【伊勢巡察隊】闇動先駆
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 91 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月01日〜08月10日
リプレイ公開日:2007年08月07日
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●オープニング
●見えない不安 〜伊勢藩〜
「‥‥取り敢えずは一息、か」
伊勢藩主が藤堂守也は自身の仕事場である屋敷の部屋にて漸く先日、伊勢にて起きた鬼騒動の案件を片付けては安堵の溜息を漏らしていた‥‥とは言えその案件、京都では未だ他方に広がっているのだが一先ず伊勢がやるべき責は果たしたからこそ、改めて机上に積まれている別の和紙の山を見つめると今度は嘆息を漏らす。
「とは言え、解決すべき問題は多いままだがさて‥‥」
そう、伊勢にはまだやらなければならない事が多くある。
故に一時だけ緩めた気もすぐに張り直すと厳しい表情を湛えたまま、考え込む事暫し。
「一度、相談してみるべきだろうな」
やがて、一つの決断を己の内で下せば彼は立ち上がると息抜きがてらに斎宮へ向かうべく馬を駆るのだった。
●会談
翌日、斎宮。
「仰る通りに伊勢が抱えている問題は未だ、その殆どが解決に至っていません。ならばこそ、いずれ何らかの動きがある筈」
伊勢より足を運んだ伊勢藩主と向き合うは斎宮の主、祥子内親王‥‥彼同様に厳しい面持ちを浮かべては伊勢藩主の意に頷き応じれば
「先んじて、手を打つ事が出来れば楽ではありますが」
「そうですね‥‥国司様の意見は?」
「一任する、との事です」
「‥‥随分、信頼されているのですね」
次に響いた彼の意に斎王は考え込むと、この場にはいない伊勢国司の意に付いて尋ねれば返って来た答えを聞いて穏やかな微笑を湛える彼女ではあったが
「そう言う訳ではありませんよ」
「ですが、それならそれで‥‥またお願いする事にしましょうか?」
「お願い‥‥と言うと?」
それには苦笑を持って守也は斎王へ返すと、彼女は首を傾げた後‥‥先とは違う質の笑みを湛え問えば、藩主はその意を汲み切れず問い返した。
●伊勢巡察隊、起動
更に翌日、二見から早々に自身の屋敷へ戻って来た守也はすぐに部下の一人を呼べば何事か彼へ一つの命を下していた。
「‥‥と言う事だ、頼んだぞ」
「分かりました、すぐに取り掛かります」
そして話が終われば彼、早く立ち上がり踵を返しては部屋を辞するとこれより京都へと向かう部下の背中を見送りながら一人、部屋に残された守也は斎王が紡いだ言の葉を思い出し、反芻する。
「敵のこれからの動きを少しでも抑止すべく静かな今に動いておく必要がある、か。ならば伊勢藩として動かせるのは巡察隊、そろそろ形として整える必要もありそうだが‥‥先ずは伊勢の為、伊勢に住まう人々の為に成すべき事を出来得る限り成そう」
確かに言う通りだからこそ、急ぎ伊勢に戻って来た彼は動かすべき部隊の名を呟いてはその在り方に付いて考えるが、それはもう少しだけ様子を見る事に決めると伊勢の闇を払うべく一先ず腹を括るのだった。
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依頼目的:伊勢の為、今後の為に成す事を成せ!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事、但し場所によっては現金があれば調達可とする。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
対応NPC:藤堂守也、十河小次郎、アリア・レスクード他
日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は五日。
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●リプレイ本文
伊勢巡察隊。
過去に妖怪達の跋扈によって伊勢の街の治安が乱れた際、人手の足りなかった伊勢藩が一時的に冒険者達の手を借り、構成した部隊の事を指す。
主な活動はその名の通りに伊勢の町を巡察し、治安維持に努め、平穏をもたらす事。
今は平穏を取り戻しているからこそ伊勢藩、未だ収束していない事を察して今の内に楔を打ち込むべく再び、冒険者ギルドを介して伊勢巡察隊の編成を決意するのだった。
●静かな足取り 〜伊勢市街〜
伊勢藩からの要請により集った冒険者が十人、伊勢へ着けば思い思いに散るその中。
「やはり、街を活性化させる原動力はおばちゃんやと思うんや。さかい、安売りでもしてみようかと思うんや」
伊勢に残り、そんな提案を藩主へ発したのは言うまでもなく商人の大宗院沙羅(eb0094)。
「と言う訳で、折角だから街ぐるみで祭りみたいにするはどうや」
「まぁ、それだけなら構わないだろう。補助する必要は‥‥当然にあるか」
「おおきに、それともう一つ‥‥」
そして続き、最終的に何をしたいのか告げる沙羅の提案を受けて藩主は頷き‥‥その元手の出所に付いては多からずとも察すると、顔を綻ばせて商人が次に頷けばもう一つの提案を守也へと告げた。
●
と言う事で沙羅の発案に寄る市街挙っての安売りが催されたのは翌日から、藩主らの尽力もあったからこそ成立に感謝して商人、自身も呉服店として借家にて店舗を開けば
「‥‥だからと言って、何故俺がこんな格好になる必要が?」
「私達から盛り上げんと皆も乗ってこんやろ?」
「いや、既にこれだけ盛り上がっていれば十分だろっ」
「なら他ならぬ伊勢の街の為、伊勢に住む人の為に‥‥なら、協力してくれはるやろ」
その傍らにてぼやく女性、ではなく女性物の着物に袖を通す十河小次郎へしかし彼女はこじつけな理由を紡ぎ宥めるが、尚も憤りを露わにする彼へ沙羅は次に尤もな理由を掲げれば彼は今度こそ呻く他になく、その様子に彼女は微笑むと小次郎へ指示を出し始める。
「随分と賑やかだな」
「えぇ、沙羅さんが町の活性化に一役買っていますので」
その光景を傍目に、呟くアシュド・フォレクシーへその隣を歩く緋芽佐祐李(ea7197)は毎度ながらとは言え小次郎の女装姿を視界の片隅で僅かに見止め苦笑を湛え、その理由を明示すると
「だからこそ、この様な場で埴輪を引き連れた上で見回りを行っておく必要があるかと思いお呼びしたのですが‥‥」
「埴輪ではない、ハニワナイトだ!」
「あぁ‥‥はい。そのハニワナイトを不審物と勘違いされない様に、日頃から皆さんにも慣れておく必要があるかと‥‥」
「不審物‥‥! それはないっ!」
「どうして、ですか?」
次いで、彼を伊勢巡察隊へ呼び付けた理由をここで明らかにすれば‥‥その折々にて訂正を求める彼へ、佐祐李は苦笑いを浮かべつつその最後だけは確かに尋ねると果たして彼の答えが場に響く。
「私が造ったからな!」
そして二人の間の降りる沈黙、その暫く後に嘆息を漏らしたのはアシュド。
「変に熱くなり過ぎたな。確かに佐祐李の言う通りだ、その必要はあるだろう。それに最近は工房に篭り切りだったし、良い運動にもなる‥‥故にその話、受けよう」
「ありがとうございます、それでは」
ゴーレムやら埴輪の話となると熱くなる性質とは言え、客観的に自身を見る目も一応にあるらしく次いで詫びるも、しかし佐祐李は感謝に絶えず頭を垂れれば彼へ指示を出し埴輪達と共に僅かずつ人々の熱気が宿りつつある伊勢市街の巡回を始めるのだった。
●雄々しき咆哮? 〜伊勢藩士〜
時は初日へ遡り、主立った伊勢藩士達が詰めている屯所。
「お、小次郎殿。久し振りだな」
「‥‥うげ」
「そんな笑顔で迎えてくれるなよ」
久々の来客である伊勢巡察隊たる証を付けた月代憐慈(ea2630)に六条素華(eb4756)の志士二人は果たして小次郎の姿を見止め掌を掲げるも、呻く小次郎の態度は気にせずに微笑めば彼の肩を叩くと
「しかし今回は誠に無念だが‥‥この巫女装束を貴殿に託す故、俺の分まで奮闘してくれ! 最終日に巫女装束の貴殿と会えるのを楽しみにしているっ!!」
「なっ、おい‥‥ちょ、一寸待てやぁー!」
早く背嚢から巫女装束を取り出せばそれを小次郎へ押し付け言うなり、すぐに踵を返して駆け出すと‥‥その彼の背へ叫ぶ小次郎だったが、視界の中からやがて憐慈の背中が消えれば肩を落として女装志士。
「‥‥何でこんな奴らばっか」
「所で華倶夜を含めた藩士部隊の運用は如何程でしょうか、小次郎様」
「以前に比べれば、大分マシだよ。一応はお互いの事を考えて動ける様になったとは思う」
「そうですか、それでしたら‥‥」
嘆息こそ漏らすも、一人場に残る素華から直後に問われれば息を整えた後に小次郎は答えると微かに笑えば素華は再び口を開き、提言する。
「互いが互いと組んだ際、出来得る理想の戦術に付いて考えて貰いたいと思っているのですが‥‥如何でしょうか?」
「確かにその点、未だ試行錯誤している事から良いと思うが藩主殿が果たして何と言うか」
「変わった事をするのも良い刺激になるだろう」
その話を受けて小次郎は一先ず頷き、次いで傍らにいた伊勢藩主を見つめると果たして彼はすぐに応と頷けば
「それでは‥‥先ずはそれを行うに当たって、奮起して貰う為にも必要だろう褒美と罰に付いて藩主様、伊勢藩士達へのそれを御一考して貰えるでしょうか」
「それも構わないが、華倶夜の方はどうすると?」
「そう、ですね‥‥華倶夜に対しての罰は『男の格好』をする事、褒美は‥‥本場、最新巫女服の横流しでは如何で?」
素華が本題を補助する話に付いても切り出すと、次に響いた藩主の問いへ彼女は予め考えていた相応しいだろう飴と鞭に付いて言えば、渋面を湛える小次郎は嘆息を漏らしながら一つだけ問い質すのだった。
「巫女装束の本場って、何処だよ?」
●流布される話の数々 〜伊勢市街〜
再び市街へ視線を戻せば果たして沙羅の目論みは当たり‥‥また、何時の間にやら駆け付けた五節御神楽の演奏の甲斐もあってか、街のあちこちは非常に賑やかになっていた。
「ぉ、ヴェニーやないか。調子はどや」
「一先ずこれから、集まった情報を整理する所よ」
「‥‥で、何か面白い話はあったけ?」
「そう、ですわね」
その中、一息入れていた沙羅の視界に魔術師ながらも伊勢を東奔西走していたヴェニー・ブリッド(eb5868)の姿が入るとすぐ彼女を呼び止めれば、歩を止めた魔術師へその進捗を尋ねると商人の元へ歩み寄りながら彼女。
「‥‥比較的、国司様の話が多かったのはやはり人々が不安視されているからなのでしょうね」
「まぁ、そやろな。藩主様が活発に動いているだけ尚更に」
「でもその中、人の動きで一寸おかしな所があるのよね」
「ちゅうと?」
暫しの間を置いた後‥‥漸く整理がついてか、口を開くと沙羅自身も良く聞いた話に頬杖をついては返すもしかし、次に彼女が紡いだ話には商人が食いつけば
「国司様の動きが見られない割、結構な数の人が市街に赴いているみたい。職に問わず、ね」
「‥‥それが何か」
「単なる商売とかじゃ、そう言う事じゃないみたいなのよ。でいなくなった人が伊勢市街にいないか探して見たのだけど、その人達を見付ける事は出来なかった」
澄んだ碧眼を沙羅に向けてヴェニーは己の髪を撫でながら先の話の続きを語ると、しかし彼女の真意が見えず商人は首を傾げればその様子に苦笑を湛えると、自身が足を使って調べた事を更に告げれば此処で漸く息を飲んだ商人へ瞳を細め、頭上の空を見上げては嘆息を漏らすのだった。
「私の探し方が下手なだけかも知れないけど、それでも‥‥明らかにおかしいわ」
●沈黙する者 〜伊勢国司〜
「済まん、すっかり遅くなったな」
伊勢国司が邸宅を前‥‥遠目に見えるそれを密かに見張っていた茉莉花緋雨(eb3226)は背後から響いて来た足音に振り返れば、遅参を詫びる小次郎の姿を見止め安堵すると
「しかしまぁ、こっちまで手伝う事になるとはな‥‥」
「‥‥お嫌でしたか?」
「あぁ、そう言う意味じゃないが中々最近忙しくてな」
彼女に自身の妹、アリア・レスクードの無事な姿を見止め小次郎も安堵こそするが‥‥それ故に出た溜息は緋雨の表情をすぐに曇らせる事となり、彼女の問い掛けへはすぐに否定すると直後。
「で、何か変わった事はあったか?」
「‥‥いえ、今まで別段変わった動きは。その他にも国司様に連なっている家に付いても調べたのですが、目立って怪しい所もありませんでしたし」
緋雨より手伝いを要請された件に付いて尋ねれば、今日まで目立った不審な人物の出入りはなかった事を告げると一先ずそれだけを聞いて小次郎、何を閃いてか一つ彼女らへ問い尋ねる。
「なぁ、素性が割れている者で出入りが激しかった奴はいなかったか?」
「‥‥一番に目に付いたのはアゼルさんでしょうか?」
「そう言えばあの人、国司様の元で何をしているんですか?」
「さぁ、な。人は良いんだが最近になって伊勢へ来た事が一寸気になってな‥‥」
するとその問いに対して口を開いたアリアの答えを聞いて緋雨は初めて聞いたその名を持つ人物に付いて聞けば、しかし曖昧な答えしか返せない小次郎は瞳をすがめて伊勢国司の邸宅へ視線を投げた。
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「お、女の部屋を発見。良い眺めだねぇ‥‥っていや、そうじゃねぇってば俺」
その一方、国司の様子を直接探るべく邸宅内部の先ずは庭への侵入を果たした陰陽師の拍手阿邪流(eb1798)は普段と別段変わらない調子で緊張感を微塵も見せず、軽口を叩きながらも軽やかに影から影へと移動すればやがて内部へ潜入するに丁度良い、暗がりの中にある一つの勝手口を見付けるなり足音を完全に殺し、それへ近付けば
「さて、ちょちょいと国司様の様子でも探るかね‥‥っ!!」
扉の向こうから何の音も聞こえない事だけ確認してその取っ手を握るが‥‥直後、唐突に辺りを尋常ならざる殺気に包めばそれに気付いた彼は前進を総毛立たせる。
「何だよ、この重圧‥‥何かやばいものでも飼っているのか?」
そして舌打ちを一つ響かせた後、背を伝う冷汗を感じながらも目まぐるしく思考を回転させれば‥‥やがて一つの決断を下して取り急ぎ、その場より去るべく踵を返すのだった。
●牢獄にて 〜黒門絶衣〜
さて、伊勢藩で抱えている問題で未だ明るみになっていない問題で最も大きなものと言えば‥‥黒門絶衣のその真意が上げられるか。
「‥‥何時まで黙っているつもりだ、時を待っているのか? 尤も何事か企んでいるとしても、何度でも阻止するまでだが」
「面白い事を仰います」
「貴方程ではないと思いますけどね」
その彼が拘留されている牢獄を前、様々な拘束具にて縛られている彼を前にガイエル・サンドゥーラ(ea8088)と拍手阿義流(eb1795)は番人の一人が完成させた念話にて尋問を試みていた。
「焔摩天や妖怪と手を結んで、何をしようとしていた? それに焔摩天の封印を解いたのも貴様の仕業か?」
「彼らの真意に付いて、私は何も知りませんよ。精々言える事と言えば要石を壊したかった、とだけでしょうか。そして私はその力に預かりたかった‥‥尤も焔摩天は勝手に目覚めただけですがね」
主な問い手はガイエルで、阿義流はその話を聞いては真偽の判別を行うも‥‥意外にもスラスラと話す割、彼の話に矛盾は感じられず阿義流は密かに歯噛みするも
「‥‥ならば何時ぞや奪いに来た『黒い箱』は何だ、そこまでして拘った理由は? それに、刀狩りをしていたのは何の為だ?」
「それぞれに鍵、ですよ‥‥一つは解放する為の、もう一つは再び封ずる為の道具。それに付いては貴方方も既にご存知でしょう? だから私はそれらの鍵を手にする必要があった」
「天岩戸に眠るものを目覚めさせる為に、か」
ガイエルは動揺を見せる事無く続けて質問を繰り返すが‥‥予め聞いていた話とは裏腹、様々な問いを投げ掛ける彼女に対して黒門は淀みを見せず、話し続ける。
(「‥‥私の技量が未熟なのか、それとも」)
「それとも、真実を言っているとでも」
「嘘は言いませんよ、この様な場にいるのですからね」
「‥‥ならば何故、今になって真実を語る」
その様を目の当たりに阿義流は深層にて自身の技量を疑い、やがてそれを表層へ浮き上がらせれば頬を緩める黒門へガイエルはその理由を問い尋ねると‥‥彼は二人を嘲笑うかの様に呟くのだった。
「そろそろ、目覚める筈ですからね。欠片の核が‥‥そうなれば最早、誰であれ止める事は出来ず天岩戸は開かれるでしょう」
●その纏め 〜伊勢巡察隊〜
「手応えがあったかなかったか、分からない仕事だったな」
「直接、国司様の事に付いては何も分かりませんでしたからね」
「だが国司様の姿はこの目で確かに見てきた。健在ではあったし、藩士達の前に顔を出し士気向上の為の挨拶をしてくれると約束を漕ぎ着ける事も出来たが‥‥」
やがて最終日を迎え、伊勢の街並みを前に陰陽師の双子は揃い溜息を漏らしていた‥‥元より明確な目的のない依頼だったからこそ、それは当然であったが
「良い報告と言えばそれ位か。これから何か良からぬ事が起きるのは、皆の話を聞く限り間違いない以上」
「でも伊勢藩士の皆さんははこれからがまだ、強くなります」
「えぇ、アシュドさんや小次郎さんもいますし」
それでも皆との話のやり取りの末、見出せた事もあったからこそ渋面を湛えながら憐慈がぼやくが‥‥彼を宥める様、素華と佐祐李が言葉返すとやがて笑んで彼。
「不穏の影がいずれ満ちるとしても、希望もまたある‥‥か」
「あぁ。だからこそ皆の尽力には感謝する。ありがとう」
その最後を締め括ると伊勢藩主もまた皆へ頭を垂れれば、頷く一行だったが
「なぁ、うちを侍にしてくれんやろか?」
「やはり、仕官の話か。伊勢の実情からすれば後は武勲も欲しい所だな‥‥が沙羅殿にも随分助けられた、ありがとう」
沙羅だけは自身の話が未だ解決していない事に藩主へ近付き尋ねれば、それを薄々察していたからこそ彼は蒼く晴れ渡っている空を見上げればやがて答え、しかし彼女にも改めて頭を下げれば一先ず沙羅もそこで引き下がれば何とか笑顔を湛え、守也の肩を叩いては願うのだった。
「ま、何はともあれ伊勢の今後の平穏を可能な限り祈っとくで」
さりとて、現状でこの依頼に対しての成否の程は分からない‥‥だがいずれ、それが分かる日が近付いている事を皆は薄々、肌で感じていた。
果たしてその時、伊勢は‥‥。
〜一時、終幕〜