろう事から当然の光景でもある閑散とした港を見回し、柚那が呟くと未だ忘れ去る事が出来ないのか、鳴が瞳を怪しく光らせてはボソリ呟くが
「それより天照様だろう? さて、名前だけしか知らない神様は果たして何処にいるのやら」
「しっかし、伊勢神宮も寝惚けてるよな〜。天照大御神は御神体だろぉ? そんなにふらふらしてていいものなのかね〜」
「うーん‥‥でも、それだけ有名な神様が人のいる場所に住んでいたら何かと目立って分かると思うんです。つい、人助けをしちゃったりとかして」
「まぁ、なくはないだろうな」
 それは蒼牙がすぐに宥め、方向修正こそするが当てのない探し人ならぬ探し神の捜索にネフィリムが嘆息を漏らせばレリアが苦笑だけ浮かべる中で皆、早速困り果てるも首を捻っていたルンルンが一つ推測を呟けば、それにガイエルが同意すると
「それか、引き篭もりって癖になるらしいですから人のいない場所で隠居してるのかな、って思うんですがどうでしょう!」
「‥‥神様が引き篭もり、と言うのはピンと来ないが隠居は有り得るか」
 果たして勢い付いた彼女、もう一つ自身の脳裏に閃いた推測を皆の前にて堂々と告げては胸を張るが‥‥それには先程の説得力はなかったか、今度もまたガイエルが正当な評価を下せば今度はルンルンがうな垂れるも、すぐに気を取り直せば
「うーん。そうなるとやっぱり、私は島の中央が怪しいと思います」
「私は別の島が少し、気になりますね」
「まぁ皆、それぞれに思う所があるのなら取り敢えずは三日後、情報交換の為に何処かで落ち合う事と‥‥」
「それなら、島の北端にある温泉で!」
 本題を思い出し天照大御神の所在に付いて、自身の予想を言うとルーティもそれにすぐ続けばそれぞれに意見が出る中、ガイエルが見事に場を纏めて見せると落ち合う場所はルーティが即座に断言すれば、皆はすぐに動き出した。

 さて、漁港近くの小さな村。
「前回はいやらしい事で失敗してしまいましたので、今度は目立つ事として神楽舞を舞って人を集めてみたいと思います」
「いや、それってどうよ」
 何事か、屈み込んでは背嚢を弄っては呟く鳴に詳しい内容は良く知らないながらも何時もはボケ担当の蒼牙が珍しく突っ込むが
「皆さーん、天照様を見かけませんでしたかー?」
「‥‥って聞いてないし」
 彼女はそれを聞き止めた風も見せず、準備を終えてか立ち上がると右手に霊剣を持ち左手には戦扇子を開いては己の身を舞わせながら村内を歩く村人達に聞こえる様、声を響かせれば深く溜息を漏らしては肩をも落とす蒼牙だったが
「さて、一応の目星こそ付いているとは言え先ずは足場を固める為にも地道な聞き込みからかな」
 聞いても止まらない以上、一先ず彼女は放置する事に決めると頭を掻きながら呟いて近くを通り掛かった村人へ声を掛けた。

「団子をもう一皿追加なのじゃ! で、最近、変わった客を見たり等はしなかったか?」
 同じ村内、この島では唯一無二の存在だろう団子屋にて柚那はもう何本目かの団子を頬張れば、それを飲み込み更に追加する傍らで蒼牙と同様に聞き込みをしていた‥‥団子屋の店主限定で。
「‥‥あぁ、そう言えば」
「そう言えば?」
 しかし良く食べる客だからか、やがて掌を打っては店主が口を開いては追加の皿を彼女の前に置くと、柚那は新たな団子を手にしながら首を傾げるも
「最近、猫が多くて困るんだよねぇ。猫には目がなくて見掛けてしまうとつい、売り物を与えちゃってね」
「は‥‥そんな事は聞いておらーん!」
 直後、何の事はない世間話が場に響けば柚那は遂に我慢し切れず、傍らに転がっていた大量の串を放るのだった。

 二日目、近隣の小さな島‥‥海辺近くに多くある岩場からルーティが唐突にその顔を覗かせていた。
「‥‥ぷはぁ。まだ少し、寒そうでしたね」
 ウォーターダイブの魔法こそ自身に付与していたが気分的な問題からか、海面に顔を出してより後に彼女は深く息を吐くと海中の感想を一人、紡げば
「でも何とか鮑は取れましたし、小築海島で桑とススキの葉も見付けられたので戻りましょうか?」
 掌に唯一握られている、小さな鮑を見つめれば自身が成そうとしている事の準備が一先ず整った事に微笑むと、やがて全身を海から引き摺り上げれば
「神探しとは大変ですね。でもまぁ滅多に見られる物でもないですし、これ位の苦労はしておきますか」
 しかし、皆それぞれに苦労し‥‥もう当分は苦労するだろう事を考えてルーティは今度、溜息を漏らすがそれはすぐに振り払うべく、きっと近くにいるだろう天照と見える刻を考えれば踵を返し、自身が養う魔獣へ声を掛けた。
「お二人の調子はどうでしょうかね、ナフカ」

 一方、ルーティが駆るグリフォンに便乗して菅島に辿り着いた万時は厳選した巻物を用い、様々な方向から天照の情報を集めていたが‥‥成果は余り芳しくなく、今はテレスコープの魔法を自身へ付与して遠くから答志島を眺めていたが
「何か、視えたか?」
「いいえ。特に、これと言ったものは視えませんね」
「ガイエルさんの方はどうですか」
「サンワードではそれなりに近いらしいと言う導きこそ貰ったが‥‥やはり、これでは余りにも漠然とし過ぎているか」
 昨日の内に島の周辺部は粗方当たり、特にこれと言った物が見付からなかったガイエルも菅島へ辿り着けば今は二人、捜索を続けるも‥‥やはり目立った収穫は無し。
「いいえ。少なからず、この島か近辺にいる事だけは間違いなさそうですね」
「まぁ、そうだな。そうなるとやはり、未開の地に足を踏み入れなければならない様だな」
 だがガイエルが先刻唱えたサンワードより得た、曖昧な情報を万時は前向きに受け止めると暫く後に同意する彼女、島民なら踏み入らないと言う島の中央へ視線を向けると丁度その時。
「ん?」
「どうした、万時殿」
「あれは遺跡‥‥いえ、古墳の様な物を見付けまして」
 何かを見付けてか、万時が首を大いに傾げると当然に尋ねるガイエルへ彼は瞳をすがめては漸く、漁港より少々離れた所にある山の頂上にあるものの存在を何か特定すればボソリ、呟くのだった。
「‥‥行ってみる価値はありそうですかね」

●未踏の地にて
 答志島に唯一ある温泉へ浸かりながら得られた少ない情報を纏めればその翌日、一行は揃い島民が足を踏み入れない島の中央部へと歩を進めていた。
「しっかし、人の手が入っていないだけに険しいな」
「良い鍛錬にはなりそうだがな」
「あぁ、そうだな‥‥」
 しかし足元に伸びる草は果たして伸び放題で、辺りに生い茂る木々の枝も激しく辺り一面を覆うその中での行軍は中々に辛く、蒼牙でも思わずぼやくが次にガイエルの言葉が響けば泣き言は言えず、肩を竦める彼。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですよ。伝説の忍者戦士の先生を捜すのに比べたら、この位の困難!」
「そ、そうか‥‥ふべっ」
「‥‥相変わらずだね」
 その一方、先を進むレリアは傍らを揃い進むルンルンを気遣うと返って来た頼もしい答えに微苦笑を湛えるも‥‥同時、あからさまに見える太い木の根に足を取られると銀髪の剣士はそれに躓き草むらに顔を埋めれば、その様子にネフィリムは呆れ苦笑を浮かべるも
「しかしその古墳、祟られているのか。何か歓迎されている様だけど」
「‥‥面倒だな」
 辺りへ視線を配しては捉えた幾つもの影に溜息を漏らして剣を抜き放てば、漸く立ち上がったレリアも言葉の割、腰とは別に背中へ背負っていた魔力込められし剣を抜き放つと活路を見出すべく、揃い駆けるのだった。

 亡霊の群れを突っ切って、一行は漸く古墳の元に辿り着くと‥‥その場には似つかわしくない、一人の少女を見止める。
「あれ、でしょうか?」
「まさか、幾らなんでもちっちゃ」
 その不自然な光景を見つめ、囁き皆に尋ねたルンルンへそれを否定して蒼牙が所感を囁くも直後、熱線が自身の傍らを通り過ぎれば背後にあった一本の樹をあっさりと焼き切り、薙ぎ倒すと何が起きたか分からず硬直する侍へ少女。
「口の利き方には気を付けよ」
「は、はひ」
 背は向けたままに振り返らず、高圧的な態度で一行へ告げれば声を上擦らせて何度も頷く蒼牙の返事を良しとしてか、身を翻し漸く一行を見据えれば
「‥‥で、主らは一体何者じゃ?」
「はい、答志島へ美味しい鮑を探しに来た冒険者で‥‥むぐむぐ」
「す、少しお待ち下さい!」
 小さな唇を開き、皆の存在に付いて尋ねると一歩前に出た鳴がはっきりとその目的‥‥自身のだが、を告げればすぐに皆に止められると少女が見守る中で一行は円陣を組み相談する事暫し。
「天照大御神様を探しにこの島に来た冒険者ですが、貴方様が天照大御神様で宜しいでしょうか?」
「‥‥如何にも、その通りじゃ」
(「本当かよ」)
「生憎と今は力の殆どを封じていてな、この姿が一番楽なのじゃ。何なら証拠を見せようか‥‥?」
「いや、もう結構です!」
 皆を代表してガイエルが改めて彼女の前に進み出れば尋ねると‥‥果たしてその問いに応と答える彼女、天照大御神だったがそれを前に瞳をすがめて内心で密かに呟く蒼牙へ彼女は再び視線を合わせ告げると、両手を掲げる彼の様子を満足そうに見つめた後。
「で、何の為に妾を探していた?」
「伊勢の危機、救っては貰えませんか‥‥?」
「ふっ、何かと思えば」
 再び皆へ視線を配すればその理由に付いても問うと、次に答えたルーティへ天照はただ鼻を鳴らし笑うだけ。
「ま、立ち話もなんだし取り敢えずは酒でも飲みながら話でもしようじゃないか」
「‥‥ふむ、たまには悪くないやもな」
 だがその反応を前にしてもネフィリムは怯まず前に進み出ればどぶろくを掲げ一つ、提案すれば‥‥それに彼女は応じた。

●果たしてその答え
『ならば、出直してくる事じゃな。主らだけではどうやら話になりそうにないし、妾も此処を動く気は毛頭ないのでの』
 話を交わしたのは一刻程度、しかし皆の話を前にしても天照大御神は簡単に応じずその答えだけを受けた一行は今、島を後にすべく再び漁港へと戻って来ていた。
「‥‥取り敢えずは前進、で良いんでしょうか?」
「そうですね、でもこれからが大変な気もします」
「全くだな」
 未だ微かにだが見える古墳の方を見つめたまま、呟いた万時の問いにルンルンは頷くが‥‥難のある性格故に腕を組んでは呻くとそれに蒼牙も同意して、渋面を浮かべるも
「あ!」
「どうされましたか?」
「‥‥天照様に高名な忍者先生の居場所を知らないか、聞けば良かったです」
『あぁ‥‥』
 直後、響いたルンルンの悲鳴にも似た叫び声を聞けば万時は尋ねるも、真剣な表情で呟いた彼女の答えを聞けば皆は遠く、遠くに今日も浮かぶ眩しい太陽を見つめるのだった。

 〜一時、終幕〜