潜入、伊勢藩?!
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■ショートシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月20日〜08月25日
リプレイ公開日:2007年08月27日
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●オープニング
●京香さんは考えました
京都のとある食事処にて、殴られ屋と言う珍しい生業をしている京香はエドワード・ジルスが冒険者ギルドから持って来てくれた、伊勢に関する依頼報告書を読み耽っていた。
「何か‥‥キナ臭いみたいだねぇ」
「‥‥うん」
その量たるや、かなりの物で‥‥それでも京香は全ての報告書を読み終えると卓の傍らに積んだそれへ掌を置いては茶を啜った後に一言囁けば、静かに頷くエドが今度は口を開く。
「‥‥以前から、そうだったけど‥‥また最近」
「天照の登場、静かな妖、暗躍しているだろう悪魔、身を潜めている事が多くなった国司、伊勢藩に介入するジーザス会、姿を消す一部の民衆‥‥うーん、それらの中で探りを入れるのは色々と厳しいわねぇ」
だがその囁きが途中、まだるっこしいと感じてか京香が口を割り入れては最近の伊勢で起きている事象を指折り数え‥‥それらが纏めて錯綜している中、自身がこれより取るべき行動に対し逡巡を覚える。
果たして、自身の素性を明らかにする事は今やらなければならないのか。
もしかすれば自身の行動を起因にして伊勢は尚も混迷に向かうのではないか‥‥今まで深く、伊勢と関わりがなかったからこそ考え過ぎだとは思いながらしかし、何となくだがそう思えたから。
「伊勢国司の真意、果たして何処にあるのかしら」
「‥‥‥」
そして暫しの沈黙の後、溜息と同時に彼女は言葉を吐き出すと首を傾げるだけのエドは何か言いたげに僅かだけ、口を開きかけるも
「‥‥私の事は後回しでも良いわ、変に首を突っ込んだら気になっちゃったし。それに伊勢藩に首を突っ込んでいれば遠からず、分かりそうな気もするから」
それは察して京香が顔を綻ばせると、彼の頭に掌を置けば‥‥いよいよ決断を下した。
「さて、そうなると‥‥決まりね」
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「伊勢国司の邸宅に忍び込む‥‥か。結局、そうなる訳だ」
「悪い?」
と言う事で京都の冒険者ギルド‥‥京香からの依頼話を聞いて、ギルド員の青年は胸を張って答える彼女へ溜息を漏らしていた。
「余り、公には出来ない依頼だな‥‥とは言え、止めても引き下がるつもりはないのだろう?」
「何らかの重要だろう情報が見付かれば伊勢藩主へ働き掛ける事だって出来るだろうし、下手を踏まない限りはどう転んでも私に利があるからね」
その内容が内容だからこそ、冷静に判断しては再三に渡り青年は確認するも‥‥此処へ来た以上は京香も折れる筈なく、彼女の決断を前に彼はもう何度目かの溜息を漏らした後に髪の毛を掻き毟れば
「‥‥分かった、詳細は俺が口頭で伝える事にする。だが以前と同じくこちらは責任を負わないぞ」
「あんたらにまで迷惑は掛けないさ」
「どうだか」
「‥‥じゃ、悪いけど宜しく頼んだよ」
精一杯の妥協点だけ提示して彼女の依頼を引き受ける旨告げると、顔を綻ばせては断言する彼女に肩を竦めて返すギルド員だったが、その様子は別段気にも留めず颯爽と身を翻せば京香はそれだけ言って冒険者ギルドを後にするのだった。
さてはて、京香は伊勢は一体どうなる事か。
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依頼目的:伊勢国司邸宅へ潜入し、京香にとって有益な情報を手に入れろ!
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
対応NPC:殴られ屋の京香、エドワード・ジルス
日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は一日。
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●リプレイ本文
●暗中模索
京都の冒険者ギルドにて珍しくその内容をほぼ全てが公にされていない、殴られ屋と言う生業に就いている京香からの依頼を受けた冒険者は果たして六人。
それは今までに付き合いがあったからこそと言う者もいれば、自身持ち得る技術を活用と向上の為だったり、ただ単純に手持ち無沙汰だったからと動機は様々であったが初めてその内容を冒険者ギルドより告げられれば流石に鼻白む彼ら。
それもその筈、何せ下手を打てば伊勢藩に捕らえられ犯罪者として投獄されても可笑しくない内容だったからこそ躊躇うのは当然であったが
「相変わらずキミも、無茶な依頼ばかり頼んでくるねぇ」
それでも依頼人である京香を前にすれば頴娃文乃(eb6553)は艶っぽい笑顔を湛え呆れて見せる辺り、手馴れていると言うか。
「何時もの事でしょう?」
「‥‥そうだとしてもいささか、ギルドの者は困っていたぞ」
しかしその彼女の態度を前にして京香も平然に言い切れば、その性格を知っているからこそ榊原康貴(eb3917)が嘆息を漏らしては呆れるも
「ま、そりゃそうだろうねぇ。何も見付からなくて捕まった日にはそれこそ、ギルドの面子が丸潰れになるからねぇ」
「‥‥そこまで分かっていて、サラリと言う所が」
「怖いのですよ」
「いちいち気にしていたら身が持たないぞ」
それでも尚、さっぱりと言い切れば彼女とは初めて顔を合わせる草薙隼人(eb7556)と梅林寺愛(ea0927)は声音を震わせるが、京香とは長い付き合いの東雲八雲(eb8467)が苦笑を浮かべながら彼らを宥めると
「因みに京香‥‥藩邸に潜入するのか?」
「言わなくても分かるでしょ?」
「‥‥まぁ自信があるなら止めはしないが、無茶だけはするなよ?」
「さて?」
次いで彼女へ向き直れば早速、今回の動きに付いて尋ねるも笑顔を湛え答えを返す彼女に深く溜息を漏らしながら念押しこそするも暖簾に腕押し、京香は動じた風も見せず。
「京香殿‥‥」
「分かっているわよ、全く。心配性なんだから」
そのやり取りを前に愛と隼人が口を開け放つ中、流石に口調を厳しくして康貴が京香を見つめると肩を竦める彼女ではあったが余り気にしている様には見えず、肩を落とす殴られ屋より年上の彼。
「えーと‥‥こう言うのを何て言うんだっけ? 虎穴に入らずんば何とかカントカって?」
「虎穴に入らずんば、虎児を得ずだねぇ」
「あぁ、そんな感じ。とも言うから、やるしかないかな」
「此処まで来た以上は、そう言う事ね」
そんな光景に苦笑を浮かべつつ、マキリ(eb5009)が場を上手く纏めると何とか頷く一行だったが
「取り敢えず最後の確認だが‥‥伊勢藩の中枢、国司殿の邸宅前にて陽動となる騒ぎを起こし、警備に就いている者を引き付ける傍らで潜入班が内部へ潜入して早く重要だろう情報を集め、撤収する」
やがて皆の視界の中、伊勢の街並みが見えてくるとそれを瞳に収めながら八雲が改めて今回の依頼に当たり、それぞれがすべき事を簡潔に纏め告げれば頷いて皆。
「恐らく陽動の方は何とかなるやもだが、潜入する者にもしもの事があればいけない。エドにはそのフォローを頼めるか?」
「‥‥最初から、そのつもり」
だがその中、沈黙を保っているエドワード・ジルスへも八雲は声を掛ければ言葉少なに返してくる彼の答えを聞くと同時、遂に至る伊勢の街並み。
「それでは方々、私はこれで‥‥頑張ってくるのですよ」
「しかし、久し振りの依頼だな。上手く行けばいいのだが」
「それは皆の頑張り次第、じゃ張り切って行こうか」
それを前にして先ずは薬売りの姿に変装する愛が皆へ声を掛け、一番に駆け出しては早々に姿を消すと彼女が消えた方を見つめ、呟く隼人ではあったがその不安は早く一蹴して京香が皆を促せばエドが頷く中でいよいよ一行は伊勢藩の中枢である伊勢国司、北畠泰衡が邸宅のある方へと歩き出すのだった。
●潜入、伊勢藩‥‥?
一行が伊勢の町に入ってから暫くして伊勢藩が国司の邸宅を前、その騒ぎは起こるべくして起こる。
「今回の依頼、報酬は俺が一番に貰うね?」
「それは可笑しくないか」
「可笑しくないよ、一番俺が頑張ったからねー。第一、八雲は回りを気にし過ぎて全然動かなかったよね?」
「‥‥そんな事はない」
それは冒険者達が一仕事終えた後の報酬に絡む騒動が発端で、しかし眼前にある国司邸宅の内部へ潜入する為の陽動の演技とはその騒ぎに集う、野次馬根性旺盛な民衆の誰もが気付く筈はなくマキリと八雲のやり取りを前に騒然となる。
「とは言ってもなー、皆はどう思う?」
「‥‥お前、性格変ったか?」
「何だ、唐突に」
その聴衆が反応を良しと見て、マキリがやや棒読みながらも次に他の二人へと声高に問えば、応じた隼人が唐突な問いに首を傾げる八雲だったが
「昔はそんなに金銭の事でとやかく言う奴ではなかったと思ったが‥‥ともかく今回の件、マキリの言う通りだと俺は思う」
「うんうん、隼人は良く分かっているね〜」
「まぁまぁ。少し落ち着きなさいな、キミ達」
程無くしてその理由を明示されればその後に自身の意見を紡いだ浪人の彼へ何度も頷くマキリを見つめる彼だったが、直後に場を宥めようと文乃が声を発すれば
「マキリ君も、今からお金にがめつくなっちゃうと後で大変だぞ?」
「大変にならない様に、今の内から貯めて置かないと」
「‥‥可愛くない餓鬼ね」
「え? 何か言った、おばさん?」
『‥‥‥』
次いでマキリにも笑顔で忠告こそするが、それには両手を頭の後ろで組んで彼は軽く応じると直後、毒づく彼女に皮肉で返す少年は揃い沈黙するが
「外見、女の趣味は悪くはないが‥‥お前はそれで良いのか?」
「それ、ってもしかしてあたしの事?」
「他に誰がいる?」
その光景を前に文乃が八雲を庇った事から恋人同士と察し(ここではそう言う設定です)、彼をせせら笑えば八雲より早く尋ねる文乃に隼人は鼻を鳴らし応じれば
「お前に言われたくはない! だが、そこまで言ったんだ‥‥覚悟はいいな?」
「お前こそな」
「やってまえー、八雲!」
「頑張れー、隼人ー!」
今度こそ八雲の叫びが辺りに轟くと、それに隼人もまた応じ叫べば‥‥集う人々の前で遂に二人は刀を抜き放つとそれを前に、先まで騒然としていた場は水を打った様に静まれば視線だけ絡める二人に文乃とマキリ、それぞれへ声援を送れば動き出す二人。
「お前には近寄らねぇよ! 切り札のアレが高速で決まったらこっちはもう、終わりだからな!」
「そちらが来ないと言うのなら‥‥こちらが近付くまで!!」
「だから、させねぇっての!」
演技とは理解しながら、だがそれを不自然と見られない様に血を滾らせては隼人が刀を上段に構え言えば、八雲もまた浪人へ迫りながら印を組み‥‥直後に隼人の刃から放たれた剣閃と八雲の掌から重力波が同時に解き放たれれば辺りに土埃が激しく舞った。
●こちらが本命
「如何やら此処から、私の『仕事』の時間なのですよ」
その騒ぎの傍ら、伊勢国司が邸宅に張り付いていた愛は門前にて起きている騒ぎを聞き止めると早く忍術を駆使しては見張りの死角を突き、一足飛びにてその内部へ降り立つと眼前にある縁の下へと潜り込む。
「ちっ、あの小娘。やるわね」
「仲間へムキになってどうする、京香殿」
その光景を少し離れた場より見て舌打ちする京香だったが、康貴に窘められれば苦笑を湛えるも
「それじゃあ、何かあったら支援よろしくね」
「分かっている、だが先も言った様に‥‥」
「無茶はするな、でしょう? 分かっているわよ」
自身も早くその内部へ至るべく踵を返しては彼へそれだけ言えば、もう何度目かの忠告に肩を竦めるだけ見せては愛がなぞった軌跡を追う様に飛翔すればその姿を消すと
「何処まで分かっているのやら」
呆れながらも振り回されているだけの自身に対し、康貴は肩を落としながら‥‥それでも京香の援護をすべく、動き出した。
●
伊勢国司、邸宅が内部でもやはり門前の騒動は察知されていた。
「いい加減、五月蝿いですね‥‥折角、冒険者の意を汲んで芳しくない体調を押し久々に国司様が檄を飛ばされていると言うのに」
「どうされますか?」
「排除なさい、この場には不要な騒ぎでしょう」
それに対し、果たして溜息をついた『彼』は視界の中で集まった伊勢藩士達を前に久々に動いた国司、北畠泰衡が彼らを鼓舞する様を見届けながら部下の報告に正しい決断を密かに下せば、すぐにその場を後にする部下を見送った後。
「一度、辺りを見回ってみるとしますか。万が一にでもあれを見られると事ですしね」
唐突な門前での騒動を訝ると彼もまた静かに、その場から踵を返すのだった。
●
「お前達、国司様が邸宅の前と知っての狼藉か!」
果たして『彼』が決断を下してからすぐ、伊勢国司が邸宅の門前に伊勢藩士達が集えば騒ぎを起こしている冒険者らが四人を見咎め鋭く叫べば
「‥‥あ、悪い。気付かなかった」
「貴様‥‥それとお前も、来いっ!」
「俺も、か?」
「二人で刀を抜いて暴れていたんだ、当然だろう!」
それを受けて尚、平然と答える隼人に一人の藩士が呻けば次いで彼と刃を交えていた八雲も見止め叫ぶと二人へ歩み寄るなりすぐに彼らを拘束すれば、流石に抗う訳にも行かず‥‥しかし八雲の今更な問い掛けは響けばすぐに藩士達を煽る事となり
「奇跡的にもお屋敷に被害こそないから、今日は牢屋で頭を冷やすのだな!」
荒々しい彼らの歓迎を受ける羽目となった八雲に隼人は敢え無くしょっ引かれる事となる‥‥周囲への被害が軽微だったからこそ、すぐに解放されるだろうが。
「あぁ、あたしって何て罪作りな女なの」
「ちょっと違うと思うけど‥‥大丈夫かなぁ、二人?」
そんな二人を見送りながら、文乃は頬に手を添えては囁くもそれにはマキリがしっかりと突っ込めば、僅かとは言え投獄される憂き目となった彼らを心配するのだった。
●
「何か嫌な予感がするのですよ‥‥此方から、行くのですよ」
その一方、彼らが捕縛された事は知らないからこそ愛は邸宅内を縦横無尽に駆け巡っていた。
間取りこそ分からないまま、勘を頼りに内部を疾駆すればやがて辿り着いた一つの部屋で彼女の足が久しくして止まる。
「これは‥‥むむっ‥‥何か違和感を覚えるのですが」
「おやおや、こんな所に鼠がいるとは‥‥これは行けませんね」
その部屋の中で果たして覚えたその違和感に愛はそれが何か、暫し思案に暮れるも唐突に背後から鳴り響いた声に密か、身を竦ませて振り返るとそこには一人の柔らかな微笑を湛える英国人の姿があった。
(「この距離まで、気配に気付かないなんて」)
「たまたま出払っていたとは言えもう少し、警備を増やす必要がありますか」
「貴方は一体、何者なのですよ‥‥?」
「答える必要はありませんよ」
「‥‥それなら暫くの間、眠っていて貰うです」
その衣装に見覚えのある彼女は穏やか立ち振る舞いとは裏腹、何か潜めている雰囲気を保つ青年に内心で呻きながら問うも、まともな答えは返って来る筈もなく一先ずこの場より脱しようと実力行使にて彼を昏倒させるべく、囁きと共に彼の背後へ回り込み手刀を翳すも‥‥次の瞬間、打ち倒されたのは愛の方だった。
「悪い子にはお仕置きが必要ですね」
「‥‥そこまでじゃ」
その一瞬に起きた出来事を振り返るより早く、彼女は何時の間にか迫られている彼の邪まに歪んだ笑みを見て驚き、次いでその口から出た心の底まで震わせる恐ろしき声音を聞けば遂に身を固めるが‥‥また何者かの、軽い足音が響くと共に眼前の青年を抑止する言霊も場に響けば動きを止める英国人の彼。
「何も見られていないのなら、それ以上に痛めつける必要はなかろう」
「貴方が、そう言うのなら良いでしょう」
だが、未だ微動だにしない二人の姿を見て尚もしわがれた声の主が言葉織れば青年は凶悪な殺気を唐突に収めると、それを機と見て愛は素早く身を起こすなりその場より早く脱する。
「しかし貴方の我侭もこれきりですから、覚えておいて下さいね?」
「‥‥分かっておる」
振り返らない彼女を見送り、青年は自身の行動を阻んだ北畠泰衡へしかし釘を刺せば、渋面を湛える老人の表情を見るなり再び穏やかに微笑んだ。
●
「これは‥‥」
その一方、愛程に足取り軽やかにまでとは言わずとも苦労の末に伊勢国司の部屋に潜り込んだ京香はそこでただ一点だけを見つめ、固まっていたがそれも僅かな間だけ、京香の居場所を正確に追尾していた康貴より何らかの合図だろう、壁を叩く音を耳にすると踵を返しては近場の窓より身を乗り出す彼女。
「長居は無用、愛殿がエド殿の元へ戻られた。恐らくこれ以上は‥‥」
「これからだって時に‥‥しょうがないわね」
やがてその視界の片隅にその身を縮める彼の姿を見止めれば、次いで響いた報告に舌打ちこそ返すも周囲が徐々に騒がしくなって来た事に気付けば、その場より踵を返すのだった‥‥その部屋の片隅に転がる、一つの根付を一度だけ見つめて。
●手にした物
翌朝を待たずに早々、夜の帳に紛れて一行は伊勢を後にしていた。
「すぐに解放されて良かったわね。出て来られなかったら置いて行ったけど、残念!」
「‥‥他人事だからと」
その中にて伊勢藩士達に捕縛された八雲と隼人は今、京香にからかわれていたのだが
「で、何か収穫はあったのか?」
「‥‥中でジーザス会の人と会ったのですよ。でも、あれは‥‥おかしな位に強過ぎるのです」
矛先を今回の依頼に付いて向ければ、隼人の問い掛けに応じたのは唯一伊勢国司が邸宅の深奥へ足を入れた愛で夜の暗がりに負けぬ程、顔面を蒼白にして呟けば
「‥‥そうなると一先ず、伊勢国司はジーザス会と結び付いている訳か」
「藩主様はこの事、知っているのかな?」
「さて、どうだろうか」
彼女へどう声を掛けた物か悩み‥‥結局は思い浮かばず、見えた事実だけ隼人は告げるが今まで様々な事があった伊勢を少なからず見てきたマキリに康貴は口を揃えその事実に対し、戸惑いを露わにする。
「ともかく、この件は藩主殿へ話しておく必要があるだろうな」
「そうね‥‥ならそれは、あたしがやっておくわ」
「どうかされたか、京香殿?」
しかしそれでも、事実だけは言葉だけで覆せる筈もなく八雲が決然とした声音で皆を見回しては告げると応じる京香だったが‥‥その表情は普段と違い、何処となく儚げに見えたからこそ康貴が尋ねれば
「疲れた、だけ‥‥?」
「‥‥ま、そんな所」
「ほらほら、一仕事終わったからって緩まない。もう少し、しゃんとしなさいよ。まだまだこれからなんだから」
今回は余り出番のなかったエドがその彼女を案じてか尋ねると、肩を竦めては頷きだけ返す彼女だったがそれでも何処か普段の様子でない京香のその背を文乃が叩き、檄を飛ばせば一行は京都へと至る道を急ぎ駆け抜けるのだった。
〜一時、終幕〜